3/19(土)はWBC世界ライトフライ級タイトルマッチ、矢吹正道と寺地拳四朗の再戦が京都にて行われました。
おそらく多くのボクシングファンが見たとは思いますが、3ラウンドという短い時間ながら、本当に素晴らしい試合でしたね。
ABEMAの放送についても、Twitter等での皆さんの感想を見ると非常に良かったようですね。また時間を作ってみようと思います。
↓現地観戦記!
さて、翌日となる3/20(日)にはアメリカ、イギリスで注目興行が。とはいっても、この土日の最も注目度が高く、かつ、内容的に素晴らしかったのは上記の京都興行だったかもしれませんね。あの興行は、アンダーカードも素晴らしい試合が続きました。
3/19(土)の矢吹vs拳四朗戦を見て、更にさらにボクシングが見たくなったので、時間があまりない中ではありましたがとりあえず3/20のトップランク興行を視聴。
ということで今回のブログでは、日本時間で3/20(日)、エドガー・ベルランガvsスティーブ・ロールズをメインに据えた、トップランク興行の観戦記です。
3/19(日本時間3/20)ニューヨークMSG
この興行にキーショーン・デービス(アメリカ)が出る予定だとの情報だったのですが、キーショーンは病気により欠場となったようです。代わりに、というわけではないでしょうが、キーショーンの兄のケルビン・デービス(3勝2KO無敗)が登場、2勝2敗のフィリップ・カモーシュ(アメリカ)というボクサーと対戦です。
サウスポー、ケルビンはやはり逸材。開始早々に素早い動きから高速ジャブ、またダッキング等のボディムーブも非常に速いですね。初回開始30秒が過ぎたところでワンツーをヒット、ぐらついたカモーシュはロープに寄りかかり、レフェリーはロープダウンを宣告。(スタンディングダウンかも)ハーフタイムが過ぎた頃、今度は左のオーバーハンドを叩き込み、それが聞いたと見るや襲い掛かり、その後も何度も左オーバーをヒット。最後は右フックを振り抜き、転げ回ったカモーシュをレフェリーが救い出してのTKO勝利。
非常にパワフルなボクサーで、身長、リーチも大きな武器になりそうな、天性のバネに恵まれたファイター。マイキー・デービスという兄弟もいるのかな?デービス・ブラザーズ、要注目です。
続いても4回戦の試合も4勝4KO無敗というプロスペクト、アルマーニ・アルメスティカ(アメリカ)が登場、対戦相手は3勝(1KO)3敗のプエルトリカン、ルイス・バレンティン・ポータラティン。
サウスポーのアルメスティカ、こちらは低い姿勢でやや後傾の構え。鋭いステップインでジャブを放ち、スムーズなボディムーブからジャブ、左ボディストレートで攻め込みます。どちらかというとプレスをかけていくファイターに見えます。
アルメスティカは荒さのあるボクサーですが、そのストレートや右フックは迫力十分。2Rには近い距離ではスウェーを織り交ぜての攻撃で、ボディを効かせます。
この時、勢いでローブローを打ってしまい、一旦試合は中断しますが、再開後、強いワンツーから攻め込み、打ってはスウェー、また打つという非常にアクションの多い攻撃でポータラティンを攻め続けます。
終盤には左右のアッパーで顔を跳ね上げ、ダメージを与えたアルメスティカ、3Rにもポータラティンの攻撃をブロッキングしてのリターンを決めて優勢。どんどんと力がなくなっていき、ダメージを溜め込んでいくポータラティンを見て、レフェリーは試合をストップ。
アルメスティカの3RTKO勝利に終わりました。
ジャハイ・タッカー(アメリカ)6勝(4KO)無敗
vs
トレイシー・マッグルーダー(アメリカ)6勝(4KO)1敗
初回、ジリジリとプレスをかけていくのはシマウマ柄トランクスのマッグルーダー。タッカーは非常に軽いジャブ(多分拳を握っていない)を投げてサークリング。
中盤に入ると鋭いジャブを飛ばすようになったタッカー、基本的には非常に力が抜けていて、余裕を感じさせます。と思ったら素早く、鋭い攻撃を見せるという、切り替えが非常に上手い。攻撃も幅がありそうな、グッド・コンビネーションパンチャーです。
2R、タッカーはバックステップからのカウンター。このテクニカルな一撃で会場が盛り上がると、自らコーナーを背負い、マッグルーダーを招き寄せます。
攻め込むマッグルーダーに対してカウンターという姿勢を崩さず、ニュートラルコーナー近くで戦います。よく見ると、初回からマッグルーダーのパンチも当たっていないではないのですが、なぜだか余裕綽々、ルーズなガードの時に顎を撥ね上げられてもどこ吹く風。
3Rに入るとタッカーはガードを上げて、頭を振ってプレスからのコンビネーション。強いプレス、パワフルなワンツー、そして左ボディでマッグルーダーを下がらせます。
後半は下がりながらの戦いを選択したタッカーに、マッグルーダーが攻め入るという展開、ちょっと余裕を持ちすぎのように感じますね。
4Rはタッカーがサークリングしながらジャブを当て、マッグルーダーは攻めるも届かずといった印象。タッカーが無理に打ちにいかない、あからさまにカウンターを狙わない、となると、マッグルーダーのヒット数もやや下がります。
5R、マッグルーダーがしつこい攻撃を見せると、タッカーも軽いながらパンチをもらいます。当然、序盤ラウンドほどの余裕は今はありません。
しかしこのラウンドも自らコーナーに詰まり、マッグルーダーを呼び寄せたタッカー、エンターテイナー的な面白さこそあるものの、実力で見せてほしいものです。
そんなタッカーをなかなか捕まえられないマッグルーダーは体で押し込んで右のショートを叩き込みます。いいぞ、もっとやれ。
ラストラウンド、おそらくポイントは不利、逆転を狙って手数を増やすマッグルーダーに、タッカーもコンビネーションで応戦。一発一発を力強く打つマッグルーダーですが、残念ながら単発ではタッカーを追い詰められません。パンチを振り切った先にあるものは、タッカーの強烈なリターンです。最後は明らかに逃げ切りモードになったタッカー、気を抜いたところに一発くらって、試合が終了。
判定は、3-0でタッカー。これは仕方ありません。しかし、このタッカーというボクサーは、面倒臭がりなのか何なのか、手を抜いていたとすら感じます。ただキャリアを積むためだけにリングに上がった感じが、何とも。
ジョン・バウサ(プエルトリコ)16勝(7KO)無敗
vs
トニー・ルイス(カナダ)29勝(10KO)4敗
そしてここからがプエルトリカン・プロスペクト登場のトップランク興行のメインカード。
プエルトリコの応援団がものすごい数集まっているのか、バウサへの歓声は相当なもの。プエルトリコのプロスペクト祭りがいよいよスタートです。
初回、リズム良くステップを刻むルイス。期待のプロスペクト、バウサはサウスポースタンスから長いジャブを放って様子見です。
ひとまわりほど大きく見えるバウサ、強力なジャブワンツー、左ボディストレートを放ち、その打ち終わりのケアもできており、良いボクサーですね。
2R、良いリズムを刻むルイスですが、今の所バウサに対して何もできていません。近い距離でバウサの腕を抱え込み、ショートパンチ。中間距離ではバウサに当たらないし、距離の長いバウサの攻撃、特にボディはもらってしまいます。ただ、決してルイスも悪いボクサーではありません。
3Rに入ると結構ワイルドにパンチを降り始めたバウサ。ルイスはハイガードで、そのファイティングポーズは乱れませんが、中間距離ではやはり手が出ず、とにかく距離を詰めてからが勝負という戦い方を強いられます。ただし、それもバウサのピボットにより上手くはいきません。
4R、このラウンドはルイスが距離を詰め始められました。ロープ際にバウサを押し込み、左右のボディ!この攻撃が多くなればルイスのペースとなるかもしれませんが、なかなかそうはさせないバウサ。
5R、体ごと、頭から詰めるルイス!この本気度こそがボクサーです。この気迫により、距離が詰まる時間が出てきた、と言って良いのでしょう。おそらくルイスの本来の戦い方とは違う感じがします。
6R、それでもやはり中間距離ではバウサ。強い右フック、左ストレートをヒットし、ルイスが出てきてはかわします。技術に関してはバウサが1枚上手であり、またルイスのしつこい攻撃にもしっかりと対応できる等、ハートも持っています。
7R、強いパンチを打って動くことができ、自らも攻めれるバウサはやはり好ボクサー。ルイスも諦めることなく前に出続け、その手数はバウサを大きく上回っているという好試合。
ラストラウンドも展開は変わらず、ルイスからすると変えられず。強いハートを見せたルイスでしたが、バウサを捕まえ切ることはできずに最終ラウンド終了のゴングを聞くことになりました。
判定は、3-0でバウサを支持。ルイスはがんばりましたが、バウサに届きませんでした。ルイスもあのステップを見るに、どちらかというと中間距離で戦うボクサーファイターのように思いましたが、その距離で敵わじとみてプレッシャーファイターに変貌したのは良い選択だったと思います。自分の得意なボクシングで敵わなければ、不慣れであろうとも戦法を変えてでも勝利を目指す、これがボクサーにとって必要だと思います。
バウサはバランスの良い、非常に良いボクサーだと思います。階級はスーパーライト級、ニックネームは「エル・テリブレ」。非常にボクシングIQがあるボクサーで、今後が楽しみです。
ザンダー・ザヤス(プエルトリコ)12勝(9KO)無敗
vs
クインシー・ラバレス(アメリカ)12勝(7KO)2敗1分
期待の19歳、ザンダー・ザヤス。ここまで順調にキャリアを積んできていますし、デビュー当初と比べるとそのボクシングは厚みが増してきています。まだ試練と言えるような一戦はないものの、今後期待のボクサーです。
初回から素早い動きでプレスをかけるザヤス。勢い、開始早々コーナー間際で戦うことになったラバレス。中盤、ザヤスはジャブから左ボディというコンビネーションを好打。その後も落ち着いてプレスをかけるザヤス、これで19歳とはやはり末恐ろしい。
2R、ラバレスもハンドスピード、ボディムーブに優れるボクサー、しかしどうしても回転力、パンチングパワーにおいてザヤスには劣ります。
やはりロープに詰められたラバレスは、持ち前のディフェンステクニックを披露、ザヤスの攻撃を何とかしのいでいるものの、この場所から離れなければなりません。
後半、ザヤスは右ストレートからコンビネーションをヒット、ラバレスはロープに腰掛ける勢いですがレフェリーはダウンは取りません。
3R、このラウンドもロープ、コーナーに詰まった状態での戦いを強いられるラバレス。もうここはカウンターでの一発逆転を狙うしかない、という展開。
4R、非常にディフェンス勘に優れたラバレスはかなりディフェンシブな戦い。すでにサバイバルモードに突入しているのかもしれません。出すパンチといえばリターンのジャブくらいのもので、勝利への気概はあまり感じられません。
こうなるとザヤスにとっても戦いづらい。戦いづらいというより、倒しづらい。
5R、アグレッシブに攻めるザヤス、非常にディフェンシブなラバレスの構図は変わらず。このラウンド後半には、ザヤスも足を使ってサークリング、下がってラバレスに攻めさせる等の策を講じ、ほんの少しラバレスも手が出てきたか。
6R、リング中央からスタートした攻防は、前ラウンドからラバレスの手が出るようになってきたこともあって、ザヤスも攻めやすくなりました。
開始30秒過ぎ、ラバレスをロープに詰めたザヤスは左フックを効かせ、右ストレートをヒット!ボディムーブで何とか逃げ切りを図るラバレスはロープ際からロープ際にエスケープ、攻撃はほとんどできません。
7R、このラウンドも強いパンチを放っていくザヤスは、前半に左フックのダブルをヒット。このラバレスはタフネスも持っていますね。後半はサークリングを多用してラバレスを前に出させ、戦い方を変えたりもしています。
ラストラウンドはラバレスも前に出てきて打撃戦!ザヤスにとってはチャンスともいえます。頭をつけた状態からも強いパンチを打ち込めるザヤスはこの距離でも明らかに打ち勝ち、逆にラバレスのパンチにはさほどパワーを感じません。
ザヤスが倒せるか否か、という焦点のラストラウンドは、そのまま終了。
判定は、3者ともフルマークでザヤス。ザヤスはその才能を遺憾なく発揮し、付け入る隙を与えませんでした。
そしてラバレスは元々ディフェンスが良く、そしてタフネスも有していながら勝つ気がさらさらないようなディフェンシブな戦い方だったがため、ザヤスの攻撃力をもってしても倒すのは難しかったですね。
ザヤスにはまだ焦りはなく、未だキャリアを積む段階。十分な及第点を獲得したザヤスは、今後も期待のボクサーです。
エドガー・ベルランガ(アメリカ)18勝(16KO)無敗
vs
スティーブ・ロールズ(カナダ)21勝(12KO)1敗
そしてメインイベントは、かつてデビュー以来16連続初回KO勝利を記録したエドガー・ベルランガ。ここ2戦は判定勝利、そしてダウンを奪われる等もありましたが、ダウンした際はキングコングのように自分の胸を打ち付けて鼓舞し、立ち上がった姿は彼の闘争心を垣間見れる出来事でした。
現在、いっときの怪物性は薄れてきたように感じるベルランガは、GGGと戦った経験もあるロールズを相手にノックアウト勝利をつかめるか。
初回、体を振ってプレスをかけるベルランガ。ロールズはサークリングと軽いジャブで距離を測ります。
中盤に入ると、ロールズは鋭いジャブとストレートのコンビネーションを使い始めますが、ベルランガも落ち着いて対応します。体つき、パワー差は歴然としてあり、ジャブの相打ちでは(ガードはしているものの)ロールズは吹っ飛んでいるようにも見えますね。
2Rにはややプレスを強めたベルランガ。対してロールズは、既に弱気になっているのかと思うほどの戦い方。
3R、展開は変わらず。私の目には、ロールズはベルランガのプレスにビビり倒しているように見えます。サークリングというよりも逃げて回っているという表現が正しいとすら感じるロールズ。
ただ、そんなロールズを一向に捕まえきれないベルランガ。追っていきますが、その追い足はまっすぐすぎて、リングを大きく使われてしまっています。相手の行き先を防ぐような追いかけ方が必要だと思います。
4Rはやや距離が詰まった感じはするものの、展開はさほど変わらず。距離が少し詰まることで、ベルランガにとっては少し戦いやすくなったかもしれません。互いにパンチの交換が、それまでのラウンドよりはやや多い。
5R、ベルランガのパワーに慣れてきたか、基本的にはサークリングとジャブのみのロールズはこのラウンド接近戦を仕掛ける場面も作ります。徐々に力強いパンチを放つようにもなってきましたね。ただそのことは、危険な距離に入るということとと同義です。
6Rもやや手数を増やしたロールズは、7R、コンビネーションを使って攻め入ります。だいぶベルランガに慣れてきたようです。
ベルランガはというと、足使いがよろしくなく、ここまでサークリングするロールズを詰められない時間が続いているので、これはチャンス。
8R、ロールズは完全に自信を取り戻したようで、ベルランガの単調な攻撃はなかなか効果を生みません。手数でもロールズが上回る展開が続き、一発狙いのベルランガにとっては苦しい展開。
9R、ようやく強引に攻め入ったベルランガは、ガードを固めて強いプレス。多少の被弾をものともせずに距離を詰めて、強いパンチを振るいます。ロールズが打ってきたところに右アッパーのカウンター、左ボディ、ショートの右フック、やはりこのパンチングパワーは魅力的。
それでもロールズが足を使い始めると攻めあぐね、ここは大きな改善点です。
ラストラウンド、ベルランガは強いプレスから左右を強振。ロールズはまたサークリング+ジャブのボクシングに戻ってしまいましたね。
強引にいってすり潰すくらいのボクシングがベルランガにできれば良かったのですが、それはできずに終了のゴングを聴きました。
攻め手と守り手が分かれたボクシングが多かったように感じた今日のトップランク興行でしたが、個人的に非常に期待しているベルランガは良いパフォーマンスとは言えませんでした。
ロールズは序盤、明らかにビビっていて、あそこで強く攻め、行き先を防ぐような足捌きができれば、ゴロフキンよりも早く倒す事は可能だったと思います。もしくは、力押しでグイグイといってロープやコーナーに詰めて打ちまくるとか。
ベルランガは勝ちましたが、非常に残念なパフォーマンス。ちょっとこの試合では世界へのゴーサインはまだ先の話になりそうです。
ということで今回は、ESPNで放送されたトップランク興行の観戦記。
昨日(3/19)からの流れで、好勝負を期待したものの、メインは昨日と比べるべくもありませんでした。ベルランガ、ロマンあふれるパンチャーなので非常に期待していますが、ちょっと根本的に戦い方という面において改革が必要そうな気がします。このままでは、あのパンチングパワーを活かしきれません。
9Rでやったように、ガードを固め、被弾をさほど気にせず行かなければ、これ以上のパフォーマンスは見せられないし、アウトボクサー相手には苦しいかもしれません。それこそ、今回拳四朗がやったように、被弾をゼロにするのではなく、被弾の仕方、もらう場所、そういったものをパンチをもらうことありきで考えていく必要があると思いますし、あの拳四朗のスタイルを、元々体の強いベルランガがやれば驚異ではないでしょうか。まあ、(スーパーミドル級という階級だけに)被弾の仕方とか場所とか関係なく危険なのかもしれませんが。