シャクール・スティーブンソンが本領を発揮した、先日の試合。
↓観戦記
距離の長いサウスポー、へリングのジャブの差し合いで打ち勝ったあと、どうしようもなくなって前に出てきたへリングのパンチをかわし、パワーパンチを当てる作業。
圧倒したうえで自ら試合を決めに行き、見事なTKO勝利。
伊藤雅雪に勝利してWBO世界スーパーフェザー級王者になったへリングは、前戦、カール・フランプトン戦で大いに評価を高めたものの、大きな実力差を感じる一戦でした。
好漢へリングは35歳、もしかするとこれをキャリアの終焉とするかもしれません。
一方、シャクール・スティーブンソンはまだ24歳、きっと彼の全盛期はここからです。
今回のブログでは、シャクールを取り巻くスーパーフェザー級トップ戦線について書いていきたいと思います。
WBO王者
シャクール・スティーブンソン(アメリカ)
リオ五輪で銀メダルを獲得したシャクールは、わずか17戦でフェザー級に続きスーパーフェザー級でもタイトルを獲得、見事2階級制覇を果たしました。
2017年のプロデビューの後、苦戦らしい苦戦はしておらず、おろかラウンドごとのポイントもほとんど失っていないという、圧倒的強さを誇るシャクール。
やや淡白な試合運びではありますが、そのパンチは力強く、ディフェンス技術並びにパンチをコネクトする技術も相まって、まったくもって底が見えない、というのが今の状況。
BoxRecを確認すると、今回のヘリング戦では一人のジャッジがへリングに1ポイントだけ与えていますが、ナカティラ戦、クラリー戦、カラバロ戦で失ったポイントは無く(!)、2019年10月のフェザー級王座決定戦、ジョエト・ゴンザレス戦で12Rを通じて1ポイントを失っただけ。これはまさに怪物。
圧倒的な強さの裏で、52%のKO率というのは物足りない気もしますが、これは基本的にシャクールは倒そうという気持ちが少ないボクサーだから、ということによると思います。
しっかりとポイントを奪っていくボクシングなので、強いコンビネーションも打てば自ら攻めることもありますが、本当に圧倒しなければ倒しにはいかない、まさに2020年代のアンドレ・ウォードと言って良いでしょう。
試合後のインタビューでは、この階級での4団体制覇を目標にすると言ったようです。
WBC王者
オスカル・バルデス(メキシコ)
そんなシャクールの前のWBOフェザー級王者がオスカル・バルデス。シャクールは、このバルデスが返上した王座をめぐってジョエト・ゴンザレスと決定戦を戦ったわけですね。
バルデスはデビュー以来破竹の勢いでWBOフェザー級王座を射止め、この王座を6度防衛後、返上。その後スーパーフェザー級でのテストマッチでは、さほど良いパフォーマンスを見せられず、階級の壁かと囁かれはしたものの、2021年2月、当時スーパーフェザー級最強を目されていたミゲル・ベルチェルト相手には出色の出来を見せて完勝。
新たに評価を上げた一戦でしたね。
しかし続く初防衛戦では、リオ五輪金メダリスト、ロブソン・コンセイサンに大苦戦、疑惑の判定ともとられる中で初防衛。
その試合内容もさることながら、試合前のドーピング検査でフェンテルミンという物質が検出されたことで陽性、それでも微量であることから試合は挙行、メキシカンの優遇ぶりが問題となるWBCだったがために大きな問題に発展しましたね。
薬物疑惑は置いておいたとしても、このコンセイサン戦時の出来であれば、シャクールにバルデスのパンチが当たる気はしません。
しかし、時としてこのバルデスは素晴らしいパフォーマンスを見せることがあるため、シャクールにとって最も難しい相手となる可能性はあります。
尚、バルデスはチーム・カネロ(エディ・レイノソ)に所属していますが、契約はシャクールと同じくトップランク。
トップランクがほんの少し本気を出せば、シャクールvsバルデスはすぐに実現しそうです。
ただ、その前にコンセイサンとの再戦をすべきなのかもしれませんが。
↓感動したベルチェルトvsバルデス!その後台無しにされましたが。。。
WBA王者
ロジャー・グティエレス(ベネズエラ)
2021年1月、前王者レネ・アルバラードへ挑戦し、バチバチの打ち合いをしかけるアルバラードにジャブとカウンターで対抗したグティエレスがダウンを奪ったうえ、僅差の判定で勝利。
再戦でもより明確にアルバラードを退け、初防衛を果たしています。
ベネズエラのテクニシャンボクサー、というクラシックな部類に入ろうかというグティエレスですが、このボクサーはパワーも十分ありますね。
WBAは暫定王座廃止に伴い、暫定王者たちを指名挑戦者として認定しました。
このスーパーフェザー級においてはクリス・コルバート。非常に速い、そしてディフェンシブなボクサーですね。塩の結晶と言っても良い。
次戦はこのコルバートとの指名戦が濃厚かと思いますが、日程等は10/25現在、聞こえていません。
体全体を活かしたスピーディなコルバートのジャブか、その入り際を狙うグティエレスのパワージャブか。コルバートのスピードにあわせず、自身のリズムをキープして、落ち着いて戦えればグティエレスに勝機がありそうですが、コルバートの動きに攪乱されるようであれば厳しい。
これはなかなか興味深い一戦になりそうですね。
もし統一戦に進むとすればそのあとですが、シャクールvsコルバートなんて決まったらこれはもうとんでもない塩試合が確定します。おそらくどちらも無理をしない、36分間のランニングが見られる可能性が高く、それでも時折パワーパンチをヒットするシャクールの手が上がるはず。
IBF王座
日本のボクシングファンにとって、最も気になるIBF王座の行方は、いまだはっきりとしませんね。
もともとシャフカッツ・ラキモフ(タジキスタン)と尾川堅一(帝拳)の王座決定戦が8月に行われる予定でしたが、ラキモフが負傷、10月に延期。
その後、ラキモフは練習再開に時間を要するということで決定戦への出場を辞退、代わりにアジンガ・フジレ(南アフリカ)と尾川の決定戦となり、その交渉が始まった、というところまではニュースになっています。
フジレvs尾川の勝者に、トップコンテンダーであるラキモフが指名挑戦者として挑む、という構図ですね。
このフジレvs尾川の一戦は、十中八九、村田vsGGGのアンダーカードで行われるのではないか、と読んでいます。
このスーパーフェザー級の王座決定戦が、日本での単独興行という可能性は低そうですが、村田とセットなら日本開催で問題ないでしょう。
ハードルは、一度日本での挑戦者決定戦を断ったことのあるフジレ陣営の件ですが、ここはファイトマネー次第のような気もします。
なのでまずは村田vsGGGが無事に決まってくれることが先決ではあるものの、このフじレvs尾川というIBF王座決定戦も、現在のところ日本開催という線があり得る、と思います。
そして仮に年末、IBF王者が決まれば、その後ラキモフとの指名戦を経て、勝ち残ったIBF王者が統一戦に臨む準備が整います。
ここに尾川が勝ち残ってくれたなら、シャクールvs尾川なんていう世界的に注目される試合が挙行される可能性も出てきますね!
そしてこれが万が一、いや億が一くらいの確率ですが日本開催になれば、日本で生シャクールが見られるわけです!(多分無理)
ボクモバ誰の話してるん pic.twitter.com/z9RHyVmb8C
— wクサムラw (@RYU_K9393) 2021年10月24日
↑めちゃくちゃ面白かったツイート。もし日本に来たら、嶋田と呼ばれるのかもしれません。
ということで、今後のスーパーフェザー級も要注目。特にその気になればすぐにでも決まりそうなシャクールvsバルデスは、素晴らしいマッチアップですね。
日本人ボクサーにとっては遠い階級となってしまいましたが、ここは尾川がこのトップ戦線に食い込んでいってくれることを期待しつつ、今後のスーパーフェザー級を楽しんでいきたいと思います。