12月、数日のうちに、バンタム級の3人の世界王者が次々と防衛戦を行い、統一戦の機運が盛り上がる、というはずでした。
しかし、ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)が計量会場に現れず、ポール・バトラー(イギリス)との防衛戦をドタキャン。
ウェイトをつくれなかった、という情報もありますが、カシメロ陣営の話では急性胃腸炎にかかって病院へ搬送された、とのこと。
WBOはカシメロサイドに対して診断書の提出を求め、これに応じない場合はWBO王座を剥奪するという声明を発表しています。
その期限は10日、試合日が12/11なのでそろそろですね。とりあえずこのブログを書いている12/19(日)の夜にはまだ情報は出ていません。(ブログが上る頃出ていたらすみません、書き換える気はありません。)
今回のブログでは、井上尚弥のバンタム級4団体統一の可能性について書いていきたいと思います。
井上尚弥の展望
井上尚弥は、アラン・ディパエン戦後の会見で、スーパーバンタム級への転級を視野に入れていることを発言。それでも、井上尚弥の希望は、あくまでもバンタム級での4団体統一。
WBO王座の行方がはっきりしない今、春(4月中旬)の日本開催の興行ではWBC王者のドネアと、そして夏にWBO王座を吸収することができれば、2022年末にスーパーバンタム級初戦、というのは充分可能でしょう。
ドネアは以前、「12月は無理だが、春には日本に行ける」と発言しており、最もすんなり行くのはやはり4月にドネアとの再戦。
ドネアが井上のホームとなる日本での戦い、ファイトマネー等の諸条件に難色を示すとは思えず、この井上陣営の思惑どおりことが運ぶかどうかは、プロベラムを主催するリチャード・シェーファー次第とも言えます。
ノニト・ドネアの強さ
さて、ドネアは2019年11月の井上尚弥戦以降、WBC王座へ挑戦したノルディーヌ・ウバーリ(フランス)戦、WBC暫定王者との統一戦となったレイマート・ガバリョ(フィリピン)戦で素晴らしいパフォーマンスを披露しています。
これは、井上がドネア戦後に見せた3戦のパフォーマンスを凌いでいる、といっても過言とは思えません。
多くのところで言われていると思いますが、かつて「フラッシュ」というスピードを武器に戦ったドネアとは「別のボクサー」とも言える存在となっています。
ビック・ダルチニャン戦で見せたような「肉を切らせて骨を断つ」というカウンターパンチャーだったドネアは、ここに来て「肉を切らせずに骨を断つ」という達人級のカウンターパンチャーへと進化しました。
肉体自体のパフォーマンスとしてはすでに過ぎているドネアですが、それと反比例するように身につけたキャリアという武器は、バンタム級での数戦ののち、井上尚弥という最大のライバルを経て一気に花開いたと言えます。
今のドネアは、2年前のドネアよりも更に強い。更にバンタムにフィットし、PFPランキングに顔を出しても良いレベルではないか、とすら思います。
ノニト・ドネアに勝てる可能性のあるボクサーは、このバンタム級には存在しません。井上尚弥というモンスターを除いては。
WBO王座の行方と、井上尚弥に与える影響
WBO王座は、前述の通り宙ぶらりん。カシメロが嘘を言っているのか、それとも事実なのか、によっても異なってくるものの、いずれにしろ4月に井上とWBO王者が戦うのは難しいでしょう。
まず、カシメロ陣営の言っていることが真実で、カシメロが王座を剥奪されなかった場合。
その場合は、結局ポール・バトラーとの指名戦がクローズアップされることとなり、これからカシメロvsバトラーをセットした場合は4月には間違いなく間に合いません。
但し、ポール・バトラーが指名挑戦権を有したまま待つ、という可能性もゼロではありません。バトラーがもう1年、待つことができれば、(WBO王座を吸収するであろう)井上も王座を返上し、改めて別のボクサーと王座決定戦への出場の可能性が出てくるからです。
そして、カシメロが嘘をついていて、急性胃腸炎の診断を提出できず、WBO王座を剥奪されてしまった場合。
その場合は、バトラーと誰かの王座決定戦となることが予想されます。一旦はカシメロの代役として決まったジョセフ・アグベコ(ガーナ)かもしれませんし、ランキングを上から追っていくとバトラーvsラウシー・ウォーレン(アメリカ)となります。
このバトラーvsウォーレンの勝者と井上尚弥が戦えるか、というと、これはかなり微妙な気がします。ウォーレンは一度井上戦を断っている(これには日本に来るのにリスクがある、等の理由があると思うので、一概に逃げたとは思えませんが)、ということもありますし、バトラーも間違いなく日本には来ないでしょう。かといって、アメリカでならまだしも、イギリスで4団体統一戦を行うメリットは、井上にとってほとんどありません。
なので今回、カシメロがWBO王座を剥奪されてしまった場合、バンタム級での4団体統一戦は実現しない、という可能性が出てきてしまうのです。
こうなると、井上はもうスーパーバンタムに転級する、ということになると思います。
もう一つの可能性は、4月中旬に行われるWBAスーパー・WBC・IBF世界バンタム級王座統一戦となる井上尚弥vsノニト・ドネア2に、WBO王座決定戦が組み込まれる、という可能性。
この可能性については、リチャード・シェーファーが「ウルトラC」として語っています。
これもまた、シェーファー次第というところかもしれませんが、井上vsドネアが4団体統一戦となることは、もしかすると海外では賛否があるかもしれませんが、井上のこともドネアのこともよく知る我々日本のファンにとっては、全くもって違和感がありません。
この試合は、間違いなく現在のバンタム級最強決定戦だと胸を張って言い切れます。
井上尚弥のバンタム級4団体統一はなるか
井上尚弥のバンタム級4団体統一戦の期限は、おそらく来年中。
4団体統一が叶わなければ、スーパーバンタム級への挑戦を視野に入れる、と話した井上は、もう間違いなく転級自体は決意しているはず。
そうなると春、夏に一つずつベルトを集めなければなりません。
井上の次戦は既に日程も決まっており、はっきりとは伝えられていませんが4月中旬、アリーナクラスの会場を押さえているとのこと。
放送もアマゾンプライムが介入することが発表されており、ここまで整っていれば後は対戦相手のみ、現時点で整う相手はノニト・ドネアのみ。
ほぼ間違いなく、4月中旬はノニト・ドネア戦。
あとは夏(おそらく8月頃)にアメリカか日本かで4団体統一戦だと思いますが、これがWBOの裁定次第。ただ、この8月頃の4団体統一戦も、4月の試合より前にはある程度決まっていなければスムーズにはできないでしょう。
もし、4月の試合が終わった時点で、(水面下も含めて)対戦相手未定(もしくはこれから交渉)、次期未定という状況であれば、井上の4団体統一は諦めなければならないのかもしれません。
私はこのブログで何度か伝えていますが、井上尚弥にはバンタム級の4団体統一を何としても成し遂げてもらいたい、と思っています。
ただ、これ以上バンタム級に留まると、減量も苦しいはずなので、どんなトラブル、どんな不本意な結果を引き起こしてしまうのかわからないのも事実。
なので、本人の希望である春、夏に統一戦を戦い、4団体統一を成し遂げてスーパーバンタム級への転級を心から希望しています。
すべてはWBO王座次第。この際カシメロでなくても良いので、WBO王者は井上戦を受けてもらいたいですね。
ドネア戦は、全く問題なく決まると思っています。リチャード・シェイファーにとってもはっきり言ってこれは日本のマーケットに進出する大チャンス。是非プロベラムのボクサーたちもこぞって出場する、国際色豊かな興行にしてもらいたい。
こうなったら、最悪、4団体制覇ができなくても仕方ありません。それでも、井上vsドネア2だけは何とか実現してもらいたいですし、その可能性は大きいと思います。個人的には、万難を排して現地に見に行きたい。スケールアップした両者の試合は、WBSS決勝をしのぐ試合になるかもしれません。今から非常に楽しみです。