信太のボクシングカフェ

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ボクシングが大好きです。大好きなボクシングをたくさんの人に見てもらいたくて、その楽しさを伝えていきたいと思います。

【東京五輪観戦記vol3】男子ボクシング決勝!大逆転劇のヒズニャクvsソウザ、プロ8戦全勝のジャロロフ!

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8/8、東京オリンピックが閉幕。

賛否両論ありながらも開催されたオリンピックでしたが、開催に至る経緯や開催中の政府のコロナ対策は別問題として、本当に楽しませてもらいました。

開催期間中、毎日のようにアマチュアボクシング、それも世界最高峰のものが行われているというのは非常に幸せな時間でした。

 

オリンピックのボクシングをここまで視聴できたことは、過去、記憶にありません。

日本人ボクサーが出場した試合や、話題のボクサーが出場した試合をかいつまで視聴してきましたが、折角の機会なので決勝ぐらいは全て見ておこう、と思いアーカイブ視聴。(本当は準決勝も見たいのですが、なかなか時間が作れません。)

今回は東京オリンピックボクシング競技、観戦記のvol.3。男子ボクシング、ミドル級〜スーパーヘビー級です。

 

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男子ミドル級決勝

オレクサンドル・ヒズニャク(ウクライナ)vsエベルト・ソウザ(ブラジル)

ミドル級の世界最高峰、オレクサンドル・ヒズニャク。2012年にユースの世界選手権を皮切りに、2017年のヨーロッパ選手権および世界選手権、最新では2019年のヨーロッパ予選で優勝、優勝候補としてこの東京オリンピックに臨みました。

シードのため、初戦となるROUND16で日本の森脇唯人を撃破、その強さを日本のボクシングファンにもまざまざと見せつけてくれた、怪物です。

対してソウザは国際大会でメダルを獲得している強豪ですが、2018年の南アメリカ大会で銅、2019年にはパンアメリカ大会で銀、同年の世界選手権でも銅と未だ国際大会での頂点の経験はなし。しかし、前戦で2019年の世界選手権金メダリスト、グレブ・バクシー(ROC)を破っており、勢いがあります。

 

注目のミドル級戦、初回ゴング前からやる気に逸るヒズニャクは、ゴングと同時にダッシュ。ガードを固めて前に出て、明らかに重そうなパンチを次々と放っていきます。

とにかく手を止めるということを知らないこのヒズニャク、この手数とフィジカルの強さで森脇も足を止められ、自分の距離で戦えませんでした。

ソウザもこのヒズニャクの突進力を持て余し、サイドへサイドへ動きつつ、いなそうとしていますがヒズニャクの手数は一向に減りません。ヒズニャクの強みは、やはりこの全くと言っていいほど迷いのない攻撃。

初回は言うまでもなくヒズニャク、5−0です。

 

2Rもガンガン攻めるヒズニャク。ソウザは迎え撃ち、体同士が触れ合う距離での押し合いからバックステップしてカウンター。しかしヒズニャクは止まらず、目一杯ネジを巻かれたブリキのマシーンのように相手のことは関係なく左右の力強いパンチを放っていきます。

ソウザもこの嵐のような連打に臆さず、良く頑張っていますが、ソウザが対抗できるのは少し距離が空いた後、ヒズニャクが踏み込んでくるときくらい。その後は巻き込まれてしまっています。

このラウンド終了後、片手を挙げて優勢をアピールしたソウザですが、無常にもこのラウンドもヒズニャクが5−0。

3R、このラウンド流しても勝利できるヒズニャクですが、1、2Rと変わらず超攻撃的ボクシングを展開。これはソウザにとっても万が一のチャンスが訪れる展開、ソウザもここは思い切り踏ん張ってインファイトで迎撃。

 

ソウザは体を傾けてのアッパーカットを多用しますが、クリーンヒットは少なく、ヒズニャクの前進は止まる気配がありません。

と、思った1分すぎ、ヒズニャクの入り側にソウザの左フックがカウンターとなってヒット!!この一発でダウンしたヒズニャク、立ち上がるも足元がおぼつきません!それを見たレフェリーは、この試合をストップ!!!!!

エベルト・ソウザが3R、大逆転RSC勝利を飾り、東京オリンピック優勝!金メダルを獲得!

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【Tokyo2020 ボクシング】劇的大逆転。ソウザがヒズニャクをKOしてブラジルに金メダル | BBMスポーツ | ベースボール・マガジン社より

 

これは本当に驚きの試合でした。最後のソウザの見事な左フック、完璧なカウンターのタイミングでヒズニャクの顎を捉えており、改めてボクシングは何があるかわかりません。

そして、オリンピックには魔物が住んでいました。

あと2分にも満たない間、立ってさえいればよかったヒズニャクですが、両手からこぼれ落ちた栄光の証。ただ、あの最終回にも自分のボクシングを貫き通す姿は非常にカッコ良かったですね。

オレクサンドル・ヒズニャク、時代遅れとも言えるピーカブーのスタイルから、左右の連打を武器に前進し、レフェリーから分けられた時間等の待ち時間も足踏みをしてすぐに攻め込める準備をしている、非常に愚直に見えるボクサー。今後も応援していきたいと思います。願わくば、このスタイルのまま、プロに来て欲しいとも思いますね。

 

そしてソウザ、一瞬の隙をついて見事見事な勝利。会見では「ラッキーだった」と語っていましたが、決して劣勢でも諦めないその姿勢こそが、この大逆転勝利を演出したのだと思います。

この試合こそ、アマチュアボクシング界のノックアウト・オブ・ザ・イヤー。ペースを取り戻すことすら難しいアマチュアボクシングにおいても、大逆転の芽はある、そう感じさせてくれる一戦でした。

 

男子ライトヘビー級決勝

ベンジャミン・ウィテカー(イギリス)vsアルレン・ロペス(キューバ)

2018年のEU選手権で金、2019年世界選手権で銅メダルを獲得しているウィテカー。ヨーロッパ予選でも銀メダルに輝き、このオリンピックの出場権を獲得しました。

キューバのロペスは、2016年のリオオリンピック、ミドル級の金メダリストで、その他にも多くの大会で金メダルを獲得している、今大会の優勝候補。

今回の東京オリンピックで、ロペスの2階級制覇なるか、と言う注目の一戦です。

初回。ウィテカーは大きく、ステップにしてもハンドスピードにしても非常に速い。こちらも負けじと速いロペスは、その大きなウィテカーに対してボディへのジャブと、タイミングをずらした踏み込み。ボディワークも良く、両者ともにクリーンヒットは非常に少ないです。

 

ジャッジ泣かせの初回は、5−0でロペス。私には、差が分かりません。。。

2R、ロペス、ウィテカーの速いジャブをヘッドスリップやスウェーでかわします。めちゃくちゃ上手い。それでいてプレスをかけつつ、ふとしたタイミングでジャブを連打で飛ばしながら距離を詰め、浅いヒットを奪います。こういう所もめちゃくちゃ上手い。

ウィテカーはちょっと強引にでも攻めた方が良いのではないか、と思うくらい、基本、後手。

 

このラウンドの採点は4−1でロペス、このラウンドもクリーンヒットはほとんどありません。

3R、この2人のボクサーは、ディフェンスが非常に良く、距離感も非常に良い。クリンチにもならない、でもパンチは届くという絶妙な距離でやり合っていますが、全くもってクリーンヒットが少ないです。

もみ合いになったり、ダーティーなことをしたり、バッティングの危険性も少ないクリーンなボクシングは、ジャッジは泣いているでしょうがレフェリーは仕事が少なくて喜んでいるかもしれません。

 

ただ、ちょとポイント不利なウィテカーは、最終回にもっと気概を見せてくれても良かった。

3Rを終えて、判定は4−1でロペス。

アルレン・ロペスが2016年のミドル級に続き、ライトヘビー級の金メダルを獲得しました!

このライトヘビー級の表彰式で、ウィテカーが銀メダルを首にかけず、話題になっていました。本気の本気で金メダルを目指していたが故に、自分に納得いかなかったんでしょうね。「リスペクトに欠ける」と言われればそれまでなのでしょうが、その意気や良し、とも思ってしまいます。負けた直後に、ニコニコして表彰台に上がれるボクサーではなかった、というだけのことだと思います。ちなみに、そのことを「後悔している」とのちのインタビューで語っているようです。

ともあれ、やはりキューバのボクサーは巧く、強い。

 

男子ヘビー級決勝

ムスリム・ガジマゴメドフ(ROC)vsフリオ・ラクルス(キューバ)

2017年のヨーロッパ選手権の銀メダリストのガジマゴメドフは、2019年の世界選手権、同年のヨーロッパ予選のヘビー級で優勝。24歳のこのボクサーは、東京オリンピックの金メダル最有力候補といって良いでしょう。

対してラクルスは2016年のリオオリンピックのライトヘビー級で金メダル、世界選手権は2011年、2013年、2015年、2017年に優勝していますが、2019年の世界選手権では銅メダル。そのほかの国際大会での実績を挙げれば、枚挙に暇がありません。しかも2014年に強盗に左腰あたりを銃撃され、競技生命を絶たれそうになったこともあるようなので、この戦歴は奇跡に奇跡を重ねてきたものに近い。

 

初回、互いがジャブで牽制しあう立ち上がり。軽やかなステップワークのラクルス、プレスをかけるガジマゴメドフ。ラクルスはステップだけでなくボディワークも秀逸、ガジマゴメドフは攻めあぐね、ラクルスの攻撃にカウンターを合わせようとしても捕まえられません。

ノーガードで誘いながらも距離を支配し、これでもかというほどキューバ・ボクシングのスタイルを体現するラクルス。金メダルをかけた決勝戦に、このリラックスした闘いぶりたるや流石です。初回は4-1でラクルス。

2Rは勿論プレスを強めるガジマゴメドフ。中間距離ではラクルスのステップは絶対、身体ごと詰めていきたいガジマゴメドフ。

 

強引な攻撃を見せていくガジマゴメドフですが、それでもラクルスを捕まえる事ができません。ただ、ラクルスの方はさほどパンチを出していませんが、ガジマゴメドフの入り際に左右のカウンターをヒット。両腕をだらりと下げたノーガードスタイルからのカウンターは、出どころもわかりづらい。途中、ガジマゴメドフの強引な攻めに後退したラクルスは尻もちをつきましたが、スリップ裁定。これはガジマゴメドフの攻撃と浅いヒットで尻もちをついたので、ダウンでも良かったのでは。ともあれ、2Rは5-0でラクルス。

3R、こうなるともうこのラクルスを捕まえるのは容易ではありません。ラクルスはこのラウンドを取られようとも、逃げ切れば勝利。対してガジマゴメドフはここまで捕まえられていないのに、最終ラウンドで捕まえられるという気がしません。どちらかというとスタミナをこれまで消費してきたのはガジマゴメドフのほうです。

 

ダンスを踊るように右に左に位置をかえ、出すのはジャブかストレート。ガンガン攻めてきてくれるガジマゴメドフに対しての最適解ともいえるボクシングを展開したラクルス、ラウンド終了のゴングが鳴った途端に勝利を確信しているようです。

危険を冒さず、しっかりと勝ちきったラクルス。5-0の判定で勝利、見事金メダルを獲得。

キューバといえばこんなボクシング。古豪、ラクルスがリオに続いての2階級にわたるオリンピック制覇!すごいですね。

ガジマゴメドフはよく攻め続けましたが、相性も非常に悪かった。このラクルスは、ファイタータイプが崩すのが非常に難しいボクサーです。

ガジマゴメドフは見た目に反してまだ24歳、プロ入りすればおもしろいですね。

 

男子スーパーヘビー級決勝

バホディル・ジャロロフ(ウズベキスタン)vsリチャード・トーレスJr(アメリカ)

身長2m、大型ボクサーのジャロロフは、2019年の世界選手権の覇者。アジア選手権では2017年、2019年、2021年にそれぞれ優勝しており、今大会でも優勝候補の筆頭です。

対戦相手のトーレスは、身長188cmのサウスポー、ゴールデン・グローブで2017年に優勝。全米選手権でも2017年、2018年と連覇をしているファイターです。

ボクシング競技、最後に行われたのはこのスーパーヘビー級の決勝戦。

トップロープを飛び越えてリングに上がるジャロロフ、イメージと異なり、クラシックで入場するトーレス。

初回、驚くほど低く入っていくトーレス、ジャロロフはリズムをとりつつジャブを飛ばします。長いジャブとストレートを持つジャロロフですが、このトーレスのボディムーブ、ベルトラインより低いんじゃないかと思うほどのダッキングに、的中しません。

 

1分過ぎ、トーレスの左オーバーハンドがジャロロフにヒット!この変則的な動きにジャロロフはやりづらそう、「もしかしたら」を感じさせるパンチです。

近い距離に入れば、しつこくフックを放ち、低く入りながらボディへのジャブと、同じ体勢からの左オーバーハンドを駆使するトーレスは非常にうまく戦っています。終盤には右フックもヒット、ジャロロフはピンチか?

初回、3-2でトーレス!

2R、ジャロロフはサークリングのステップを大きくした上で、ジャブを丁寧に突いていきます。このラウンド早々にこの力強いジャブでトーレスの顔を跳ね上げ、その後は左ストレートを幾度となくヒット。

 

トーレスはこのスタイルなので仕方ないのですが、頭が低すぎて減点。これは痛い!しかも再開後、打撃によりスタンディングカウントをとられた上、左目上をカット、これはジャロロフのパンチによるものです。その後もジャロロフの強烈な左ストレートを浴びてしまったトーレス、このラウンドを0-5で失います。(一人のジャッジは10-8でジャロロフにつけています。)

ジャロロフはさすが、初回でやや危ないかと思いましたがすぐに立て直し、基本に忠実なジャブからストレートへとつなげ、その威力も申し分なし。やはり強い。

 

3R、ボディジャブからの攻めは良いですし、ヘッドムーブも良いトーレスですが、ジャロロフは超冷静、とまどったのは初回だけでしたね。ジャブで牽制、トーレスがダッキングしたところに強い左を当てるという闘い方で冷静にクリーンヒットを積み重ねてラウンド終了のゴングを聞きました。

最終ラウンドのゴングが鳴ると同時に雄叫びをあげたジャロロフ、5-0の判定で東京オリンピック優勝、金メダルを獲得しました。

プロでも既にキャリアを重ね、現在は8戦全勝全KOというパーフェクトレコードを続けるジャロロフ。アジアのボクシング大国、ウズベキスタン唯一の金メダルを獲得。あの歓喜の姿は、「お国のため」もあったかもしれませんね。

 

そして逆に米国は、金メダルに一歩届かず、銀メダルが3つ、銅メダルが1つ。これはこれですごいですが。

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さて、日本も開催国ということもあって、メダルの獲得数としては過去最高の結果。村田、清水が金と銅をとったロンドンオリンピックを上回り、金一つ、銅を二つを手に入れました。

そしてこのオリンピックを見ると、怪物のようなボクサーも多いですが、国内トップの日本人ボクサーたちも、国際大会で十分戦える、ということがわかりましたね。オリンピックに出る、というだけで大変ですが、この本戦に出る事ができれば、それだけで十分世界と戦える力を手に入れている、ということにもなります。

 

今回、自力で出場を掴んだ岡澤セオンは金メダリスト、ロニエル・イグレシアスを最も苦しめたボクサーですし、同じく自力で出場権を獲得した入江聖奈は金メダル、並木月海は銅メダルを獲得しています。

国内争いも熾烈で、オリンピック予選というのもかなりシビアな闘いではありますが、次のパリオリンピックも非常に楽しみになりました。またルールは変わるようなので、はっきりしたことがわかれば、またこのブログでもオリンピックを追いかけていきたいと思います。

とにかくオリンピックは楽しかった。この観戦記をもって、私のオリンピックも終わりです。

 

もっと他のスポーツも見るかと思っていましたが、私はボクシングしか見ませんでした。時間がなくて。そしてこのオリンピックでアマチュアボクシングに興味を持った方は、8/13まで開催されているインターハイ競技も是非御覧ください。未来のオリンピアンが出ているかもしれません。

↓こちらのインハイ.tvで見れます。

sportsbull.jp

そして五輪ロスになる暇なく、もう週末には大注目興行が目白押しです。ボクシングファンの皆さん、お盆にボクシングばかりみて家族に叱られないように、互いに気をつけましょう。

 

 

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