大阪ではエマヌエル・ロドリゲスvs西田凌佑という大注目試合が終わった後、U-NEXTではダイナミックグローブ。
2つの日本タイトルマッチ、それもその2つは再戦という激アツなマッチアップです。
ある意味、ボクシングの技術論から離れたところで言えば、世界タイトルマッチよりも日本タイトルマッチの方が面白い、というのも感じるところです。
当然、タイトルマッチじゃなくても日本人同士の試合というのはそのボクサーを知れば知るほど深みが出てくるものではありますが、どうしても時間を天秤にかけざるを得ないので最近はタイトル戦くらいしか見れていません。
なのでこのダブル日本タイトル戦というのは貴重な機会、好ファイトを期待します。
ということで今回のブログは、坂井祥紀vs豊嶋亮太、川満俊輝vs安藤教祐、2つの日本タイトル戦が開催されたダイナミックグローブの観戦記。
↓プレビュー記事
日本ライトフライ級タイトルマッチ
川満俊輝(三迫)9勝(5KO)1敗1分
vs
安藤教祐(KG大和)13勝(6KO)4敗
前戦では川満の初回TKO勝利。オキナワンパンチャーの一発を早々に喰らってしまったが故に初回で終わってしまったわけですが、これがそのまま実力差、というわけではもちろんありません。
安藤としては再戦に機するものがあるでしょうし、しかもタイトルがかかる試合でもあります。どのような戦いを見せてくれるのでしょうか。
初回のゴング。
まずは川満がぐいっと距離を詰めます。安藤はサークリングしながらジャブ、このジャブを鍛えてきたとのことです。
川満はプレスをかけて強打。ボコンボコンと音をたてるほどの強打をボディに見舞い、中盤には左フックをヒットしています。安藤はちょっと後手、川満のパワーに押されているイメージで、ガードこそ固めているもののちょっと分が悪いか。
2R、川満の回転力が素晴らしい。強打を打ちつつもバランスが崩れない川満は、強いフィジカルを感じます。
安藤もこのラウンドは強いジャブ、川満の強打へのリターン、タイミング的にはリターンの左フックが良い。ただ中盤、川満の左フックが効いたか後退、ここで川満はパンチを出しながら前進して止まりません!
安藤も右のショートをヒットしますが、いかんせん川満のパンチでバランスを崩される場面が多く、大して川満は全く崩れないフィジカル。これはちょっと地力が違うのか。
ラウンド後半も右フックでぐらりときた安藤、ちょっと危ないか。
3R、安藤が大きなステップ。パンチを打ちながらサイドにまわり、このラウンドは安藤が右のショートをヒット!これで初めてバランスを崩す川満!
しかしその後安藤の右は非常に大振りになってしまい、川満の右をカウンター気味に浴びてしまいます!一転してピンチもここは下がらずに気持ちを見せる安藤!中盤にも右をヒット、しかしここで川満も冷静、非常にコンパクトなコンビネーションで攻めてきます!
この距離でちょっと分が悪い安藤、パンチがあたることにより回転力が出てくる川満、レフェリーはすでに二人を注意深く見ており、ストップのタイミングを測っているか。
と思えば安藤がここから反撃、かなりワイルドな攻撃ながらもこれが川満にヒットして川満の動きがとまる!
安藤は明らかにダメージを感じる動きながらも、そのパンチはまだ生きており川満を脅かす!川満はあくまでも冷静、こちらもおそらくダメージはあるのでしょうがチャンスにおいてもパンチはコンパクト、幾つものヒットを生んでいます!
4R、ステップワークとジャブから入る安藤、川満は変わらず強いプレス。プレスをかけながら、川満の突き刺すようなジャブがよく入っているイメージ、幾度か安藤の顔がこのジャブで跳ね上がります。ジャブの威力がやばい。
しかし中盤、安藤がジャブから右アッパーをテクニカルにヒット、ここから一気に攻め入る安藤!
しかし川満はこのダメージを手数で誤魔化すかのように、しっかりとした土台に成り立つコンパクトなショートをまとめて流れを引き寄せます!歩きながら全くバランスの崩れないこのボクシングは、安定感があって素晴らしい。
この旺盛な手数に安藤の顎は跳ね上がり、もはや限界かと思うところで強振のリターンで押し返す!安藤の気持ちも素晴らしい!!
これはなんという熱戦でしょうか!
5R、ここは川満が勝負をかけます!強いプレスでグイグイきますが、ここで安藤が大きなステップとジャブ!
開始20秒ほどはうまくいなした安藤ですが、その後川満に捕まり、コーナー際まで詰められてしまいます。
しかしここで安藤の右がヒット!川満の動きが止まる!それでも前に出てくる川満、両者ともに強打を見舞い合い、押していくのは川満、安藤はちょっと手数で負けています!
激しく攻める川満!安藤は下がりながらも強打で迎え撃つ!
ここまでポイントは川満なのでしょうが、安藤の健闘が非常に光ります!
6R、下がりながらの戦いの安藤ですが、このラウンドの序盤は良くて数が出ています。こうなると川満のパンチが少なくなりますが、中盤には安藤の手数が少なくなり、そのために川満が攻めやすくなる。
左フックカウンターを狙う安藤ですが、やや単発気味、かなりダメージもありそうで、もはや連打を出せる状態にないように見えます。
そして後半、この安藤の左フックカウンターが失敗、逆に川満の左フックを浴びてしまったところでレフェリーが割って入り、ストップ!!
川満俊輝、6RTKO勝利!!!
ものすごい戦いでした。。。!!非常にスリリング、地力に優ったのは川満俊輝でしたが、その中で安藤のハート、覚悟が非常に印象的でした。
それを自分のボクシングで見事に捩じ伏せた川満は、やはりこの国内のライトフライ級で頭ひとつ抜けたボクサーのように思います。この安定感たるや、ファイターとしての理想系なのかもしれません。
強いプレスと素晴らしい回転力を持ちつつ、カウンターをいくつかもらっていたところは気になるところ。ただこれは伸び代とも言えます。今後どのように世界へ挑んでいくのか、非常に楽しみですね。
日本ウェルター級タイトルマッチ
坂井祥紀(横浜光)29勝(15KO)13敗3分
vs
豊嶋亮太(帝拳)18勝(11KO)3敗1分
こちらは立場を入れ替えての再戦です。前戦ではアジア王者、豊嶋に坂井が挑む構図でした。
以前のスパーリングでは坂井が良かった、とのことでしたが、実際に勝利したのは豊嶋の方。練習と本番は違う、というのもありますし、坂井に心のどこかに油断があったということもあるでしょう。
では、今回はどうか。
豊嶋は前戦で勝利しているだけに、心のどこかに隙はないか。
坂井は日本での初戴冠を経験し、自信をつけたことで楽観視していないか。
両者の心の強さが試され、どちらがよりモチベーションを研ぎ澄ませているのか。
そのココロの部分がクローズアップされそうな、50-50の戦いだと思います。
初回、まず豊嶋が鋭いジャブ。早々に両者の右が交錯、坂井が比較的サークリングをしながら戦っているのは、前戦の後半の良いイメージゆえか。
ただ、豊嶋のジャブが良く、動く坂井をしっかりと追いかけていけています。
坂井もタイミングの良い速い左フック、豊嶋の右に対する右カウンター等を駆使して譲らず。
2R、坂井がジャブを使っていきます。意外とジャブが良いのがこの坂井、このラウンドもしっかりと足を使ってのジャブ、そして右はアングルを変えてフック、アッパー、オーバーハンド。
豊嶋は乱れないバランスの良いボクシング、こちらもジャブカウンターが良い。
坂井はもっとジリジリいくイメージなのですが、この試合は非常にアクションも多く、このラウンドはとにかく縦のパンチが良い。
3R、このラウンドも坂井のアクションが多く、先に攻める分アングルの良さも非常に活きています。
坂井はジャブを打った後に自分の左肩と肘で相手を遮りながら距離を詰めての右、この右がオーバーハンドなのかアッパーなのかを自分の体で隠し、豊嶋からすると見づらいのかも。
4R、豊嶋がジャブから入ります。これは良いですね。対して坂井も良い動き。
ですがこのラウンド中盤には豊嶋の左フックがカウンターでヒット、若干坂井の動きが止まったようにも見えました。
しかしここで表情を変えない坂井、豊嶋は追撃はできず。
5R、豊嶋は前ラウンド、良いジャブから入りましたが、その後はなかなかジャブが出ず。前ラウンドで左フックをヒットしたことから、このラウンドは左フック狙いがやや多いか。
これはちょっと坂井に見切られており、坂井の高いガードに阻まれています。
後半、坂井はコンビネーションを上下に打ち分け、右オーバーハンドをヒット。
6R、豊島がプレスを強めます。併せてよく手数が出るようになった豊嶋、これで持ち味を発揮できるか。
対して坂井はよく動き、豊嶋をいなしていく、という展開。
7R、豊嶋は勝負をかけるかのような強いプレス。ここはアングルが多彩な坂井の迎え撃つパンチがヒット、しかしその後はジャブからストレートをヒットする豊嶋。
飛び込む豊嶋とそれを迎え撃つ坂井、という構図は、どちらもヒットを生み出し、非常に難しい試合へと突入しています。
8R、互いに被弾しながらも攻撃の手を緩めません。両者ののタフネス、ハートの強さというのは本当に素晴らしい。
豊嶋にはチャレンジャーとしての気概をビンビンに感じるし、坂井にはリベンジの決意、王者としての矜持を感じます。
9Rも打撃戦。若干距離も離れる場面もありますが、基本的には近接先頭です。ここまでのノンストップファイトで互いに疲労は見えますが、若干そこに余裕があるのは豊嶋かもしれません。
ラストラウンド、展開はほぼ変わらないまま、豊嶋がプレスをかけて攻めて坂井がいなしながらさまざまなアングルから打つ。
互いにダメージも疲労もある中で、自らのボクシングを崩すことなく、ラウンドが終了です。
この戦いはやはり互角と言ってよく、果たしてどちらの勝利でも納得してしまいます。
これは自分それぞれのボクシングをそれぞれがやり切った、という試合、非常に見応えのある大激闘でした。
注目の判定は、96-94で坂井、96-94で豊嶋、そして残りの一人は96-94で豊嶋。
これはドローでも全く問題ないような戦いでしたが、後半に巻き返した格好になったのでしょうか、豊嶋亮太が2-1の判定で勝利。
ちょっと終盤に疲れが見えた坂井、これは非常に残念。今回は豊嶋の挑戦者としての気持ちが上回った、ということなのでしょう。
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