サウジアラビアという国は本当にとんでもない興行が行われる国です。
サウジアラビアのリヤドシーズンでは、期間の前半にタイソン・フューリーvsフランシス・ガヌーをメインに据えたボクシング興行がありました。
そしてその中盤には、アンソニー・ジョシュアやデオンテイ・ワイルダーといったボクサーたちが登場する、Day of Reckoningという興行があります。
Riyadh Season 2023 - Visit Saudi Official Website
そして後半にはフューリーvsウシクという4団体統一戦も、このリヤドシーズンに組み込まれるのでしょう。どうかしてますね。
ともあれ、実は正式発表の時のショートプレビュー記事を書いていたことを思い出したこの興行。ということで今回のブログは前回のものに若干のリライト(使い回しともいう)を加え、改めてのプレビューです。
「審判の日」
このDay of Reckoningという英語の意味は、精算日とか審判の日、という意味のようです。聖書に出てくる「最後の審判」もこの英語を使うのですね。
さて、この日、判決を言い渡されるのは全てのボクサーに言えることですが、何よりもアンソニー・ジョシュアとデオンテイ・ワイルダーに降されるジャッジメントは、彼らのキャリアにおいて非常に大きな意味を持つものです。
イギリスではアンソニー・ジョシュア、アメリカではデオンテイ・ワイルダー、大西洋を挟んでそれぞれがスター街道を走り、王座を獲得。一体どれくらいの期間、この二人の対決がクローズアップされてきたことでしょう。
最も旬なタイミングは逃し、ジョシュアはウシクに、ワイルダーはフューリーに、取り返せないほどの「2連敗」を喫しています。
それでも尚、ジョシュアには絶大なファンベースがあるし、ワイルダーにはとてつもない一撃があります。
今回、ジョシュアはオット・ワリン、そしてワイルダーはジョセフ・パーカーという強豪をそれぞれ迎えるわけですが、ここに勝てば3月9日(日本時間3/10)、いよいよ激突とのこと。
この現地時間3/9に、人々を熱狂させられる試合が決まるのか、否か。その審判の日が現地時間12/23、Day of Reckoningです。
12/23(日本時間12/24)サウジアラビア
ヘビー級12回戦
アンソニー・ジョシュア(イギリス)26勝(23KO)3敗
vs
オット・ワリン(スウェーデン)26勝(14KO)1敗
これは以前にも書きましたが、はっきり言えば「ジョシュア、危うし」と見ています。
おそらくそういう意見は世界中に多いのではないか、とも思っています。
アンソニー・ジョシュアは素晴らしいボクサーですが、メンタル面でやや弱さを見せることもあり、逆にこのワリンはタフネスもハートも保持しているボクサーです。
ワリンというボクサーはタイソン・フューリーを苦しめたボクサーであるだけでなく、前戦ではあのムラト・ガシエフ(アルメニア)に勝利している実力者です。ジョシュアは非常に危険な相手を選んだ、とも言えますし、本気の再起ロードだと見ることもできます。
オッズもジョシュア-300、ワリン+300と結構競っている印象で、これはかなり勝負論のある一戦ですね。
ジョシュアは完璧な準備をして望まなければかなり危ない、と見ますが、如何に。
ヘビー級12回戦
デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)43勝(42KO)2敗1分
vs
ジョセフ・パーカー(ニュージーランド)33勝(23KO)3敗
セミファイナルも超注目、ワイルダーvsパーカーの元王者対決です。
これも結構ワイルダーにとって危険な戦いではないかな、と思うのは、ワイルダーが前回ボクシングをしているように見えたから、というところです。
ヘレニウス戦のワイルダーは、初回ワンパンチKOという結果以外はあまりよくなかったのでは、と感じ、その理由は、ワイルダーが下手にボクシングをしようとしていたことがあると思うのです。
どこまでも「一発当てればいいや」で突き進んでもらいたいデオンテイ・ワイルダー。
ここにきて上手さは必要ありません。ここでもし、ワイルダーが「ボクシング」を選択しようものなら、機動力に勝るパーカーにしてやられる可能性が出てきます。
頼むから、36分間の中の2秒あれば良い、というかつての戦い方をしてもらいたい。
何にしろ、アンソニー・ジョシュア、デオンテイ・ワイルダー、それぞれがAサイドではありつつもかなり危険な戦いとも言えるこのマッチアップ。
冒頭にも書いた通り、これにそれぞれが勝利すれば、いよいよ3月に決戦。。
ここにきて「戦わざるライバル」という関係性を解消し、できれば決勝戦として見たかった試合を敗者復活戦みたいな形で見る、というのはこれもまた一興です。
ジョシュアvsワイルダー、爆発的に盛り上がるタイミングはもうここが最後かもしれません。両者がどんな形でも勝利をし、この世紀の一戦の実現を願います。
ヘビー級12回戦
ダニエル・デュボア(イギリス)19勝(18KO)2敗
vs
ジャレル・ミラー(アメリカ)26勝(22KO)無敗1分
前戦でウシクに善戦、敗れはしたものの株を上げる形となったダニエル「ダイナマイト」デュボア。
復帰戦の相手は無敗のジャレル・ミラーです。
ミラーは無敗とはいえ世界レベルの強豪とはぶつかっていない、というのが現状であり、個人的にはデュボアのKO復帰を見たいところ。
ただ、オッズはかなり競っており、デュボアが-250、ミラーが+250くらい。
ジャレル・ミラーはかなり評価が高いボクサーなんですね。
デュボアは比較的安定性に欠けるボクサーだという印象も受けているのですが、ここは絶対に負けてはいけない戦い。逆にいうと、ここに良い勝ち方をすることができるのであれば、世界トップ戦線への復帰というのは前戦も加味して容易なことでしょう。
ダイナマイト復活に期待!
WBA世界ライトヘビー級タイトルマッチ
ドミトリー・ビボル(ロシア)21勝(11KO)無敗
vs
リンドン・アーサー(イギリス)23勝(16KO)1敗
本来、このようはド派手興行に呼ばれるボクサーではなかったドミトリー・ビボル。ただ、東大随一の人気ボクサーであるカネロを退けたことで、世界の人たちの多くはドミトリー・ビボルのテクニカルなボクシングを知ったのでしょう。
その後もヒルベルト・ラミレス(メキシコ)を退けるなどして絶好調のビボルはサウジアラビアのリングに登場し、マイナー団体の中で最も権威のあるIBO世界ライトヘビー級王者であるリンドン・アーサーを迎えます。
これはなかなか興味深い戦いではありますが、ビボルの負けは考えられないはず。やや慎重なボクシングから、というイメージではありますが、ドミトリー・ビボルというボクサーは油断とは無縁のボクサーであり、相手が誰であろうとも自分のボクシングを完遂することを目的としているようにも見えるし、そのボクシングも非常に丁寧で、隙は非常に少なく見えます。
アーサーは初のメジャータイトル挑戦、善戦できれば存在感を示せるというレベルかもしれません。
ジャイ・オペタイア(オーストラリア)23勝(18KO)無敗
vs
エリス・ソロ(イギリス)17勝(7KO)無敗
クルーザー級最強王者(個人的主観)、ジャイ・オペタイアの2度目の防衛戦はエリス・ソロ!。。。誰?そもそもオペタイアも王座は返上していたんですね。どうやらオペタイアがブリエディスとの対戦を指令されていたらしく、それを蹴ってソロと対戦することになった、ということからだそうです。ちなみに試合が流れた理由はブリエディスの怪我によるものらしく、つまりIBFは「ブリエディスの怪我が治るまで待ってね」ってことだったらしい。ただ、オペタイアはこのソロ戦で過去最大の報酬を手に入れることになるらしく、IBF王座を剥奪されてでもソロとの対戦を優先した、ということのようです。そりゃそうだ。
ともあれ、当時クルーザー級最強と目されていたマイリス・ブリエディス(ラトビア)を見事攻略し、IBF王者となったオペタイアは、初防衛戦で無敗のジョーダン・トンプソン(イギリス)を4Rで破壊。2度目の防衛戦もイギリスからの刺客ですね。
さて、エリス・ソロというボクサーは現在知りませんが、WBOヨーロピアン王座の保持者のようです。結構ヒドいキャリアの持ち主で、ちゃんとしたボクサーと戦っているのはここ3戦くらいのもの。その他は負け越しのボクサーがほとんどで、他には1日に3試合戦っているという記録も残されています。(3R×3試合)
流石にこのボクサーには負けはおろか苦戦もしてほしくないですね。頑張れオペタイア。
おそらくここまでがメイン格という扱いであり、以下はいわゆるアンダーカードに部類されるものです。ただ、このアンダーカードも非常に興味深いですね。
アルスランベック・マフメドフ(ロシア)18勝(17KO)無敗
vs
アギット・カバイェル(ドイツ)23勝(15KO)無敗
ヘビー級の無敗対決で超注目のパンチャー、マフメドフが登場です。
マフメドフは17つのノックアウトのうち、12が初回KOという即効型のKOパンチャーです。ロシア出身ながらもカナダで戦い続けており、もしかするとベテルビエフと同じような道を辿っているのかもしれません。熊みたいなところも似ています。
カバイェル(読み方は違うかも)は見たことがありませんが、2017年にデレック・チゾラ(イギリス)に勝利した星が光ります。
ヘビー級の怪物がサウジアラビアで魅せるのか、はたまたドイツ人がアップセットを起こすのか。注目の無敗対決ですね。
フランク・サンチェス(キューバ)23勝(16KO)無敗
vs
ジュニア・ファ(ニュージーランド)20勝(11KO)2敗
出身がキューバだからなのか、その実力に見合ったマッチメイクができていないのではと感じるフランク・サンチェス。かつてエフェ・アジャグバ(ナイジェリア)との無敗対決を制したは良いですが、その後のキャリアはアジャグバの方が良い相手に恵まれている、と言えます。
このジュニア・ファも戦績こそ良いですが強豪と呼ぶには心許ないボクサーであり、ジョセフ・パーカーには簡単にあしらわれ、その初黒星からの復帰戦ですでにロートルと思われていたルーカス・ブラウン(オーストラリア)にまさかの初回KO負け。
この大失態から初回KOで再起を果たすも、相手は「無勝」のボクサーで、4回戦の試合。
サンチェスはここはあっさり倒して勝たなければいけませんね。
フィリップ・フルゴビッチ(クロアチア)16勝(13KO)無敗
vs
マーク・デ・モリ(オーストラリア)41勝(36KO)2敗2分
4戦連続で無敗対決を勝ち上がってきた「クロアチアの猛獣」フィリップ・フルゴビッチ。このフルゴビッチも非常に楽しみなボクサーですね。
モリというボクサーは戦績こそ立派ですが、ここ数年、ほぼ負け越しているボクサーとしか試合をしていません。一応勝ってきてはいますが。
2016年にデビッド・ヘイ(イギリス)に初回KO負けを喫してから連勝中で、11連勝(10KO)という素晴らしい記録ですが、戦ってきた相手はというと言及するに値しないボクサーばかり。しっかり戦績を作ってきたなという感じでしょうか。
こういう状態だからこそ、もちろんフルゴビッチの痛快KOを期待するわけですが、まあ、ボクシングとは何が起こるかわかりませんから、どの試合も楽しみですね。
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