興奮が、冷めやらない。
応援していた木村吉光(志成)が、見事な最終回TKO勝利でWBOアジアパシフィック・スーパーフェザー級タイトルを獲得。優れたバランス、素晴らしいコンビネーション、そして見た目にもわかるフィジカルの強さを持った木村は、粘りに粘る中川をついにはストップ、本当に素晴らしい戦いと、劇的な幕切れでした。
さて、スーパーフェザー級といえば私は内山高志が今でも頭に浮かぶのですが、現在の日本のスーパーフェザー級も大激戦区の一つ。木村のパフォーマンスは素晴らしかったですが、まだ、国内から抜け出したとは言い難いのも事実です。
ということで今回は、国内のスーパーフェザー級戦線を見ていきます。
↓観戦記
【ボクシング】壮絶打撃戦! 木村吉光が最終回に中川兼玄をストップしWBO・AP王座獲得 | BBMスポーツ | ベースボール・マガジン社
まずはタイトル保持者から!
WBOアジアパシフィック王者
木村吉光(志成)
OPBF東洋太平洋王者
力石政法(緑)
日本王者
坂晃典(仲里)
錚々たる顔ぶれが並んでいますね。
日本王者の坂については、前戦OPBF東洋太平洋王座決定戦で木村吉光に痛烈なTKO負けを喫していますので、やや評価が下がってしまうことは否めません。(このOPBFタイトルを木村は即刻返上、その後王座決定戦で力石が戴冠)
坂は、9月に防衛戦で強敵・奈良井翼(RK蒲田)を迎えるので、そこで評価を挽回するパフォーマンスを発揮できるか、否か。
ちなみに、日本タイトルの次期挑戦者決定戦については、10/1(土)に波田大和(帝拳)vs原優奈(真正)という激アツマッチアップが決まっています。日本王者・坂は、仮に奈良井を退けたとしても厳しい防衛ロードを歩むことになりそうですね。だからこそ、の日本王者な訳ですが。
さて、指名戦というのがやや緩めのそのほかの地域タイトルですが、木村、力石共に世界を目指すボクサー。
木村はフランスに乗り込んで地域タイトルに挑戦しようとしていたこともあり(相手の都合で延期)、海外志向が強いのかもしれません。が、もし、OPBF王者力石との統一戦が実現したならば、その勝者が日本代表の看板を背負って世界へ挑んでいくのに異論が出ることはないでしょう。
力石は前戦、8/14(土)に3150FIGHTのセミファイナルでトムジュン・マングバット(フィリピン)を4RTKOに沈めました。予想以上に素晴らしいボクサーだったマングバットを結局はワンパンチKO、改めて強さを見せつけた格好です。
ただ、試合後の記事では減量が厳しく、階級アップの意向、とも伝えられています。9/1現在、まだOPBF王者の位置にはいるので、今後のことはわかりませんが。
もし、力石がまだスーパーフェザー級で戦うのであれば、木村vs力石は垂涎のマッチアップであり、両陣営ともに守りに入る姿勢はないことから、実現可能性としては(タイミングさえ合えば)不可能なことはないと思っています。
このマッチアップの実現に期待。
日本ランキングを見渡すと
日本ランキングを見ると、挑戦者決定戦に出場する波田、原、そして木村に挑戦した中川兼玄(角海老宝石)のほか、前戦で大里拳(大鵬)にアップセット勝利したそれいけ太一(KG大和)。太一はKG大和ジムへ移籍後2連勝(その前は3連敗)ということで、ここからの大復活がなるのでしょうか。これでぐっと伸びてタイトルに届くならば、どんなフィクションよりも素晴らしいドラマになりますね。
保坂剛(三迫)も前戦で三瓶数馬(角海老宝石)からランキングを奪い、ランクイン。その保坂に勝利した中井龍(角海老宝石)はギリギリ挑戦権を有する位置にいるものの、タイトルに絡んでくるのはもう少し先になるかもしれませんね。
10位にはかつて挑戦者決定戦の位置まで進んだ長谷川慎之介(ワールドスポーツ)。このボクサーについてはYoutubeのドキュメンタリーを見てからファンなので、是非頑張ってもらいたいですね。
さて、そしてランキングを通じて大注目なのは、森武蔵(志成)。
2022年7月、井岡vsニエテスのアンダーカードで再起&移籍初戦をクリアした森武蔵は、このスーパーフェザー級で戦っていく心づもりのようです。
ここからはおそらく仕切り直し、となることから、このスーパーフェザー級でどこかしらのタイトルを狙っていくことになると思いますが、森はどの道に進むのでしょうか。これは非常に興味深いですね。
世界は遠い?
さて、スーパーフェザー級の世界タイトル戦線を見ていきます。
WBC・WBO王者 シャクール・スティーブンソン(アメリカ)
2021年6月、ジェレミア・ナカティリャ(ナミビア)を降してWBO暫定王座を獲得したシャクール。当時は圧倒しながらも倒せない、という評価でしたが、このナカティリャがその後強さを発揮し、ミゲル・ベルチェルト(メキシコ)を粉砕してしまったので、またその時点での評価も変わっているかもしれません。
その後、ジャメル・ヘリング(アメリカ)との団体内王座統一戦を制し、すぐさまWBC王者オスカル・バルデスとの統一戦。
次戦はロブソン・コンセイサン(ブラジル)との防衛戦を9月に控えています。これをクリアすれば、また統一戦に進む可能性が大きいですね。
現状、やはりスーパーフェザー級最強はこのシャクール・スティーブンソンと言えるでしょう。
WBA王者 エクトル・ルイス・ガルシア(ドミニカ共和国)
ヘクター・ルイス・ガルシア、という表記もありますが、この「エクトル」表記の方が多いような印象ですかね。
クリス・コルバートをアップセットで降し、WBAタイトルへの挑戦権を得たガルシアは、その勢いのままロジャー・グティエレスを攻略して見事新王者となりました。
怪物的な強さを保持しているわけではない分、日本のスーパーフェザーたちにとってもチャンスのあるボクサーだと思います。ただ、離れたところでグティエレスを上回ったこと、コルバート相手にグイグイ攻めたフィジカル、これといった穴があるわけではない、強い王者です。
IBF王者 ジョー・コルディナ(イギリス)
前戦、見事な右ストレートで王者の尾川堅一(帝拳)をノックアウトし、IBF王者となったジョー・コルディナ。「The イギリスのボクサー」という感じのオーセンティックなボクサーで、非常に総合力が高いですね。
本来、このコルディナはスーパーフェザー級において英国で最も期待されていたボクサーではありません。あくまでも2番手でした。
1番手はゼルファ・バレットでしたが、先にこのコルディナが見事なKOで世界王者となってしまいました。もし、尾川がここをクリアしていたならば、次はバレット戦だったかもしれません。なので、おそらくマッチルームとしてはコルディナvsバレットに進んでいこうとするのではないか、と思われます。イギリスの同国人対決は盛り上がりますからね。
そうすると、必然的にシャクールの王座統一への道は遅れ、さらには「挑戦者」と言われるボクサーにお鉢が回ってくるのも遅れてしまう、という状態になりかねません。
日本人のトップボクサーは
このスーパーフェザー級で、日本人のトップボクサーは尾川堅一(帝拳)でしょう。
元IBF世界スーパーフェザー級王者にして、実質は2タイム・チャンピオンと数える人もいるかもしれません。
世界ランキングとしても、一桁に入っているのは尾川のみであり、地域タイトルを持っている木村吉光、力石政法がそれぞれ下位にランクされ、森武蔵もギリギリ滑り込んでいるという状況。
尾川は、前戦での痛烈なノックアウト負けから再起を決意、元々海外志向のボクサーだったために、今後も海外で戦ってほしいですね。
「元王者」という肩書きだからこそ、アメリカやイギリスのリングに立つ機会があり、たとえそれが若手ホープの踏み台的な役割だったとしても、そこから這い上がってきてもらいたい。年齢的なことも含めて、ここで日本でアンダードッグ相手の再起戦をこなすよりも、絶対にその方が良い、と思います。
ともあれ、尾川以外の国内スーパーフェザー級戦線は群雄割拠。ここを抜け出て、世界へリーチできるボクサーは、いるのか、それともいないのか。そして、いるとすれば、それは誰なのか。今後も楽しみが尽きません!
【宣伝】
ボクシング用品専門ショップをやっています。
前述で名前の出たIBF世界スーパーフェザー級王者、ジョー・コルディナ。彼が好んで使用しているグローブは、英国産ブランドの「FLY」というグローブです。
この「FLY」は、日本国内で正規販売をしているところはないはずです。
私のショップ、「BoxingCafe」はFLYと販売契約を結んだ正規代理店として、販売させてもらっています。是非覗いてみてください!