日本時間8/15、海外では多くのボクシングイベントが行われた日。
アメリカではShowtimeがカシメロvsリゴンドーを生中継、ESPNがフランコvsマロニー3を生中継。そしてこのフランコvsマロニー3は、日本ではFITE.TVが中継という事だったのですが、蓋を開けてみればメインの3戦のみ、ということだったようです。
間違った情報を流してしまってごめんなさい。
もともとFITE.TVに記載されていた時間が、興行開始時間だったのと、FITE.TVのサイトに全カードが載っていましたので、勘違いしてしまいました。
一つ前の記事で、アンダーカードについて書きましたが、今回の観戦記はメインカードの3カード。ここにモハメド・アリの孫、ニコ・アリ・ウォルシュが入ってくるのはあまり納得のいくことではありません。ジェイソン・マロニーvsジョシュア・グリアというランカー対決を入れるべきでしょうね。
↓このイベントのアンダーカードはこちら
8/14(日本時間8/15)
アーノルド・バルボサJr(アメリカ)25勝(10KO)無敗
vs
アントニオ・モラン(メキシコ)26勝(19KO)4敗1分
スーパーライト級のプロスペクト、アーノルド・バルボサJr。KO率が示す通り、ややパワーレスの感じはありますが、非常にテクニカルなボクサーです。
初回、中間距離での速い攻防。やはりこのバルボサはコンビネーションがスムーズで、細かなステップも使えて非常にまとまっています。相手のモランからはあまりパワーは感じず、正直アップセットの期待も少ないです。
2Rも中間距離での攻防、バルボサはガードも固く、おそらくフィジカルも強い。真っ直ぐ伸びる右ストレートは非常に美しく、全てのパンチの精度が非常に高いボクサーです。モランは既に鼻血?
3R、力の差のあるモランに対して、ノックアウトを狙ってか距離を詰めるバルボサ。しかしモランは豊富な手数で対抗。
4R、かわして打つ、ガードしては打つを繰り返し、既に完全に試合をしているバルボサ。それでもモランは諦めず、力いっぱいスイング。
5Rに入ったところでパンチスタッツが出ますが、雲泥の差。これはバルボサ、早く仕留めてもらいたい。モランの顔面は鮮血に染まり、大きなダメージを感じさせます。しかしこのメキシカンファイターは倒れず、弱気にすらならず、左右のフック。これはモランがど根性ファイターなのか、バルボサがそれほどパワーレスなのか。
それ以降ももちろん、バルボサのペース。モランの逆転の緒は見えません。
距離感は抜群で、すんでの距離で相手のパンチを外し、そこから打ちながら前進することでパンチを当てるテクニックを持っています。しかもそのコンビネーションは非常にスムーズで、小気味良いテンポで手が出ます。更にはその当て勘も見事なものです。攻撃の最中、サイドステップで角度を変えて攻め込み、素晴らしい角度でフックを当てる、攻撃パターンだってたくさんあります。
しかし、相手をマットに這わせる事ができません。
オフェンス面、ディフェンス面においても完成されていると言っても良いこのアーノルド・バルボサJrというボクサーは、好ボクサーながらやはり物足りません。初回から実力差は顕著、完勝し、最後までしっかり攻め続けたものの倒せない、これは今後、対戦相手のレベルが上がっていくにつれ大きな問題となってしまうのではないでしょうか。
判定はほぼフルマークでバルボサ。
この試合を流すのなら、マロニーvsグリアの方が100倍面白かったです。
ニコ・アリ・ウォルシュ(アメリカ)デビュー
vs
ジョーダン・ウィークス(アメリカ)4勝(2KO)1敗
ここでモハメド・アリの孫、ニコ・アリ・ウォルシュが登場。海のものとも山のものともわからないボクサーが、このトップランク興行のセミファイナル。
右腕にモハメド・アリのタトゥー。そしてアリのTシャツ、ガウンとトランクスはアリの白黒のトランクスを模したもの。客寄せパンダのようになっているアリ・ウォルシュですが、本人がそれでよければ良いのでしょう。
最も偉大なボクサー、モハメド・アリの血縁という事実は、この競技の「血縁」において最も重要で、最も注目すべきことだと思います。
ウォルシュはデビュー戦らしく、ゴングがなると自分からどんどん攻めます。開始1分過ぎ、ワンツーでダウンを奪取。その後もワンツーで攻め込み、ウィークスはもう虫の息。
そして攻め込まれたウィークスをレフェリーが救い、ニコ・アリ・ウォルシュは1RTKO勝利でデビュー戦を飾りました。
やっと昨日の試合を(見たい分だけ)見終えました。
— 信太 (@shintaboxing) 2021年8月16日
折角なので、私はさして話題になっていない、ニコ・アリ・ウォルシュのKOシーン貼っておきます。 pic.twitter.com/KgMaJzUFVr
ボクサーとしてのポテンシャルがわかるようなデビュー戦ではありませんでしたが、少なくとも、闘争本能は持っていました。このウォルシュが、どれほどのものをアリから受け継いでいるのか、それを証明する闘いが始まります。
たくさんの重圧がかかるであろう、このボクシングデビューを果たしたアリ・ウォルシュ。
願わくば、しっかりと土台を築き、話題性だけでひた走るのではなく、そして勘違いすることなく、多くの人に愛されるボクサーになってもらいたい、と思います。かつてのお祖父さんのように。
どうでもいいですけど、やっぱりショートのモノクロのトランクス、良いですよね。。。
WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ
ジョシュア・フランコ(アメリカ)17勝(8KO)1敗2分1NC
vs
アンドリュー・マロニー(オーストラリア)21勝(14KO)1敗1NC
もともとはマロニーの持つベルトにフランコが挑戦、ダウンを奪っての僅差の判定勝利。そして2戦目は、マロニーが圧倒し始めたところで不運のバッティングによりノーコンテスト。規定ラウンドに達していなかった場合、日本では負傷ドローとなりますが、海外ではノーコンテストとなる場合が多いですね。
この日、アンダーカードではアンドリューの兄、ジェイソンは世界ランカー対決を制してきっちりと再起を果たしました。そのバトンが紡がれた、アンドリュー・マロニーはどうか。
初回はマロニーがステップ。足の使い方やジャブ、左フック、ジェイソンとそっくり。イメージとしてはジェイソンのほうがややアグレッシブかと思っていましたが、この日は逆。アンドリューはフランコのプレスに負けないように、しっかりと体で押し返して左フックを強く打っています。
終盤、レフェリーで丁度見えなかったですがフランコが良い右をヒット。(インターバルのスロー映像で確認)
2R、マロニーはステップを駆使してフランコのパンチを外し、回転力のあるコンビネーションでフランコを攻めます。フランコの高いガードに阻まれすが、良い攻撃を見せています。
やはりこの二人のボクサーは戦力的に互角。
3R、パンチスタッツではクリーンヒットでフランコが上回っています。軽量級の戦いらしく、手数が出ている好試合。
4R、マロニーはジャブ、コンビネーションの最後に打つ左ボディが良いですが、フランコは一発一発のパンチングパワーに秀でています。コンビネーションの打ち分けやサイドへの動き、テクニックではマロニーが上ですが、体の強さではフランコが上。フランコはマロニーの攻撃でビクともせず、どちらが見栄えが良いかというとフランコか。
5R、前半にこれまでフックとオーバーハンドで攻めていたフランコがアッパーをヒット、その後はともに決め手に欠けます。
6R、マロニーは速く、引き出しもありますがなかなか決定的な場面を作れません。展開はやや互角ながら、どうしてもフランコに流れてしまいそうなラウンドが続きます。
もう少しカウンターで印象的な場面をつくりたいところ。
7R、と、思ったところで1分過ぎ、マロニーの右カウンターでフランコがダウン!当たったようにみえませんでしたが、ダウン宣告!
その後、フランコはダメージを感じさせずに前進。
このラウンド終了後のスロー再生、やはりマロニーの右は当たっていませんでした。足がひっかかって倒れたスリップ。このインターバル中、レフェリーは「No knockdown」とジャッジとセコンドに言ってまわっています。こうして不運なダウン裁定を覆せるのは良いことですね。
速すぎて見えなかったのかと思いましたが、やはり当たってなかった。。。タイミングはよかったのですが。
8R、起死回生のダウンを奪ったと思いましたが、そうではなかったマロニー。劣勢の中、さらに精神的ダメージを被ったかもしれません。
9R、ここまでのパンチスタッツは、フランコ106に対してマロニーは67。大きく差が開いてきてしまいました。手数は同じくらいです。
しかしこのラウンド、右カウンター、右ストレートを決めたマロニーに対して、フランコはほんの少し、動きが緩慢になってきている気がします。
10R、おそらくポイント的に苦しいマロニー、おそらくスタミナ的に苦しいフランコ。マロニーにもまだ逆転の芽は残っていると思います。
今度はマロニーがぐいぐいとプレッシャーをかけ、フランコは下がります。
11R、動きが落ちないマロニーは、その真面目なハードワークが伺えます。しかし、フランコはガードが固く、疲れてもしっかりと打ち返す強いハートを持ったボクサーであり、いまだそのパンチは脅威。
後半、リズミカルに動きながら左右のフックを巧打したフランコ。
ラストラウンド、すべてをかけて前に出るマロニー。そして最後の力を振り絞って打ち返すフランコ。ともに手数は衰えません。
激闘となった一戦、最終ラウンド終了のゴングが鳴った瞬間に両手を挙げたのは、フランコ。
採点は、116-112×3でジョシュア・フランコを支持。
両者に大きな差はなかったように思いますが、各ラウンド、少しずつフランコが上回った、という印象でしたね。
マロニーのコンビネーションはそのほとんどがフランコの固いガードに阻まれ、ポイントに結び付きませんでした。もっと効果的にカウンターを打って、フェイントを織り交ぜていく必要がありそうです。これは兄のジェイソンにも言えることですが、突出したものがないマロニーブラザーズのボクシングにとっては正直すぎるボクシングであり、もっと狡さを覚えなければいけないかもしれません。
真正直すぎるボクシングだからこそ、好感が持てるということも否めませんが。
フランコは実力を示しました。こちらも大きく突出した力は見えないものの、非常によくまとまったボクサーであり、なかなか穴が少ない。後半、打ち終わりにやや雑になった部分も見受けられ、そこを狙えるボクサーとの対戦を見てみたいです。
ともあれ、ともにアグレッシブで手数も多く、好試合でした。カシメロvsリゴンドーを見た後なのでより、好試合に見えました。
今後もこのふたりのボクサーの活躍に期待しています。