信太のボクシングカフェ

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ボクシングが大好きです。大好きなボクシングをたくさんの人に見てもらいたくて、その楽しさを伝えていきたいと思います。

【観戦記】そこに壁はなかった。スティーブン・フルトンvs井上尚弥、スーパーバンタム級最強決定戦!

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行ってきました、有明アリーナ。

まあ、結果を知らない人はもういないでしょう。

会場の雰囲気、ライティング、入場時の演出等々、NTT docomoさんは本当によく頑張ったと思います(上から目線)。

会場で見ていても、海外の会場を真似ている雰囲気で、独創性こそないものの海外ボクシングを見慣れている身としては非常に安心感があって非常に良かった。まあ、どこの会場であろうとも犠牲になるのは高いお金おを払って、時間を使っている現地観戦組なわけですが、これについてはどこでやっても同じだから仕方ありません。

ということで今回のブログは、フルトンvs井上の観戦記と感じたこと。

 

7/25(火)有明アリーナ

WBC・WBO世界スーパーバンタム級統一タイトルマッチ

スティーブン・フルトン(アメリカ)21勝(8KO)無敗

vs

井上尚弥(大橋)24勝(21KO)無敗

まず、このマッチアップが注目される理由というのは、やはり井上尚弥がPFPのトップファイターであり、世界的名声を手にしていることが大きいと思います。

そして、それを迎える王者がボクシングのメインストリート、アメリカ人、それも黒人ボクサーであることも大きい。

そうでなければ、「スーパーバンタム級」という階級で、無敗対決とはいえど世界的にはここまでの注目を集めることは難しいでしょう。

ということで、ESPNでは解説者、ティモシー・ブラッドリー氏もさぞ早起きだったのだろうと思うのですが、おなじみジミー・レノンJrのコールでの選手入場からスタート。

 

あ、ちなみにESPNの放送では「イノウエの登場まであと何分何秒」という表記が出ていました(いつもは出ていない)。なので井上尚弥の入場時間は決まっていたのだと思いますが、それは日本人には伝えてあげないという。

そんなわけでTime has come、ゴングです。

まずは両者リング中央、ふるとんは前足をかなり前めに出し、この前足で井上が距離を詰めるのを防ごうとしているように見えます。

ちなみにこの時、計量の時ほど体格の差異は感じません。井上がデカく見えるのか、フルトンが小さく見えるのか。

フルトンは足を踏もうとしているかのような動きで(そうしているわけではないのでしょうが)左足の外側に井上の足を置き、インサイドに入られまいとしています。

この長い距離でこそ、フルトンは戦いたい。のだと思うのですが、まずこのジャブの差し合いというか距離の探り合いみたいなところで早々に井上が優位に。

 

中盤、井上は牽制的に右を打ちますが、この後、プレッシャーを感じてかフルトンは動きが大きくなり、バックステップを踏むことが多くなります。そして、井上のジャブへの反応は遅れ、早くもクリンチ、ブロッキングも使い始めます。

終盤、井上が自らクリンチに行った、と思っていたのですが、映像で見るとどうやら前足がフルトンの前足に引っかかってバランスを崩し、そのままフルトンに抱きついてしまっただけのようですね。

会場で見た時は、この行為は「クリンチ際でも戦える」ことを示すためのものかと思っていましたが。

初回のパンチスタッツはフルトン3/22、井上11/28ということで圧倒的。

2R、すでにフルトンの距離を見切った井上はアグレッシブに攻めていきます。強いプレスをかけてフルトンを動かし、一瞬動きを止めたかと思うと鋭い踏み込みでワンツー。

 

フルトンが事前の映像で語っていた通り、井上は特別なことをしません。その攻め方やコンビネーションは言うなればボクシングを教わったことのある人なら誰しもができること、それを絶妙なタイミング、素晴らしいスピードとパワーでやってのけるだけなのです。

フルトンが攻めればボディワークとバックステップ、井上はフルトンに対しての警戒は怠らず、右ガードはしっかり顎前。さらに顎もしっかりと締めています。

かなり後ろ荷重なフルトン、ブロッキングでもこのパンチは受けてはいけない、ということは認識しているようで、大きな動きでかわそうと試みます。

ただ、完全に躱すことは不可能ながらも、細かな動きで致命的なダメージは避けているように見えます。

ちなみにここまでフルトンはちゃんとほぼ小細工なしで戦っており、王者としての矜持を感じますね。

3R、今度はフルトンはプレス。フルトンもこの流れはダメだと思ったのでしょう。こうして瞬時に戦法を変えられることはフルトンの素晴らしいところではありますが、正直、前での勝負はお勧めできません。

 

「待ち」の井上尚弥は更に隙がなくなり、穴がなくなることでまた強い。井上にダメージを与えるには、やはり井上が打つ際に顎が上がる癖を突くしかないのではないかと思っています。

比較的長い時間リング中央に居座ったフルトンですが、鼻から出血が見られます。

4R、井上がパンチに力を込めて攻め入ります。フルトンは井上の右を全力警戒、左ガードをあげて対応していますが、どうしてもパワーに押されてバランスを崩す。その分、リターンは遅れてしまいますね。

フルトンと井上を比べると、ステップインのスピード、距離に大きな差があり、井上が一瞬で詰められる距離をフルトンはバランスを崩しながらでなければ攻め入ることができません。これは不思議なもので、手足の長さはフルトンに随分利があるはずです。

フルトンも嫌なタイミングでジャブを打つこともありますが、右クロスを合わされそうになることもあり、フルトンにとっては嫌な時間が続きますね。何の変哲もない(ように見える)ワンツーをガードを弾かれつつねじ込まれるのも良くない。

 

インターバル中、WBA・IBF統一王者マーロン・タパレスがスクリーンに映ります。そういえばタンクやらヘイニーやら(あと誰だっけ?)日本に行くぞ、みたいに言っていたボクサーたちは誰もきていないのでしょうか。まあ、タンクは犯罪者なので出所したとしてもビザ降りてないかもしれませんが。

5R、ここまでのトータルパンチスタッツはフルトン18/112、井上55/188と圧倒的大差。

井上はこのラウンド、ポジションを変えつつジャブをヒット、ヒットすれば右、左とつなげる本当にテキスト通りの戦い方。テキストっていうかバイブルです。この小細工なしのスタンダードなファイトスタイルで、誰よりも強い。

フルトンの頭にはまず(右ストレートをもらわないための)左ガード、が頭にあるのか、いつものように打ってはクリンチ、という戦法が取れていません。単に想像以上に距離が詰まらないからできない、ということなのかもしれませんし、クリンチに行こうとしたところで井上の鋭いジャブが飛んできていてできないのかもしれません。

6R、あっという間です。

このままいけば井上の勝ちは揺るがないでしょうが、両者ともこれで終わるボクサーではないでしょう。

フルトンは井上のリターン(右クロス)を十分に警戒してジャブを打たなければならず、ジャブ一つを打つだけでもかなりの集中力と精神的疲労を必要としていそうです。

 

リーチ差なんてハナからない、かのようにジャブの差し合いでも優位に立つ井上、後半は右と右が交錯、その後も左フックを後出ししてもタイミングがあってきています。

やっぱりジャブ一つとってもパワー差は明らかであり、井上尚弥のパワーはスーパーバンタム級でも十分に通用しているように見えます。

7R、しつこくパンチスタッツを載せておくと(今日のESPNはこのスタッツをいつも以上にめちゃくちゃ出してきます。)、フルトン33/180、井上93/309と差は開く一方。

やっぱり井上のタイミングは合っており、フルトンが出てくるタイミングでジャブカウンター。タイミングは完璧です。

しかし1分すぎ、さすがフルトンというところを見せてくれます。

フルトンはジャブからオーバーハンド気味の右。これが井上のガードの後ろあたりに着弾、これが事前のインタビューでダニエル・ローマン(アメリカ)が語っていたものですね。

 

これを受けて井上はより攻撃的になり、その分フルトンにも付け入る隙が出てきたようなイメージ。井上の攻撃はワイルドになり、そこにフルトンのジャブを被弾する結果となります。

しかしこれは、井上が「フルトンの攻撃」に対して「怖さがない」という判断を下した結果であるとも言えます。これまでの警戒を解き、強引に攻めていっても大丈夫、みたいな感じ。思い出すのは、ジェイミー・マクドネル(イギリス)戦です。

なお、この間のインターバルでLOWEST KO PCT. AMONG CURRENT WORLD CHAMPSなるものが出ます。世界王者の中でKO率の低いランキングです。

1位はもちろん我らがサニー・エドワーズ(20%)ですが、2位も我らが井上拓真(21%)、3位にヴィンセンツォ・グアルティエリ(32%)、4位にノックアウト・CPフレッシュマート(37%)、5位にフルトン(38%)。

ついでにこのラウンドのパンチスタッツは、ヒット数で初めてフルトンが上回り、フルトン13/38、井上8/44。それでも、井上がフルトンを煽っている状態ではあるので、さほど劣勢という感じはしませんね。

8R、フルトンが出てくるところに井上のボディジャブが突き刺さります。フルトンのような大きい相手にこのボディジャブというのは非常に有効で、ボディジャブはジャブよりも長い距離で届くがために、これはきっとフルトン対策で練習してきたものなのでしょう。左手を下げるスタイルとともに。

 

と思ったらそのボディジャブから上への右ストレートがクリーンヒット!!

フルトンはグローブをマットにタッチしたように見えましたが、そこに井上の追撃の左フック!!!フルトンはダウン!!

ロープに後頭部をぶつけたように思いましたが、レフェリーはカウントを続行!

井上は手応えがあったか、勝利を確信してトップロープに登っています。

しかし何とか立ち上がったフルトン、再開後襲いかかる井上!!

青コーナーに釘付けにしたところでレフェリーは試合をストップ、井上尚弥、8RTKO勝利!!!!

圧倒しつつも、やはりさすがフルトンと感じていたところで唐突のストップ劇。

スローで見ると右ストレートは完全にフルトンの顎を捉えており、結果勝負を決めたのはあの一つの右ストレートでしたね。

その時まではしっかりと左ガードで対応していたフルトンでしたが、ボディジャブから間髪入れずに叩き込まれた右ストレートに全く反応できず。

 

このボディジャブから顔面への右ストレートも、非常にスタンダードなコンビネーションです。その後のラッシュは、教えてできるものではありませんが。

会場は一気にヒートアップ、総立ち。

完璧すぎるノックアウトでした。

井上のパワーがスーパーバンタム級で十分に通用する、ということが証明された一戦でもありましたが、それ以上に、テクニカルでIQの高いボクサーを総合力で圧倒するあたり、全く非凡。

さすがモンスターと呼ばれるボクサーです。

さて、敗れたスティーブン・フルトン。想像以上に正々堂々、真正面から戦い、怪物退治に挑みました。

やはりフルトンも侠気のあふれる、素晴らしいボクサーでしたね。

 

この戦いの後のリングで、マーロン・タパレスがリングイン。「年内に4団体統一戦を」という約束をしてリングを降りています。タパレスがこの会場にわざわざ2つのベルトを持ってきていたことは可愛らしいですね。そのまま置いていってくれても良いが。

井上尚弥に望むものは、早くもスーパーバンタム級最強とか4団体統一とかではなく、やはりフェザー級進出でしょう。

今、井上に足りないのは激闘型のファイターかもしれず、混戦模様のフェザー級にこそ、その活躍の場があるのかもしれません。

これ、やっぱり「スーパーバンタム級が最終章」と言われてもものたりませんよね。。。

来年か再来年あたりのフェザー級進出を祈りましょう。

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