7/1(土)はダイナミックグローブ。
U-NEXTで生配信されたこの興行は、メインにWBOアジアパフィックタイトル戦、セミに日本タイトル戦というWタイトル戦の興行です。
メインイベントで中川健太に挑むのは、白石聖。アンソニー・オラスクアガ戦を急遽キャンセルされた後、チャンスが巡ってきましたね。ここで挑戦者のジョーは、どのような戦いを見せるのか。
そしてセミファイナル、角海老期待の飯村樹輝弥が挑むのが前戦で山内涼太を退けた、永田丈晶。この王者のジョーは、前戦に続いて強さを見せられるか。
ちなみに個人的に最も注目しているのは、セミファイナルの日本フライ級タイトルマッチ。
王者・永田は素晴らしいテンポのボクシングで元世界挑戦経験者、山内涼太(角海老宝石)を破って初戴冠。このボクサーはおそらく乱れることがなく、かなり高いパフォーマンスを常に発揮できるタイプのボクサーだと思うので、「安定王者」と呼ばれる日も近いのかもしれません。
しかし挑戦者の飯村樹輝弥(角海老宝石)も前々戦で元日本王者、奥本貴之(グリーンツダ)を破っています。ソンブレロがよく似合う飯村を応援したいと思っています。
U-NEXTの視聴を開始すると、赤井英五郎(帝拳)が鈴木輝(金田)をロープに詰めて猛ラッシュをしているという場面。
この場面の的中率は決して高くはなかったものの、すでに鈴木は力を残していないように見えました。
ラウンド数はなんとまだ1R、これは早々に赤井が効かせたのでしょう。
この赤井のラッシュ中にレフェリーが割って入り、赤井英五郎の初回TKO勝利。
東日本新人王ミドル級トーナメントに出場している赤井、次戦は伊吹吾郎の孫、伊吹遼平(三迫)だそうで、これは話題になりそうです。
ウェルター級8回戦
豊嶋亮太(帝拳)vsジェ・ハングク(韓国)
初回、豊嶋がガードを掲げ、プレス。そこから強く鋭いジャブを放っていきます。この村田諒太を彷彿とさせるようなストロングスタイルこそが豊嶋の強みですね。
佐々木戦では距離がより近くなってしまい、フックの距離まで詰めてしまった上、打ち気に逸ってしまっていたというイメージ。
今回はしっかりとストレートの距離でプレスをかけ、盤石の戦いを敢行しています。
2Rに入ると豊嶋は良い左ボディをヒット、右ストレートでハングクの顔面を弾くシーンも。
3Rがスタートするとハングクがチャージ。ゴリゴリのコリアンファイターよろしく、突然のペースアップで豊嶋に襲いかかります。ここを豊嶋は退かず、冷静にブロッキングで対処、そこからワンツーをヒットするとハングクの顔面が大きく跳ね上がります。
その後もまたボディを交えた力強いコンビネーションで優勢。
4R、一瞬の見せ場も通用しなかったハングクでしたが、ここからもまだ頑張ります。ただ、力の差は明らかであり、しかも今戦の豊嶋は非常に調子も良さそうで、フィジカルもメンタルも充実していそうです。
まったく乱れの無い豊嶋は、このラウンドでボディから左フックをヒットしてダウンを奪うと、続く5Rにストップ勝利を決めました。
日本フライ級タイトルマッチ
永田丈晶(協栄)5勝無敗
vs
飯村樹輝弥(角海老宝石)3勝(1KO)1敗
初回、互いにステップを刻み、互いに細かなアクション。永田がよく足を動かすのに対し、飯村は早速パンチを出していくという立ち上がり。
後半にいくに従い永田がどんどんノッてきた、みたいな印象はあるものの、飯村は非常に返しがスムーズで、左、右、左とテンポよくパンチを出せています。
これは両者ともに良いボクシング、互いの持ち味を出せる好試合になりそうです。
2R、永田の左ボディストレートはやはり脅威ですね。ただ、飯村も多彩なアングルのパンチと回転力が素晴らしく、これはジャッジ泣かせではないでしょうか。
両者ともに最初からフルスロットル、小細工なしで自分のボクシングをぶつけにいってる感じが、本当に素晴らしい。
3R、ここで飯村が少し足を使い、永田の出てくるところにカウンター。この下がりながら戦う飯村も上手く、リードで永田を牽制しつつ、出てくるタイミングを伺っています。
永田のボクシングは非常に安定しており、この運動量を長いラウンドでも続けられるということが持ち味ですが、逆説的にいうとこの戦い方を突き詰めており、他にないとも言えます。
4R、飯村が両の手をやや前めに出し、迎え撃つ雰囲気。これは永田の距離感を狂わせようというイメージか、ここでも飯村はカウンター狙いのボクシング。ただ、このカウンター狙いも単発で終わらないのが素晴らしいところで、また右アッパーのアングルは良い。
5R、やはり飯村が良い。待ちつつも先に攻め、攻めては動くので永田の追撃を許さず。どちらかというと永田は思うようにパンチを放てていないイメージで、足こそ動くものの前回のようにポンポンと手を出していくことができていないように見えます。
途中採点は、48-47永田、49-46飯村、48-47飯村。これまた微妙なところです。
6R、2-1で飯村ながらも、元気になったのは永田の方。永田が一気に手数を上げ、飯村に攻め入ります。これは印象の問題ですが、永田の嵐のような手数を受けてしまうとパンチを出す暇がなくなり、当たっていなくとも劣勢に見えてしまいます。
このラウンドを終えて、おそらく1-1となり、振り出しでしょう。
7R、永田は足の動き、手の動き、当然のことながら変わりません。飯村はそれを迎え撃つも、ちょっと「迎え撃ち」すぎて以前のような打ち終わりの動きが少ない。
その中でも飯村は良い右ストレート、左フックを当てており、印象的なヒットを奪います。
永田はそれでも止まらず、とにかく手数足数が多く、ダメージも全く感じさせずにものすごい運動量。
8R、ここにきて飯村のサークリングも復活。序盤、飯村は良い動きで永田の前進を躱します。左右の動きとカウンター、この飯村のボクシングが永田のボクシングとは相性が良さそうです。
それでもやっぱり少しも動きが衰えないのが永田。これは相手にとって非常に恐ろしいですね。後半、飯村にドクターチェックがありました。(バッティングのカット)
この動きながらのカウンターボクシングに手応えを感じたか、飯村がラウンド終わりにガッツポーズ。これを残り2R続けられるか、という所が大きな大きなカギ。
9R、永田の前進を察知して、飯村がコンパクトなカウンター。頭の位置も工夫しながらのカウンター、打った後に足を動かす、素晴らしい集中力です。
永田は止まりませんが、飯村も止まりません。
最後まで細かなステップで前進を続ける永田、飯村も打っては動く、互いに夕ずらない9Rが終了、相変わらずポイントは微妙です。
ラストラウンド、おそらくお互いに、そして両陣営ともに、勝利を確信はできていないはず。もはや死力を尽くすしかないこのラストラウンドは、頭をつけての打撃戦。その中でもやはり動きが全く衰えない永田がハイペースに攻め入り、飯村は打とうとしてしまうがゆえにその場にとどまってしまうことが多いか。
後半移行、飯村の足も動きはじめ、下がりながらのカウンター。特に終盤は飯村の良いカウンターがヒットしたように見えます。
本当に本当に素晴らしい戦いとなりました、日本フライ級タイトルマッチ。
判定の結果は、95-95、96-94×2、勝者は飯村!!!!
ドローでもおかしくなかった戦いは、飯村が僅差で勝利!!素晴らしい戦いの結末は、王者交代でした。たった5戦、6戦でこのタイトル戦のリングに立った若き強豪たち。
今後のキャリアも非常に楽しみですね。
WBOアジアパシフィック・スーパーフライ級タイトルマッチ
中川健太(三迫)23勝(12KO)4敗1分
vs
白石聖(志成)11勝(6KO)無敗1分
37歳、今が全盛期といって憚らないサンダーレフト。やっぱり個人的には船井龍一に追いついてもらいたい、と思うので、どうにか世界挑戦を叶えてほしいと思っています。だから勿論、ここで応援するのは中川。がんばってもらいたい。
初回。セミファイナルの応援合戦からは一転、非常に静まり返る会場。立ち上がりも非常に静で、白石がややプレスをかけ気味に前進、中川は左まわりにサークリング、そこから一気に仕掛けます。
前手で相手をさぐりつつ、の時間が長かったですが、後半、中川のサンダーレフトが炸裂。クリーンヒットはラウンド通じてこの一発のみだったことから、ここは中川のラウンドで間違いないでしょう。
2R、中川がサークリングしつつ、白石の入り際にカウンターを狙います。白石はジリジリと距離を詰めつつフェイントをかけ、少し固さがほぐれてきたイメージ。
3R、白石が入ってきたところに中川もダック、これでバッティング。これはバッティングが良く起こるパターンのやつで、ちょっと仕方ないところですね。
白石がこめかみ辺りでしょうか、カットして流血ですが再開、その後も結構頭は危ない。
後半、ちょっと焦りがあるのか、白石が打ち気に逸っているところで中川が上手く左を当てていきます。
4R、プレスをかけるのは白石、ただタイミングよくパンチを出すのは中川。これがキャリアというものでしょう。
この中間距離での駆け引きではキャリアの差が出ていそうな感じで、白石としては思い切って近い距離の打撃戦に持ち込みたいところです。
5R、中川がノーモーションのジャブのような左ストレート、体ごといく左のオーバーハンド。これは非常に厄介ですね。白石は非常に長いワンツーを使っていきますが、これは中川が距離を取って躱します。
6R、めっちゃカクカクします。コマ送りみたいな感じになっていて見づらい。が、中川がまっすぐの左ストレートを当てる姿が見えました。
白石の攻撃も勢いがあって良いですが、中川のぬるりとしたディフェンスもさすが。そこからのカウンターも怖い。
7R、白石がワンツーで踏み込むと、中川が左カウンター。これはまずい白石、強引な踏み込みを見せます。ただ、中川は距離を詰められるとクリンチ、白石の思い通りにはさせません。これがキャリアというものでしょう。
8R、白石は良いジャブを持っていますし、そのワンツーの踏み込みは非常に鋭い。それでもなぜだか中川に届かず、中川の左ストレート、そして右フックは当たります。
後半、強引に攻めた白石、この後のラウンドはなりふり構わずいかなければいけなそうです。
9R、このラウンドもいくつかの左をヒットする中川。白石が強く攻め込んできた時にはいなし、クリンチ。白石がきれいなワンツーのあとは中川の左が必ず返ってくるということもあり、白石が攻めきれないイメージ。
10R、後がなくなってきた白石、ここは強い踏み込みを見せます。必然、中川の左を浴びる場面も多いですが、そうは言っていられません。
身体をぶつけるように攻め込む白石、だからこそ距離が詰まることも多くなってきたか。しかしやはり、何段階かの攻めを見せなければ、中川には届かなそうです。
11R、このラウンドも、中川の左が冴えています。いかなければ勝てない白石、残念ながら攻めきることはできません。白石の右をかわして中川の左、これが鉄板です。
距離を詰めれば素晴らしい回転力を活かせる白石ですが、中川を相手に距離を詰めることは非常に難しい。
ラストラウンド、ここにきて白石がしつこくしつこく中川を追っていきます。この追い方は中川にとっても嫌だと思うので、これをもっと早くできていればもしかするとなにかが違ったかもしれません。
中川はもう随分余裕を持っているものの、これがラストラウンドだという事実はでかい。
中川がしっかりと巧さを見せた12ラウンズが終了。
判定は、115-113、116-112、117-111、3-0の判定で勝者は中川健太。
個人的には中川の圧勝、と思っていましたが、見ようによっては2ポイント差まで詰められるのか。中川が試合巧者ぶりを発揮し、若く勢いのある挑戦者を完封、これはもう何度となく見た光景です。
日本のスーパーフライ級の完璧なゲートキーパー、中川健太。
フライ級の世界王者からスライドしてスーパーフライ級の世界王者に挑んだ田中恒成や中谷潤人を除けば、やはりこの中川健太を超えていかなければ世界へいけません。
勝利者インタビューを聞くと、世界挑戦に「ボクサーとしての死に場所」を求めているようにも感じる中川。どうにか彼の悲願である世界初挑戦、叶えてもらいたいものです。
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