井上尚弥(大橋)vsマーロン・タパレス(フィリピン)の世界スーパーバンタム級4団体統一選が発表された今、12月に行われる試合の中で待ち侘びているものは後たったひとつ。
ファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)vs井岡一翔(志成)、WBA・WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチです。
この試合は日本の大晦日で行われることがほぼ確定的と思っていましたが、エストラーダが報酬に不満があるとして交渉は進展していないと報じられています。
間も無く決着がつくであろうこの戦いは、果たして日本開催なるのでしょうか。
と言うことで今回のブログは、まだまだ続くSUPER FLYの現状について。
↓井岡vsエストラーダ消滅危機についての記事
井岡vsエストラーダ
この戦いが開催されないのは、軽量級のボクシング界においては大きな損失だと思います。
ともにキャリアの円熟期、もしくは衰退期を迎えているであろう両者にとって、この試合は集大成の一戦となるはずです。
この階級で最も評価を得ているエストラーダ、そのエストラーダを求め続けてきた井岡一翔。二人はこのタイミングで戦うべきであるし、例えばここを逃せばすでに戦うべきではないとも思えます。
「報酬に不満がある」と言うエストラーダですが、それでは井岡を逃した場合、一体誰と戦えるのでしょうか。
いずれにしろ、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)戦と同等かそれ以上のファイトマネーをもらえそうな相手は、少なくともこの階級には不在でしょう。
その代わり、井岡よりももっと危険なボクサーとの戦いは存在すると思われ、エストラーダにとってはここで井岡線を選択することが最上の選択肢だと思われます。
井岡は2017年末、WBA世界フライ級王座を返上して引退、戻ってきたのは2018年9月で、復帰はアメリカのリングでした。
このスーパーフライ級での復帰からずっと、追い求めてきたのは江ストラーダ戦であり、2022年末に当時WBO王者だった井岡は当時のWBA王者、ジョシュア・フランコ(アメリカ)と対戦してドローとなると、WBO王座を返上してフランコとの再戦を選びました。これは、WBOから指名戦をオーダーされたことが理由となっており、WBOの指名戦→WBAとの統一戦と段階を踏むよりも、WBAのフランコに挑戦してしまった方が手早かったためと思われます。
ここで消えてしまったのは井岡一翔vs中谷潤人(M.T)という日本人対決であり、個人的にはホッとしましたが残念に思ったファンも多いのでしょう。
WBO王者・中谷潤人
かつて軽量級のBIG4と呼ばれたエストラーダ、ロマゴン、クアドラス、シーサケットの時代は終わり、フィフス・メンである井岡の台頭。
そしてそのあとは、この中谷潤人と言うニュージェネレーションが彗星の如く現れました。
井岡がコツコツと防衛を積み重ねる中、中谷は元WBOフライ級王者という肩書きを活かしてWBOスーパーフライ級1位へと繰り上がり、井岡への挑戦権を獲得。
ここで井岡側は指名戦を避けてWBO王座は返上という道を選びましたが、この中谷に用意されたのはアンドリュー・マロニー(オーストラリア)との王座決定戦でした。
この注目対決は、中谷が最終12R、衝撃的な左カウンターでマロニーをマットに沈め、世界中にアピール。 2023年5月に行われたこの素晴らしいノックアウトパフォーマンスは、間違いなく今年のKOオブザイヤー候補の一つでしょう。
初防衛戦でも、エストラーダを大いに苦しめたアルジ・コルテス(メキシコ)を相手に完勝、コルテスを通じて見れば間違いなく階級最強は中谷潤人、そう思わせるようなパフォーマンスでした。
しかし、コルテス線では減量の影響も見てとれた中谷、彗星の如く現れたスーパーフライは、また彗星のように走り去っていくのでしょう。
次戦はスーパーフライかバンタムか、というところのようですが、個人的にはもうバンタムで力を発揮してもらいたい。
IBF王者はプーマ
今の所王者たちの中で(特に日本という国において)最も知名度が低いのはこのIBF王者、フェルナンド「プーマ」マルティネス。
しかし、このマルティネスの実力はもはや疑うべきところはなく、世界初挑戦で安定王者、ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)を攻略して戴冠、ダイレクトリマッチとなった初防衛戦ではより差を広げて勝利。
初防衛戦でも無敗プロスペクト、期待の高かったジェイド・ボルネア(フィリピン)を11RTKO、その強さを見せつけています。
このマルティネスに対しては、田中恒成(畑中)が挑戦の意を表していたのですが、9月の終わり頃に指令されたウィリバルド・ガルシア(メキシコ)との挑戦者決定戦を田中は辞退。田中はこのIBF路線の道を切って、WBO王座に照準を定めているのかもしれません。
指名挑戦者たち
田中恒成は、現在WBO世界スーパーフライ級の1位にランクされています。WBAでは2位、IBFでは3位。
なので待ってさえいればどの階級でもチャンスがあることになり、その中で最も高い確率でチャンスが訪れるのはWBOでしょう。
王者の中谷潤人は、次戦で統一戦が実現しなければバンタム級へ階級を上げる、という旨の発言をしており、中谷の統一戦が決まりそうか、というとその気配すらありません。
なので必然的に、中谷が返上した王座を争う、というのが世界タイトルへの最短距離ということになりますね。
さて、そんなわけで田中がIBFの指名戦を辞退したことで、ウィリバルド・ガルシア(メキシコ)vsイスラエル・ゴンサレス(メキシコ)の間でIBFの指名挑戦者決定戦が行われる運びとなると思われます。どちらが勝つにせよ、IBF王者のマルティネスが陥落する未来はあまり見えません。
そしてWBAはジョン「スクラッピー」ラミレス。スーパーフライとはいえ、アメリカのボクサーだけに、このラミレスを退けたならば本場のボクシングファンへのアピールは相当なものになるはずです。もしかすると、井岡はエストラーダ戦が実現しないとなるとこのラミレス戦となるのかもしれません。だとしたら、やっぱりアメリカでやってほしいですね。
続くHBOの遺産
「井上尚弥が一般に浸透するくらい有名になって以降」の日本のボクシングファンは、もう「HBO」というケーブルネットワークを知らないのかもしれません。
井上人気が一般層にまで浸透した、というのはWBSS出場以降のことであり、それでもファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)戦あたりまではチケットは余裕で取れました。ドネア第一戦以降、ハコは明らかにデカくなっているのに明らかにチケットは取りづらくなっており、これが一般層まで浸透した、ということになるのでしょう。今回も非常に心配です。
脱線しましたが、HBOがボクシング中継から撤退したのは2018年のことであり、ちょうどWBSSバンタム級トーナメント開始の年です。
「ワールドチャンピオンシップボクシング」というHBOの番組は、ジョージ・フォアマンvsジョー・フレージャーに始まり、モハメド・アリやマイク・タイソン、21世紀以降もオスカー・デラホーヤやマニー・パッキャオといったスターたちの試合を放送。
そんなHBOが最後に仕掛けたのが軽量級ファイトを中心とした「SUPERFLY」というイベントであり、この興行は注目の低かった軽量級ファイターたちをスターダムにのしあげ、注目を集めたという功績があります。
まだまだ中量級、重量級のファイトマネーに比べると天と地ほどの差はありますが、ロマゴンや井上尚弥をPFPリストに組み込んでいったのは、この流れがあったから、とも言えると思います。
そこで一瞬燃え上がったSUPERFLYの炎は、いまだに続いています。
この階級に日本王者は現在2名。誰が、どこで、誰と、どのような戦いを繰り広げるのか、今後を楽しみに見守りたいと思います。
【宣伝】
ストック品(在庫があるもので即納できるもの)のセールやってます!
FLYのボクシンググローブには新色も登場です!