続く先週末の観戦記。
8/21(日)に行われた海外興行、最後の観戦記は、Showtimeで放映されたPBC興行です。
Showtime興行というのはいつもだいたい3試合の放送ですが、今回は延期されたブランダン・リーの一戦も含めて4試合。4時間超の放送です。
最初にメインに登場するボクサーのハイライトから始まりますが、もちろんオマール・フィゲロアのハイライトでは荒川仁人戦が登場していますね。
ともに日本人ファイターとの対戦経験のあるフィゲロアvsリピネッツはWBCの挑戦者決定戦、これは非常に楽しみな一戦です。
ということで観戦記、行ってみましょう。
↓プレビュー記事
8/20(日本時間8/21)アメリカ
ブランダン・リー(アメリカ)25勝(22KO)無敗
vs
ウィル・マデラ(アメリカ)17勝(10KO)1敗3分
開始のゴング、自信満々でプレスをかけるリー。マデラはしっかりとガードポジションをキープしながら、サークリング。緩急をつけたジャブを突き、相手の出方を窺うリーは、パワーだけでなくインテリジェンスを感じさせるボクサーです。
後半に行くに従い、リーのプレスがより機能、ボディを交えたコンビネーションをヒットしています。
2R、リーはプレスをかけつつコンビネーションで攻め、マデラがでてくればスッとバックステップ。非常に落ち着いたボクシング。
マデラはハイガードからリーの打ってきたところで中に入ろうと試みますが、やや押され気味。マデラはすでに右目付近から出血。
3R、かなり余裕を持った戦いをするリーは軽めのコンビネーションでマデラを攻め立てます。マデラはヘッドムーブを意識し、非常に低く入りますが、ちょっと近づけません。しかし、残り30秒を切ったところでリーのジャブの打ち終わりに、マデラの渾身の右クロスがヒット!
リーはダウン!!!かなりのダメージがありそうです!!
立ち上がったところで残り時間は14秒、攻め立てるマデラ、距離をとってエスケープするリー!なんとか終了ゴング!!
ななななな、なんということでしょう。。。!!素晴らしいカウンターでした。。。
4R、リーのダメージはどうか。先程のラウンドのダウンは、決して直ぐに回復するダメージではなく、やはりマデラに攻められるリー。序盤をクリンチで凌ぐと、中盤にはカウンターを打ち返して反撃を始めます。
まだ完全に回復しているとは言えませんが、しっかりと打ち返すあたりは回復力と気持ちの強さを感じます。
1〜2Rと違い、マデラが前に出る展開ではありますが、リーはしっかりとボクシング、特にジャブが素晴らしいです。マデラはこのラウンドで全身全霊を込めて行きたかったですね。。。
5R、マデラは低い姿勢からボディで攻め込み、鋭い右クロス。このパンチをしっかりと気をつけるリーはコンビネーションを打ち返し、体にパワーが戻ってきた感じです。
6R、相変わらず怖さのある鋭い右クロスを放つマデラですが、リーは素晴らしいジャブをもって右クロスの位置まで近づけさせません。序盤のように余裕のプレスをかけるわけにはいきませんが、ハイガードのマデラに対して空いている所にパンチをコネクト、このあたりは本当に素晴らしい。そして何よりも、修正能力の高さも感じますね。
7R、3Rのダウンからの立て直しが素晴らしいリー、今日はその事があったからか慎重な戦いを行っています。しかし、マデラの攻撃力も侮れず、中盤に左フックカウンターをヒット。
ヒット数は明らかにリー、ですがマデラも時折強いパンチを届かせています。マデラは基本的にブロッキングが良く、良いボクサーです。
8R、比較的リング中央、だいたい中間距離〜接近した場でともに打ち続けている印象で、ふたりともよく手数が出ます。リーがテクニカルに左アッパーを決めると、マデラもロングの左フックを決める、という展開。
9R、開始早々からマデラがチャージ。手数を増やしてリーに迫ります。ブランダン・リーというボクサーは、コンビネーションやパワフルな右ストレート、強い左フックというイメージでしたが、今日は非常にジャブが良い。この力強いジャブでマデラの突進を阻み、自身のコンビネーションへとつなげています。
ラストラウンド、先に攻め入るのはマデラですが、リーはジャブとコンビネーションのリターン。そのまま試合は終了。
判定は、3者ともに98-91でブランダン・リーを支持。
リーは新たな強さを見せた、と言って良い試合だったと思います。初めて(だと思います)のピンチを経験し、そこからしっかりと立て直した、メンタルの強さ。そして、素晴らしいリードブロー。
マデラは良く頑張りましたが、及びませんでしたね。
WBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ
ロジャー・グティエレス(ベネズエラ)26勝(20KO)3敗1分
vs
エクトル・ルイス・ガルシア(ドミニカ共和国)15勝(10KO)無敗3NC
1試合目から長くなってしまったので簡潔に行こうと思います。書きながらまとめる力がほしい。アップセット男、ガルシアか、意外とテクニシャンのグティエレスか。
初回、低めのガードからサウスポー、ガルシアが攻めるタイミングを窺います。グティエレスはハイガード、このボクサーはあまり体の柔らかさを感じないボクサーで、距離をコントロールし、下がりながらの方が良いボクシングが出来ていたイメージ。
そのイメージどおり、ガルシアの左ストレートを外す事ができず、ガードの上からとはいえまっすぐに浴びてしまい、上体が後ろに傾くのであまり見栄えがよくありません。
2R、ガルシアは右ジャブをポンポンとだして左につなげます。これはスピードはありませんが、グティエレスはこれを外せないので効果的。グティエレスはリターン狙いなのか、それともガルシアのジャブが邪魔で先手を取れないだけなのか、微妙なところ。
3R、グティエレスは勝つために必要不可欠である、距離のコントロールができていません。ガルシアは左を当て放題、これはグティエレスにとってかなりきつい展開。グティエレスの右はしっかりと外され、ボディのリターンを喰らってしまいます。
4R、このラウンドもやっぱりガルシアの左ストレートがファーストヒット。この左はよく伸びるのでしょうか。そういえばコルバートからダウンを奪ったのも左だったと思います。
後半、ようやくグティエレスのジャブが当たりはじめましたが、直後、ガルシアが強い左ストレートをヒット!
5Rも展開は変わらず。ガルシアはジャブも良いですし、相手のリターンに対するリターンも良い。6Rも鋭くダブルジャブからの左ストレートで攻め込むガルシア。このダブルジャブと大きな踏み込みこそ、ガルシア最大の武器だと思います。これをつかってグティエレスを追いかけるイメージでしたが、グティエレスはその場に留まる事が多く、ひどく省エネボクシングに思います。あるいは、ガルシアのこの鋭い踏み込みに対して、距離をつくる事はできないと判断してのこのボクシングなのか。
7R、このままではまずいグティエレスは、勝負をかけなければいけないのではないでしょうか。Showtimeの非公式採点でも、このラウンドまではフルマークでガルシア。そしてこのラウンドも、クリーンヒットこそ少ないものの、ガルシアでしょう。
8R、グティエレスが攻められない理由がよくわかりませんが、このラウンドグティエレスはほとんど手が出ません。攻めれば帰ってくるガルシアのリターンが強いのか、距離が遠く感じすぎて攻め入る事ができないのか。
9R、グティエレスがとうとう肚を決めたか、ガードを固めて距離を詰めます。ただ、この距離ならグティエレスが勝るか、というとそうでもありません。近い距離でもガルシアはしっかりと手数を出し、力強いパンチを放ちます。この打撃戦に会場は大盛りあがりです。
10R、グティエレスが勝つにはもう倒し切るしかないでしょう。このラウンドは開始直後から猛然とチャージしたグティエレス、ガルシアをロープに押し込んで強い右ストレートをヒット!逆転に望みをつなぎます。
11R、前ラウンドがベストラウンドになったグティエレスは、このラウンドも前進して勝負をかけます。しかしガルシアはリードとボディムーブでグティエレスの攻撃をいなします。ただ、ガルシアもさほど手は出ていませんので、ここはどちらに振るか微妙なラウンドでもあります。
ラストラウンド、果敢に攻めるのはグティエレス!ガルシアはその打ち終わりにコンビネーションで対抗、しっかりとマイペースを貫き通して12Rを戦い抜きました。
判定は、117-111×2、118-110でエクトル・ルイス・ガルシア。
グティエレスはちょっと、いやかなり、巻き返しが遅かったですね。エクトル・ルイス・ガルシアには非常に注目、ですが、やはりシャクール当たりとは比べるべくもありません。
日本人ボクサーの挑戦を待ちたいものです。
WBA世界スーパーライト級王座決定戦
アルベルト・プエリョ(ドミニカ共和国)20勝(10KO)無敗
vs
バティル・アフメドフ(ウクライナ)9勝(8KO)1敗
挑戦者だったドミニカン、エクトル・ルイス・ガルシアは見事世界初戴冠。プエリョはそれに続けるか。
さて、ゴング。
まずは開始早々速いコンビネーションのプエリョ。アフメドフはジリジリとプレスも、プエリョはかなりデカく、リーチも長い。これを詰めるのには苦労しそうです。
スーパーフェザー級戦よりも明らかにハンドスピードの速いプエリョ、スーパーライト級において反則的なハンドスピードを誇ります。その上、(二度目ですが)でかい。本当にでかい。そして本当に速い。
下がり、回り、くっつき、自在に距離を操るプエリョ、アフメドフはより強いプレスをかけていかなければいけません。
2R、忙しくポジションを変え、体を動かし、攻め入るアフメドフですが、下がりつつ俯瞰して見ている感じのプエリョはそこに強いパンチを打ち込みます。初回に比べると、ややプエリョがロープに詰まる場面が出てきたか。
3R、アフメドフのプレスをかわし、ワンツー。もしくはボディ。ここでもプエリョが完璧にコントロール。序盤の3Rはアフメドフはプエリョについていけていません。
4R、打たれながらも前に出る、アフメドフ。近づいてからの手数も出だし、このラウンドはプエリョがロープ際で戦う場面が増えている気がします。いよいよ、アフメドフのプレスが効いてきたか。
アフメドフはボディから攻めているのが良い感じです。
5R、かなりアフメドフのプレッシャーが効いてきた感じ。プエリョも左カウンター、右のダブルなどで打ち返しますが、やはり距離が序盤よりも近く、アフメドフの距離。アフメドフの方がコンパクトなパンチの回転力に優れ、手数もよく出ています。
6R、アフメドフが執拗に距離を詰めます。しつこくしつこくプエリョにくい下がり、距離を詰めて左右の連打。これはプエリョにとってはメンタルも削られる展開です。
特にラスト30秒は圧巻で、追いかけながら打ちっぱなし!もしかすると、このラウンドでアフメドフは振り出しに戻したかも知れません。
7R、のしのしと歩いて距離をつめるアフメドフ、プエリョは明らかにそれを嫌がっています。しかしプエリョも大したもので、闘志は衰えず、しっかりとアフメドフの入り際にカウンターを狙い、コンビネーションを放ち、打たれたら打ち返します。このコンビネーションが美しく、そして速い。
8R、エネルギッシュなアフメドフは、またもグイグイといきます。この調子で最後まで行くのか。プエリョも力強いパンチを打ち返して譲らず、両者は非常に危険な打撃戦を展開します。
プエリョは体型的にもっと脆さがあるボクサーだと思っていましたが、心身ともに非常にタフなボクサーです。
9R、Showtimeの採点ではここまででドロー。距離的にはアフメドフの距離ですが、プエリョも素晴らしいコンビネーションを返しており、判定はもうわかりません。
アフメドフのパンチは非常に硬質なものですが、プエリョのパンチは非常にキレのあるもので、おそらく印象的なパンチはプエリョの方が多そうなイメージ。ただ、手数はアフメドフで、ヒット数もアフメドフが勝っていそうです。
10Rも前に出るアフメドフと、迎え撃つプエリョ。ここに来てもまだ二人とも相手を倒せるパンチを持っているだけに、ここからどのように転ぶかまだわかりません。なんというタフファイト。
11R、プエリョは非常にアングルが良く、そのコンビネーションは非常に印象的にヒットします。アフメドフは旺盛な手数で、常に前進しながら攻め入ります。このチャンピオンシップラウンドでも同じで、やはりどちらにポイントをつけるかは好みによるのかもしれません。
ラストラウンド、ここはもう二人とも行くしかありません。プエリョも前に出て、一歩も退かずに打撃戦。ラウンド前半、プエリョの的確なコンビネーションがアフメドフを襲いますが、後半はアフメドフが馬力でカバー、終盤にも猛ラッシュをかけて試合が終了。
素晴らしいタフファイト、判定は、ジャッジ2者が117-111でプエリョ、残る1人が115-113でアフメドフ、というスプリット判定。
思った以上にプエリョにポイントがついた、という一戦となりましたが、微妙なラウンドをおおよそプエリョにつければこうなってしまうので、こればかりは致し方ありませんね。
正直ドローでも仕方ない、くらいの大激闘でしたが、勝利の女神はアルベルト・プエリョにほほえみました。
スーパーライト級12回戦
オマール・フィゲロア(アメリカ)28勝(19KO)2敗1分
vs
セルゲイ・リピネッツ(カザフスタン)16勝(12KO)2敗1分
さて、いよいよメイン。ですが、メインまでにたくさんの大激闘を見て疲れました笑。
それでもリピネッツ応援のため、視聴を続けます。
初回からいきなりバチバチ!当然のようにフィゲロアが攻め込み、リピネッツも迎え撃ちます。フィゲロアは体で押し込んでいき、リピネッツはロープに詰まりますがそこから左アッパー、そしてサイドステップを駆使してリターン。
リピネッツは左のボディ、そして左フックを強く振るい、この左フックで一瞬フィゲロアの動きが止まったようにも見えました。両者とも1stラウンドからフルスロットル、これは最後までいきそうにありません。
2R、グイグイとプレスを掛けて前にくるフィゲロアに対して、リピネッツのボディショット、アッパーカットが非常に有効。フィゲロアの左右のフックはリピネッツの固いガードに阻まれ、体では押して行くもののフィゲロアには苦しい展開か。
リピネッツは、ボディ、アッパーともに縦のパンチを出していましたが、後半、フィゲロアの攻撃を距離で外してからの右フック!これでフィゲロアはダウン!!
その後、やや大ぶりになったリピネッツでしたが直ぐに修正、終盤にかけてアッパー、ボディでフィゲロアを削りました。
3R、それでも闘志の衰えないフィゲロアは体で押していきます。リピネッツもそれを受けて立ち、押されながらも強いパンチを打ち返します。やはりここでもより的確なパンチを放つのはリピネッツの方。
続く4Rも同様の展開ですが、序盤のラウンドと違い、リピネッツがロープに詰まる事はほとんどありません。
5R、打撃戦野中で少し距離が空いています。これはリピネッツの距離なのか、リピネッツのパワージャブがよくヒットし、右ストレートもバンバン決まります。この距離では見栄え的にもリピネッツが良い上、フィゲロアは心配になる程のダメージを被ってしまいます。
体をくっつけあった超接近戦から、中間距離の打撃戦へ移行したラウンド、ですが優勢は変わらずリピネッツ。これはフィゲロアのプレスが弱まっている事の現れのような気がします。
6R、これではいけないと距離を詰めたフィゲロアでしたが、離れ際にリピネッツの右!その後も下がりながらパワーパンチをヒットするリピネッツ、フィゲロアは大丈夫か??
リピネッツのジャブへの反応も非常に鈍くなっているようにも見えます。フィゲロアはとにかく体を寄せていく事しか出来ていないイメージで、リピネッツはそれを引き剥がしてパンチをヒット。
7R、ここまでのShowtimeの非公式採点は、リピネッツのフルマーク。このラウンドもリピネッツは前進するフィゲロアに対して下がりながらのパワーパンチ、突き刺すようなジャブから強い右ストレート、飛び込んでの左フック、多彩なパンチをフィゲロアにヒットします。
8R、フィゲロアのプレスはかなり圧が弱まってしまっています。逆にリピネッツにプレスをかけられ、下がってしまうフィゲロア。リピネッツのジャブへの反応も鈍く、徐々にパンチも出なくなってきてしまいました。終盤、ロープ際のフィゲロアに対して、リピネッツはラッシュ。
このラウンド終了後、コーナーに戻ったフィゲロアに対して、トレーナーが手をふる素振り。その後、フィゲロア陣営の棄権ということでレフェリーは試合をストップ。
セルゲイ・リピネッツ、8R終了RTD勝利!
リピネッツは完勝、と言って良い内容でしたね。
心配なのはフィゲロアで、これまでの激闘に次ぐ激闘により、心身ともにダメージを溜めすぎているのかもしれません。
リピネッツはこれでWBC世界スーパーライト級の指名挑戦者となり、ホセ・セペダvsレジス・プログレイスの勝者への挑戦権を獲得しました。
リピネッツを応援していましたが、フィゲロアの負けっぷりを見てしまうと、何だか心がざわつきます。フィゲロアはグローブを吊るした方が良いのでは、と思っていましたが、どうやら引退表明、とのことですね。
激闘型ファイター、オマール・フィゲロア。その最後の試合も、激闘でした。おつかれさまでした。
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