8月第一週の週末は、国内ではダイナミックグローブとクラッシュボクシングという大変興味深い興行が展開され、そして海外ではバージル・オルティスJr.やマイケル・コンランが登場。
夏の暑さに負けないアツいボクシングが連日行われています。
そして週末を過ぎても、この勢いは衰えず、ウィークデイには9日にダイヤモンドグローブ、そして11日には六島ジムの興行と目白押し。
今回のブログでは、8/9〜のウィークデイに控える国内2興行のプレビュー記事を書いていきます。
8/9(火)ダイヤモンドグローブ
日本スーパーフライ級タイトルマッチ
中川健太(三迫)21勝(12KO)4敗1分
vs
梶颯(帝拳)15勝(9KO)1敗
日本のボクシングファン大注目&世界的激アツ階級であるスーパーフライ級の日本王者というのは、非常に特別なタイトルです。
本来、この階級の日本王座というのは世界に直結する王座であり、世界への最短距離であるはずです。
しかし、ここ数年のスーパーフライは、世界的大注目階級。
かつては当時のPFPキング、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)の参戦、ファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)やカルロス・クアドラス(メキシコ)、シーサケット・ソー・ルンビサイ(タイ)らが激突を繰り広げ、現在はそれに加えて新たな才能が集結している階級。
↓ノニト・ドネアまで!!
なので、現在の日本スーパーフライ級王座というのは世界に直結する最短距離のタイトル、とまでは言えません。しかし、この日本タイトルは、やはり世界への挑戦権をかけたタイトルの一つであることには変わりありません。
1985.8.7生まれの日本王者、中川は37歳のベテラン。2016年に王座決定戦で同王座を獲得するも、初防衛戦で高校の同級生で一緒にボクシング部を立ち上げたという船井龍一(当時ワタナベ)に敗北、王座から陥落。
三迫ジムへ移籍して奥本貴之(グリーンツダ)へ挑戦、王座を再戴冠。その後福永亮次(角海老宝石)との3冠王座統一戦に破れ、王座陥落するも、再起戦で若き無敗のホープ、廣本彩刀(角海老宝石)に勝利し、久高寛之(当時仲里)との王座決定戦を経て3度目の戴冠。
↓大激闘の福永亮次vs中川健太!
サンダーレフトと呼ばれる左強打が特徴の中川ですが、このボクサーには「執念」というアツい炎を感じます。強みというか凄み、それは年を経るごとに凄まじさを増しているとさえ感じるボクサー。
そして対戦相手は、1997.8.10生まれの24歳の若き帝拳ホープ、梶颯。
もっと早くにタイトルに手が届いていてもおかしくはなかった梶は、2015年似プロデビューした同年の全日本新人王。
雌伏の期間を経て、隙の少ないボクシングを完成させた、という感じが強いですね。
15勝中9KOという強打を持ち、がっちりと筋肉の詰まった体は非常にフィジカルが強そうです。
前戦は2021年10月2日、福永亮次(角海老宝石)の持っていたアジア3冠に挑戦。
この一戦では、梶が何度も福永を効かせ、非常に優勢に試合を進めていたようにも見えましたが、ポイントは取り切れておらず、11R、12Rの福永の猛追を受けたことにより0-2の判定で初黒星。
↓この日の梶は非常に強かった。
梶にとっては、この日、「勝負に勝って試合に負けた」というようなイメージだったと思うのですが、梶にあと一つだけ足りなかったものがあるとするならば、それはタイトルへの執念、勝利への渇望だったのかもしれません。
特にチャンピオンシップラウンド、福永の意地はものすごかったし、ここでなりふり構わず前に出れた福永と、出れなかった梶。ただただ、その差。挑戦者としての気概。
この反省を活かし、更に強くなった姿を見せられるとするならば、中川健太は絶好の相手だとも言えますね。
ふたりが戦ったボクサー、福永亮次を介して見れば、9RTKOで敗北した中川と、0-2の惜敗(見ようによっては勝利だった)梶では、梶がやや優勢と見るのが妥当とも言えます。
もちろん、そう単純ではないものの、福永戦で見せた梶の集中力、打ち終わりのケア、距離感にはなかなか隙が見当たらず、更に福永のことをしっかりと研究しており、非常に完成度が高いように思います。
中川は痩身と見えて非常にタフなボクサーではあるものの、ボクシング技術そのものを比べれば梶の方が上、とも思います。
しかし、やや独特な雰囲気のある中川のリズムが、梶を狂わせる事ができるかもしれません。二人の年齢の差は、ひとまわり。当然、キャリアがあるのも中川で、そこで翻弄できるかどうか。そして、おそらく今回も強いハートを見せてくる中川に、気持ちの面で梶が押されないかどうか。等々、不確定要素も非常に多いのも事実。
これは50-50の戦いと言えますし、素晴らしい好試合が期待されるところです。
8/7に中川が37歳となり、8/9が試合で、8/10に梶が25歳となる、何とも数奇な日程のダイヤモンドグローブ。勝って誕生日を祝うのは?
日本女子ミニマム級タイトルマッチ
鈴木なな子(三迫)6勝(1KO)2敗
vs
一村更紗(ミツキ)4勝10敗1分
前戦、瀬川紗代(ワタナベ)と王座決定戦を争い、スプリットの判定で見事勝利した鈴木なな子。かねてから話題だった鈴木は念願の日本王者となってから大学を卒業。現在は「職業・プロボクサー」という鈴木に、女子ボクシング界を盛り上げてくれる事に大きな期待を寄せているファンは多いでしょう。
この試合は見た記憶がありますが、残念なことに観戦記を書いていませんでした。。。
ここ最近は、晝田瑞希(三迫)とともに過ごす姿が多く、この入江聖奈と互角の戦いを繰り広げアタ元トップアマからどのような薫陶を受けているのか、非常に興味深い。
空手出身の鈴木と、純度の高いボクサーである晝田は、根本的なファイトスタイルが違うように思うので、それぞれがお互いに与える影響も多いのではないか、と勝手に推察しています。
さて、そんな女子ボクシング界期待の星、鈴木の初防衛戦の相手は、市村更紗。
黒星が先行しているボクサーで、現在は2連敗中でもありますね。
鈴木としては、ここからステップアップしていくにあたり、ここは完勝を目指したいところ。
ただ、市村にとっては一発逆転のチャンスでもあり、タイトル初挑戦の彼女は非常にモチベーションも高い事でしょう。
女子ボクシングには詳しくないので、ここはまっさらな気持ちでこの試合を楽しみたいと思います。
スーパーライト級8回戦
藤田炎村(三迫)8勝(6KO)1敗
vs
湯場海樹(ワタナベ)8勝(5KO)1敗2分
こちらは裏メイン。ホープ同士の高めあい、と言いたいところではありますが、ボクシングはやっぱりお互いの夢の潰し合いであり、奪い合い。
常にそのような環境に身を置いている、常に強豪との試合を求め続けていると思われるこの両者の激突は、必然であり、非常に楽しみで、且つ、残酷にも思われます。
願わくばどちらにも勝利してほしい。
藤田は前戦で富岡樹(角海老宝石)から殊勲の勝利を挙げ、ランキングを獲得。ゴツゴツとしたサイボーグのような体つきと、怖そうな顔(失礼。)のイメージ通り、恐ろしいほどのアグレッシブなボクシングを展開するファイターです。
対して湯場はその真反対ともいえるボクシングスタイルで、レジェンドでもある父、湯場忠志を彷彿とさせるスタイリッシュなカウンターパンチャー。
両者ともに体躯、雰囲気とボクシングスタイルがこんなにも似合っているボクサーは、逆になかなかいないのではないか、と思えるほど「想像通り」のボクサーですね。
こちらもまた50-50の戦いのように思え、藤田が体の強さを活かしたプレスで距離を詰め、湯場を圧力で仕留めてしまうのか、それとも湯場が藤田のプレスを一歩引いて捌き、華麗な一撃を決めてしまうのか。
自分たちの得意分野が、どれくらい相手に通用するのか、そして凌駕するのか。
いつもスタイル・メイクス・ファイト。それぞれのスタイルがどのように優れているのか、という非常に興味深い勝負となりそうです。
【放送・配信】
この他にも、2020年の全日本新人王、宝珠山晃(三迫)、輪島功一氏の孫、磯谷大心(輪島スポーツ)と話題のボクサーが次々と登場するこの興行は、FODプレミアムで生配信。
無料のFODでもライブで見れるのでしょうか?ちょっとこの辺りはよくわかりませんが、以前はFODプレミアムのみで生配信、FODで無料で見れるようになるのはフジテレビでの放送後、でした。
私はライブ配信に間に合わないかもしれないので、FODプレミアムに加入したまま。こちらは見逃し配信もついていますし、ライブ放送終了後すぐに見れる仕様になっているので安心です。
↓FODプレミアムはこちらから
8/11(木)You will be the champion
52.5kg契約8回戦
古谷昭男(六島)9勝(3KO)5敗
vs
矢島大樹(松田)9勝(4KO)11敗3分
この試合の数日前に、スーパーフライ級の日本タイトル戦がありますが、もちろんこの古谷もタイトル戦線に絡んでいくボクサーです。
前戦は2022年2月、橋詰将義(角海老宝石)とのアジア2冠王座の決定戦で対戦し、この技巧は対決に敗れてそれまでの連勝を5でストップされてしまいました。
その敗戦からの復帰戦となる古谷は、キャリア初期に非常に苦労したボクサーで、橋詰戦の手前まで幾度もアップセットを起こしてきた、非常に夢のあるボクサーでもあります。
そんな古谷の再起戦の相手は、現在4連敗中という矢島。ここは矢島にとって、どうしても分が悪い戦いではありますが、この一戦で勝利することができれば一気にランカーにのし上がるチャンスでもあります。
連勝街道を突き進んでいたボクサーが、一度の敗戦でなにか歯車が狂う、ということはなくなありません。もしかすると、が起こりうるのがボクシング。
古谷が無難に再起を果たす事が濃厚ではあるものの、一発逆転を狙う矢島にも期待したいものです。
バンタム級6回戦
山下陸(六島)6勝(3KO)1敗
vs
平井乃智(石田)5勝(1KO)2敗
この興行の私的裏メインは、この一戦。
2021年の新人王トーナメント、スーパーフライ級で西軍代表となった山下陸と、バンタム級で西軍代表となった平井乃智。
平井は当時6戦全勝全KOだった東日本新人王、梅津奨利(三谷大和)と好勝負を演じたボクサー。初回には梅津を効かせる等見せ場をつくり、その後もコンパクトなパンチをヒットし続けましたが、おそらく見栄えの面で梅津にポイントが流れてしまっての判定負け。ハートの強さも見せた、素晴らしい一戦だったと思います。
山下は西軍代表の権利を得るも、コロナを罹患し全日本新人王戦を欠場。なので前戦が西軍代表決定戦、実に8ヶ月ぶりのリング復帰となります。柔道で培ったフィジカルの強さを活かしたファイタータイプのボクサーで、非常にエネルギッシュ、アグレッシブネスが持ち味のボクサーです。
さて、このブログでは幾度か触れてきましたが、私の生まれは香川県の小豆島という離島。
人口30,000人ほどの、本州へも四国へも橋もかかっていない島なわけですが、その小豆島から出てきたのがこの山下陸。
このブログを読んでくれている皆様は、是非応援してくれると嬉しいです。
【放送・配信】
この興行は、残念ながらライブ配信はありません。
しかし、BoxingRaiseの配信リストに載っているので、早ければ当日の夜、遅くとも翌日の午前中には全試合がBoxingRaiseにアップされるはずです。
私は情報遮断して、翌日に楽しみたいと思います。
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