WOWOWリングサイド会議、行かれた方はお疲れ様でした。
参加された方の感想を見ると、非常に素晴らしいイベントだったようですね。
試合を見にいくわけではないので、なかなか地方からは参戦しにくいイベントでしたが、WOWOWのYoutubeで1/21(金)21:00以降に配信してくれるようで大変にありがたい。
非常に楽しみですね。
さて、そのリングサイド会議の後の囲み取材で、井上尚弥(大橋)が井岡一翔(志成)戦へ言及した、とのこと。
あくまでも「名前は言っていない」ということですが、ボクシングに詳しい人なら、いや少しでも知っている人なら井岡一翔だということは容易に想像がつきますし、記事も明確にそう伝えています。
個人的には、この発言に対してめちゃくちゃ興奮したか、というとそうではありません。
それでも、やはりこの発言に対して思うところはあるので、折角なので思うところを書いていきたいと思います。
↓囲み取材の記事はこちら
【ボクシング】「ファンが望む日本人対決も選択肢にある」。井上尚弥が国内メガファイト要望! 思い描く相手は井岡一翔か!?(BBM Sports) - Yahoo!ニュース
経緯
この発言は、上記でも述べたとおり、「WOWOW エキサイトマッチ 30周年記念 リングサイド会議SP」のスペシャルゲストとして招かれた井上尚弥への、イベント後の囲み取材ででた発言とのことです。
まずは、那須川天心選手とのビッグマッチの発表があったK-1王者の武尊選手が、大橋ジムを訪問、一緒に練習をしたという話題。
SNSにも武尊選手と、大橋ジム期待のホープ、中垣龍汰朗のスパーリング映像(?マスかもしれません。)の出だしが流れていましたね。
そのライバル対決を羨ましく思っているのでしょう、「ファンが見たいカードを自分も組んでいきたい」と語った井上は、続けてこう発言したそうです。
『たとえば日本人同士の戦いとか。実現に向けていきたいですよね。自分はバンタム級から下げることはできないので。自分もキャリアの後半に入るし、どこかで耳にした『5階級制覇を目指す』というコメントにも期待しつつ、自分もそこに向けて、2022年は発言していってもいいのかなと。発言するのは自由ですからね。名前を言ってないのはミソですけど(笑)』
【ボクシング】「ファンが望む日本人対決も選択肢にある」。井上尚弥が国内メガファイト要望! 思い描く相手は井岡一翔か!?(BBM Sports) - Yahoo!ニュースより抜粋
しかし、果たしてこの井上vs井岡というのは、本当にファンが望む試合なのでしょうか。
井岡一翔のいま
井岡一翔は、2021年大晦日に福永亮次(角海老宝石)に判定勝利して危なげなく防衛。
次戦は、本来であれば先の大晦日で戦う予定だったIBF王者、ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)との対戦を目論んでいます。
アンカハスは一旦は井岡戦を契約、日本政府の愚策のおかげで来日不可となってから方向転換、2月に防衛戦を控えています。
現実的には、2月に無事防衛できて、更に日本政府の鎖国の状況を鑑みて、2度目となる交渉がスタートするでしょう。
一旦は決まったこのカード実現に障壁の数自体は少なく、唯一の障壁は日本政府、岸田内閣。それさえクリアできれば、実現するはずです。
早ければ5月か6月頃、遅ければ大晦日まで行ってしまうかもしれません。
遅くなればなるほど、階級アップを示唆しているアンカハスは、井岡戦を選択しない可能性は大きくなっていきますが、これは日本政府の対応次第であり、プロモーターの力も及ばないところ、致し方ありません。
井岡が無理やりにでも井上戦を望むならば、5月か6月にアンカハスと対戦、バンタム級4団体統一を果たした井上との一戦は、タイミング的には可能かもしれません。それでもバンタム級初戦で井上戦は、リスクが大きすぎる気がします。
ちなみに、井岡一翔が「5階級制覇を目指す」というコメントは何処の出典なのでしょうか。。。
井岡一翔が目指すは5階級制覇か 井上尚弥との対決にも参謀言及「ファンは興味示す」 | THE ANSWER
この記事は、最近ご無沙汰しているイスマエル・サラスの言葉で「5階級制覇」という可能性が語られてはいるものの、これは彼なりのリップサービスだとも受け取れます。
更にこれは2020年末の田中恒成(畑中)戦後の記事であり、あの素晴らしいパフォーマンスを受けてのリップサービスだとすると、統一戦実現の機運が高まっている今とは状況も違います。
井上尚弥の発言の真意とは
勿論、近い階級で、実績を残している偉大な王者である井岡は、井上と比べられる相手であることも事実。井上陣営が、「もし井岡と戦わば」と考える事は自然な流れであるとは言えます。
プロデビュー以来、いやプロデビュー前から一貫して「強者と戦いたい」と発言し続けている井上尚弥は、「ボクシング界が盛り上がるようなライバルと戦いたい」と発言しているのだと思います。
この発言の相手選手は、階級アップを示唆しているファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)でも全く問題なかった発言。さらには、スーパーバンタム級のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)やステファン・フルトン(アメリカ)でも。
それでも井岡一翔は日本国内において上記のボクサーたちよりも知名度で遥かに勝り、井上尚弥がボクシング界を盛り上げるためには「井岡一翔」の名前が最もインパクトのあるものだった、ということで選択したのだと思います。
いずれにしろ、この発言を察するに、井上尚弥からは「ボクシング界を盛り上げたい」という思いを強く感じるのです。それと共に、自らが発信することの重要性。
あっという間に「日本ボクシング界の顔」となった井上尚弥の一挙手一投足は注目される現在、なかなかおいそれと発言はできないでしょうから、今回の発言も不用意に出た発言ではなく、準備されたものだと受け止めました。
なので、井上尚弥の発言は、残り6年ほどとなった競技人生の中で、ライバルを欲している、そういう発言だと思います。どうにか「強いライバルと戦わせてほしい」という心の叫び。
だから、井岡としてはこの井上の発言へのアンサーは必要ないと思います。
井上尚弥vs井岡一翔の実現可能性
井上尚弥も好きですし、井岡一翔も好き。そんな純粋なボクシングファン(と自負している)私からすると、この一戦の実現はどちらでも良い、という表現になってきます。
興味がないというわけではありません。かといって、実現を嘱望するか、というとそうではありません。
やるなら滅茶苦茶盛り上がるでしょうし、やらなくても残念、とはならない、そんな一戦。
基本的には、個人的には日本人対決というのはたまにあるから良いわけで、コロナ禍の中では「負けてほしくないボクサー」vs「負けてほしくないボクサー」という試合が多く、はっきり言ってお腹がいっぱいです。
実現可能性としては、バンタム級の上限ギリギリを攻めている井上尚弥と、スーパーフライ級でかなり余裕を持っているように見える井岡一翔の試合が容易に実現するか、というと否でしょう。
ただ一つの可能性としては、この後コロナが世界的にもっとひどくなり、日本が鎖国を続け、両者ともに対戦相手がおらず、それでも尚、試合をしたい、しなければならない、井岡が本気で5階級目を狙う、という状況に陥ったときに、井岡一翔側がオファーを出し、井上尚弥が条件的に歩み寄った時のみに起こりうる、奇跡。
ただ、体が大きくなる一方の(スーパーバンタムに備えて八重樫東をチームに加え、フィジカルを鍛えている)井上にとって、ウェイトの問題は大きい。過去には、苦しい減量で足を攣ったり、ボディを効かされたりと不安定な要素もありました。
ということで、いろいろな要素とタイミングが噛み合えば、この試合は実現しないでもない、とも言えます。可能性は限りなく低いですし、日本の宝である井上、井岡両名が潰し合う姿を見たい、とはあまり思いません。
ちなみに、どちらが勝つか、ということは、今は言及するタイミングにないので控えておきます。
井上尚弥に期待したいことは
この井上vs井岡については、井上はフェザーくらいまでいけるんじゃないか→ロマチェンコと身長同じくらいだね→ロマチェンコもフェザーでいけるんじゃない?→井上vsロマチェンコ!!みたいなものと同じような実現可能性だと思っています。
後は、「井上尚弥に勝てる可能性があるのはゲイリー・ラッセルJrだ」とか。
やってやれないことはないのでしょうし、やれば大いに盛り上がるのでしょうが、メリットが少ない、と言っても良い。ウェイト面でどちらかが譲らなければならず、これでは最強vs最強の構図にならない。
そもそも階級性の競技であるボクシングは、これを抜きにして語れません。
階級の違いが1階級で、更に片方のボクサーが階級アップの方向性を示す、もしくは明らかに体格に余裕がある場合に限り、実現可能性は出てくるように思います。そうでなければ、片方が無理をしている状況。
海外のビッグマッチはそういう状態で決まることもあり、パッキャオなんかはそれを逆手にとって名を売っていった感がありますが、日本のボクシング界はまだそこまで成熟していません。ジム制度をひき、海外に比べて「ボクサー」を「商品」として見れない日本のボクシング界にとっては、こういうことは無理があるように思いますし、またそうなってほしくはありません。
それよりも、私が井上尚弥に期待したいことは、正直な話、トップランクからの離脱。
御歳90歳にもなられるボブ・アラム氏は、もちろん優秀なブレーンを抱えているのでしょうが、こと井上尚弥に関してはここまで良いプロモートをできているか、というと大きな大きな疑問が残ります。
アメリカへの足がかりを掴ませてくれたトップランクには感謝するべきところもあるのでしょうし、日本=帝拳=トップランクみたいな図式はあるのでしょうが、ここ最近はマッチルームと契約する日本人ボクサーも増え、日本人ももっと自由に海外プロモーターを選ぶべき時代に来ていると思います。
井上尚弥がトップランクから離脱し、もしPBCに移ってくれたならば、スーパーバンタム級で望む試合の実現はきっと容易。
耳障りがよく、誰もが知っていて、「お茶の間のファン」が喜ぶのはもしかすると井岡一翔戦かもしれませんが、ボクシングファンが喜ぶのは間違いなくスーパーバンタム級のPBCファイターとの対戦だと思います。
地上波では生放送しなかったジェイソン・マロニー(オーストラリア)戦、マイケル・ダスマリナス(フィリピン)戦。地上波では放送すらもなかったアラン・ディパエン戦。
それでもボクシングファンはきっと見ています。
そんなボクシングファンが望む試合の実現、ボクシングファンがワクワクするような試合の実現を、井上尚弥、また大橋ジム陣営にはお願いしたいものです。