A Naoya Inoue vs Nonito Donaire rematch is in negotiations to potentially take place in April in Japan as a WBA, WBC & IBF bantamweight world title unification, Donaire's promoter Richard Schaefer has revealed. [@BoxingScene]
— Michael Benson (@MichaelBensonn) 2022年1月18日
井上尚弥vsノニト・ドネア2、ドラマ・イン・サイタマ2が4月の日程、日本開催で交渉中だというニュース。
また日本でドネアが見れるというのは本当に嬉しい話です。
が、第一戦が様々なメディアで「年間最高試合」として取り上げられたこと、海外ファンもこの試合に言及している人がいることを考えると、アメリカ開催でも良いのではないか、とも思います。
軽量級の人気の高くないアメリカでは、日本では数万人を余裕で集められるこの一戦も、中規模くらいの会場を満員にできないのかもしれませんが。。。そうなると流石に寂しいので、やっぱり日本開催が現実的か、もしくはアメリカのビッグイベントのセミに組み込んでもらうか、というところなのかもしれません。
ともあれ、日本開催だったら絶対に行きたい。
前回のドラマ・イン・サイタマは、チーム井上のチケット抽選に外れ、大橋ジムFCのチケット抽選に外れ、結局仕事を休んで一般発売で手に入れた記憶があります。井上vsドネア2がさいたまスーパーアリーナなのかどうかはわかりませんが、また今回もチケット争奪戦が起こることは間違い無いでしょうね。
どうかそれまでにコロナに落ち着いてもらいたい、というよりも日本政府に落ち着いてもらいたいものです。
さて、今回はみんな大好き、ノニト・ドネアと、ドネアのこれからの選択肢について。
ノニト・ドネア(フィリピン)42勝(28KO)6敗
↑この写真は2021年のボクシング写真の中で一番好き。
2001年2月のプロデビューなので、もうデビューして20年以上となります。
デビュー2戦目で判定負けを喫していますが、その後は連勝で2007年にビック・ダルチニアン(オーストラリア)の持つIBF世界フライ級王座に挑戦。
戦慄の左フックカウンターを炸裂させて、下馬評不利をひっくり返して世界初戴冠。
3度防衛したこのタイトルの防衛戦では、のちの2タイム王者、モルティ・ムザラネ(南アフリカ)を6RTKOで退けています。
2009年にはWBA世界スーパーフライ級の「暫定」王座を獲得していますが、この「暫定」というのが記録的にも、ドネア自身の記憶的にも心残りとなっている可能性がありますね。(後述)
2011年、これもまた記憶に深く刻まれたバンタム級転向しての世界戦。
バンタム級転向初戦(2010年)にWBCの地域王座を獲得したドネアは、当時のWBC・WBO統一世界バンタム級王者だったフェルナンド・モンティエル(メキシコ)に挑戦する機会を得ます。
前年、モンティエルは長谷川穂積(真正)と極上の4Rを戦い、王座を統一。日本のエースの敗戦を受け、日本中に衝撃は走ってから約10ヶ月後のことです。
この映像を久々に見ると、やっぱりドネアは速い。パンチだけでなく、ステップの俊敏性、コンビネーションとはまた違った、パンチの繋ぎ目の速さ。今もなお語種となる、伝家の宝刀左フックカウンターが炸裂したあの瞬間は、リアルタイムで見たファンは鮮明に覚えていることでしょう。
このモンティエル戦は本当に素晴らしかった。
前戦、地域王座戦となったウラディミール・シドレンコ(ウクライナ)戦、そしてこのモンティエル戦こそが、ドネアのベストパフォーマンス、と言って良いと思いますし、スピード、パワー、タイミング、全てが高い次元でミックスされたと考えれば、「全盛期」の一つと言って良いと思います。
驚くべきことに、今から10年以上前のことです。
その後、オマール・ナルバエス(アルゼンチン)に完勝した後スーパーバンタム級へ転級、WBO王座を皮切りにIBF王座も統一。
そして2012年には当時のWBC王者(試合前にダイヤモンド王者に認定)、西岡利晃(帝拳)と戦い、西岡にほとんど何もさせず9RTKO勝利。
このタイトルは2013年にギジェルモ・リゴンドー(キューバ)に奪われましたが、再起、2014年にはWBAフェザー級タイトルを獲得。
そのタイトルの初防衛戦ではニコラス・ウォータース(ジャマイカ)に自身初となるTKO負け、フライ級上がりのドネアはとうとう階級の壁に阻まれてしまいました。
すでに十分な実績を残していたドネアでしたが、このKO負けから5ヶ月で再起。再起後はスーパーバンタム級で戦い、2015年、WBO世界スーパーバンタム級王座に返り咲き。
この王座は2016年、2度目の防衛戦で伏兵・ジェシー・マグダレノ(アメリカ)に奪われ、2017年にフェザー級で再起したものの2018年にはWBO世界フェザー級暫定王座決定戦に出場、カール・フランプトン(イギリス)を相手に苦杯をなめています。
この2013年〜2018年、ドネアのキャリアは低迷していた、と言って良いでしょう。世界タイトルこそ獲得したものの、かつてのスピード、かつての勢いは感じられず、それでも諦めずに戦うドネア。
おそらく誰もが思ったことは、ドネアはこれで終わり。今後まだ戦い続けるのであれば、若手ホープたちの踏み台になる、というお決まりのコースを歩むことになるだろう、と。
そして、ここがドネアの最後の舞台だと思ったのが2018年に開催されたWBSS。
前戦(2018年4月)ではフェザー級で戦っていたドネアが、バンタム級のWBSSに参戦を表明した時は正直無謀だと思いました。
そもそもウェイトを作れるのか、ウェイトを作れたとしても動けるのか。。。
過去、一旦体重を上げて、また戻す、これで良いパフォーマンスを発揮できたボクサーは記憶にありません。ドネアも、フェザーからスーパーバンタムに戻ってきた時、そのパフォーマンスはかつてのスーパーバンタム時代に劣るものだったと思っています。
一番良い例はロイ・ジョーンズJr。ヘビー級挑戦以降、おかしくなってしまった。
ドネアのWBSSバンタム級参戦の意味は、「若きホープにバトンを渡す」ということに尽きる、こう思っていました。
それが井上尚弥だったらありがたい、と思っていましたが、ドネア戦を宣言したのは井上と並ぶ優勝候補の一角、ライアン・バーネット(イギリス)。
ドネアのバトンは、バーネットが受け継ぐことになる。。。そう思った2018年11月のWBSS初戦。
ドネアは特別パフォーマンスが良かった訳ではありませんが、思った以上には動けていました。そしてこの一戦は、なんとバーネットが途中で腰痛を発症し、棄権。ドネアは運良く優勝候補の一角であるバーネットに結果的に勝利し、準決勝へと駒を進めました。
そして準決勝の相手、当時のWBO王者、ゾラニ・テテ(南アフリカ)。このテテもなんと試合直前で肩を怪我して離脱、代役のステフォン・ヤング(アメリカ)がリングに上がることに。
この日のドネアもそんなに良くはありませんでした。しかし、今見返すと、2021年に素晴らしいパフォーマンスを見せたドネアとやや被る場面もあります。
それは、スピードで掻き回すかつてのスタイルではなく、やや待ちの姿勢、省エネに近いボクシングをしているところです。
このヤング戦は思った以上に被弾が多く、決勝の井上戦への不安を露呈もしました。しかし、ドネアのタフネスを考えると、このヤング戦での被弾は全く意に解さないものだったと、今ならわかります。
誰もが無理だと思ったWBSSトーナメントで、不思議と勝ち上がっていったノニト・ドネア。それでも井上尚弥という日本のモンスターは、この時点で評価が別格。
初戦を1R、準決勝を2Rで終わらせたモンスターを相手には、ドネアですら「前半KO負け」という予想が最も多かった気がします。
しかし、レジェンド、ノニト・ドネアは2019年11月7日、さいたまスーパーアリーナに詰めかけた日本のボクシングファンの前で、まさに奇跡というパフォーマンスを見せるのです。
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この井上戦では敗北を喫してしまったドネアですが、評価は下がるどころか上昇。
その後のリング復帰にはコロナもあって1年半ほどを要しますが、2021年5月のノルディーヌ・ウバーリ(フランス)戦でWBC王座を戴冠、同年12月にはレイマート・ガバリョを相手に防衛(および暫定王座を吸収)。
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10年前、ドネアは肉体的な全盛期にありました。そして今、戦略面や用いる武器を全て動員した総合力で、全盛期にあると思います。
ドネアの試合のたびに取り沙汰されるもう○○歳だから、という表現は、ドネアにとって全く関係のないことなのかもしれません。
それでも敢えて言うと、ドネアは2022年11月には40歳になります。一体、このノニト・ドネアはどこまで行くのでしょうか。
ドネアの選択肢
ドネアの選択肢は、現在非常に多い。
まずは、冒頭のニュースの通り、一番は「日本での」「井上尚弥戦」なのだと思います。
ドネアは、強敵を恐れないし、敗北も恐れない。日本贔屓であり、日本で試合をすることをディスアドバンテージと思っていません。
そして、ドネアと契約しているプロベラム社のリチャード・シェーファーも障害にはなり得ません。シェーファーは、プロベラム興行でも他のプロモーターの選手を登場させますし、自分のところのボクサーを貸し出すことを厭わないプロモーター(で、これは設立時から明言していることです)。P○Cやらトップ○ンクのように選手を囲い込んで飼い殺しにするような真似もしていません。
そしておそらく、ドネアの意志を尊重してくれることから、井上vsドネア2が契約に至る可能性は非常に高い。
問題はたった一つ、日本政府の対応であると言えます。
もしこのせいで、4月開催はおろか、今年中の開催ができない場合は?
前戦でダメージのないドネアは、おそらくなるべくブランクを作りたくないでしょう。ドネアは、リングに上がるのが仕事です。
ドネアの選択肢は、スーパーフライ級に更に階級を下げ、エストラーダvsロマゴンの勝者にチャレンジする、というプラン。
エストラーダにしてもロマゴンにしても、軽量級スター、ドネアとの一戦は望むところでしょう。エストラーダに至っては、バンタム級転向の方針もあって、バンタムでの試合でも良いのかもしれません。
たったひとつ、ドネア側の心残りとしてあるかもしれないのが、ドネアがこのスーパーフライ級で獲得したタイトルが「WBA暫定王座」のみであること。
日本ではフライ級、スーパーフライ級、バンタム級、スーパーバンタム級、フェザー級の「5階級制覇王者」と呼ばれるドネアですが、アメリカではこの暫定タイトルは世界王座として認識されていないため、「4階級制覇王者」として紹介されるそうです。
この一つの冠は、記録の上では大きいと思います。
そのスーパーフライ級のタイトルをとりに行く、と言うのがドネアのプランの一つ。問題なくスーパーフライ級に下げられるようならば、バンタム級以上に体格を活かすことができ、もしかすると無双してしまうかもしれません。
そしてもう一つは、スーパーバンタムに挑む、と言うこと。
ドネアにとっては、バンタム級に次いで、良いパフォーマンスができるであろうスーパーバンタム級。しかもこの階級は強豪が多く、盛り上がってきています。
多くのスーパーバンタム級がPBCファイターであり、そのPBCファイターとも話がまとまりやすいであろうドネアは、この階級でも面白い存在です。
2022年4月、井上戦が決まらなかったとすれば、もしかするとドネアはこっちの方向へ行ってしまうかもしれません。そうなると、井上の相手はいなくなってしまいます。
ただひたすらに、井上vsドネア2の実現を願いますが、両者、両陣営の気持ちはすでに固まっているはず。後は日本政府次第という何ともやりきれない月日を、これから1ヶ月強ほど過ごすことになりそうです。
おそらくリミットは2月末くらい。どんなに待っても3月中旬ほどでしょう。
それでもプロモーション活動としては超ギリギリ、果たして無理にでも日本でやる意味はあるのかどうか。
個人的には、この試合が経済的に成功するかは置いておいて、もうアメリカ開催に舵を切った方が良いと思っています。
そしてもし、この両者と両陣営が切望している試合を決められないようなら、井上尚弥のキャリアは絶望的なものになってしまいます。そこまで来れば、完全に「Withコロナ」となるまで、日本で試合をしようという思いも控えた方が良いレベル。
ともあれ、全てが上手くいくことを願うのみ、そして我々ファンは、決まる事を祈り、決まれば全力で楽しむのみです。