日本において、9月の最も興味深い興行は9/18(月)に行われたAmazonプライムビデオプレゼンツ・LIVE BOXINGでした。
アメリカでもESPNで放送されましたが、アメリカではど平日の火曜日、それも早朝、場所によっては朝の出勤後だったのは本当に残念なことです。
寺地拳四朗、中谷潤人といったボクサーは、アメリカのコアなファンたちは注目しているはずなので、是非とも向こうでも遜色なく視聴できる時間に設定してもらいたいものです。
というか日本でも、連休最終日の夜というのは誰も喜びません。しかも有明アリーナ。
さらりと触れる予定が愚痴になってしまいましたが、言いたいことは、9月の世界的ビッグマッチはやはりサウル・アルバレスvsジャーメル・チャーロ、つまりはUndisputed王者同士の戦いです。
当然のようにPPVファイトとなる今戦は、アンダーカードも超豪華。
ということで今回のブログは、カネロvsチャーロ弟のプレビュー記事。
9/30(日本時間10/1)アメリカ・ラスベガス
世界スーパーミドル級4団体統一タイトルマッチ
サウル「カネロ」アルバレス(メキシコ)59勝(39KO)2敗2分
vs
ジャーメル・チャーロ(アメリカ)35勝(19KO)1敗1分
当代随一、稼げるボクサーであるカネロ。2022年5月、ドミトリー・ビボル(ロシア)を相手に完敗し、「魔法が解けた」状態になり、PFPキングからは陥落、そして商品価値としても多少は減少したのでしょう。
それでもカネロが最も稼げるボクサーであることには変わりなく、今回もまためちゃくちゃとも感じられるマッチメイク、世界スーパーウェルター級4団体統一王者、ジャーメル・チャーロ戦です。
当初、カネロvsチャーロというニュースが流れた時は、兄のジャモール・チャーロが相手だと勘違いした方も多かったはず。ジャモール(兄)はミドル級、ジャーメル(弟)はスーパーウェルター級だということがそれを誘発していますね。
兄・ジャモールは逮捕だの何打の色々あってもう2年以上リングから遠ざかっており、ここでのカネロ戦は起死回生の一戦となり得るマッチアップでしたが、やはり素行が悪すぎたのか、今回の一戦は弟、ジャーメルの方です。
カネロの話に戻すと、スーパーミドル級をたった11ヶ月で統一してみせた後、ライトヘビー級に再進出。そもそもカネロは2019年にライトヘビー級でセルゲイ・コバレフ(ロシア)を11RKOで降してWBO王座を獲得していましたが、この試合のコバレフは見るも無惨なパフォーマンスだったことはカネロのライトヘビー級適正に疑問が残る内容でもありました。
ともあれ、当時のライトヘビー級の2巨塔はアルツール・ベテルビエフ(ロシア)と前述のビボル。やや与しやすし、と見られたビボルに挑戦しましたが、これが大間違いでした。
ビボルのジャブにやられ、カネロのフィジカルもライトヘビー級では限界、結局カネロのボクシングは通用せずにビボルに完敗。その後ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)を相手に再起、ジョン・ライダー(イギリス)とシンコ・デ・マヨ興行で戦い、判定勝利。それでも両試合とも、かつてスーパーミドル級の戦いで見せていた圧倒的な戦いではなかった、ということが感想で、やはり階級を頻繁に上げ下げすることでのパフォーマンスの低下を招いている、という認識でいます。
かつてスーパーミドル級で無双していた頃は、圧倒的なパワー差で相手をなぎ倒してきたカネロ。その経験が、丁寧なボクシングから雑なボクシングへの移行を促してしまっている、ということではないでしょうか。
そして、判定結果においてもビボル戦を皮切りにカネロ判定は出にくくなっている印象で、カネロ陥落の日もそう遠くないのかもしれません。
そこで、チャーロの登場です。
スーパーウェルター級とはいえ、身長、リーチともにカネロに勝る。
そしてスーパーウェルター級のウェイトをつくるのはすでに困難、という事で、階級アップは規定路線のようです。(だったらスーパーウェルター級の王座は返上すべきではありますが。)
かつては兄ジャモールがパワー、弟ジャーメルは技術、ともいわれていましたが、ここ最近はKO率も上がっており、ここ5戦は4勝(4KO)1分。
唯一の敗戦は2018年12月のトニー・ハリソン(アメリカ)戦、そして唯一のドローは2021年7月のブライアン・カスターノ(アルゼンチン)戦ですが、いずれもノックアウトでリベンジを果たしています。
リング登場が1年4ヶ月ぶりとなるのは不安要素ではありますが、兄に比べれば随分マシであり、今回の戦いのモチベーションの高さは過去最高かもしれません。
スーパーウェルター級とスーパーミドル級の4団体王者同士の戦い。
これは一見超無謀な戦いに思いますが、そこまで無謀と言い切ることはできないのかもしれません。
それでもやはり
それでもやはり、オッズは明らかにカネロが優位であり、カネロ勝利にベットする人が多いのは納得できる理由です。
それは、スーパーミドル級でのカネロの実績と、スーパーミドル級どころかミドル級でも世界タイトルの経験のないチャーロでは、比べるべくもないからです。
現在のオッズは、カネロが-350程度でチャーロが+400程度。圧倒的にカネロが優位です。
チャーロにとってのプラス材料は2つ。
一つは、やはりカネロが横着なボクシングになってきていることであり、これはカネロが富も名声も手に入れてしまった上、目指すべきところがふわふわしていることに起因している、非常に根深い問題のように思います。
そしてもう一つは、ビボルのように丁寧に戦い、ラウンドごとにしっかりと見せ場を作ることができれば、判定でも勝利できることがわかったこと。
この2つの、結果的に勝因となるかもしれない事実は、チャーロにとっては大きな追い風です。
とか言いつつ個人的には、別にチャーロを応援するわけでもなく、カネロを応援するわけでもありませんが、願わくば、カネロにかつての輝きを取り戻してほしい、とは思うのです。
超豪華!アンダーカード!!
この興行は84.99ドル(約12,600円)のPPV、勿論カネロをメインに据えた興行らしく、アンダーカードも超豪華です。
ヘスス・ラモスJr(アメリカ)20勝(16KO)無敗
vs
エリクソン・ルビン(アメリカ)25勝(18KO)2敗
スーパーウェルター級のランカー対決。チャーロがもたもたしている間に、この試合にタイトルを賭けても良いんじゃないか、というほどのマッチアップですね。
20戦全勝のプロスペクト、ヘスス・ラモスはヒスパニック系のアメリカ人であり、ルビンはアフリカン・アメリカン。この「世界中で最も盛り上がる」人種間のマッチアップであり、まだ底を見せていないラモスにとっては試練の一戦、ツータイム・ワールドチャレンジャーでありながらも世界タイトルまであと一歩届かないルビンにとっては、再浮上が賭けられる一戦。
ヘスス・ラモスJrというボクサーが如何ほどのものなのか、は、この評価の高いエリクソン「ハンマー」ルビンを通してみれば明らかになります。
22歳の超新星、ラモスに対して、ルビンもまだ27歳と若い。
今後のこの階級を引っ張っていくのはどちらのボクサーなのか、これは非常に興味深い戦いですね。
WBC世界ウェルター級暫定王座決定戦
ヨルデニス・ウガス(キューバ)27勝(12KO)5敗
vs
マリオ・バリオス(アメリカ)27勝(18KO)2敗
なるほどこっちは暫定ながらも王座がかかる一戦ですね。
ウェルター級はテレンス・クロフォード(アメリカ)vsエロール・スペンスJr(アメリカ)との頂上決戦が終了、クロフォードガスペンスを明確に倒すという圧勝劇で4団体統一、念願のPFPキングをものにしています。
そんな戦いが7月末に起こっており、挑戦者たちは待たされざるを得ません。
そういうわけで暫定王座決定戦、となっているのでしょうが。
ともあれ、ショーン・ポーター(アメリカ)も引くほどのフィジカルモンスター、なのに技巧派、ヨルデニス・ウガス。非常にアグレッシブで、まさに「アステカの戦士」というイメージのマリオ・バリオスは2階級目へのチャレンジの途中。
ウガスはスペンスに敗北を喫してからの再起戦であり、バリオスはタンク・デービス、キース・サーマンに連敗も、前戦で復帰したばかりの再起第2戦目。
どちらもここを落としては再浮上の芽は非常に小さくなるので、意地と意地がぶつかり合う好ファイトとなりそうですね。
イライジャ・ガルシア(アメリカ)15勝(12KO)無敗
vs
ホセ・アルマンド・レセンディス(メキシコ)14勝(10KO)1敗
このプロスペクト同士の戦いも、非常に甘美。
その中でトップ・ドッグ、Aサイドは勿論イライジャ・ガルシアですね。
弱冠20歳のイライジャ・ガルシア、ここ数戦は好戦績のプロスペクトを次々と倒してきており、その充実ぶりが伺えます。対してレセンディスもメキシコから出てアメリカで戦い、結果を残してきている24歳のプロスペクト。前戦で元王者ジャレット・ハード(アメリカ)を破っており、その勢いは全く侮ることはできません。
ガルシアにとって試練の一戦となるのか、それとも期待以上のパフォーマンスを発揮するのか。
これは非常に楽しみな一戦ですね。
ここまでの4試合がShowtimePPVで放送される内容であり、この4試合がおそらくWOWOWの放送網に乗ってくる試合だと思われます。
更に、アンダーカードは超充実
上記のPPVファイト以外のアンダーカードも、注目すべきボクサーが続々登場。
こちらのアンダーカードは、PPVファイト開始前、ShowtimeのYoutubeチャンネルで放映するのがここ最近のスタンダードなので、要チェックですね。
このアンダーカードには、かつてアルツール・ベテルビエフと好勝負を演じたオレクサンドル・グヴォジク(ウクライナ)が復帰3戦目に臨む試合、ヘビー級の「キューバンフラッシュ」フランク・サンチェス(キューバ)、かつてエリスランディ・ララ(キューバ)のタイトルに挑んだこともあり、ティム・チュー(オーストラリア)からダウンを奪った経験もあるテレル・ガウシャ(アメリカ)、前戦で我らがスティーブ・スパーク(オーストラリア)を破ったガブリエル・バレンズエラ(メキシコ)といった注目ボクサーたちが大登場です。
もう何なら、一日中見ていたい。。。。
とまあ、私は残念ながらそんなわけにはいかないので、見れる人は是非見てみてください。
ライブ配信
これらの試合は、ShowtimeのYoutubeチャンネル及びWOWOWエキサイトマッチでライブ配信があります。
ShowtimeのYoutubeチャンネルでの開始時間はちょっとわかりませんが、おそらくAM7:00とかAM8:00くらいではないでしょうか。(全試合流れるのならもっと早いかも)
↓Showtimeのチャンネル。ちなみにライブ配信のみで、アーカイブは残りません。
WOWOWの放送はAM9:30から、とのことなので、是非皆様お見逃しなく!
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