先週末、日本時間で5/29(日)に全世界が注目するライト級戦がありました。
ジャーボンタ「タンク」デービスvsロランド「ロリー」ロメロ、この悪童決戦は試合前から非常に盛り上がり、さらには試合内容もものすごかったですね。
そしてこの流れで、ライト級の頂上決戦が翌週に開催される、ということは、先週末の勝利者であるタンクと今週末の試合の勝者の対戦も大いに取沙汰されるはずです。
王座の「格」というものでいうと、圧倒的にこちらの方が上。
しかし、タンクvsロリーはPPVで開催、こちらはESPNが加入料金のみで見れる状態で、しかも開催地はオーストラリア。オーストラリアだからこそ、6万人といわれる観客を集めることができる試合であり、もしヘイニーが勝利した場合の再戦条項の開催地もオーストラリアだと聞いています。アメリカでは、だめなんです。多分。その理由は、デビン・ヘイニーにあるのでしょう。
ということで今回は、おそらくアメリカでの話題性はタンクvsロリーに及ばないながらも、世界的にみれば大注目。世界ライト級、「真のUndisputed」王者決定戦、ジョージ・カンボソスJr.vsデビン・ヘイニーについてのプレビューです。
↓タンクvsロリーの観戦記
6/5(日)オーストラリア・メルボルン
世界ライト級4団体王座統一戦
ジョージ・カンボソスJr.(オーストラリア)20勝(10KO)無敗
vs
デビン・ヘイニー(アメリカ)27勝(15KO)無敗
2021年11月、見事なアップセットでテオフィモ・ロペス(アメリカ)を降し、WBAスーパー・WBCフランチャイズ・IBF・WBO世界ライト級王者となり、リングマガジンベルトまで手に入れたジョージ・カンボソスJr。
リー・セルビー(イギリス)と大接戦を演じたボクサーと同一人物とは思えないパフォーマンスを発揮、完璧なテオフィモ対策と、完成度の高いボクシングを披露してくれました。
そしていよいよ「真の」Undisputedチャンプとなるため、WBC王者のデビン・ヘイニーと雌雄を決します。
↓テオフィモvsカンボソスの観戦記
正直、このカンボソスvsヘイニーが決まるとは思っていませんでした。
当初、「初防衛戦をオーストラリアで行う」とのカンボソス陣営に対して手を挙げたのは、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)。敵地に赴くことを全く意に介さないロマチェンコは、あっという間にカンボソスとの一戦を締結しました。その締結直前だったか、ヘイニーが「俺も!」みたいなことを言っていたと思います。
しかし、ロマチェンコはロシアがウクライナに侵攻を開始したことで母国での防衛隊に参加、リングを離れることに。これによりデビン・ヘイニーが繰り上がり、今回の「真の」4団体統一戦となりました。
ジョージ・カンボソスJrというボクサーは、ロペス戦までは目立った戦歴のないボクサーでした。ロペス戦の前、リー・セルビーにスプリットの判定で競り勝ってIBFの挑戦権を得ていることから、当然立派なコンテンダーではありました。セルビー戦前のミッキー・ベイ(アメリカ)戦でもスプリットの判定勝利、これを見るとギリギリ勝ち上がってきたというボクサーなわけですが、今となっては「接戦をものにする力が非常に強い」ボクサーである、という評価となります。
ロペス戦でも、両者が一度ずつのダウンを奪い合う互角の展開の中、アウェーといえるアメリカで勝ち切って見せました。回復の早さは目を引きましたし、ゲームメイクする力もあるカンボソス、今回は勝負所と言って良いでしょう。
対してデビン・ヘイニーは、とにかくディフェンシブで待ちに徹するボクサー、いわゆる「塩試合」の権化です。
ディフェンススキル、スピードには非常に優れ、要所でカウンターを取り、ポイントをピックアップ。反面、ここ最近の試合では明らかな打たれもろさを露呈していますが、そこからサバイブする術も持っているボクサーです。
非常にスキルフルなヘイニーのボクシングは、現代ボクシングの結晶ともいえるボクシングであり、決して好んでいるわけではありませんが、なかなか崩せるボクサーではないと思います。
↓ヘイニーの前戦はジョジョ・ディアス戦。
ジョージ・カンボソスJrというボクサーは、非常に勤勉な感じがして、おそらく熱心にトレーニングに取り組み、ハートも強いボクサー。
テオフィモ・ロペス戦よりも一段成長した姿をこの試合で見せてくれるはずです。
対して、リナレス戦、ジョジョ戦では打たれ脆いところを示し、やや綻びが見えたように見えるデビン・ヘイニー。明らかに効かされたリナレス戦、効いたんじゃないか?と思わされたジョジョ戦、そこからのリカバリーは立派だったものの、このことはカンボソスが「思い切っていける」ということにもつながるのではないでしょうか。
そしてこのことは、ヘイニーの集中力がやや途切れてくる後半に起こることが多い。
カンボソスがその熱心な研究と、物怖じしないハートの強さからまた前半はカンボソスに振られるラウンドはあるかもしれません。ただ、スキルではヘイニーが勝り、基本的には前半からもしくは中盤にかけて、カンボソスはヘイニーに届かない可能性が大きいとみています。
しかし後半、心も体もスタミナがあふれているカンボソスは、ヘイニー相手にも巻き返すことは十分に可能。
中盤、つまらない試合になろうとも、地元の声援を受けたカンボソスが後半まくる、効かせて一気に詰め切る、こういう可能性もあると思いますね。
なのでこの試合はなかなかに競った試合になるのではないでしょうか。
どちらが優位か、と問われればヘイニーだと思いますが、カンボソスのヘイニー撃破に期待したい。そして勝てば、今度こそロマチェンコをリングに呼び戻してもらいたい。
バンタム級10回戦
ジェイソン・マロニー(オーストラリア)23勝(18KO)2敗
vs
アストン・パリクテ(フィリピン)28勝(23KO)4敗1分
セミファイナルも非常に興味深い一戦。ジェイソン・マロニーと、アストン・パリクテという我々日本のボクシングファンがよく知る強敵同士が、マロニーの持つWBCシルバーのタイトルと空位のWBOインターナショナルのタイトルを争います。
非常に総合力が高く、好漢であるマロニーは、日本にもきっとファンが多いでしょう。対してパリクテは、その出身(フィリピン)から、人柄のわかるインタビュー等が出回ることがありません。
マロニーもカンボソスと同じく、非常に勤勉な雰囲気のある優秀なボクサーで、なぜ世界王者になっていないのか不思議なほどの実力の持ち主。
パリクテは、というと、ドニー・ニエテス(フィリピン)と引き分けて大いにその名を轟かせたものの、続く井岡一翔戦では10RTKO負け、復帰戦でもレンズ・ロシア(フィリピン)という当時15勝9敗1分というアンダードッグに判定負けを喫しています。
その後は3連勝も、うち2戦は勝ちよりも負けが多いボクサーとの対戦であり、その実はわかりませんが勝負をしていないというイメージ。
パリクテのパワーは、もちろんマロニーにとっても侮れないものではあるものの、ここはマロニーが手堅く勝利をつかみ取る可能性が高いと思われます。
マロニーは、井上尚弥が階級を上げた後のバンタム級で、日本人ボクサーと世界タイトルをかけて絡んでほしいボクサーの一人。
ここはマロニーの快勝を期待したい。
その他のアンダーカード
その他には、ニュージーランド出身の32歳、ジュニア・ファが43歳のベテラン、ルーカス・ブラウン(オーストラリア)とのWBAオセアニア・ヘビー級タイトルマッチに臨みます。王者はブラウンのほうですが、ファのキャリアップ・マッチのような位置づけかと思います。
前戦でジョセフ・パーカー(ニュージーランド)に敗れ、保持していたWBOオリエンタル・タイトルを失ったファは、ここに勝って再浮上しなければいけません。
アマ出身で、はぐらかすのが上手なイメージのファと、2016年にはオーストラリア人ボクサーとして初めて世界ヘビー級王座についた(その後ドーピング疑惑によりはく奪)ブラウン、オセアニア地域のヘビー級サバイバルマッチの一戦です。
エキサイティングな試合になるとすれば、ブラウンがファを捕まえてしまうことなのでしょうが、果たして。
ちなみにヘビー級といえば、この興行のアンダーカードに出場するヘミ・アヒオ(ニュージーランド)は要注目。
大型化が進むヘビー級の中で、身長183cm、リーチ185cm(BoxRecより)という小柄な体格で、どこまでいけるか非常にみもの。マイク・タイソン(178cm)よりやや大きく、アンディ・ルイスJr(188cm)よりもやや小さな身長で、現在までは18勝(13KO)で無敗をキープしています。タイソンほどのキレやパワーは感じませんが、特に前半はちょこまかと動くボクサーですね。対戦相手はジョー・ジョーンズ(アメリカ)、13勝(10KO)4敗という戦績で、身長は188cmですがリーチは197cm。
あとはアンドリュー・マロニー(オーストラリア)も登場。ジョシュア・フランコとの3戦(2敗1NC)からは復調気味で、フローイラン・サルダール(フィリピン)相手に判定で完勝、ヒルベルト・メンドサを最終8RKOに仕留めて復帰第三戦目。
対戦相手はニカラグアのアレクサンダー・エスピノサ、ここまで21勝(8KO)3敗2分という好戦績を収めているボクサーです。
ただ、これまでの経験上、WOWOWでの放送は2~3試合ほど。ESPNでも「メインカード」という枠での放送はそれぐらいなので、ジェイソン・マロニーは見れると思いますが、他のものはWOWOWでは見れないかもしれないですね。ファvsブラウンを流すよりは、アンドリュー・マロニーのほうが気になってしまうところですが。
放送・配信
このオーストラリア・メルボルンでの興行は、オーストラリア・メインイベンツ社が主催であり、トップランクが共同開催でしょうか。
オーストラリアではKayoスポーツが、アメリカではESPNが生中継、そして日本ではWOWOWオンデマンドで生配信。
アメリカ時間にあわせて興行が行われるため、オーストラリア、メルボルンの時間で6/5(日)の日中、日本時間でもWOWOWオンデマンドは6/5(日)11:00からの配信スタートとなります。アメリカでは6/4(土)の夜、いつものトップランク興行の時間ですね。
前週に続き、ライト級の世界タイトル戦。このたった2週間のうちに、ライト級の世界王者たちはこぞって登場することになります。
こうなると、やはり直接対決という機運は高まりますね。タイミング的には完璧です。
ということで、この一戦も見逃せません。
皆さんWOWOWで観戦しましょう。
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