今月(9月)の後半から来月末にかけて、国内外で大変興味深い試合が目白押しです。
それとともに楽しみなのが、年末にかけてのマッチアップの「正式発表」のニュースも本当に興味深い。
12月、というとボクシング興業は比較的日本に注目が集まる時期で、今年はもう何度目かというロングランで開催されている年末興行を始め、井上尚弥の4団体統一戦も予定されています。
およそ2ヶ月ほど前に発表、1ヶ月ほど前からチケット一般発売、という流れはさほど変わらないでしょうから、おそらく間も無く井上尚弥vsマーロン・タパレスによる世界スーパーバンタム級4団体統一戦、そしてファン・フランシス・エストラーダvs井岡一翔のWBA・WBC世界スーパーフライ級王座統一戦が正式発表されるはずです。
なのでここから1ヶ月、心躍るニュースが多いと思うので、楽しんでいきましょう。
という楽しみなニュースに先立ち、12月の注目試合、正式発表のニュース!
12/9(日本時間12/10)アメリカ・サンフランシスコ
WBC世界スーパーライト級タイトルマッチ
レジス・プログレイス(アメリカ)29勝(24KO)1敗
vs
デビン・ヘイニー(アメリカ)30勝(15KO)無敗
デビン「ザ・ドリーム」ヘイニーは人気がない。
これはその全くもってエキサイティングではないファイトスタイルに起因するものであり、その体躯を活かしたジャブ主体のボクシングは非常に攻略がしづらく、勝ちに徹するそのマインドも崩すことは非常に難しいボクサーです。
世界ライト級Undisputed王者であるヘイニーは、2019年9月、ザウル・アブドゥラエフ(ロシア)を降してWBC世界ライト級暫定王座を獲得。その後正規王者に昇格も、やはり人気のためかずっと無視されたままでした。
その防衛戦は、当時無敗のアルフレド・サンティアゴ(ドミニカ共和国)、元王者のユリオルキス・ガンボア(キューバ)、ホルヘ・リナレス(ベネズエラ)、ジョセフ・ディアス(アメリカ)といった強豪たちばかりではありましたが、そのどれもヘイニーの方がトップドッグであり、そのポテンシャルの高さ、期待の高さは非常に大きいものでした。
その後、ジョージ・カンボソスJr(オーストラリア)から3つのタイトルをもぎ取り、2022年6月、4団体統一王者に。再戦でも難なくカンボソスを退けると、かつてのPFPキング、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)との大一番を迎えました。
これは憶測ですが、このロマチェンコ戦の前まで、ヘイニーは自分のやりやすいボクシングを貫いてきていた、と感じています。自分の距離で戦い、決して無理をしないデビン・ヘイニーのボクシング。しかしこのロマチェンコ戦では、自ら積極的にジャブを出し、とにかくロマチェンコの嫌がることをやる、というボクシング。しっかりとロマチェンコを研究してきたことが伺えるボクシングでした。(ヘイニーのナチュラルなボクシングでも当然相手は嫌なのですが、この時はちゃんと対策を練ってきた、というイメージ)
結果は小差の判定勝利、もちろん判定結果に文句を唱えるファンも多いとは思うのですが、勝利は勝利であり、敗北は敗北です。見方によってはどちらが勝ってもおかしくない、とも思える試合内容ではありましたが、個人的にはヘイニーの作戦勝ち、と言える内容でもありました。
この勝利により、ようやくPFPランク入りを果たしたデビン・ヘイニー。階級を上げてタイトルへの挑戦権を獲得したシャクール・スティーブンソン(アメリカ)との対戦がクローズアップされますが、ヘイニーはスーパーライト級への挑戦を選択。まあ、これは良いんですが(シャクールから逃げた、とは思わない)、だったらライト級王座はしっかりと返上してから行ってもらいたい。これはヘイニーに限ったことではありませんが、この辺はしっかりと規定を設けてもらいたいですね。4団体王者が増えてきた昨今では、タイトルの流れが1年近く止まってしまう流れになってしまい、タイトルを求めて戦える機会が少なくなり、結果的にタイトルの権威が落ちてしまいます。これ、わかってんのかな。各団体は。私は老害に片足突っ込んできている年齢かもなので、「今はそんな時代じゃない、誰と誰が戦うかが大事だ」と言われると確かにそれはそうなんですが、タイトルの権威というのは大切にしてほしいと願うのです。
ともあれ、ヘイニーが選んだ道はスーパーライト級挑戦。
そしてその挑戦を受けるのが、レジス・プログレイス。
「ルーガルー(ウォーでがんすの狼男)」の異名を持つ34歳、WBC世界スーパーライト級のツータイム・チャンピオンです。
アメリカはルイジアナ州、ニューオリンズ出身、このニューオリンズはヒスパニック系の移民が多いお土地柄だそうで、プログレイスもおそらくそうなのでしょう。
なのでこの試合も、「情熱あふれるヒスパニック・ファイターvs身体能力の高いアフロ・アメリカン」という位置付けになるのだろう、と思います。
プログレイスはプロデビュー以来、その攻撃的なボクシングを持って対戦相手をバッタバッタと倒し、2018年3月にジュリアス・インドンゴ(ナミビア)を倒して世界スーパーライト級暫定王者に輝きます。
その後、当時無敗のファン・ホセ・ベラスコ(アルゼンチン)との王座決定戦で(今となっては謎の)WBC世界スーパーライト級ダイヤモンド王座を獲得。当時は正規の王座扱いだった気がします。
そしてWBSSに参戦、テリー・フラナガン(イギリス)を明確な判定で破った後、WBA王者のキリル・レリク(ベラルーシ)を6RTKOで屠り、決勝でIBF王者のジョシュ・テイラー(イギリス)との無敗対決。
この素晴らしいファイトとなった一戦で惜敗するも、再起後4連続KO勝利、この中にはホセ・セペダ(アメリカ)への11RKO勝利も含まれています。
プログレイスの素晴らしいところは、世界トップのボクサーたちと戦ってもKO率が全く落ちていないこと。キャリア初期にKOが多くても、世界レベルで戦うとKO率が下がっていく、というのはよくあることですが、KOを逃したふらながんせん、前戦のダニエリト・ソリージャ(プエルトリコ)戦でもノックダウンは奪っています。
前戦、ダニエリト・ソリージャ戦では、驚くほどの退屈ファイトとなってしまったプログレイスですが、確かにこのボクサーには波があります。テイラー戦からの復帰後も、対戦相手の質によって非常に大味なボクシングになっている時も多々ありました。
だからこそ、セペダ戦でのパフォーマンスは衝撃でしたし、今回のヘイニー戦では過去最高に仕上げてきてくれそうな予感がしますね。
ここはやはり、ルーガルーを応援したいところです。
配信情報とオッズ
配信は、DAZN。この興行はDAZN PPVでの放送、とのことで、日本時間では12/10(日)ですね。
おそらく北米でDAZN PPV、アジア等のPPVで売れなそうな地域は普通に見れるのかな、と思っていますが、どうでしょうか。この試合はアメリカでは注目ファイトですが、ヨーロッパや他の国々ではボクシングファン以外には見向きもされない一戦。
ヘイニーは前回のロマチェンコ戦もPPVファイト(この時はトップランクなのでESPN)で、価格は59.99$と比較的良心的な価格設定でしたが購入件数は15万件。DAZNも同様に比較的安価設定をすると思うのですが、一体どれくらいの人がこのPPVを購入するのでしょうか。
ヘイニーがPPVを売るには相手のファンベースに頼るしかないように思いますが、そうなるとやはりタンク・デービス(アメリカ)やライアン・ガルシア(アメリカ)に頼らざるを得ないのかもしれません。(ちなみにタンクvsキングライのPPVは84.99$で120万件。桁違いです。)
ちなみのこの興行、オッズはまだ各社出揃っていない状況ではありますが、FANDUELによるとヘイニーが-360、プログレイスが+320と断然ヘイニーが優位。
これまで見せてきたパフォーマンスが異なるのと、プログレイスのボクシングでヘイニーを崩せる気がしないこと、プログレイスの前戦のパフォーマンス、ヘイニーの盤石さ、等々、プログレイスの不利を確認する要素としては事欠きません。
ヘイニーの不安要素を挙げるとするならば、やはり階級が挙げられるのでしょうが、もともと肩幅が広く、大きな骨格のヘイニーにとって、スーパーライト級はまだ2階級目であり、階級の壁に阻まれるのはまだまだ先のような気がします。
ということでヘイニー優位は揺るがないものの、プログレイスには何とか頑張って一発当ててもらいたい。一発当てれば、決して打たれ強いとは言えないヘイニー、もしかするとチャンスが訪れるかもしれません。なのでプログレイスにはガンガン行ってもらいたいですね。
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