あまり話題になっていないのは、カネロの相手がジョン・ライダーだからなのかもしれません。
ジョン・ライダーがカネロに勝てる可能性は低いと言わざるを得ませんが、そうはいってもライダーの非常にアグレッシブなスタイルは、多くのボクシングファンが好むものだと思っているので、ちょっと残念です。
ともあれ、DAZN PPVで配信されるこのメキシコ・グアダラハラの興行は、そのメインイベント以外も興味深い戦いが。
ということで今回のブログは、カネロvsライダーをメインに据えたシンコ・デ・マヨ興行の観戦記。
↓プレビュー記事
5/6(日本時間5/7)メキシコ
リングアナウンサー、ディアマンテ氏もスペイン語でアナウンス。スタジアムファイトは約50,000人入るらしいですが、日中からボクシングを見に来ている人はまだまだ少ないですね。メインの頃には埋まるのでしょうか。
オレクサンドル・ゴズディク(ウクライナ)vsリチャード・ボロトニクス(ラトビア)
PPVのオープニングファイトは、オレクサンドル・ゴズディクvsリチャード・ボロトニクス。元世界王者、ゴズディクは前戦で3年4ヶ月ぶりに復帰、6回戦で負け越しのボクサーを相手に判定勝利。
ボロトニクスはジョシュア・ブアツィ(イギリス)に敗れてはいるものの、未だ力を有している強豪。
この興味深いマッチアップが、まだ陽が高いうち、極少の観客の前で行われるのはボクシングファンとしては違和感バリバリ。
試合は初回、ゴズディクがやや慎重に戦いつつも明らかに固そうなリードをバシバシと出していきます。2R、プレスを強めたボロトニクスの攻撃をほぼ無効化したゴズディクは相変わらずのテクニシャンぶりを発揮。
3R、ガードを固めて頭を振り、細かなジャブから入るボロトニクスに対し、ゴズディクはストレート系のパンチからアングルを変えたアッパーで迎撃。4Rはちょっとボロトニクスのプレッシャーが上回ってきたのでは?と感じますが、やはりここでもゴズディクは長い距離からのストレートパンチを巧く当てています。ボロトニクスのジャブも伸びてきて、固いガードでゴズディクの攻撃をブロッキングしつつのプレス。
5R、前ラウンドからボロトニクスの左フックのタイミングが良い。ゴズディクのジャブをパリングしての左フック、クリーンには当たっていないものの届いてはいます。
よりパワフルなのはボロトニクス、ゴズディクは巧くカウンター、リターンを返すも頑丈なボロトニクスにどれほどのダメージを与えられているのか。
このラウンド後半は、ボロトニクスのワンツーを躱しそこねているようにも見えるゴズディク。
6R、ここで一気にスタイルを変えたゴズディク。これまで対応するだけだったストレートを明らかに力を込めて使い出し、被弾を厭わない距離で打撃戦の展開。
力強いストレート、左フックがボロトニクスを襲い、中盤のゴズディクのワンツーでボロトニクスは後退!その後右で追撃したゴズディク、そのまま攻め続けるとボロトニクスは防戦一方、そのままダウン!
そしてレフェリーはストップ!ゴズディクの6RTKO勝利!!
画角でわかりませんでしたが、ボロトニクスの右目付近はものすごい大流血。これはゴズディクの右でカットしていたのでしょう。
途中、ものすごく不安になりましたが、やっぱり強いゴズディク。
決めようと思えばいつでも決められたのか、決めに行って決める、という結果的には横綱相撲。強い、強い、んですが、攻められた際には若干の不安を感じたオレクサンドル・ゴズディク。ただ、世界トップレベルの力を維持していることは明白であり、今後も非常に楽しみですね。
ところでゴズディクがNo Boxing No Lifeのグローブをつけていましたが、なかなかウクライナ×メキシコというのはイメージになく、珍しい気がしますね。
ガブリエル・バレンズエラ(メキシコ)26勝(16KO)3敗1分
vs
スティーブ・スパーク(オーストラリア)16勝(14KO)2敗
ゴズディク登場のあとは、フェザー級プロスペクトのネイサン・ロドリゲスが登場。18歳ということでまた線の細さを感じますが、判定勝ちでWBCの下部タイトルを獲得。
そしてそのあとはいよいよ、我らがスティーブ・スパークの登場です。
翌週にジェイソン、翌々週にアンドリューとアメリカ大陸で戦うオージーボクサーの先陣、スパークの対戦相手は、地元グアダラハラ期待のガブリエル・ゴラス・バレンズエラ。
初回、まずはバレンズエラが鋭いジャブ。を飛ばすと、スパークが一気に前に出ます。全然空気読まないこの感じが良い。
バレンズエラはリーチも長く、パンチのキレもあり、身体も柔らかい良いボクサーですね。一方スパークも回転力のある左右のフックで攻め立て、非常に調子は良さそうです。
スパークの攻撃は非常に鋭く、また継ぎ目が非常に小さい。終盤にはスパークが攻めたところでゴング。
2R、スパークがもう1段ギアアップ。左のトリプルは非常に力強いですね。バレンズエラは攻撃に対してやや固まる傾向がありますが、スパークが単発なら迷い無くカウンターを狙っています。そして長いジャブもまた厄介。
3R、攻めに転じるとしつこいくらいに左を振っていくスパーク。これはバレンズエラが遠く感じて右が当たらないイメージなのか、それともバレンズエラの右ガードが下がるから左フックを狙おうという算段なのか。いずれにせよ、狙い通りこのラウンドはスパークの左フックが良くヒットしています。
4R、今度はバレンズエラのジャブが冴えています。このジャブを軸にプレスをかけはじめるバレンズエラ、長い距離では非常に伸びのあるストレートも武器ですね。
終盤には必ずと言って良いほど打撃戦になる今戦、ここまではシーソーゲーム。
5R、序盤はバレンズエラが攻勢をかけ、その後スパークが攻勢をかけるという展開。互いに探り合いながらも行くべきところで行く、というエキサイティングな内容。
バレンズエラはやはりガードを低く構える分、被弾の可能性をはらんでいるものの、そこからのアッパーカットは見づらく、そして距離も長い分効果的。
終盤はスパークがチャージ、ヒットを重ねています。
6R、今度はスパークの固そうなジャブが当たりはじめ、スパークはそこから右をフォロー。このパワーパンチにやや身体が泳ぐバレンズエラですが、ピンポイントで見事なアッパーカットを決めて反撃。
これは本当に素晴らしい互角の戦いです。まだまだどちらにもチャンスがあります。
という中盤、ワンツーをヒットしたバレンズエラがそこからチャージ!ダメージを負ったスパークはクリンチに逃げるも、引き倒されて膝をつき、これがダウン判定!
立ち上がったスパークに対してバレンズエラは攻め入り、スパークは大ピンチ!!!
おそらく効いたのはボディか、腹を中心に守るスパークに対して顔面へのパンチを返したバレンズエラ、あわや、とも思いますがスパークはここで根性で打ち返し、このラウンドをサバイブ!
7R、開始早々、ここで左のダブルを放って攻めるのがスパーク!この劣勢にあってこの素晴らしいハートの持ち主は、力強いショートのパンチをバレンズエラにヒットしていきます。
ロープに詰まるバレンズエラ、そこをスパークはフック、アッパーを使って攻めていきます。ダメージド・ダウンを奪われた次のラウンドとは思えないほどの強気!
バレンズエラも応戦しますが、近い距離での回転力はスパークに分があり、押される展開で今度はバレンズエラにピンチが訪れます!
ここはスパークも詰めきれませんでしたが、スパークは大復活、ポイントもまだ五分五分でしょう。
8R、ここも先手を取るのはスパーク。バレンズエラのカウンターはやや威力が衰えており、スパークのパンチはまだまだキレています。後半にもオーバーハンド気味の右をヒットしたスパーク、このボクサーのスタミナ、タフネスたるや異常ですね。
9R、スパークの右ストレートにバレンズエラは左フックカウンターを狙っていますが、それを見きったスパークの右の戻しは速い。ここまでかなりのハイペースで戦ってきた両者ですが、バレンズエラの消耗は激しく、スパークは謎でまだまだ元気。これは良い流れです。
ラストラウンド、当然のようにいくスパーク、バレンズエラも迎え撃ちます。
ただ、序盤のキレを失ったバレンズエラと、いつまでもパワフルなスパークだと、どうしてもスパークの方が見栄えが良いですね。
しかしバレンズエラも決して心折れる事なく、最後まで手を出し続けて規定の10ラウンズを終了。いつの間にやら会場は暗くなっていましたね。試合に熱中しすぎて、全然気づきませんでした。
判定は、96-93バレンズエラ、95-94スパーク、95-94バレンズエラ、2-1でバレンズエラの勝利。
何ということか。ダウンを奪われたとはいえ、スパークの勝利を確信していたのでびっくりしました。後半7-10はスパークのラウンドだったと思うので、前半5つがほぼバレンズエラに流れていた、ということなのかもしれません。確かに微妙なラウンドではありましたが。。。
これは悔しいですね、スティーブ・スパーク。バレンズエラもハートが強く、良いジャブを持っている素晴らしいボクサーでしたが、これは敵地の洗礼を受けたと言って良い内容だったと思います。
WBC世界フライ級タイトルマッチ
フリオ・セサール・マルティネス(メキシコ)19勝(14KO)2敗
vs
ロナル・バティスタ(パナマ)15勝(9KO)2敗
さて、セミファイナルは絶賛評価が下落中のJCマルティネス。ここで勝利したとしても評価は上がらない、更に苦戦でもしようものなら更に評価を落とす、という厳しい戦いを迎えます。
初回、バティスタは低く入ってボディから攻めます。これにラウンド中盤くらいに早くも慣れたマルティネスは、バティスタが低く入ってきたところに左のスリークォーター気味のパンチをあわせ、バティスタのバランスを崩します。
ガードを固め、スイッチを織り交ぜつつプレスをかけるマルティネス、左ボディから右ボディでの踏み込みは非常に鋭いですが、ちょっと重心が上がってしまいがちになるのは気になるところ。
2Rに入るとマルティネスがプレス。バティスタは下がりながらジャブ、ちょっと及び腰にも見えるカウンター狙いの展開です。
マルティネスはサウスポーに構えての右ジャブは非常にパワフルですが、攻めるとなるとオーソドックスに戻しての飛び込みの左フック。なぜスイッチするのかは微妙なところ。
3Rもガードを固めて強打を放っていくマルティネス。バティスタはマルティネスのジャブでよく顔を跳ね上げられ、なぎ倒すような左フックでバランスを崩されています。
4R、バティスタが意を決したか前進。マルティネスにパンチが当たらないわけではないですが、ややKO率ほどのパワーはないように感じられます。
片やマルティネスの攻撃は非常にパワフルですが、やはり荒く、途中でバティスタのカウンターもヒット。ただ、ちょっとこれは効かない。このラウンドはゴング後の加撃でバティスタから減点。
5Rも同様に、バティスタもよく手を出します。マルティネスの攻撃はパワフルですが的中率は悪く、バティスタの攻撃は迫力こそありませんがコツコツとカウンターをヒットしています。
これは意外と競っているのかもしれません。
後半にはバティスタがマルティネスをロープに詰めて連打を見舞う場面を作り、マルティネスは非常に横着なディフェンス。
6Rはバティスタがマルティネスをロープに詰めてスタート。マルティネスは相変わらず横着ディフェンスからの横着強振パンチ、パワーに自信がありすぎるのも考えものですね。
7R、このラウンドはバティスタが中間距離を選択。しかし中盤、マルティネスの左フックがヒット、これにバランスを崩したバティスタはダウン。なんですが、レフェリーの裁定はスリップ。バランスを崩したバティスタが、結果的に足が絡まって尻もちをついたから、なんでしょうが、これはダメージありきのものだと思うのでダウンで良いと思います。
再開後、マルティネスはチャージ。バティスタがカウンターを決めて粘ると、マルティネスも疲れたのかトーンダウン、ラウンド終了のゴングを聞いています。
8R、開始前に「さっきのはダウンだ」と触れて回るレフェリー。スリップ裁定からダウンに変更のようです。
もういくしかないバティスタは攻撃的に攻めます。細かなコンビネーションで打っては離れ、巧く戦いますがマルティネスのパワーに敵わず、後半には後退。
9Rもどちらもペースは変わらず。10Rもバティスタは懸命に攻めますが、マルティネスにダメージを与えられません。マルティネスのパンチはパワフルですが、相変わらず的中率は低い。終盤のマルティネスの右ボディはしっかりとヒット、効いたかもしれません。
10R、今度は距離を取るバティスタ、距離ができるとマルティネスが飛び込んでのパンチをヒットしていきます。右でぐらつかせたマルティネスはそのまま猛然とラッシュ、レフェリーはストップ。
フリオ・セサール・マルティネス、10RTKO勝利。
もっと早くにストップできていたであろう相手ですが、マルティネスがかなり横着な戦いをしたからこそ、長びいたともいえる試合内容だったと思います。最後のラッシュはらしさ全開でしたが、組み立ては皆無。このまま判定に行ってもおかしくないような試合でした。
世界ミドル級4団体統一タイトルマッチ
サウル「カネロ」アルバレス(メキシコ)58勝(39KO)2敗2分
vs
ジョン・ライダー(イギリス)32勝(18KO)5敗
メインイベント。スタジアムにはものすごい人、人、人。やっぱりカネロはスターですね。
地元グアダラハラで、期待通りのパフォーマンスを見せる事ができるか。そしてライダーは、どこまで食い下がれるか。
初回、似たような体型のボクサーふたりは、まずリング中央、互いに慎重に相手を見ます。カネロは「まず見る」イメージですが、ライダーも落ち着いており、まずはカネロの出方を伺います。
カネロがジャブを出すと即刻クリンチのライダー、そこからゼロ距離で打ちます。これがライダーの作戦のようで、おそらくカネロにパワーパンチを出させる距離を作らせない、というイメージか。
2R、カネロはまだ様子見の段階ですが、得意のステップインジャブからの右。ここをガードでしのぐライダー、そのブロッキングはなかなか固い。終盤にはまたクリンチからの攻防を挑んでいます。
3R、プレスを強めたカネロ。ガードを固めて前進します。ライダーはこれを迎え撃ち、真っ向勝負の構図です。ゴリラとカネロの力比べ、この展開を一番期待していました。
サウスポーのライダーに対してカネロの左ボディはいつもより効果が薄いか。そしてクリンチを交えたライダーの攻撃は思いの外良いようにみえます。
4R、ライダーは下がりながら巧く戦っていますが、それでもカネロを止めるのに十分ではありません。カネロの右は徐々に当たりはじめ、このラウンドでライダーは血まみれに。どんどん強くなるカネロのプレッシャー、今日はあまりヘッドムーブがなく、グイグイと圧をかけています。
5R、このラウンドも展開は変わらない中、ハーフタイム頃にカネロのワンツー、これでライダーはダウン。立ち上がったライダーは血まみれ、仕留めに行くカネロ。
しかしライダーの反撃は非常に激しく、カネロもこのラウンドで仕留めきる事はできませんでした。
6R、このラウンドも中盤にカネロは右を思いっきり打ってライダーをぐらつかせます。それでも諦めないライダーは懸命にリターン。
7Rも同様に過ぎ、8R。ライダーは十分カネロとガチンコファイトですね。カネロも疲れていそう。最終盤、カネロの右で倒れたかに見えましたが、これは足が引っかかってしまったようでスリップ裁定。
9R、このラウンドも真っ向勝負のライダーですが、後半、カネロの右で足元が怪しくなる場面も。レフェリーは注意深く観察しますが、ライダーは倒れず、また打ち返してサバイブ。
10R、ライダーはもう随分とカネロのパンチに慣れているように見えますね。カネロはダイナミックな攻撃は出せず、やや単発気味のパンチを幾度かヒットするも、タフなライダーを倒せるようなパンチではないようです。
11R、ライダーは勇敢、あのカネロにも一切怯みません。と同時に思うことは、やはりカネロももしかするとプライムタイムを過ぎたのかもしれません。「何が衰えた」というのはわかりませんが、どこかしらダイナミックさに欠け、堅実ではあるもののややディフェンス面も不安定か。
ラストラウンド、ここが天王山とばかりに積極的に攻撃を仕掛けるライダー。カネロも勿論迎え撃ち、交互に攻撃を仕掛けるかのような打撃戦。最後まで打ち合った両者は、最終ラウンド終了のゴングを聞きました。
判定は、120-107、118-109×2でカネロ。素晴らしい花火がコロシアムに上がります。これ万が一負けてたらどうなったのか。
カネロのフルマークに近い判定勝利、というのは非常に妥当だと思いますが、カネロがライダーを倒せなかったのは意外。ライダーは前に出てくるタイプのボクサーだけに、カネロにとっても戦いやすいと思ったので、カネロの攻撃力が活きると思っていたからです。
ライダーが思った以上にタフだったのか、カネロに凱旋試合のプレッシャーがあり、力を出しきれなかっただけなのか、それとも何かしらの衰えがあるのか。
今はまだ、スーパーミドル級では無双状態。ライトヘビー級でのビボルとの再戦よりも、べナビデス戦、もしくはモレル戦を選択してもらいたいものです。
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