あまり、どころか、ついに盛り上がりを全くと言ってよいほど見せなかったエマニュエル・ナバレッテvsリアム・ウィルソンのWBO世界スーパーフェザー級王座決定戦。
まあ、これはこのマッチアップゆえ、仕方ないかもしれません。
しかも日本ではライブの放送がない、という事であればなおのこと。
とはいえ、これは世界タイトルマッチ、それもスーパーフェザー級というと日本でも尾川堅一(帝拳)や力石政法(緑)(ここで木村吉光と言いたい)らの世界タイトル予備軍も控える階級。
という事で今回のブログでは、ナバレッテvsウィルソンをメインに据えた、トップランク興行の観戦記。
2/3(日本時間2/4)アメリカ・アリゾナ
時間的にあまりにも長くなってしまうので、アンダーカードは見ていません。フェルナンド・バルガスの息子であるエミリアーノ・バルガス(アメリカ)、そしてモハメド・アリの孫であるニコ・アリ・ウォルシュ(アメリカ)はそれぞれ4回戦、6回戦を戦い判定勝利。
そしてもちろんアンドレス・コルテス(アメリカ)、リンドルフォ・デルガド(メキシコ)らのプロスペクトたちも問題なく判定勝利。
そして東京五輪銀メダリストのリチャード・トーレスJrは軽いジャブから見事なアッパーカットで見事な初回TKO勝利を決めています。
このあたりのカードは正直勝負論があるとは言えないカードで、同日に日本で行われたダイナミックグローブと同様、オッズにはかなりに開きがあったはずです。
さて、個人的には最も楽しみなセミファイナルもオッズは大きくバルボサに傾いているようですが、ここはホセ・ペドラサに意地を見せてもらいたい。
アーノルド・バルボサJr(アメリカ)27勝(10KO)無敗
vs
ホセ・ペドラサ(プエルトリコ)29勝(14KO)4敗1分
という事でセミファイナル。アーノルド・バルボサJrは非常に評価の高いボクサーではあるものの、個人的にはまだペドラサの域ではないと思っています。
オッズに大きな開きがあることに対しては非常に疑問です。
という事でゴング。
初回、まずはリング中央でお互いにリズムを取りながらジャブで牽制。ややプレスをかけていくのはペドラサの方で、ダックをフェイントに使いながらバルボサをサークリングさせます。
非常にアクションの少ない序盤を過ぎ、後半に入ると活発に。クリーンヒットはそうありませんが、互いにいくつかのジャブ、ストレートをヒット。バルボサのジャブのタイミングが良い、というイメージ。
2R、バルボサの長いジャブに対して、体を振って攻め込もうというペドラサ。ちょっと近づくのに一生懸命で、なかなか手が出ません。
しかし中盤、ペドラサはバルボサの右を躱して攻め込む場面をつくり、その後もバルボサの打つタイミングに合わせてリターン、決して打ち負けてはいません。
3R、プレスを強めたペドラサ。それに呼応するかのようにバルボサは細かなステップとペドラサの入り際にカウンターとギアをアップ。このバルボサは素晴らしいジャブとストレート、コンビネーション、そしてステップを持っています。ちょっとペドラサは思うように近づけず。
4R、下がりながら戦うバルボサですが、ポジショニングとペドラサの入り際に打つコンビネーション、そしてその終わりに素晴らしいジャブ。ちょっとこのままではいけないペドラサ、このぷ絵r巣が少しでもバルボサを削れている事を祈るのみです。
が、中盤、バルボサの多彩なコンビネーションがペドラサを襲います。バルボサにはあまりプレスがかかってなさそうで、さほどステップワークをつかわずにペドラサのプレスに対して対抗しています。
5Rも引き続き、ペドラサの攻めを受け止めて打ち返す場面が多いバルボサ。コンビネーションの出どころが多彩で、特にこの日効果的なのは逆ワンツーと左右のボディ。
しかしペドラサも終盤に意地を見せ、コンビネーションをヒット。
これで折り返し、ここまでのトータルパンチスタッツはバルボサ110/311、ペドラサ57/214と圧倒的にバルボサ。
6R、追いかけていくペドラサ、バルボサは下がりながらのカウンター、ペドラサの足が止まればすぐさまコンビネーション。バルボサは非常に自分のタイミングでボクシングをしていますね。
7R、快調なバルボサとは対照的に、徐々に落ちていくのはペドラサ。序盤、ペドラサは攻め込んだところにカウンターを浴び、バランスを崩す場面も。
その後も随所でタイミングの良さを発揮し、ペドラサの入り際にパンチを入れていくアーノルド・バルボサJr。KO勝利目前とも言えますが、非常に冷静な試合運びです。
8R、このラウンドはバルボサが自ら攻める場面も出てきます。力強いコンビネーションを打ち込みます。ただ、この距離ではペドラサも非常に上手く、バルボサはやはり下がりながらの戦いの方が良さそうです。
9R、逆転を狙ってペドラサは前進!バルボサも退かず、勝負はリング中央での打撃戦!
互いにクリーンヒットを奪い合うも、やはりバルボサの方が回転力とタイミングに優れているように見えます。
ラストラウンド、パンチスタッツはバルボサ177/546、ペドラサ116/424。後半、ペドラサは挽回しているようですが、やはり届かなそう。ラストラウンドに奇跡を起こせるか。
ゴングと同時に攻め入ったペドラサ、フック、アッパーをヒットしてチャージ。バルボサもここは退かず勇敢に打ち合います。
接近戦、ペドラサが良い。バルボサはペドラサのコンビネーションの打ち終わりを狙ってお返しとばかりにコンビネーションをリターン。ともに流れるようなコンビネーションの使い手通しの打ち合い、クリンチもなく非常にクリーンです。
最後の最後まで攻めの姿勢を崩さなかったペドラサ。近い距離では十分にバルボサに打ち勝っているように見えましたが、10ラウンズを通しての採点は厳しそうです。
果たしてゴングが鳴り、採点は97-93、96-94×2、アーノルド・バルボサJr。う~ん、これは残念。ただ、バルボサはやっぱり強かったですね。
ただ、接近戦はおそらく得意としていなさそうなので、ホセ・ラミレスやレジス・プログレイス相手に今日と同様の素晴らしいタイミングのボクシングができるかどうか。スーパーライト級戦線の行方が楽しみです。
WBO世界スーパーフェザー級王座決定戦
エマニュエル・ナバレッテ(メキシコ)36勝(30KO)1敗
vs
リアム・ウィルソン(オーストラリア)11勝(7KO)1敗
さて、メインイベントはWBO世界スーパーフェザー級王座決定戦、エマニュエル・ナバレッテvsリアム・ウィルソン。
なんだか計量で色々あったようなのですが、真実は闇の中。もしウィルソンが主張するように、ナバレッテ陣営が体重計に細工をしたとするならば、とんでもないこと。だとか思いつつ、そんなことが可能なのか?とも思う。
さて、リングに並び立つとウィルソンが非常にでかい。これは思ったよりやるかもしれません。
初回、まずはジャブの差し合いからスタート。先にプレスをかけるのはウィルソン。静かな立ち上がりから、中盤にはレフェリーのストップの掛け声後の加撃等、ちょっと荒れそうな雰囲気が出てきました。
2R、またもウィルソンがプレスをかけてスタートも、途中でナバレッテはスイッチが入ったかのように長い飛び込みの左フックで踏み込み、見せ場を作ります。
後半にもウィルソンの攻撃をスウェーで外し、右をヒット。終盤もしっかりと攻め込み、得意の左アッパーもここでヒットしています。
3R、ナバレッテは飛び込みながらの左、右のオーバーハンド等、ワイルドに攻めていきます。対してウィルソンはまっすぐのジャブから左ストレート。やはりこのウィルソンはよくまとまったボクサーながらも、大きな武器を感じないボクサー。ただ、ナバレッテと比べるとずいぶん体が大きく見え、これがこの試合では非常に大きなアドバンテージに見えます。
果たして、ナバレッテが突っ込んできてもそれをがっちりと受け止められる体躯を持ったウィルソン。ウィルソンはバックステップで下がることはあれど、ナバレッテの勢いにやられて下がらされることはないように見えます。
4R、ナバレッテはいつも速くはありませんが、今日はいつにもましてスローに見えます。ウィルソンは決して速くはありませんが、基本に忠実、その分パンチがまっすぐ出てくるのでナバレッテよりも速く見えます。
この試合、ウィルソンはスイッチしたりしていますが、オーソドックスとなっている後半、ナバレッテが攻めてきたところに左フックカウンターがさく裂。これでぐらついたナバレッテ、これを攻め立てたウィルソンはダウンを奪取!このダウン時、ナバレッテはマウスピースを吐き出してしまい、ちょっと余分に休めた感じがあります。これは故意のものではないと思われ、つまりはダメージは十分。
再開後、ほぼ時間のない中でウィルソンはナバレッテを攻め立て、ナバレッテな辛くもゴングに救われます!これは大波乱!!
5R、ダメージがありありと残るナバレッテ、ウィルソンはやや慎重ながらも攻めの姿勢を崩しません。ナバレッテは非常にバランスが悪いですが、腕力で振る右フックをヒット。
このラウンドの中盤頃には、上半身にパワーが戻ってきたように見えるナバレッテ。ただ、足元については(これはこの試合最初からずっとですが)いつも以上にバランスが悪い気もします。このチャンスにウィルソンも攻め切ることはできず。
6R、ここまでのパンチスタッツはナバレッテ54/209、ウィルソン60/230とほぼ互角ながらも、ポイントはウィルソンでしょう。
ナバレッテは随分回復してきたように見えます。得意のアッパーも出始めています。
ただ、やはりウィルソンのほうがフィジカルに分があるのか、ちょっと押し込まれる場面も目立ちます。反して、やはり当て勘としてはナバレッテのほうが上回り、中間距離での攻防は、パンチのアングルに秀でたナバレッテがよくヒットを重ねています。
と思った終盤、ナバレッテのパンチにウィルソンはジャブから右フック。この右フックがカウンターとなり、これで動きが止まったナバレッテ、またもピンチ!!!
攻めるウィルソンを受け止めきれずに倒れてしまうナバレッテ(スリップ)、これでラウンドが終了。
7R、せっかく回復したのにまたもダメージを負ってしまったナバレッテ、慎重にガードを上げます。ウィルソンはサウスポースタンスからこちらも慎重にジャブを突き、ここにきても冷静さを崩しません。もう強引にいっても良いのではないかと思いますが。
そうこうしているとナバレッテにはまた力が戻っていき、後半には力強いコンビネーション。そして終盤にはナバレッテのチャージ!!回復力の速さは異常です。
8R、ナバレッテは相当雑になっています。疲れも、ダメージもあるのでしょう。ウィルソンもおそらくダメージはありそうですが、まだまだしっかりとしたボクシング。
ただ、ちょっと弱気になっているようにも見え、ナバレッテに下がらされる場面が随分と増えているように見えます。これは時間がたつにつれ、非常に顕著に。
ここは強気に出るべきところで、このラウンドは双方にとって勝負のラウンドのように思います。このままナバレッテが強気に出てきて、ウィルソンは受けるだけになってしまうと、そのままナバレッテペースになってしまいそう。
9R、あくまでも強気に攻めるナバレッテ。それに「対応する」という感じになってしまっているウィルソンは、ジャブを伸ばしたところにナバレッテの右クロスを受けてダウン!!
立ち上がったウィルソンにナバレッテは飛び込んでの左フック、この日一番の動きを見せて右オーバーを打ち込み、ウィルソンの反撃も気にせず強気のボクシング!
中盤、ウィルソンをロープに詰めてラッシュ、ラッシュ。逃げ回るウィルソンを追いかけに追いかけてパンチをふるうと、ウィルソン陣営からタオルが投入され、試合終了!
エマニュエル・ナバレッテ、9RTKO勝利!!!
面白い試合にはならないだろう、と思っていましたが、とんでもない山あり谷ありの試合になりました。
明らかに効かされ、ダウンまで奪われたナバレッテの逆転KO勝利、ということになるのでしょうが、あのダメージから生き返ったことは素晴らしいですし、ナバレッテのタフネスというか回復力、そしてあきらめないハートの強さというのはどうかしていますね。
反面、果たして世界のトップオブトップとは言えないウィルソン相手に、あわやの大苦戦。これは階級を上げた反動というものがありありと出ているのだと思います。相手の耐久力が上がり、相手のパンチやフィジカルも上がる。これにより、今まで通用していたパワーが通用しづらくなったのと、今まで耐えられていたものが耐えづらくなってしまったこと。
こう言っては何ですが、もしかするとナバレッテはスーパーフェザー級では「並」もしくはそれ以下の王者となってしまったかもしれません。それでも、ビッグネームであることには変わりはないので、オスカル・バルデスとの一戦は大いに盛り上がることでしょう。3階級目、ともなるとそうなってしまうことは仕方がないので、経緯はどうあれ挑戦の結果、決して恥じることではありません。
今後のスーパーフェザー級戦線、楽しみに見ていきたいと思います。
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