日本時間で2/16(水)、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が、ジョージ・カンボソスJr(オーストラリア)戦に合意した、とのニュースが流れていました。
↓ESPNのマイク・コッピンガー氏のツイート
Sources: Vasily Lomachenko has agreed to his side of a deal for a fight with George Kambosos that would be televised on ESPN on June 4. Kambosos hasn’t agreed as he weighs options. Deal includes rematch clause for second fight in Australia if Loma winshttps://t.co/sSeqWcBqa5
— Mike Coppinger (@MikeCoppinger) 2022年2月15日
この情報によると、ロマチェンコはカンボソス側のオプション(カンボソスが負けた場合、オーストラリアで再戦)を受け入れて承諾。カンボソスの同意はまだ、というニュースなので決定というわけでも両者の合意でもないニュースです。
以前からカンボソスは次戦の対戦相手としてデビン・ヘイニー(アメリカ)、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)の名前を挙げていたものの、まさか本当に初防衛戦でロマチェンコと戦おうとしているとは本当に恐れ入ります。
今回はカンボソスvsロマチェンコの情報をもとに、思うところを書いていきたいと思います。
決戦は6月か
記事では6/5という具体的な日程も出ていますし、場所もオーストラリアのメルボルン、マーベル・スタジアム。
53,000人もの収容人数を誇るスタジアムでのファイトであり、日本でやるGGGvs村田と同じような感じなのかもしれません。向こうのほうがハコはデカそうです。
このイベントには、おそらくオーストラリアのボクサーたちがこぞって登場するイベントとなるでしょうし、そうなれば我らが日本のボクサーも呼ばれるかもしれません。
ジョージ・カンボソスJrについて
カンボソスは、前戦でWBAスーパー・WBO・IBFの3団体統一王者で、且つWBCフランチャイズ王者、そしてリングマガジン王者であるテオフィモ・ロペス(アメリカ)を破る殊勲を成し遂げ、見事メジャー3団体統一&WBCフランチャイズ&リングマガジン王者となりました。
様々なメディアでアップセット・オブ・ザ・イヤーの一つとして取り上げられたこの一戦は、ロペスに待たされたり、当初の興行主に待たされたりと様々なことが起こりながらも2021年11月にようやく開催、初回にカンボソスがダウンを奪うという予想外の展開からスタート。
その後、盛り返してきた「テイクオーバー」ロペスに10Rにダウンを奪い返されますが、カンボソスは自らのボクシングを貫徹。
これは個人的な見解ですが、ロペスはウェイトの問題や、モチベーションの問題を抱えていたようにみえ、ベストパフォーマンスではありませんでした。
対してカンボソスは、以前に私が見たどんな映像よりも非常にテクニカルで、また速く、ベストパフォーマンスを披露したと言えるでしょう。
それでも私のロペスへの評価は高かったので、カンボソスの勝利は驚き以外の何者でもありません。
ともあれ、カンボソスはロペスに2−1の判定ながらも内容的にはやりたいことをやって完勝、かねてから「初防衛戦はオーストラリア」と発言しておりました。
ロペス戦で初めてアメリカのリングに立ったカンボソスは、その一週間後のデビン・ヘイニーvsジョセフ・ディアス戦を観戦、そのまた翌週のロマチェンコ戦は観戦せずにオーストラリアへ帰っていました。
なぜロマチェンコなのか
カンボソスには様々な対戦相手候補がいたと思います。ロマチェンコやヘイニーはもちろん、ライアン・ガルシア(アメリカ)も、ジャーボンタ・デービス(アメリカ)も、ロペスとの再戦という選択肢もあったでしょう。
オーストラリア開催だということだったので、アメリカのボクサーたちはおそらくオーストラリア行きを良しとしないボクサーも多いでしょうから、もしかすると中谷正義や、吉野修一郎等の日本人ボクサーにお声がかかることもあるのではないか、とすら思っていました。
しかし、カンボソスはその後、ロマチェンコ、ヘイニーと交渉中だということを明かしています。
そう考えると、このカンボソスはリアル・ディール(本物)かもしれません。
王者として、挑戦者を選べる立場にあって、地元開催だとすれば、やはりあえて難しい相手を選ぶ必要はありません。まず初防衛戦は、ランキング下位、もしくは勝てそうな相手を選んでも誰も文句を言わなかったはずです。
これがもし、世界的評価を受けているボクサーであれば、無名の挑戦者を選ぶと非難される可能性はありますが、カンボソスはまだ「世界の認めた」王者とはなっていないような気がします。
それは一つ、PFPファイターであったロペスを破っても、おそらくどのメディアもこのカンボソスをPFP10傑に選んでいない、という事実。(どこかで選ばれてたらすみません。)
カンボソスは、おそらくこの評価をひっくり返したいのでしょう。それも、なるべく早く。
だから、ロマチェンコ。
デビン・ヘイニーではありません。
ヘイニーは集客面でも、そのネームバリューでも、稼げるファイトマネーの額でも、おそらくロマチェンコに及ばない、と判断されたのでしょう。
それにしたって、いきなりロマチェンコというのは、既にこの時点でカンボソスを称えざるを得ない、と個人的には思っています。
ワシル・ロマチェンコの帰還
ウクライナ出身のこのロマチェンコは、多くのマネーを稼ぎだすためにボクシングをしているのではありません。この辺りは、その他のボクサーたちと圧倒的に感覚が違うところだと思います。
プロ入りの時のエピソードは、「契約金はいらないから初戦で世界タイトルに挑戦させてくれ」ということであり、これは叶いませんでしたが、テオフィモ・ロペス戦でも、ファイトマネーが、とゴネるロペスに対して、自身のファイトマネーを削減してロペスに与えています。
なので、今回もロマチェンコはファイトマネー云々に対して何も言ってはいないでしょうから、プロモーター側としても交渉はしやすかったでしょう。
そして、ロマチェンコは出身地を遠く離れて、アメリカで戦うボクサーである分、オーストラリアという地にも抵抗がない、これも大きなことだと思います。
ヘイニーがどれだけ「オーストラリアでも良い」と言ったところで、ロマチェンコと比べると信憑性には欠けてしまいます。
そしてこの「ロマチェンコのみの合意、カンボソスの正式な返事はまだ」のニュースは、ロマチェンコのそのレスポンスの速さを物語っています。返事は食い気味の返事じゃなかろうか。
条件は、6月にオーストラリアでカンボソスと戦い、それでカンボソスが負けたら、ロマチェンコのベルトをかけてまたオーストラリアで再戦、という内容。
言ってみれば、ロマチェンコはカンボソスに実質2連勝しなければ、ベルトは手に入らないという不利な内容。これに即答したのです。
ロマチェンコを呼び戻したカンボソス
ライト級はタレントに溢れています。デビン・ヘイニー、ライアン・ガルシア、ジャーボンタ・デービス。イサック・クルスも面白いし、週末に大復活してくれるはずのホルヘ・リナレスもまだいます。
しかし、そのボクサーたちが最も戦いたくない相手がワシル・ロマチェンコ。ライト級ボクサーの中では、リナレスぐらいしか「ロマチェンコと戦いたい」と言っていないはずです(厳密にいうとリナレスはロマチェンコにリベンジしたいと言っています)。
そんな皆が恐れるロマチェンコが、このカンボソスとの2連戦を経てライト級の王座に帰ってくるかもしれません。
となれば、このライト級のプロスペクトたちの動きもどうなるか、見ものですね。
ロマチェンコvsカンボソスは、おそらく多くの人がロマチェンコ勝利を推すでしょう。ロペス戦では怪我もあって良いパフォーマンスを発揮できなかったロマチェンコでしたが、復帰後の中谷正義戦、リチャード・コミー戦では良いパフォーマンスを見せています。
ただ、中谷戦ではボディを明らかに嫌がる素振りを見せたのと、ロペス戦では体格差に屈したというイメージなので、一時期の「パーフェクト」からは綻びも見つけられているのも事実。
カンボソスのイメージは、非常に研究熱心で、オーストラリアのボクサーはほとんどそうだと思っているのですが、非常に真面目で努力家。
後半に入っても乱れないのは、本当によく基本のトレーニングに打ち込んでいる証でもありますし、コツコツと努力することで培われたメンタルでもあるはずです。
ともあれ、「漢」ジョージ・カンボソスJrの奮戦にも期待しつつ、それでもワシル・ロマチェンコの世界タイトル復帰への願って、6月を楽しみにしたいですね。
あ、その前にカンボソスが合意して、何事もなく契約することが必要。後はコロナにくれぐれも気をつけて。ジャッジだけは公平に仕事をしてほしい、とは思いますが。