さあさあ、やってきましたメキシカン・スーパーファイト。
激戦必至ともいえるナバレッテvsバルデスは、この週末、全世界で最も注目度の高い興行です。
日本での放映がなかったのが非常に残念ですが、こればかりは致し方ありませんね。
ということで、主観ではありますが、せめて私の拙い言葉でこの試合のことを伝えていこうと思います。
ということで今回のブログは、ESPNで放映されたトップランク興行、エマニュエル・ナバレッテvsオスカル・バルデスの観戦記です。
8/12(日本時間8/13)アメリカ・アリゾナ州
WBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチ
エマニュエル・ナバレッテ(メキシコ)37勝(31KO)1敗
vs
オスカル・バルデス(メキシコ)31勝(21KO)1敗
マルコ・アントニオ・バレラとエリック・モラレス。
メキシカンファイトといえばこのふたり、というのは我々の年代ですね。
リングサイドにバレラとモラレスが揃い踏み、現役時代はバチバチで仲が悪かったですが、今や和解しているようです。なんとも素晴らしいライバルがいてくれたことが、互いのボクシングをさらに向上させたし、知名度をあげたという感がありますね。
あの頃、メキシカンというのは本当にロマンがありました。
さて、今のメキシカンといえば汚染牛やハーブティ、WBCからの優遇となんとも納得行かないことも多いわけですが、それでもメキシコはボクシングの中心国の一つ。
今回のナバレッテvsバルデスというのは、ボクシングファンからすると最注目の試合です。
会場には大観衆、同じエマニュエルでもロドリゲスvsメルビン・ロペスとはえらい違いです。
ともあれ、ゴング。
ガードを固めて前に出るのはバルデス。ナバレッテはサークリングしつつジャブ、から早速ワンツーを放っていきます。
続いて快調に攻めるナバレッテ、1分もたたない内にバルデスは膝をつきます。これはスリップの裁定ですが、結構パワー差がありそうな雰囲気ですね。
初回から強いパンチを振るいあうクラシックファイト、両者ともにプライドにかけてここは負けられない一戦だということが伝わってきます。
後半、バルデスはナバレッテの左フックに対して左フックカウンターをあわせるという「さすがバルデス」というところを見せますが、その後ナバレッテも右オーバーハンドからのコンビネーションで逆襲。こちらも「さすがナバレッテ」といえるものです。
2R、ナバレッテの攻撃はスピーディではありませんが、非常に重厚です。そのペースに付き合ってしまっている感じのバルデスはちょっと先手を取られてしまっている印象。
ナバレッテの長い攻撃の合間になかなかリターンの打てないバルデス、時折同時打ちでのカウンターをヒットするも、全体的にはナバレッテのアグレッシブネスにポイントが流れていそう。
3R、バルデスのディフェンススキルが良いのはわかります。これはチーム・レイノソの特徴でもありますが、特に上体を使ったディフェンスは良い。
ただ、ナバレッテのパンチはかなりアングルが多彩で、またタイミングも読みにくいため、全てをかわすことは不可能に近いのでしょう。1分頃、ナバレッテのアッパーを含めたコンビネーションで後退するバルデス、得意の左フックを強振する以外になかなか活路を見出すことができません。
4R、流れを変えようと、なのかバルデスはガードを固めて前進。しかしパワーに優れるのはナバレッテ、バルデスはやはり圧されてしまいます。
バルデスはやはり近づかなければいけませんが、ガードを固めて前進するさなかにナバレッテのアッパーを被弾。左フックも距離があわず、ミスブロー。
5R、序盤はやはりバルデスがぐいぐい来ますが、ナバレッテが上手くアッパーを当てるとそれは続きません。バルデスは上体の動きが良いですが、打ちながら入るわけではないので、なかなかナバレッテに近づけません。だからこそ、どうしても手数も少ない。
しかし中盤、バルデスは素晴らしい左フックをヒット、その後も右から左と繋げます。
が、それでもびくともしないナバレッテは終盤にかけて攻め入ります。
バルデスは左フックに非常に自信を持っているのはわかりますが、ちょっと頼りすぎな印象。ワンパンチで試合を決めようとしているのかもしれません。対してナバレッテは未だ柔軟に当たるパンチを繰り出しており、特にハイガードのバルデスには得意のアッパーカットが効果的です。
6R、ちょっと狙い過ぎの雰囲気のバルデス、ガードを固めて下がる、上体の動きでかわしますがなかなか手は出ません。
ナバレッテはコンスタントにジャブをつき、絶えず攻撃を繰り出しているような印象ですね。
バルデスの方が明らかにハンドスピードに優れますが、これではポイントを取るのは難しいのではないでしょうか。
ここまでのパンチスタッツは、ナバレッテ77/451、バルデス57/198。手数は倍以上違います。
7R、ナバレッテは足がフラフラするところはありますが、ボディバランスが抜群に良い。下がりながらでも、どのような体勢からもパンチを繰り出すことができ、またスイッチしつつ足のポジショニングをつかってバランスを保つすべも持っています。
逆にスタンスがしっかりしており、こちらもバランスが良いと思われるバルデスは、しっかりと決めきったところからしかパンチが出ない状況で、意外性としてはありません。だからこそ、バルデスの必殺の左フックは幾度も空を切っています。
8R、展開は変わらず。バルデスは前進こそするものの、なかなか当たる位置にはいけず。左フックを狙っているところが満々にわかるからか、ナバレッテもストレートの距離でバルデスを釘付けにしており、バルデスにとってはかなりきつい展開です。
一発でもしかすると試合をひっくり返す力を持っているのかもしれませんが、ナバレッテはとにかくタフです。
9R、あとがないバルデス、トリプルジャブで攻め込み、パワーパンチをなバレッテにコネクト。これはナバレッテを下がらせることに成功しますが、ナバレッテもビッグパンチで対応、攻守が入れ替わる打撃戦の展開です。
ただ、現在のところまでの顔面へのダメージは明らかにバルデスの方が上であり、ここで互角の戦いをしていてはバルデスに勝ち目はありません。
10R、ということはバルデスも十分にわかっているでしょうから、このラウンドでチャージ。劣勢を意識して一気にいけるのは強さの絶対条件、メルビン・ロペスは全然いけませんでしたからね。
ただ、相手はエマニュエル・ナバレッテ、スタミナもタフネスも問題なく、あまり力感のないパンチながらも相手にダメージを与えることができる不思議なボクサーです。
その(おそらく硬い)パンチを浴び続けているバルデスはどれほど力を残しているのか。
ナバレッテは相変わらず快調に手を出していきます。バルデスは諦めることなく強振を繰り返し、カウンター、リターン、コンビネーションを駆使してナバレッテをコーナーに追い込む場面も作ります。
ナバレッテもやや疲れが出てきた感がありますが、ここでもやはりアッパーをヒット、攻守が互いに入れ替わるビッグラウンドは、またも甲乙つけがたい!!
11R、のっけからチャージのバルデス!!疲労もダメージも色濃いですが、最後まで諦めないのがメキシカン。中盤、ナバレッテの攻撃をディフェンスでしっかりと我慢したあと、右のリターンをヒットしたバルデス。
ナバレッテは異常なまでのタフネス、スタミナを披露して意に介さず、お返しとばかりに右をヒットしています。
ちょっとナバレッテは異常ですね。どっちがチートっぽいか、と聞かれるとどう考えてもナバレッテ、でしょう。
徐々にダメージをためていったバルデスの顔面、右目付近は大きく青く腫れています。
ラストラウンド、ポイント的には余裕があるであろうナバレッテですが、しっかりと最後まで攻めの姿勢は崩しません。バルデスも一発逆転を狙って左右のフックを強振、試合を投げることはしません。
互いに緩む部分が一切なく、12Rにわたり死力を尽くして戦った、これこそがメキシカンライバル対決。
最後の最後まで得意の左フックを振るいつづけたオスカル・バルデス、そして最後の最後まで手を緩めることなくライバルを打ち負かそうと様々なアングルからパンチを放っていったナバレッテ。
両雄の戦いは、真のメキシカン・スーパーファイトでした。
12Rを戦い抜いた両者の顔を見比べると、原型をとどめていないバルデスに対して、ナバレッテはノーダメージに見えるほど。バルデスのパワーパンチが全く当たっていなかった、というわけではないはずですが、顔面には全くでていませんね。
最終的なパンチスタッツは、ナバレッテ216/1038、バルデス140/436。
判定結果は、116-112、118-110、119-109、エマニュエル・ナバレッテ。
結果的にはナバレッテの完勝ながらも、素晴らしい戦いを見せてくれました。これぞメキシカンという熱いハートを見せてくれた両者に拍手です。
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