今週末もボクシングは国内外で盛りだくさんでした。
大阪では25日から緊急事態宣言、ギリギリのタイミングで開催できたことに安堵。
寺地拳四朗vs久田哲也のWBC世界ライトフライ級タイトルマッチは、大方の予想通り拳四朗の大差判定勝利も、久田の気迫には驚き、勝利後の拳四朗の涙にも驚きました。
久田はこの試合を最後に引退を表明。
最終ラウンド、最後のゴングが鳴るまで逆転にかけるガッツは、かつて日本人が世界の壁に挑み、何度も何度も跳ね返されていた時代のボクサーを思い起こさせました。
それでも届かない、がんばってはいるもののポイント差は大きい、そんな日本人挑戦者を、私がボクシングを見始めた頃は多かったように思いますね。
その他にも熱戦続きだったTHE REAL FIGHTの観戦記はこちら。主催の真正ジムさんは非常に頑張ってくれていますね。
さて、本日はその翌日、日本時間4/25(日)に行われたWBO世界フェザー級タイトルマッチをメインに据えた、トップランク興行の観戦記です。
↓プレビュー記事
セミファイナル スーパーミドル級8回戦
エドガー・ベルランガ(アメリカ)16戦全勝全KO無敗
vs
デモンド・ニコルソン(アメリカ)23勝(20KO)3敗1分
セミファイナルから。16連続1RKO勝利という記録を更新中の、エドガー・ベルランガが登場です。このベルランガはとんでもないパンチ力を持ち、初回から倒そうとガンガンいくというよりは、一発当たって相手がよろめいた後の詰めが素晴らしい。
ここまでの試合時間は非常に短いものですが、基本に忠実な打ち方をするボクサーだと思います。今回は記録更新なるか、否か。
初回、ベルランガが落ち着いた立上りなのはいつものこと。
今回のニコルソンは1RKOを期待されるベルランガを相手に、ややディフェンシブな戦いぶりです。初回、ほとんど何事もなく終了、ベルランガの連続1RKO記録は途切れましたが、妙なプレッシャーに苛まれずに済むのでこれはこれで良し。
2R、変わらずニコルソンはサークリングしながらディフェンシブな闘い方。上体の柔らかさやディフェンスは良いですね。ベルランがのパンチをもらわないように細心の注意を払っています。しかし、残り40秒ほどのところでベルランガはニコルソンのジャブへのリターンで左フックを当て、ダウンを奪います。(ちょっと見えませんでした。。。リプレイで確認。頭の上の方に当たっているものの、クリーンヒットではありません。)
その後、怒涛の攻めを見せるものの、ニコルソンはこのラウンドをサバイブ。
3R、ダウンを喰って吹っ切れたのか、ニコルソンがアグレッシブ。少し狙いすぎなベルランガですが、このラウンドもダウンを追加。
4R、ガードを固めてじりじりとプレスをかけるベルランガ、明らかに手数が減り、追い詰めたところでジャブを突くものの右のパンチは大振り。終盤、リング中央での打ち合い、どうやらニコルソンに恐怖はないようですね。
5Rもニコルソンはダウン。左フックがかすり、効いてしまったようです。しかし立ち上り、カウンターを意識させる等して粘ります。足にきているように見えるニコルソンですが、サークリングしてごまかしつつの戦い。
6R、勝敗はともかく、ここまでベルランガのパンチの芯を外しつつ耐え忍んでいるニコルソンはディフェンスに重きをおいた戦いぶり。ベルランガも攻めのパターンは少なく、特に大振りの右ストレートは見切られやすい。中盤、ニコルソンが調子にのってパンチを振るうタイミングがあれば、ベルランガは強い左フック一発で後退させます。この辺りのパンチングパワーが非凡ですね。
そういう事があるのでニコルソンはコンビネーションを封じられ、そして終盤、ベルランガのかすったような右で効かされてフラフラ。何とかこのラウンドをサバイブしたニコルソン。
7R、ニコルソンは思い切ってクリンチの距離に。この辺り、ニコルソンもかなりの修羅場をくぐってきている事が予想されます。予想以上に強敵です。
クリンチの距離では強いパンチの打てないベルランガ、この距離を外さなければニコルソンを倒しきれません。
ただ、ベルランガにも疲労の色は濃く、プエルトリカンに多いスタミナ難ボクサーか。
最終ラウンド、ニコルソンはとにかくクリンチの距離で戦います。ベルランガの強引な大振りパンチが襲いますが、ニコルソンは上体を柔らかく使い、クリーンヒットは許さず。逆にニコルソンのパンチがベルランガを遅い、後半にかけてニコルソンは完全に息を吹き返してきました。
終盤、ラッシュをかけたベルランガ!猛烈な手数でニコルソンを襲い、ここで応戦したニコルソンにカウンターとなってベルランガのパンチがヒット!これまでで最も危険なダウンを喫したニコルソン、立ち上がったところで最終ラウンドのゴングが鳴り、判定へ。
ベルランガは勝利を確信してコーナーポストへ。
ここまで3分以上戦ったことのなかったベルランガ、8Rものキャリアはいままでの戦いとほぼ同等の時間に相当します。
今回はベルランガの豪快なノックアウト勝利は見られませんでしたが、ここを良い糧としてもらいたいですね。
ただ、あのクリンチ際にほとんど何もできなかった状態は何とかしなければ、大きな弱点としてこれからもベルランガを苦しめる事になるでしょう。
倒そうと思って強いパンチを振るうときに大振りになる癖も、カウンターパンチャーにとっては餌食になり得ます。ただし、今回のニコルソンのように恐怖を克服したボクサーに限りますが。
ベルランガのボクシングはまっすぐすぎる、それがまた良い所でもありますが、この試合でこういう弱点を露呈し、それを認識できたことは大きい。
これから一戦一戦が試練の戦いですが、この両の拳に一発で打倒する力を秘めたこのパンチャーには、個人的には拳闘のロマンを感じずにはおれません。
そしていよいよメインイベント!
4/24(日本時間4/25)
WBO世界フェザー級タイトルマッチ
エマニュエル・ナバレッテ(メキシコ)32勝(27KO)1敗1NC
vs
クリストファー・ディアス(プエルトリコ)26勝(16KO)2敗
スーパーバンタム級時代、手のつけられない王者だったナバレッテ。しかしフェザー級に上げて数戦、かつての勢いには翳りも見えてきている向きもあります。やはり対戦相手の耐久力が上がっていることも原因でしょう。
ただ、おそらく前戦よりもこの階級にフィットしていると思われるナバレッテ、力の差を見せられるか。
並んでみると、元スーパーバンタムと元スーパーフェザーと思えないほどの対格差。
初回、ディアスはステップワークからしっかりと観察。ナバレッテはゆったりとしたリズムから急に踏み込む、いつも通りの立ち上がり。落ち着いた立ち上がりです。
2R、ディアスは非常に動きがキレているように見えます。遠くからのナバレッテの攻撃を見切り、距離で外します。ジャブも非常に速く、ボディへの右ストレートも良いタイミングです。ここまでディアスが上手く戦っている感じです。
3R、いよいよエンジンのかかってきたナバレッテは、ブンブン振り回します。ディアスはガードで受け止めると良くありません、体のどこかに当たればナバレッテは次々とパンチを放ってきます。このラウンドはナバレッテのいくつかのパンチがクリーンヒット。
4R、ナバレッテはあまりガンガン行きません。ディアスはスピードを活かしてフェイントを駆使、ここでもまた良い戦い方ができています。
しかし、残り30秒ほどのところであのナバレッテの意味不明な左アッパーがヒット、ディアスはダウン!立ち上がったディアスに対し、ナバレッテは攻めますが、ディアスも打ち返すことでサバイブ。ガードの間隙を縫った、素晴らしい左アッパーでした。
ディアスにとってはちょっともったいないラウンド。
5R、ダウンを奪われた事でやや攻撃的になったディアス、プレスをかけます。弱気になったら終わり、良い判断かと思いますが、やはりナバレッテの攻撃はガードでなくはずしたい。
終盤、攻め込んだディアスは左フックから右ストレートをヒット、その後コンビネーションも良い形で出して接近戦に勝機を見出します。ディアスの接近戦でのパンチはコンパクトで良いですね。
6R、ハラを決めたディアスは、じりじりとプレス。ナバレッテは自身のストレートの距離、ディアスのパンチが届かない距離にディアスを釘付けにしますが、それでも前進したディアスはボディを起点に攻め続けます。ボディが少し効いてきたようなナバレッテ。ディアスがローブローの注意を受けている際、ファールカップをずらす素振りを見せ、少し苦しそうです。
やっぱりボディが効いているであろうナバレッテ、しきりにベルトラインあたりを気にします。そしてディアスの上へのパンチのいくつかがヒット。
7R、ガードを固めて頭を振って前進するディアス!ナバレッテはそこに強いパンチをたたき込んでいきますが、ディアスのガードは固い。相変わらずナバレッテのボディを狙うディアスですが、ここで減点。キドニーブローですね。
ボディをかなり嫌がるナバレッテは、半身を通り越してほぼ後ろを向きかけている状態。ディアスの顔面へのパンチもあたりますが、ナバレッテのパンチもまだ生きています。
8R、ディアスのコンビネーションは良いですね。ガードもしっかり上がっています。しかし、ナバレッテの攻撃力はすさまじく、このラウンド後半、ナバレッテの猛攻でディアスはまたもダウン。ナバレッテ、かなり効いているはずですが、ここでまた猛然とラッシュをかけ、このラウンド2度目、通算3度目のダウンを追加。
ナバレッテのコンビネーションもアングルが素晴らしいですね。
それでも立ち会がるディアスは流石ですが、この3度のダウンポイントを跳ね返せるか。
9R、ディアスはダメージが残っているのか、序盤脚をつかいます。時折速いコンビネーションで威嚇。ディアスを休ませたくないナバレッテにも疲労は見えますが、後半、ナバレッテは意を決したようにチャージ。ここをしのいだディアスが今度はプレスをかけ、強い右を打ち込みます。ペースが数分置きにかわる熱戦、これはまさに死闘と呼ぶにふさわしい!
10R、このラウンドは先に仕掛けるのはディアス、ナバレッテは後手に回ります。相打ちのタイミングでも体に力が入らないのはナバレッテの方です。ディアスはチャンスですが、ナバレッテは下半身に力がなくとも強いパンチを打てる稀有なボクサー、打ち返されるパンチは怖い。
11R、ディアスの動きはチャンピオンシップラウンドに入っても衰えません。ここまでダウンを3度も奪われているとは思えませんね。ディアスは接近し、懸命にボディを交えたコンビネーション!ナバレッテは中間距離での強いコンビネーション!
12R、ポイントはよく分かりません。本来であれば、3度もダウンを奪っているナバレッテが優位で間違いないのですが、今回ディアスはダウンを奪われたラウンド以外は非常によく戦っています。
しかし、「引き分け」では王座獲得とならないディアスは、バンザイアタック!!!
かなりの疲労のみえるナバレッテに、ディアスの右オーバーがヒット!ナバレッテはぐらついた!ロープにつめて連打を見舞うディアス、この左ボディと右オーバーは何度もヒット。
残り時間はあと1分、なんという試合!最後にドラマはあるか!?
しかしここでディアスがマウスピースの注意(どこかで吐き出していたようです)を受け、少々の休憩。
ディアスがマウスピースをはめ直す、この小休止で復活したナバレッテ、最後の力を振り絞ってディアスを攻めます。ここで効かされてしまったディアス、レフェリーは止めるべきタイミングを見計らっています。そしてとうとう耐えられなくなったディアスはダウン!立ち上がりはしたものの、ディアス陣営が棄権を申し入れました。
最終ラウンド、残り時間は数十秒。
劇的なTKO勝利を果たしたエマニュエル・ナバレッテ、大苦戦でした。
ただ、ナバレッテの出来が悪かったということではなく、あの素晴らしい動きをみるに、クリストファー・ディアスは強かった。今回はタイトルへの意気込みそのままに、完璧に仕上げ、ナバレッテを研究してきたのでしょう。
とかく、素晴らしい闘いを見せてくれた両者を称え、そしてディアスの再起にも期待したい内容です。
ナバレッテは、名前もあり、強い王者ですが、完全無欠の王者ではありません。フェザー級、日本ボクシング界においても激戦区のひとつとされるこの階級で、名のある王者がいるうちに日本人挑戦者が上がってきてくれる事を願います。