ライトフライ級、という階級は、かつて4団体を日本人ボクサーが独占したこともあるほど、日本のお家芸と言って良い階級です。
そのライトフライ級、ここ最近の充実ぶりは半端ではありません。
ということで今回のブログでは、今年大きく動きそうなライトフライ級、そして世界に近づくボクサーたちの状況を見ていきたいと思います。
WBAスーパー王者
京口紘人(ワタナベ)
リング・マガジン王者にして、先日WBA王座の団体内統一を果たした京口紘人。キャリアの中で、フィリピン、アメリカ、そしてメキシコで世界タイトルを経験(3勝3KO!)しており、やはり海外の評価は非常に高い。
とりわけ、前戦のエステバン・ベルムデス(メキシコ)戦での素晴らしいアッパーカットを織り交ぜたコンビネーション、そして最後のラッシュは、評価を高めるのに十分なものだったと思います。
その後(というか厳密に言うとその前)、WBO王者のジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)との統一戦の話が持ち上がるも、これはどうやら流れたようですね。カネロvsGGG3という超大注目興行のアンダーに抜擢されるか、というところだったようですが、その後に試合をしたジェシー・ロドリゲス(アメリカ)にかっさわられた格好。
これは非常に残念ですが、このことは京口vs拳四朗の早期実現にコマを進めた、と見る事もできます。
某Youtubeでは、「(拳四朗からの挑戦を)受ける側」だと言ったという京口。果たして締結なるか。
WBC王者
寺地拳四朗(BMB)
寺地拳四朗というボクサーは、世界王者となってからは常に対戦相手に困っていたという印象で、防衛するごとに凄みを増していました。
それでも、短いスパンで相手を見つけて、順調に防衛を重ねていました。
しかし2021年9月22日、矢吹正道(緑)にまさかのTKO負け。これは拳四朗に少々の油断やモチベーションの高低があったのかもしれませんが、矢吹が見事なボクシングと、気持ちの強さで拳四朗を上回った、というイメージでした。
しかしその相手とのダイレクトリマッチ、2022年3月に行われた再戦では、こちらもまさかの3RKO勝利。これまでとはまた別種の強さを発揮して、矢吹をリングに沈めました。
もともと評価の高かった拳四朗は、フィジカル面や相手の詰め方、いわゆるインファイトでの強さをも見せつけてくれたこの一戦で、国内ファンに証明したものは非常に大きいと思います。
なるかライバル対決
私は以前から京口vs拳四朗が戦えば、拳四朗が優位、と思っていますし、今も思っています。
理由は、アマ時代の拳四朗はファイタータイプで、プロではアウトボックスを主体としたタイミングのボクシング、つまりは引き出しが多い、と思っていたからです。ただそのインファイトがどこまでプロの世界レベルで通用するか、はわかりませんでしたが、あそこまで見事に矢吹をノックアウトしてしまえばそれは十分証明されたと言って良いでしょう。
ただ、京口は京口で、以前からずっと一貫しており、非常にバランスの取れたインファイトスタイルを確立し、現在の京口のボクシングはほぼ完成形、とも言えると思います。だからこそ、今現在強化しているフィジカルを足せば、ここからさらに上がる可能性も大いにあります。非常にコンパクトなメキシカンスタイル、ともいえる京口のボクシングスタイルは、非常にしつこく、皆が嫌がる戦法だとも思います。
あくまでも感覚派である拳四朗、積み重ねてきたものがここに来て完成されつつある京口、これは非常に興味深い一戦。
もし戦わば、未だ拳四朗優位とみますが、それは5.1-4.9くらいのもの。
これは非常に楽しみで、是非ともみたい一戦でもありますね。
その実現性については、今年の秋〜年末にかけて、くらいが最も高いような気もします。
京口にもっとウマい話が出てこないかどうか、または、拳四朗に対してWBCの挑戦者決定戦を勝ったヘッキー・ブドラー(南アフリカ)との指名戦がオーダーされないか、というところです。
ちなみに、この試合が最も盛り上がるのは、年内に京口vsゴンサレスが(9月とは別日程で)締結され、さらに拳四朗がブドラーを一蹴(京口よりもブドラーを圧倒)し、来年早々に決まる事だと思っています。
WBO王者
ジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)
2021年10月、当時のWBO王者エルウィン・ソト(メキシコ)をアップセットで降し、王者となったゴンサレスは2022年6月に初防衛に成功。
非常に長い距離を持ち、アウトボックスするそのボクシングは、ややつまらなさを感じさせるものではありますが、やりづらさにおいて非常に脅威。
京口紘人との統一戦が取りざたされましたが、ゴンサレスは(6月の初防衛戦の前の時点で)2度目の防衛戦も決まっている、と明かしていました。その時は、結局は条件次第(で京口が割り込める)という雰囲気でしたが、マッチルームはゴンサレスに十分な条件を提示しなかった(もしくはできなかった)のでしょう。
なので、ゴンサレスはおそらく秋頃?に防衛戦を挟む事が濃厚ではありますが、これを是非日本に持ってきて、京口との統一戦にしてもらいたい。いや、これはもうむしろマッチルームがアメリカでやるべき試合なのかもしれませんが。
IBF王者
空位
一度は拳四朗との統一戦が決まった、前IBF王者のフェリックス・アルバラード(ニカラグア)は結局王座を返上、現在は空位となっています。
現在のIBFランキングのトップコンテンダーはシベナチ・ノンシンガ(南アフリカ)。10勝(9KO)無敗、150cmの身長で170cmのリーチという嘘みたいな体格の持ち主で、長らく上位に残留しているボクサーです。
そのノンシンガと王座決定戦を争う(らしい)のが、20勝(10KO)無敗4分という戦績のエクトル・フローレス(メキシコ)で、この一戦が9/3(日本時間9/4)にメキシコのティファナで行われる、とのことですが、BoxRecには載っていません。(当初の発表では8/19だったようですが、8/5、延期されたというニュースが出ていました。)
本当なのかわかりませんし、どこかでまた延期、もしくは中止となってしまう可能性は捨てきれませんが、ここでIBF王座が決まるのならば、決まって即統一戦に進む、という道も無くはないのかも知れません。
リングマガジン・ライトフライ級ランキング!
リングマガジンのライトフライ級のランキングは、王者が京口紘人、1位が寺地拳四朗とワンツーフィニッシュ。2位はWBO王者のジョナサン・ゴンサレスで、3位にはWBCの指名挑戦者、ヘッキー・ブドラー、ゴンサレスとブドラーに敗北したエルウィン・ソトは4位。
5位に矢吹正道、6位にWBAのトップコンテンダー、ダニエル・マテヨン(キューバ)、7位はシベナチ・ノンシンガ、8位はエステバン・ベルムデス、9位にカルロス・カニサレス(ベネズエラ)、10位には岩田翔吉(帝拳)と続いています。
ソトはブドラーに負けて王座返り咲きは遠のいた印象、マテヨンについてはバックを持たないため、WBAの指名挑戦権の行使を待たなければいけない状況でしょう。(WBA王者京口は次は選択防衛戦)
ノンシンガは上述の通りIBFの決定戦に出場予定(?)で、王者たちにとって最も怖いボクサーの一人。もっとも、アップセットも可能にするメキシカンのエクトル・フローレスが、このノンシンガに勝って、その地位を奪い獲る可能性もあります。
ベルムデスも闘志あふれるファイターで、京口でもたやすくはストップできませんでした。カニサレスをストップしたのは相性もあるのでしょうがフロックではないのでしょう。
そんなカニサレスも、前戦で元王者ガニガン・ロペス(メキシコ)とのサバイバル戦を4RKOで勝ち残り、未だライトフラ級のタイトルを狙う一人。
ちなみに、ランキングには入っていませんが、個人的に最も怖いボクサーはハサンボーイ・ダスマトフ(ウズベキスタン)。リオ五輪の金メダリストのこのボクサーは、非常にバランスが良く、何よりも未だにアマチュアのリングにも上がって(しかも勝っている)ボクサーでもあります。現在5勝5KO無敗、このボクサーが大手のプロモーターと契約すれば恐ろしいボクサーになりそうです。
日本のライトフライこそ、アツい。
そして10位にはアジア3冠王者、岩田翔吉。各団体で上位にランクインされる岩田は、前戦でOPBF東洋太平洋王者だった堀川謙一(三迫)を破り、アジア3冠を統一。
12回戦をしっかりと戦い抜き、その前野防衛戦でも圧倒的な強さを誇示している岩田は上り調子、ランキング的にも次戦が世界初挑戦となっても驚きはありません。ただ、個人的にはもう一戦、世界的強豪(の海外ボクサー)との戦いを挟んでもらいたいような気もします。
前後しますが、5位の矢吹正道は、9/10(土)に出身地の三重県にタノンサック・シムシー(タイ)戦。シムシーはかつて京口挑戦が決まっていた強豪で、24勝22KO無敗という驚異的な戦績を誇るボクサー。
矢吹は危険な相手を選んだ、とも言えますが、ここに勝てなければ再戴冠の道は非常に厳しい。対してシムシーは待望の世界挑戦を叶えるために、元世界王者を喰って名を挙げたいところ。シムシーは危険で、かつ、モチベーションも非常に高いと思いますが、ここは矢吹の快勝に期待したいものですね。
そして、王座返り咲きを目指すといえば元WBO世界ミニマム級王者の山中竜也(真正)。軽量級らしい、そして非常にバランスの取れたボクシングをするこの山中は、次戦がまもなく(8/14)で、かつて拳四朗にも挑戦したジョナサン・タコニン(フィリピン)が相手。
↓プレビュー記事
ここは問題なく勝利を手にしてくれると思いますが、ここに勝てば世界ランクに返り咲きが決まります。そして、本当の勝負はそこから始まるという感じ。
そんなわけで、日本のライトフライだけでも、世界に手が届きそうなのが岩田、矢吹、そして次戦でおそらく世界ランクを獲得してくれるであろう山中。
その他にもまだまだ日本のライトフライは控えており、未来は明るい。
ライトフライ級は統一に向かうのか
現状、ライトフライ級は統一に向かってはいません。
しかし、マッチルームがこのライトフライ級にテコ入れをしようとしているのだけは確かです。
それは、京口と契約し、エルウィン・ソトと契約し、エステバン・ベルムデスと契約し、矢吹が王者となった暁には矢吹に近づき(結局破談)、等々しているためにそれは明らか。
ただこの契約は、王者である間に有効なものだと思われ、タイトルを失ってしまえばマッチルームとの契約はなくなる、という類のものだと思われます。裏を返せば、そういうボクサーを集めて、マッチルームは統一戦を組んで、DAZNで放映したい、というのが現れています。
なので、拳四朗やジョナサン・ゴンサレスにもオファーはあったのではないか、と推察していますが、締結のニュースが流れない事から、条件面が折り合わなかった、と見るべきでしょう。
ですので、今度決まる(と信じています)IBF王者にも、マッチルームは食指を伸ばすはずです。そうなった時に、統一戦の流れが加速するのか、それともしないのか。
9/3にIBF世界ライトフライ級王者が決まり、その王者がマッチルームと契約したならば?
例えば年内、同じくマッチルームの契約選手である京口との統一戦を組む事はさほど容易ではないような気がします。
基本的にバックボーンを持たないノンシンガと、「メキシカン」であるエクトル・フローレスなるボクサーであれば、マッチルームとの契約について障害がある可能性は高くないと思われます。
様々を総合的に判断すると、このライトフライ級の統一の機運は、京口紘人次第、とも言えます。
京口が次戦に選ぶのは、もしくは京口側のオファーを受けてくれるのは、
WBO王者のジョナサン・ゴンサレスなのか、
IBF王者のノンシンガ又はフローレスなのか、
WBC王者の寺地拳四朗なのか、
それともただの選択防衛戦なのか。(この可能性は低いと信じたい)
ということで、まずは山中竜也の世界ランク返り咲き、そして次に矢吹正道の世界ランカー対決快勝、そしてIBF王者が9/3にしっかりと決まってくれる事を願い、その前後での京口の次戦発表に期待したいと思います。
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