ヘビー級は昔から注目されている階級で、それと反して一つ下の階級であるクルーザー級というのは非常に地味。おそらくクルーザー級創設以来あまり注目されておらず、おそらくオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)が4団体王座を統一した頃がピークだったのではないでしょうか。大きければ良い、というものでもないらしい。
ただ、そのクルーザー級の一つ下、ライトヘビー級はいつ見ても面白い。
アンドレ・ウォード(アメリカ)がセルゲイ・コバレフ(ロシア)と戦ったのはもう6〜7年も前のことで、その後もアルツール・ベテルビエフ(ロシア)、ドミトリー・ビボル(ロシア)といった王者たちが猛威を奮っています。
そんな中、タイトルショットではないにも関わらず、このような素晴らしいマッチメイクが実現するのは、この階級の層の厚さを物語っている、と言えますね。
ということで今回のブログは、週末2番目に楽しみなスルドvsスミスJrのプレビュー記事。
10/7(日本時間10/8)アメリカ・ラスベガス
ヒルベルト・ラミレス(メキシコ)44勝(30KO)1敗
vs
ジョー・スミスJr(アメリカ)28勝(22KO)4敗
オスカー・デラホーヤ率いるゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)。このGBPがこれでもかというほど丁寧に育てているのが、ヒルベルト「スルド」ラミレス。
2009年にプロデビュー、その翌年にはWBCユース王座を獲得したラミレスは、いくつかの地域タイトルをコレクトした後、2016年にアルツール・エイブラハム(アルメニア)の持つWBO世界スーパーミドル級王座にチャレンジします。
ここをフルマークの判定勝利で獲得したラミレスは、メキシコ人として初めてこの階級で世界王者となりました。
この試合は大いにラミレスのポテンシャルを感じる戦いであったものの、世界タイトル獲得後の防衛戦を含め、圧倒しつつも倒せないという印象だったラミレス。王者になって伸び悩んだ感がありましたね。
このタイトルを5度防衛した後、ラミレスはライトヘビー級に転級。
やや物足りない相手ながらも、倒し方を思い出したかのように5戦して5勝5KO、尻上がりに調子を上げていきました。
メキシコ人としては珍しい、と言えるサウスポースタンス、長いリーチと恵まれた体躯、これはライトヘビー級でもまだまだアドバンテージ。パワー、コンビネーションも持っているし、フットワークやボディワークも持っている、非常に恵まれたボクサーだと思います。
しかしライトヘビー級の王者は、パーフェクトレコードを持つアルツール・べテルビエフ(ロシア)と、自国の英雄カネロに黒星をつけたドミトリー・ビボル(ロシア)。
このラミレスほどのボクサーが、挑戦者とはいえアンダードッグになることはそうそうありませんが、ビボルへの挑戦はモチロンアンダードッグでした。
2022年11月、ビボルの持つWBA世界ライトヘビー級王座へ挑戦したラミレスは、大差判定負けの完敗。ラミレスらしさはほとんど出ず、ジャバーであるビボルにプレッシャーをかけられる場面も目立った展開で、控えめにいっても良いとこなしの戦いでした。
ただ、これこそがビボルの真骨頂であり、ラミレスの良いところを全て潰してしまった結果なのでしょう。ビボルと戦うと、その対戦相手がどんなに素晴らしいボクサーでも「すごく見えない」という状態に陥ってしまうようです。
今回、ヒルベルト・ラミレスはこの手痛い初黒星からの復帰戦を迎えます。
そしてその相手はジョー・スミスJr(アメリカ)、前WBO世界ライトヘビー級王者です。
前戦はWBC・IBF世界ライトヘビー級王者、アルツール・ベテルビエフとの3団体統一戦に臨み、2RTKO負けを喫しています。初回にもダウンを奪われての2RTKO負けではありましたが、人外の怪物パンチャーを相手に積極的に攻め入る姿勢を見せ、漢を上げたスミス。
このエネルギッシュなファイトスタイル、闘争心は非常にまっすぐであり、本当に応援したくなるボクサーです。
ジョー・スミスJrの名前を全国区にしたのは2016年のバーナード・ホプキンス戦。ホプキンスはセルゲイ・コバレフに挑戦も実らず、ラストファイトの相手としてスミスを選びました。
ここでスミスはレジェンド・ホプキンスを相手に8RKO勝利という会心の大金星、しかもホプキンスをリング外に落下させるとんでもなく派手な勝利を挙げます。
この後、サリバン・バレラ(キューバ)に敗北、再起戦で勝利してドミトリー・ビボルに挑戦して敗北。正直、このボクシングではテクニシャンとの相性は良くありません。
しかし諦めない漢ジョー・スミスJrはこの二つの敗戦を糧として、実力者ジェシー・ハート(アメリカ)を破ると続いて元王者のエレイデル・アルバレス(コロンビア)を撃破、マキシム・ウラソフ(ロシア)とのWBO世界ライトヘビー級王座決定戦に臨み、これに勝って見事世界初戴冠。
初防衛をクリアしたのち、前述のベテルビエフ戦に辿り着きました。
ライトヘビー級最強のパンチャーを決める対決は、人類代表としてベテルビエフに挑んだものの、結果的には完敗。相手は凶暴な熊なのでこればかりは致し方ありません。
ともに敗戦からの復帰戦であり、ここは勝負の一戦。
特にラミレスにとっては、ここで連敗ともなるとその商品価値は大きく下がってしまいそうな気がしますね。
もちろんスミスもここで負ければ一歩どころではない後退を余儀なくされ、ここは何が何でも勝ちたいところ。
スピード、コンビネーション、テクニック、等々、ラミレスが上回っているところの方が多い。しかしハートの部分では圧倒的にスミスであり、この部分の勝負になれば勝敗は分かりません。スミスはいつも通りエネルギッシュに、アグレッシブに前進していくでしょうから、ラミレスがそれを受け止めるのか、それとも下がりながらの戦いをするのか。ともに倒せるパンチを持っているだけに、目の離せない一戦となりそうです。
配信情報とオッズ、アンダーカード
このラミレスvsスミスのオッズは、ラミレスが優位。ラミレスはビボルにしか負けていない、というのが大きく影響しているのでしょうが、ライトヘビー級での実績はスミスの方が上です。
ラミレスが-300、スミスが+200くらいのオッズの開きですが、もっと差はないような気がします。
なお、アンダーカードでは12勝9KO(1敗)のベクテミル・メリクジエフ(ウズベキスタン)が登場です。2021年にまさかの敗北を喫したガブリエル・ロサド(アメリカ)に前戦でリベンジ、ここからまたKOを積み重ねていけるか。対戦相手はアランテス・フォックス(アメリカ)、デビッド・モレル(キューバ)への挑戦権があるタイトルチャレンジャーです。
とはいえ、モレルを相手には何もできない4RTKO負け、メリクジエフとしてはここを快勝し、世界タイトル戦線に絡んでいきたいところ。(スーパーミドル級での世界タイトルマッチは遥か高い壁ですが。)
おそらくこの試合がセミファイナルだと思うので、この興行はセミ、メインが要注目。
ライブ配信はDAZN、配信開始は日本時間10/8(日)9:00からです。
おそらくメインはいつも通り、お昼頃でしょう。これは必見です。
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