Showtimeで放送されたPBC興行。
メインはマーク・マグサヨvsレイ・バルガスという注目マッチながらも、日本での放送はありませんでした。これは残念。
前戦で絶対王者ゲイリー・ラッセルJrを攻略して王座についた初防衛戦で、一階級下の元王者を迎えるマグサヨにとっては、厳しい戦いが予想されます。
マグサヨは思い切りの良いボクサーなので、是非ともバルガスの長い距離を打ち破り、勝利を手にしてもらいたい。
そしてセミも注目、ブランドン・フィゲロアvsカルロス・カストロ。ルイス・ネリに勝ったフィゲロアと、非常に評価が高かったですがネリに敗れてしまったカストロの一戦は、WBC世界フェザー級挑戦者決定戦と謳われています。
セミセミにはプロスペクト、フランク・マーティンが曲者、ジャクソン・マリネスと戦うというマッチアップ、今回のブログでは、注目試合だらけのPBC興行の観戦記です。
↓プレビュー記事
7/9(日本時間7/10)アメリカ・テキサス
フランク・マーティン(アメリカ)15勝(11KO)無敗
vs
ジャクソン・マリネス(ドミニカ共和国)19勝(7KO)2敗
おそらく下馬評は勢いのあるマーティ優位も、ロランド・ロメロに実質勝利していたマリネスは侮れません。
初回のゴング。
ともにジリジリとサークリング、まずは様子見のジャブ。低く構えるマーティン、入り際を狙うマリネス。非常に緊張感のある立ち上がりです。
お互いに距離が遠く感じているか、遠くから勢い良く踏み込む分、打ち終わりが怖い。
2R、マーティンがややペースアップ。細かなフェイントを入れながら先手をとり、自ら流れを作っていきます。
マリネスが攻め込めば素早いバックステップでかわし、サイドステップも織り交ぜて多角的な攻撃を展開していきます。マリネスは単発気味なのが惜しいところで、マリネスのバックステップについていけません。
後半にはマーティンの左ストレートがクリーンヒット。
3R、マリネスモテ数を増やして対抗、しかしやはり体全体のスピードは圧倒的にマーティン。マーティンのコンビネーションにややついていけていないマリネス、ブロッキングでしのぐも体が泳ぎます。マリネスはプレスをかけてマリネスを下がらせる場面もありますが、すでにマーティンのペースです。
4R、中間距離でのフェイント合戦からヒット&ランで上手く戦うのはマーティン。マリネスもタイミングよくマーティンの入り際を狙いますが、やや粗く、クリーンヒットとまではいきません。
マーティンは打ち終わりのケアが素晴らしい。
5R、ゆったりのリズムから、どちらかが(ほぼマーティン)が踏み込めば一瞬にしてスピーディな攻防となります。マーティンの攻めは多彩で、常に先手をとる事からここまではマーティンの方がクリーンヒットが多いはずです。
マリネスは常に後手に回ってしまうところを何とかしなければ、ずるずるいってしまいそう。
6R、マーティンはかねてからマリネスのボディに左ストレートをヒットしていますが、このラウンドも執拗に左ボディストレートから右ボディ。
ただ、このラウンドはマリネスのリターンも単発気味ではなく、しつこく手を出し始めたような印象を受けます。
7R序盤、マーティンはストップを狙っているのか非常にアグレッシブに攻め入ります。それに呼応するかのようにマリネスも手数で応戦、マリネスはまだ恐ろしいパンチを持っています。
やや落ち着いた中盤を過ぎ、後半にはマーティンが左ストレートをヒット。会場を湧かせます。
8R、引き続きマーティンはアグレッシブ。ジャブから左ボディで攻め込み、コンビネーションにつなげるとサイドにまわりこんでまたコンビネーション。マリネスはこの攻撃スピードについていけないものの、打ち終わりには必ず強い左右フックをリターンして意地をみせます。
ここから手数を出すマリネス、マーティンのどんな攻撃にも必ずリターンを返し、マーティンの追撃を分断するとともに困らせます。
9R、マーティンの攻撃はスピードが豊かでパワフルですが、その攻撃を受けてバランスを崩しながらもリターンを怠らないマリネス。これはマーティンにとっては嫌でしょう。
中盤以降、マーティンは中間距離からのコンビネーションに終始。あまりに近寄るとマリネスの反撃にあうためでしょうか。
そして終盤、中間距離で効かされたマリネスはやや後退、ここでマーティンは近づいてラッシュ!マリネスはダウン!
マリネスが立ち上がったところでゴング!
ラストラウンド、強いプレッシャーをかけていくマーティン。プレスをかけながらも非常に冷静で、上下に分けたコンビネーション、最後の右フックをヒットしてマリネスは後退!
ロープに詰まったマリネスに対してマーティンはラッシュ!フルスイングに近い左右のフックをヒットするとマリネスはロープにより掛かるようにダウン!レフェリーは試合をストップ!
フランク・マーティン、10RTKO勝利!
強かったですね、フランク・マーティン。難敵ジャクソン・マリネスに対して見事な勝利。マリネスは非常にがんばり、マーティンを困らせましたが、及びませんでした。
ブランドン・フィゲロア(アメリカ)22勝(17KO)1敗1分
vs
カルロス・カストロ(アメリカ)27勝(12KO)1敗
フィゲロア、カストロ、ともに再起戦となる一戦。個人的にはフィゲロア応援ですし、フィゲロアの勝利予想です。しかし、勿論カストロは侮れません。
注目の一戦、ゴング。
まずゴングと同時に突っ込んでジャブを放つのはフィゲロア!ですが、その後はまだいつものファイトを見せません。左右にスイッチしながら中間距離でフェイントをかけ、ややプレスをかけつつも連打は出ません。
ただ、今日のフィゲロアは非常にキレがありますね。カストロはリズムよくステップワーク、右フックカウンターを狙い、こちらも調子が良さそうです。
2R、徐々に揉み合いの展開が多くなってきました。ということはフィゲロアのペースになってきた、ということでしょうか。カストロはフィゲロアの入り際のカウンター、これはタイミングがよく、怖い。一度中に入られるともみくちゃにされるカストロは、どうにかこの中間距離あがりで戦いたい。
後半、近い距離でもカストロは幾度となくフィゲロアに右アッパーをヒット、何度もフィゲロアの顔を跳ね上げます!そしてこのアッパーを喰いながらも前進を続けるフィゲロア、いつもの調子が出てきました。
3R、真骨頂を発揮しはじめたフィゲロア、序盤にオーバーハンドをヒット、当然ミスブローも多いですが、やっぱりこの攻撃は恐ろしいほどしつこい。
中盤、ロープに詰まったカストロを飽くなき手数で押しまくったフィゲロアは、ここでダウンを奪取!カウントを聞くカストロは心折られたか、と思うほど微動だにしません!
カウント9ですくっと立上がったカストロに対して、フィゲロアはまたもラッシュ!1分近く、連打の嵐にさらされるカストロ、レフェリーが近寄ると一発だけ返してストップを免れます!
4R、フィゲロアに打ち疲れというものは存在しないのか、やや静かな序盤を過ぎるとまたもプレス。カストロはロープ際でしっかりとディフェンス、サークリングしてエスケープ。
ロープ際、カストロのサイドステップは冴え、フィゲロアのミスブローを誘うとともにアッパーを幾度もヒット。前ラウンドで受けたダウンと、前ラウンド終盤に受けたラッシュのダメージは感じさせません。
5R、プレスをかけて、踏み込むフィゲロア、それをサイドステップでいなしてカウンターをとるカストロ。この構図は変わりません。
フィゲロアがロープに詰める場面もあれば、カストロがアッパーをきれいに入れる場面もあるという一進一退のラウンド。カストロは戦い方がハマってきたようなイメージです。
6R、序盤にカストロの右アッパーカウンターがヒット。これは非常に巧い。やはり徐々にカストロペースになって来ている気がします。
フィゲロアはサイドにまわるカストロを追いかけ、どんな体勢からでもパンチを繰り出していきます。
しかしカストロも手数を増やし、中盤には体で押して今度はフィゲロアをロープに詰めます。
ここでフィゲロアばりに細かな乱打のカストロ!しかしここはフィゲロアの土俵!
フィゲロアはカストロを倍以上の手数で押し返し、体を入れ替えて今度はカストロがロープ際!ここでフィゲロアの連打、連打!!というところでレフェリーが割って入り、試合はストップ!
ブランドン・フィゲロア、6RTKO勝利!
最後のストップがやや早かったのは、レフェリーとしては3Rで止め時を逸してしまったから、なのかもしれません。
カストロはこれをしのげばまだやれそうな感じがありましたが、この試合2度目の「防戦一方」になってしまったのも事実。ともかくこれは良い試合でしたね。カストロもよく頑張りました。
WBC世界フェザー級タイトルマッチ
マーク・マグサヨ(フィリピン)24勝(16KO)無敗
vs
レイ・バルガス(メキシコ)35勝(22KO)無敗
メインイベント、マグサヨvsバルガス。体格、リーチ、そしてそのアドバンテージを最大に活かしたボクシングをする、レイ・バルガス。果たしてもし、このバルガスが自分の教え子であるならば、安全圏でボクシングをする様を褒め称えるでしょう。
しかしこれはプロボクシングであり、やはりどこかでエキサイティングさは必要です。
もともと倒せるボクサーであり、もしマグサヨと打ち合ってくれれば好試合になりそうですが、そうはいかないでしょう。
なのでマグサヨ応援です。
初回のゴング!
やはり体格差はありますね。マグサヨはしっかりとガードを固めたポジションから鋭い踏み込み。早々に右ストレートをヒット!
バルガスも鋭いジャブ、ワンツーを飛ばして応戦。バルガスはカウンターも狙っていますが自ら攻める場面も多く、やはりタイトルへの意気込みを感じる立ち上がりです。
どうでも良いがバルガス陣営のナチョ、リングインが非常にゆっくり。年をとったなぁ。
2R、バルガスは左ガードを下げます。マグサヨのステップインは見切ったのか。しかし中盤、バルガスのジャブの打ち終わりに右オーバーハンドをヒットしたところでバルガスは左ガードを掲げ、その後マグサヨの右に対して右カウンター!
効いた素振りを見せないマグサヨは体の強さを感じさせますね。
マグサヨは初回、バルガスの攻撃に対してバックステップを使っていましたが、このラウンドはブロッキングを使い始めています。ダメージは負うものの、距離を詰められる分、その方が良いでしょう。
3R、マグサヨは相打ち狙いか。お互いの体にパンチがあたったときは、バランスを崩すのはバルガス。このマグサヨの戦法は間違っていないように思います。
それを感じたバルガスは一発打ったら下がる、というボクシング、リーチがある分これは非常にやっかい。
ここまでクリーンヒットどころか主導権においても、どちらが勝っているか全くわかりません。
4R、今日のバルガスは、ステップを使いながらも非常にパワフルに見えます。そしていつもよりも動きがスムーズで、更にアグレッシブでもあると思います。ベストな状態に仕上げてきたバルガスに対して、マグサヨは強気に攻めようとしますが、バルガスの強いジャブ、右ストレートに阻まれます。
5R、序盤にバルガスが右ボディアッパーをヒット。マグサヨはちょっと苛ついているのか、非常に強引に踏み込み、左フックを強振。飛びかかるようなステップインは相手からすると怖さがあると思いますが、レイ・バルガスは非常にクレバーです。
ただ、マグサヨのパワーに押されているようにも見えるバルガス、ちょっとバランスを崩す姿が散見されますね。
クリーンヒットの数はバルガスかもしれませんが、印象的なヒットはマグサヨという印象で、終盤にもマグサヨの右でバルガスはバランスを崩します。
6R、マグサヨの踏み込みは、まるでパッキャオのよう。飛び跳ねるようなステップイン、リングの端から端までを一瞬で移動できる踏み込み。それにバックステップで対応できるバルガスも異常ですね。
このラウンドは距離が詰まりすぎる場面も多いですが、バルガスがアグレッシブで良い感じ。
インターバル、バルガスは左まぶたをカットしていますね。ヒッティングかバッティングかは解りませんが、これはマグサヨチャンスか。
7R、どちらにも傾かないシーソーゲームは後半戦に突入。マグサヨは鋭い踏み込みからよく攻めますが、攻め入るマグサヨに対してバルガスもパワフルな連打を出し、譲りません。
8R、バルガスの長いジャブは非常に厄介で、そこに右アッパーを織り交ぜてくるのでなかなか近づけないマグサヨ。近づいたら近づいたでバルガスはクリンチ、このあたりの戦い方は非常に巧い。
しかしバルガスが打ち返すときはマグサヨのチャンスタイム、このラウンドも後半に右を2発ヒットします。
9R、バルガスの長いジャブ、コンビネーションにステップインが阻まれてしまう時間の多いマグサヨ。近づけばクリンチで分断され、なかなか思うように攻められていません。
しかし、稀にカウンターを狙って打ち返してくるバルガスの一瞬の隙をついて右をヒット、バルガスはマグサヨにもたれかかるようにダウン!!
残り時間は27秒、再開後思いっきり右を振り回し、バルガスに体ごとかわされるとロープに突撃したマグサヨ!この突進力は素晴らしい笑。
それこそリングの端から端までバルガスを追っていったマグサヨでしたが、それは実らず、ゴング。
10R、ほんの少し、足が鈍くなっているように見えるバルガスは、長い距離でのボクシング。マグサヨは当然のごとく攻め入り、距離が詰まればバルガスはクリンチ、これもこれまで通り。ただ、揉み合いの中で幾度かグローブをリングにタッチしたバルガスは、明らかにバランスを崩しやすくなっています。やはりダメージはありそうです。
マグサヨは大チャンスですが、バルガスがダメージをひた隠しているために攻めきれず。
11R、リングを大きく使い、ステップワークのバルガス。少しでもダメージを回復させようというところで、基本まっすぐしか追えないマグサヨの攻撃はやや空転気味。
少しずつ、回復してきたマグサヨは、中盤左フックカウンターをヒット!マグサヨはこれで少し腰が落ちたようにも見えました。それでも強気のマグサヨはジリジリと距離を詰めていきます。
ラストラウンド、丁寧にリードブローから右へつなげるバルガス。打ち終わりには必ずバックステップ。対してマグサヨは強引に攻めるという場面もつくり、最大限カウンターに軽快しつつプレッシャーを与え続けます。
これは非常に難しいラウンドばかりですね。。。採点は割れそうです。
ラストラウンド終了のゴングがなると、両者ともに勝利をアピール。
判定結果は、112-115×1、114-113、115-112でレイ・バルガス!!!
これは非常に残念。。。マグサヨは本当に惜しい星を落とし、初黒星。
レイ・バルガスが2階級制覇を達成しました。
マグサヨほどの突進力をバックステップで対応し、ときに自ら攻めてしっかりと試合をつくってみせたレイ・バルガス。この試合は、バルガスにとってもベストバウトのひとつに数えられるのではないでしょうか。
判定が伝わったあとのバルガスの喜びぶりを見ると、この試合に賭ける意気込みが相当なものだったとわかります。
今回はほんとうに素晴らしい戦いでした。
ただ、最終的にどちらがダメージを被っていたのか、というとバルガスだったような気もします。この試合はどちらが勝ってもおかしくはなかったと思いますので、マグサヨだって自信を持って良いでしょう。しかし残念。
バルガスの次戦はブランドン・フィゲロアでしょうか。フィゲロアは、マグサヨほどの迫力はないにしても、とにかくしつこいファイターです。これも楽しみな一戦ですね。
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