2/13(日本時間2/14)は、海外ではたくさんの注目興行が行われました。
その一つは、前IBF世界フェザー級王者、ジョシュ・ウォーリントンがマウリシオ・ララを相手に臨んだノンタイトル戦。
↓観戦記
お互いにフラフラになりながらパンチをふるう、死闘となったこの一戦は、超大番狂わせで無配のウォーリントンが痛烈なKO負けを喫しました。
朝っぱらから本当にびっくりしましたね。。。
ウォーリントンはこの試合で顎を骨折等、重要なダメージを負ってしまったようです。やはり、一度目のダウンでストップするタイミングだった試合なのかもしれません。
そして、本日は同日アメリカで行われたIBF世界スーパーフェザー級タイトルマッチ、のはずだった一戦。
この試合は、王者ジョセフ・ディアス(アメリカ)がなんと前日計量でオーバーウェイトをかまし、秤の上で王座を失う形に。
挑戦者、シャフカッツ・ラキモフ(タジキスタン)が勝利した場合のみ、王座が移動するという変則マッチ。しかしディアスは前日計量時、すでに3.5lbs(約1.6kg)オーバー、体格面や体調面での有利は否めません。
こういう場合、挑戦者の立場はかわいそう。この試合をしない、という選択権は、次にいつチャンスが巡ってくるかわからない挑戦者にとっては、ほぼないといっていいでしょう。
明らかに不利な条件で戦うラキモフ、本当はテビン・ファーマー(アメリカ)に良い勝ち方をしたディアスを応援しようと思っていましたが、こうなるとラキモフを応援。
↓プレビュー記事
セミファイナル
WBO世界スーパーウェルター級タイトルマッチ
パトリック・ティシエイラ(ブラジル)31勝(22KO)1敗
vs
ブライアン・カルロス・カスターノ(アルゼンチン)16勝(12KO)1分
ティシエイラは、前戦でWBOの暫定タイトルを獲得、ハイメ・ムンギアの返上に伴い世紀王者へと昇格しました。
対してカスターノは元WBA王者。興行のゴタゴタで返上し、WBOの地域タイトルを獲得してこの一戦にこぎつけました。
キャリアはティシエイラのほうが勝るものの、対戦相手はカスターノのほうが上。
サウスポー、ティシエイラのほうがいくぶんか大きく見えます。カスターノは序盤様子見から、中盤にかけては鋭い踏み込みから力強いパンチを繰り出します。
2R、カスターノは近接距離での手数がすごい。ティシエイラはジャブで突き放そうとしますが、カスターノは顔面のガードが固く、ティシエイラのジャブでは止まりません。
カスターノ、ボディは空いていますが低身長の分、ティシエイラはボディを狙いにくく、ボディにジャブやストレートを持っていくとカスターノのフックでカウンターを取られてしまう展開。
3R、ティシエイラに怖さがないからか、右構えも左構えもないような状態で真正面に立って攻め込むカスターノ。生粋のファイターっぷり。
基本的にロープを背に戦わざるをえないティシエイラ、これは何とかしたい所です。
4R、ここまでよりは比較的うまく戦うティシエイラですが、やはり回転力で上回るカスターノに対し、足を止めてのパンチの交換は分が悪い。カスターノがこれでラストラウンドまでいけるなら、すでに大勢は決した。
5R、ティシエイラ、インサイドからアッパーを突き上げます。これがカスターノの顔面やボディにヒット、このパンチを起死回生の一撃としたいですが、ややパワーレス。
6R、明らかにカスターノに飲み込まれつつあるティシエイラ。カスターノは力強いボクシングしますね。
7Rも展開は変わらず、ジリ貧感の強いティシエイラ。カスターノは利き手(右)のダブルもスピーディに、器用に打ちますね。
8R中盤にはティシエイラは足が止まってしまったのか、それとも打ち合いに活路を見出したいのか、足を止めての打ち合いを選択。もちろん分は悪い。
9R、ティシエイラが前に出ます。不利を悟ってのバンザイアタックか?押し込んでいきますが、ティシエイラは左のガードが下がり、カスターノとしてはここまで同様右フックが有効。
10R、ここでもティシエイラは前進。もしかすると攻勢点を取ることでポイントはいくらか挽回できているのかもしれません。しかしすでに遅く、倒すしか勝ち目はないでしょう。
ただ、カスターノは明らかにタフそう。中盤以降はティシエイラは下がり、カスターノがプレスするという展開に逆戻り。
終盤、カスターノの右がクリーンヒット、ティシエイラは効いてしまったかもしれません。
11R、カスターノの良さは体の強さ、スタミナ。チャンピオンシップラウンドにおいてもその手数は一向に衰えを知らず。
ラストラウンド、ティシエイラは立っているのがやっと。カスターノはそんなティシエイラを無慈悲に追い詰め、このラウンド終了まで休むことなく手を出し続けます。
そして判定は、もちろんブライアン・カルロス・カスターノを支持。
120-108、119-109、117-111。これは納得な判定です。フルマークか、それに近い判定でカスターノが新王者に。
いや~、強い王者が誕生しました。旺盛な手数とスタミナ、体全体のパワーとパンチングパワー、そして強靭なハート。これは誰とやってもおもしろいのではないでしょうか。
耐久力がいかほどか、によりますが、チャーロとやってもおもしろそう。
井上岳志とやってくれれば、それこそ濃密な打撃戦になるのではないでしょうか。
メインイベント
IBF世界スーパーフェザー級タイトルマッチ(変則)
ジョセフ・ディアス(アメリカ)31勝(15KO)1敗
vs
シャフカッツ・ラキモフ(タジキスタン)15勝(12KO)無敗
苦労してとったタイトルを、秤の上で失ったディアス。初防衛戦でのこの失態は、普通に考えれば今後のキャリアにかなりの影を落とします。
ディアスがアメリカでどれくらいの人気者なのか知りませんが、こんなことが許されるほどの大物なのでしょうか。(大物であっても本来許されないべきことですが。)
攻略し難いファーマーを攻略し、王座を獲得した時は非常に驚きましたし、応援するに値するボクサーに感じましたが、私の目は節穴でしたね。。。がんばれ、ラキモフ!
初回、ラキモフがプレス。ディアスは上体の動きが柔らかく、パワーも十分。ボディへのジャブや、左スイングがヒット。
2R、ディアスのパワーパンチに対抗し、ラキモフはコンビネーションで攻めこみます。しかしディアスのパンチにぐらつく場面もあり、少し見栄えが悪いか。ディアスはボディが上手い。
3R、ラキモフのコンビネーションが更に冴えてきました。これは期待の持てる展開。
4R、ラキモフのコンビネーションは変わらず良いですが、ディアスのパンチにも一発で試合がひっくり返りそうなパワーを感じます。
5R、距離がつまりすぎないところでラキモフはストレート系のコンビネーション。ディアスはここをガードでしのぐので手が出ません。ラキモフはこういう戦法を継続していけばよさそうです。近づくと危ない場面も。
6R、ラキモフの良い戦い方が続きます。ただ、ここまで明確なラウンドは少なく、ジャッジとしては割れそう。
このディアスとのパワー差はディアスの体重超過にありそうなので、気持ちの上ではラキモフの勝ちにしてもらいたい。
ただ、ウェイトオーバーの優位点は採点には活かされません。
7Rはディアスのパワーパンチのクリーンヒットが多かった印象。
8Rは終盤、お互いの利き手のパンチが交錯!よりダメージを受けたのは、、、どっちかわかりません汗
9R、どちらも動きは落ちていません。細かい手数で勝るラキモフは、ディアスのパワーパンチによく耐えています。ここまではほぼ互角なのではないでしょうか。
DAZNの画面に出てくる、非公式の採点ではここまで87-84でラキモフ優勢。何とも言えませんが。
10R、先ほどのラウンドから攻め込む際、ラキモフのガードが下がってしまう場面がいくらかあり、気になっています。ディアスはもともと低い。
この終盤にきて、ディアスの手数が増えているような気もします。ラキモフが守勢に回る場面が多いからか、この追い上げはまずい。
11R、離れ際に一瞬の踏み込みで打つワンツーが印象的なラキモフ、接近戦でラキモフを吹き飛ばすようなフックを打つディアス。
どちらもクリーンヒットを許し、ここも互角のラウンド。
ラストラウンドも両者死力を尽くして戦います。ともにそのファイトスタイルを崩すことなく、非常に完成されたボクシングですね。
やはり惜しむらくは、ディアスの体重超過。
このラウンドは、ディアスのパワーパンチがやや勝った印象。
DAZNの非公式採点はドロー、公式採点も115-113(ディアス)がひとり、残りの二人は114-114のドローで結果、1-0のマジョリティドロー。
シャフカッツ・ラキモフは勝利できず、タイトル獲得ならず。
この大激闘、最後までディアスのハードパンチに怯まず戦い切ったラキモフでしたが、非情な結果となってしまいました。
ルールとはいえ、心情的にはラキモフにタイトルを与えてほしい。。。
体重超過して、階級上のディアスとドローということは、もうラキモフの勝ちでいい。タイトル獲得条件を「勝利」ではなく、「敗北以外」としても良いくらいのものだったと思います。
さて、こうしてタイトルホルダーがいなくなってしまったIBF世界スーパーフェザー級。
1位のラキモフは前戦で挑戦者決定戦を勝ち上がってきたボクサーで、問題なければ次戦が世界王座決定戦となるでしょう。
3位は尾川賢一(帝拳)、4位にマーティン・ワード(イギリス)、5位にラキモフに挑戦者決定戦でTKO負けを喫したアジンガ・フジレ(南アフリカ)。
尾川が決定戦に出場する可能性も高いでしょう。
尾川は以前の王座決定戦でドーピングの陽性反応が出た(そんなことはしないと信じているものの)グレーなボクサー。そしてラキモフもフジレ戦で気付け薬を使ったという疑惑があるグレーなボクサー。
はてさて、このIBF王座の行方はどうなることやら。
ということで、アメリカで行われたダブルタイトルマッチ(?)の観戦記でした。
何とも後味の悪い結末。ディアスはスーパーフェザーの体を作れないなら、もうライト級でやってもらいたい。
体重超過したボクサーが、同じ階級でやるのに大きな違和感を覚えるのは、私だけではないでしょう。ウェイトコントロールは、イチかバチかではありません。
しかし、どうやらディアスのランクを下げない、という話も出ているそうで。。。ウェイトオーバーはむしろ戦績に黒星をつけるべき事柄であり、普通に考えればもうスーパーフェザー級でランクさせるわけには行かないと思うのですが。
日本人の感覚と、アメリカの人の感覚は違うのでしょうか。このことは、体重制の競技の本質を揺るがす事だと思います。
本当に何だかやるせない週末。