みんな大好き、ノニト・ドネア。
もともと親日家であるドネアは、その謙虚な人柄からか日本でも大人気。
2019年11月には日本の誇るモンスター、井上尚弥(大橋)と非常に濃密な12ラウンズを堪能させてくれて、2022年6月の再戦では2RTKO負け。それでも、井上初戦からの敗戦後にはバンタム級トップクラスの実力を誇示し、井上戦に至るまでを大いに盛り上げてくれたことは本当に素晴らしい。
そんなノニト・ドネアが、かねてからの噂通り、スーパーフライ級参戦を明言。
日本時間で8/5(金)の朝に流れたこのニュースは、非常に心躍るものでした。
ということで今回のブログは、ノニト・ドネアのインタビュー記事についての所感。
↓おそらく第一報を報じたのはボクシングシーン。
ノニト・ドネアはあくまでもバンタム級の4団体統一を目指す
この記事は、結果的にはドネアが今後スーパーフライ級で井岡戦、ロマゴン戦に興味を持っている、というものです。
しかし、その前段として、「バンタム級での4団体制覇を成し遂げる前に」という言葉が入っています。
あくまでもドネアの目標は、バンタム級での4団体制覇であり、おそらくそれは井上尚弥がこの階級にいる限りは不可能(既に2度負けており、もう一度というチャンスをもらえないということはドネア自身がよくわかっているため)だとの判断なのだと思います。
この「バンタム級で4団体制覇を成し遂げる前に」というのは、まさに「今」。今年11月に40歳となるドネアとしても、そこまで多くの時間が残されているわけではないでしょう。
井上に痛烈なノックアウト負けを喫した後にも、ドネアは引退になびかず、妻であるレイチェル夫人もドネアの現役続行を支持したのか、それとも指示したのか。
ともあれ、今のドネアはレイチェル夫人の承諾なしに現役を続行することは考えづらく、そこには夫婦として安全面を確認し、そして選手とマネージャーとして冷静な判断をくだした、ということで間違いはないでしょう。
ドネアが「スーパーフライ級でも戦える」と発信したのは、井上戦が決まるか決まらないかという時期であり、一つのオプションとしてスーパーフライ級への転級、ということはもともとあったことなので驚きはしません。
ただ、その頃はどうしても井上vsドネア2を見たい、という世論、そして井上本人とリベンジを誓うドネア本人の気持ちや両陣営の思惑等も絡まり、比較的容易にこの試合は決まったと思われます。
この試合の結果がどうであれ、井上との試合前に「スーパーフライで戦う」ことに関して、リチャード・シェーファー(ドネアが所属するプロベラム主催者)と話あっていた、とのこと。
ロマゴンと井岡
ドネアはスーパーフライ級で戦うと言った今回、具体的な名前を出しています。
それは、ローマン「チョコラティート」ゴンサレス(ニカラグア)と、井岡一翔(志成)の二人。
チョコラティート戦
かつてのPFPキング、ローマン・ゴンサレスは、ニカラグア出身ではあるもののプロモートは帝拳プロモーション。
こちらはミニマム級からライトフライ級、フライ級、そしてスーパーフライ級を制覇した4階級制覇王者ですが、現在は無冠。
あまり多くを語らない(私のイメージ)好漢ロマゴンは、与えられた試合をコツコツとこなしている印象で、超がつくほど微妙な判定で敗れ、1勝1敗となったファン・フランシス・エストラーダへの雪辱を誓うのか、それともあまり興味がないのか。
このロマゴンに対して熱烈アピールをしているのは、(おそらくお金が稼げるという明確な理由を持って)ファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)。WBAレギュラー王者ジョシュア・フランコ(アメリカ)との対戦は(多分ファイトマネーが安すぎたことが理由で)蹴って、WBAスーパー王座を返上したとの報道がありました。しかし、2022.8.1発表のWBAランキングではまだちゃっかりスーパー王者に君臨しています。これは七不思議の一つ。
エストラーダは9月にノンタイトル戦、11月か12月にロマゴン戦を希望している、とのことですが、おそらくドネアも2022年中にもう一試合はやりたいはずで、ここでロマゴン争奪戦が起こっています。
ドネアがどのようにウェイトを落とせるのか、そして加齢による衰えは如何に、とは思うものの、スーパーフライでは体格面の大きな不利を被ることになるロマゴン。このパワー差が、勝敗に直結しそうですが、果たして。
井岡一翔戦
そしてもう一人、ドネアが名前を出したのは井岡一翔。
世界王座のタイトルを持っている、ということが理由だそうですが、それならばエストラーダ、フランコ、フェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)、ジェシー・ロドリゲス(アメリカ)でも良かったでしょう。
私はここであえて「井岡」という名前を出したことについては、ファンサービスも多分に含まれているような気がします。
エストラーダやフランコ、マルティネスやバム・ロドリゲスに対して、井岡が最も美味しい王者だと言っているわけではなく、ファンサービス。まさに「日本のボクシングファン」に向けている言葉だと思っています。
ここでドネアが「井岡」という名前を出すことにより、日本のボクシングファンは大喜びするでしょう。見たい、見たくない、色々と意見はあると思いますが、井上と井岡を比べたがっている人たちについて言えば、これは格好のネタ。
そしてもう一つ理由があるとすれば、おそらく井岡のプロモートに関しても帝拳の本田会長は全く無関係ではない(もしくは本田会長を経由して交渉ができる)でしょうから、ロマゴン、井岡どちらかと、というのは交渉がしやすい、という面もあるのではないでしょうか。
ただし、井岡にとってはドネア戦はメリットのある一戦とは思えず、あくまでも井岡が目指しているのは王座統一戦。その中で、最も交渉がまとまりやすいイメージなのは、フェルナンド・マルティネスvsジェルウィン・アンカハス2の勝者。
井岡は現在、さまざまな理由から日本以外で戦うことはできそうにないので、おそらくアメリカのリングには上がらないでしょう。
とすると、アメリカでライジングスターと呼ばれている(かどうかは知りませんが、知名度が上がっているのは確か)のバム・ロドリゲスは難しそうで、その兄・フランコは現在レギュラー王者のため、「基本的には」統一戦のリングに上がれる位置にいません。エストラーダは、言わずもがな。
井岡vsドネア、となると、やはり気になるのはそのサイズ差ですが、井岡は(もちろんロマゴンも、なのですが)徐々にスーパーフライ級に順応してきました。それでも、フェザーでも戦った経験のあるドネアが入ってくると、これはまた一気にフィジカル面でのディスアドバンテージを被ってしまいますね。
井岡のマイペースボクシングが、スーパーフライ級で圧倒的なパワーと一瞬のスピードを持つドネアに、どのように通用するのかは非常に興味があります。これは非常に面白いマッチアップ。
どちらかに、決まるのか
ドネアが「ロマゴン」「井岡」と対戦希望者を連ねましたが、どちらかに決まる、という可能性はさほど高くないようにも思います。
ロマゴンは比較的引っ張りだこであり、井岡にとってはドネアがタイトルを取らない限りはメリットが少ない。というか、ない。
ここに、田中恒成(畑中)が、とか、中谷潤人(M.T)が、とか、はたまたシーサケット・ソー・ルンビサイ(タイ)が、とか、アンドリュー・マロニー(オーストラリア)が、とか、あげればキリがないほどに夢は広がって行きます。
広がりすぎて、収集がつかないほどです。
ただ、ドネアの目標は、今回のインタビュー記事を読む限りは「バンタム級での4団体統一」であり、このスーパーフライ級挑戦はあくまでもつなぎの役割に思います。
ドネアは過去、このスーパーフライ級を制してはいるものの、暫定王座を獲得したのみで、正規王座は獲得していないことから、「5階級制覇」という肩書きも欲しいところでしょう。
個人的には、ドネアは「タイトルに絡みたい」とは思っているものの、スーパーフライ級には長居はしないのではないか、と思っています。
リチャード・シェーファー
このマッチアップの鍵を握るのは、プロベラムの主催者であるリチャード・シェーファー。
辣腕のプロモーターは、プロベラム所属選手をどこのプラットフォームに出す、ライバルプロモーターの興行に出すことを厭いません。
ロマゴン戦、井岡戦というのは非常に楽しみではありますが、誰とどのように決まっても非常に面白い。
リチャード・シェーファーとすれば、ロマゴン戦を望んでいるというエストラーダを振り向かせることも可能かもしれませんし、ロマゴン戦がすんなりと決まり、レジェンドvsレジェンドという軽量級のビッグマッチを実現するかもしれません。
後は井岡がイエスというかもしれませんし、シーサケットあたりに話を振れば飛びつくかもしれません。
いずれにしろ、今後のノニト・ドネアの戦いに目が離せません。
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