結局プレビュー記事を書けなかった二つの注目興行。
今週注目していた国内興行は、三代大訓vs西谷和宏の一戦と、豊嶋亮太vs坂井祥紀のOPBF東洋太平洋・WBOアジアパシフィック・ウェルター級タイトルマッチ。
リアルタイムでは観戦できませんでしたが、この2つの試合は情報遮断してそれぞれBoxingRaiseにアーカイブが上がった段階で、日テレG+は録画して観戦。
今回のブログでは、ちょっと時間がなくてそれぞれの興行のメインしか見れていないですが、この二つの注目試合の観戦記です。
12/2(木)WATANABE&DANGAN
60.5kg契約8回戦
三代大訓(ワタナベ)10勝(3KO)1分
vs
西谷和弘(VADY)21勝(12KO)5敗1分
ライト級のリミット、61.23kgからほんの少し低いリミットでの契約8回戦。これは、ライト級を主戦場と考えていながらもまだスーパーフェザー級に落とせる三代と、ライト級の日本タイトル獲得経験もあるものの、スーパーフェザー級で戦いたいであろう西谷、相互がベストに持っていける体重での試合なのかもしれません。
三代は2020年12月に伊藤雅雪(横浜光)を破り、ライト級での存在を大いにアピールしました。そしてその後、虎の子のOPBFスーパーフェザー級王座を返上、完全にライト級ボクサーとなりました。
ライト級ウォーズとして期待された吉野修一郎との試合は決まらず、結局2021年9月にこの三代vs西谷の試合が決定。一度の延期を経て、両者がぶつかります。
対して西谷は、2020年10月の試合で現在の世界王者、尾川堅一に敗れはしたものの、ダウンを奪う(奪い返される)という大善戦。土屋修平を破って日本ライト級タイトルを獲得したのが2017年のことでしたから、後楽園ホールへの登場も3年ぶりでしたね。
その3年間は関西の試合、相手は外国人ということでなかなか活躍は聞こえてきませんでしたが、今考えるとあの尾川相手に善戦ということは、国内トップレベルを誇っていい、と思います。
鳥取vs島根の代理戦争とも言われる、注目の一戦がゴング。
初回、序盤は両者慎重な立ち上がり。西谷がジャブで威嚇、三代は距離を保ち手数は少ないです。中盤に三代がコンビネーションで攻め込み、最後に打ったジャブ、というか左ストレートがヒット、西谷の顔は跳ね上がります。これは印象が良さそうです。
今日の三代は退かないですね。この後もワイルドにパンチを振るう場面もあり、クラウチングに構えることも多く、終盤にはボディを叩く等いつもよりアグレッシブに見えます。
2R、ともに手数が増え出し、プレスも強くなります。三代はやはり距離感が良い。ダッキング、ウィービングも非常に効果的に使いながら、中に入って押すという戦い方、これは三代にしては非常に珍しい戦法ではないでしょうか。
西谷は変則的な踏み込みで三代に肉薄する場面も作りますが、三代は元来ステップワークも上手いボクサー、なかなかクリーンヒットは奪えません。
3R、序盤はジャブの差し合い!西谷のジャブも良いですね。ただ、三代のジャブは素晴らしい。ここでジャバーの本領発揮。
接近戦となる場面では、西谷も強いパンチを放っていきますが、三代はガードを固めてやり過ごすとすぐさまコンビネーションで反撃。接近戦でも集中力を持続し、強気にボディを打つ三代は、上手く言えませんが「自信満々」という感じがします。
4R、このラウンドも、三代がプレスをかけ気味で、基本的に中間距離でのジャブの差し合いから中に入り込み、左右のフックを強打。この接近戦で退かない、というところが、三代が自信満々に見えるところかもしれません。
三代、こんなにボディワークが上手いボクサーだったか。ストレートパンチャーというイメージの三代でしたが、近い距離でも強い。接近戦でのコンビネーションも非常にスムーズです。
5R、展開としては同様、なんとかしたい西谷が変則的にフックを放って攻めていきますが、三代は一切動じず。西谷のプレスとパンチをしっかりと受け止めて、コンビネーション。そのリターンの速さ、コンビネーションの速さ、これはインファイターにとってもお手本となりうる。
離れてはまた三代の鋭いジャブが映え、少しスピードの落ちてきた感のある西谷のジャブは当たりません。接近戦での攻防からバックステップで距離を作り、そこからまた踏み込んでのワンツーをヒットさせた三代!この右で西谷は大の字にダウン!
立ち上がったところでゴング。
6R、西谷のダメージは大丈夫でしょうか。右手を高く掲げ、三代のパンチを大いに警戒。三代は強いプレスをかけ、反撃してくる西谷をブロッキングを小さなバックステップでかわし、また更にプレス。明らかにフィニッシュを狙っています。
接近戦となり、西谷はやや大振りながら手数。三代はそれをしっかりとガードし、中間距離で西谷の左の大振りを狙ってカウンターを決めるとワンツーで攻め込み、西谷にダメージを負わせます。
フラつきながらも強いパンチを返す西谷、手数の減った三代に対して最後のアタックを敢行!しかし狙っていた三代は、西谷の右フックに合わせて右を振り抜き、西谷はダウン!レフェリーは即刻試合をストップ!!!
三代大訓、6RTKO勝利!!
いやー、素晴らしいTKO勝利でしたね、三代大訓。今回は接近戦で退くどころか押し返し、ボディムーブも非常にスムーズで、フックやアッパーを交えたコンビネーションも速く、インファイターとしてもやっていけそうな感じすらしました。
中間距離でのジャブやストレートは相変わらずすばらしく、あの伊藤戦を経てもう一つ武器を手に入れた、というイメージですね。そして何よりも、自信に溢れた戦いぶりが見事で、
正直、伊藤vs三代がもう一度やれば、伊藤に分があるのではないか、とか思っていましたが、これは分かりません。
吉野の試合を見れば吉野だ!となるし、伊藤が細川バレンタインを倒せば伊藤だ!となるし、今回のような戦いを見せられれば三代だ!となりますね。
是非とも三代には、吉野vs伊藤の勝者にチャレンジしてもらいたいですね。この3人は、本当にどう戦っても盛り上がると思います。
12/4(土)ダイナミックグローブ
OPBF東洋太平洋・WBOアジア・パシフィック・ウェルター級タイトルマッチ
豊嶋亮太(帝拳)14勝(9KO)2敗1分
vs
坂井祥紀(横浜光)26勝(14KO)12敗2分
アジア2冠王者、豊嶋亮太は、今年最も大きく飛躍を遂げたボクサーの一人。今年1月にOPBF王者となると、5月にWBOアジア・パシフィックタイトルを獲得。
この2戦でボクシングファンに大きくアピールした豊嶋、今回のパフォーマンスも大いに注目されますね。
坂井はメキシコで10年のキャリアを積み、2019年に帰国、日本でラストチャンスに賭けます。敗戦の数こそ多いものの日本では間違いなくトップクラス。日本ウェルター級王者、小原佳太(三迫)と互角の激闘を繰り広げたボクサーです。
これは王者豊嶋が非常に危険な相手を選んだ、という一戦、坂井としてはこの短期間で2度もチャンスを与えられ、ここは何が何でも結果を出したいところ。
これはなかなか勝敗予想が難しい試合とも言えますが、勢いは王者、豊嶋にあろうかと思います。A-SIGN大好きな私としては、坂井を応援です。
初回はともにガードの固い両者、互いに攻め入りますが攻められた方も退きません。ギリギリ当たらない距離でリズムを取り、片方が一歩で踏み込むと他方はしっかりとガード、打ち返す、という展開。
これは後々に打撃戦となりそうな感じがします。
2R、早くも距離が詰まり、打撃戦へ突入。ともにフック、アッパーとアングルを変えながら撃ち合います。坂井は近い距離でもジャブを打って豊嶋の顎を跳ね上げますが、豊嶋は強いボディでホールに快音を響かせます。
ラウンドマストでなければ、10-10となりそうなラウンドが続きます。これは5R終了時に行われる途中採点が明暗を分けそうな感じがします。
3R、豊嶋が少しペースを上げてきたか。近い距離でのバチバチの打ち合いは、互いに身体を押し合い、これは完全に疲れる試合。
豊嶋は坂井のジャブを出させないためなのか距離を潰し、左ボディを叩き込みます。ハイガードの坂井にこの左ボディは超有効。豊嶋もフィジカルが強いですね。
4R、同様の展開、坂井は右のダブルは素晴らしいですね。ただ、押す強さは豊嶋の方が勝るのか、坂井は押される場面も目立ちます。中盤以降はやや距離が開き、坂井は右フックを好打。
5R、見ていて力が入る大激闘、ずっと頭をつけての打ち合いです。時折入る坂井の右アッパー、右フックなのか、豊嶋の強いボディなのか。これは非常に難しい。
ただ、このラウンドは坂井のクリーンヒットが上回っているように見えます。
途中採点は、48-47、49-46、50-45で、3者ともに豊嶋。こうなると、坂井はちょっと苦しい。しかしフルマークはちょっと。。。??
6Rは少し距離が空き、中間距離。豊嶋はかなり余裕を持って、坂井をしっかりと見て、坂井のジャブに合わせて踏み込んで左ボディ。終盤には左フックカウンターをヒット、豊嶋は上手く戦っています。
7R、豊嶋は前ラウンドから上体の動きが良くなっています。このラウンドは頭をつけての打ち合い。どうしても押す力が強いので、見栄えがよく見えてジャッジヘのアピールができているのかもしれません。
後半、接近戦で坂井はコンビネーションをヒット、これを続けたい。
8R、このラウンドも頭をつけての打ち合い、豊嶋の強いボディで下を意識させ、右ストレートをヒット。坂井もフック、アッパーをヒットしますが、先に攻めるのは豊嶋、その分印象が良い。
どうしても後手にまわりがちな坂井は、馬力こそあるものの引き出しが多いとは言えません。このままではジリ貧。なんとか起死回生の一発を期待したい。
9R、豊嶋のプレスに対して坂井は下がり、回りつつの対応。中盤以降はまたも近い距離になりますが、豊嶋は岩のように動きません。坂井も非常にフィジカルが強いと思いますが、それに輪をかけて豊嶋のフィジカルは強靭。これは坂井陣営にとって誤算ではないのか。
10R、坂井が距離をとったボクシング、ここではジャブが映えます。ボディへの打ち分けもあり、坂井がリズムに乗って良いボクシングができています。豊嶋はフィニッシュを意識したのか、ちょっとこのラウンドは手数が少ない。
11R、引き続きリズムを取る坂井。豊嶋のボディは効いていなかったんでしょうか。。。??ジャブが当たり出した坂井は、コンビネーションへと繋げられています。前言撤回、坂井はしっかりと引き出しがありました。
ただ、その引き出しを開けるのがちょっと遅すぎたか。。。
ラストラウンド、相変わらず豊嶋のボディは良いですが、坂井のフットワークとジャブはもっと良いように見えます。ここまでバチバチに打ち合い、最終ラウンドも退かず、集中力を切らさず打ち合う両者のこころと身体のスタミナは驚異的です。
後半、豊嶋の渾身の左フックがヒット、それでも倒れない坂井のタフネスも驚異的。
ラウンド終了のゴングが鳴り、12Rに渡る死闘が終了。
採点は、116-112が2人、117-111が1人、3者ともに王者豊嶋を支持!豊嶋亮太、見事防衛に成功!!
豊嶋亮太、その強さの裏にとんでもないフィジカルの強さを持っていました。これは本当に意外だったことで、見るからにフィジカルの強そうな坂井を相手に、押し合いで完全に勝っていました。その中で自分から先手を取って攻めることで、ポイントに結び付けられた、ということだと思います。
坂井の土俵でしっかりと打ち勝ってみたものの、追う展開となった際にはやや弱さを見せました。
この階級、世界の頂上ははるか遠く。
これで豊嶋は日本卒業でも良いですが、できることなら小原佳太との国内頂上決戦に進んでもらいたいと思います。いずれにしろ、国内で戦っているだけではチャンスが訪れない階級、25歳とまだ若い豊嶋には今後も期待ですね。
そして敗れてしまった坂井ですが、意外と(と言っては失礼か)、足を使ったボクシングも巧い。固いブロッキングを駆使してグイグイ攻めるどファイターというだけではなく、得意のジャブを使ってのアウトボックスから、コンビネーションで攻め込むヒット&アウェーのボクシングもできそうな感じ。
おそらく器用なボクサーではないのでしょうが、あのリズム&ステップをブラッシュしていけば、現在のスタイルと合わせてまだまだ進化しそうな気もします。
坂井祥紀、ここからの巻き返しに期待しています。
ということで、今回のブログでは12/2に行われた三代大訓vs西谷和宏、そして12/4に行われた豊嶋亮太vs坂井祥紀の観戦記でした。
ともに素晴らしい試合でしたね。