ライトヘビー級は、好きな階級です。
これまでも折に触れて、このライトヘビー級の記事をいくつも書いてきました。
PV数は散々なものですが(笑)、このパワーとスピード、そしてテクニックが程よく融合した階級には、ボクシングのロマンが詰まっています。
特にこの「ボクシングのロマン」は現WBC・IBF世界ライトヘビー級王者、アルツール・ベテルビエフ(ロシア)に集約されていると言っても過言ではありません。
17勝17KO無敗という、現役世界王者唯一のパーフェクトレコードを持ち、そのハードパンチだけでなくテクニックがあり、血みどろになりながらも前進を止めない強いハートを持ち、そしてやや打たれ脆さを併せ持つボクサー。
今回の一戦はWBO王者との統一戦、こちらもハードパンチとハートが武器のジョー・スミスJr、彼の試合はいつも胸を打ちます。
大激闘必至、KO必至。
ということで今回は、「THE MATCH?あんまり興味ないなぁ」という人のための、世界ライトヘビー級3団体統一戦のプレビュー記事です。あ、興味あっても読んで下さい笑。
↓この興行のポスターはほんとうに秀逸。
6/18(日本時間6/19)アメリカ・ニューヨーク
WBC・IBF・WBO世界ライトヘビー級タイトルマッチ
アルツール・ベテルビエフ(カナダ)17勝(17KO)無敗
vs
ジョー・スミスJr(アメリカ)28勝(22KO)3敗
ベテルビエフはロシアで生まれ、ロシアで育ちます。アマチュアボクシングのヨーロッパ選手権で優勝、その後世界選手権でも銀メダル、金メダルを獲得し、北京五輪、ロンドン五輪への出場したオリンピアンでもあります。
アマチュアボクシング最後の対戦相手は現在のPFPの一角、オレクサンドル・ウシク。
ロンドン五輪の準々決勝でウシクに敗北し、プロ転向を後はアル・ヘイモンの傘下となり、カナダに移住、そのままカナダ国籍を取得しているようです。
プロ転向後は、とにかく倒して倒して17戦。
2017年に挑戦者決定戦の機会を得ますが、時の3団体統一王者、アンドレ・ウォード(アメリカ)は「もう証明することが無くなった」という理由で無敗で引退を表明。
とはいえ、このベテルビエフ戦は見たかった。
ウォードが当時のベテルビエフを避けた、という見方もあるのかもしれませんが、そこはそう思いたくはありません。
ともあれ、IBFの挑戦者決定戦に出場予定だったベテルビエフは、当時の王者がいなくなったがために王座決定戦に出場することとなり、これを12R残り30秒ほどのところでKO勝ち。見事世界王座を手に入れました。
その後、マッチルーム→トップランクを渡り歩いたベテルビエフは、2019年10月、WBC王者のオレクサンドル・グヴォジク(ウクライナ)と無敗王者同士の王座統一戦を実施。
これは本当に素晴らしい戦いで、もし万が一見ていない、という人がいれば見てほしい。
機動力と回転力に勝るグヴォジクは非常にうまく戦い、コンビネーションで攻めていきますが、ベテルビエフがそのパワーを誇示するとともにスキルを見せます。ともに良いところが出た、個人的にはベテルビエフのベストバウト。
このベテルビエフは、見た目は熊みたいで、思いっきりパワーに頼ったパワーファイターに見えます(見た目の話です。)が、非常にクレバーで、ボクシングの組み立てが緻密にできるボクサーでもあります。
「元ロシア人」が、カナダで受け入れてもらうために培ったこの倒すボクシングを、私は応援したい。(いや、元々パワーとフィジカルはとんでもないですが。)
↓前戦はもはやパニックホラー。血だらけの熊に襲われるマーカス・ブラウン。
対してジョー・スミスJr。こちらもまた、個人的に非常に好きなボクサーです。
ローカルレベル(NY出身)では名の知れた存在ではあったと思いますが、このボクサーに世界的な知名度を与えたのは、2016年12月に行われたバーナード・ホプキンス(アメリカ)戦だったのだと思います。
当時は22勝(18KO)1敗という戦績だったスミスは、レジェンド、バーナード・ホプキンスの引退試合の相手に選ばれました。
ホプキンスは当時52歳の誕生日を目前に控え(!!!)ている状況で、その前の試合(セルゲイ・コバレフに王座を明け渡した試合)はもう2年も前なので、その力は未知、とも言って良かったと思います。
この試合はホプキンスが「引退試合」と公言して臨んだ一戦であり、52歳目前でもホプキンスはそれなりにホプキンスでした。
そのキャリア60戦以上のレジェンドを相手に、臆することなく戦ったスミスは、ホプキンスの引退に花を添えることなく8RKO勝利。しかも、ホプキンスはリング外に叩き出されるという衝撃的なノックアウト負けを喫してしまいました。
きっとこれはある種、「良かったこと」であり、ここでホプキンスが勝利を手にしていたとするならば、また数年経って何事もなかったかのようにカムバックしてきた可能性が非常に高い。と思います。多分。ジョー・スミスJrは、しっかりとホプキンスに引導を渡し、そのバトンを受け継いだボクサーになった、と言えます。
老いたホプキンスとはいえ、初めてホプキンスをノックアウトしたボクサーとなったスミスですが、その次戦でサリバン・バレラ(キューバ)に判定負け、スターダムへの道は途切れてしまいます。初回にダウンを奪いましたが、それ以外は完敗と言って良いでしょう。
その後も再起戦を初回KOで飾るも、ドミトリー・ビボル(ロシア)のもつWBA王座に挑戦、ここでも完敗。
しかしここから、世界挑戦経験のある強豪、ジェシー・ハート(アメリカ)とのサバイバルマッチを制し、一度はコバレフに勝ったエレイデル・アルバレス(コロンビア)との挑戦者決定戦を制し、マキシム・ウラソフ(ロシア)との王座決定戦を制してWBO王座を獲得、世界王座初戴冠を果たしました。
32歳、キャリアハイを迎えているであろうスミスは初防衛戦をクリア、今回の一戦に漕ぎ着けました。
ベテルビエフは37歳、重量級とはいえ、そろそろ衰えが見えてきてもおかしくない年齢に差し掛かっています。
対してスミスの32歳というのは、紛れもなくプライムタイムを迎えていると言って良いでしょうし、最近の強豪連覇はスミスの中でも相当な自信にもなっていることでしょう。
基本的には「激闘型」と言って良い両者の戦いは、間違いなく噛み合います。ボクサーの中には、体に触れられることすら嫌がるボクサーもいますが(決してそれは間違いではありません)、この二人はさほど被弾や体に当てられることを気にするタイプのボクサーではありません。
当然、スキルも見せてくれるはずですが、その根幹にあるのは純粋な「どつきあい」であり、相手のパンチに耐えて、こちらのパンチを当てるという、非常にエキサイティングな展開が待っているはずです。
同日に行われるスタイル・ファイト、那須川選手vs武尊選手よりも確実に面白いはず。
握った拳が、汗をかく。きっとそんな一戦になると思います。体に力が入ると思うので、試合前後のストレッチを忘れずに。
セミファイナル フェザー級10回戦
エイブラハム・ノバ(アメリカ)21勝(15KO)無敗
vs
ロベイシー・ラミレス(キューバ)9勝(5KO)1敗
やや慎重なマッチメイクが目立つのがトップランク興行の特徴ですが、とんでもないカードをぶち込んできたセミファイナルがこちら。
エイブラハム・ノバというボクサーは、次期スター候補のプロスペクトの一人でしょう。そのボクシングは華麗で、現代のアメリカン・ボクシングを象徴するようなスタイルです。このスタイルには、スピードと反射神経が必要です。
前戦同様、ジョー・スミスJrと共演することになったプエルトリコ生まれのボクサーです。
金色の髭がトレードマーク、今回も自身を模したマスコットキャラクターとともに入場してくれるはずです。
そして対戦相手のロベイシー・ラミレスは、オリンピック連覇のゴールド・メダリスト。
デビュー戦で不覚を取ったものの、その後リベンジを含めて9連勝。キューバからの亡命組、ということもあって、そのキャリアは(常に負け越しのボクサーを相手にしている)アメリカン・プロスペクトとは一線を画しています。
このノバvsラミレスというのは、
「どちらがよりトップランクから期待をかけられるプロスペクトなのか」
を決める一戦であると言えます。
そう、未来溢れる28歳(ともに)ながら、すでにサバイバルマッチ感のある試合。
ともにまだ底を見せたボクサーではないだけに、ここでどちらかの底が見えると思うとなかなか厳しいサバイバル戦。
ここで負ければ、今度は逆に下から上がってくるプロスペクトたちの相手をさせられる、ゲートキーパー的な役割を担わせられる可能性もあり、この勝敗の分かれ目は今後のキャリアに大きく響くかも知れません。
放送・配信
ということで、この非常に楽しみで、且つ、見るのが恐ろしいライトヘビー級戦と、非情なる現実を突きつけられるかも知れないフェザー級戦。
このトップランク興行は、アメリカではもちろんESPNが生中継、そして日本ではWOWOW様様がオンデマンド生配信してくれます!!
本家WOWOWの生放送、とはいかないまでも、このオンデマンド生配信は本当にたくさんの試合を流してくれてありがたい。しかも試合終了直後からのアーカイブ付き。
年々、世界のビッグマッチをより多く中継してくれるようになっている感のあるWOWOWを絶対応援!
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