タイソン・フューリー(イギリス)vsフランシス・ガヌー(カメルーン)の試合は未だ見ていません。なかなかその時間が取れないというのが一つの理由であり、1,500円というボクシングを見るために使うお金としては全く大きくないお金を使うことが勿体無いと思っているわけでもないのですが、さほど興味のある試合ではないというのも一つの理由。
それでも、ガヌーのパフォーマンスはまだまだ話題を持っています。
現代において、新興勢力ながらもボクシング配信において一つの地位を確立したと言っても良いDAZN、その背景にあるのはマッチルームというエディ・ハーン主催のプロモーターですが、そのマッチルームがガヌーのボクシング第二戦に食指を伸ばしています。
その対戦相手候補は、イギリスの大人気ボクサー、アンソニー・ジョシュア。
エディ・ハーンはこの度、「ランブル・イン・ザ・ジャングル2」というインパクトのある名前を使い、ジョシュアvsガヌーを目論む、ということがニュースとなっています。
以下、BoxingSceneの記事
フランシス・ガヌー
タイソン・フューリーからダウンを奪い、ボクシング初戦として超がつくほどの大健闘を見せた、MMAファイターのフランシス・ガヌー。
37歳という年齢は、ヘビー級のボクサーとして、もちろん若いとは言えませんが、歳をとりすぎているとも思えない年齢です。ただ、ボクシング初戦ということもあり、フューリーvsガヌーの戦いは「戦い」にもならないショー的な要素の強いものであり、多くのボクシングファンは興味を示さなかった戦いでした。
しかし大方の予想を覆し、ガヌーは見事フューリーからダウンを奪い、結果的にはスプリットの判定勝利ながらも、絶対王者、タイソン・フューリーを最も苦しめたボクサーの一人となりました。
この茶番劇に見えた試合は、フランシス・ガヌーという「ボクサー」を一気にヘビー級のトップ戦線に押し上げ、タイソン・フューリーの評価を下げたと言えます。
「タイソン・フューリーを苦しめた」ガヌーはよのヘビー級ボクサーたちにとっての恰好の標的となり得、このガヌーを倒すこと、圧倒することは世界ヘビー級王座への足がかりになる、そんな相手になりました。
アンソニー・ジョシュア
もう10数年前になりますが、ロンドン五輪のスーパーヘビー級で金メダリストとなったアンソニー・ジョシュアは、ずっとイギリスのヘビー級でヒーローです。
肉体の見栄えでボクシングをするわけではありませんが、超合金のような作りの肉体、偏差値の高い顔面、非常に絵になるボクサーであり、基本がしっかりと出来上がっているボクシングは美しく、26勝中23KOというハードパンチを持つ、およそボクサーに必要なものを全て兼ね備えているボクサーですね。
そのジョシュアは、プロデビュー以来圧倒的な力を誇示し続け、かつて隆盛を誇ったウラディミール・クリチコ(ウクライナ)に引導を渡してスターの座に上り詰めました。
2019年にアンディ・ルイスjr(アメリカ)に不覚をとるもリベンジ、オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)に連敗も、ここ2戦で復活、未だその人気が翳ることはありません。
フューリーと並んでスタジアム・ファイターであるジョシュアは、そのメンタル面にやや弱さを見せることもありますが、おそらくそのキャリア全体の総観客動員数といえばフューリーをも超え、世界最高のボクサーであると言えるでしょう。
元々ジョシュアは、いや、ハーンは、このジョシュアvsガヌーという戦いに興味はなかったはずですが、ガヌーがフューリーに対してあわや勝利という大接戦を演じたことでこの戦いに興味を持ったようです。
ジョシュアが求めていたのは、「戦わざるライバル」だったデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)との一戦であり、「世界最高峰の同国人ライバル」だったタイソン・フューリー戦。しかしここでフランシス・ガヌーの登場により、その勢力図は一気にガヌー戦へと傾くことになっています。
ガヌーの選択肢
このオファーは、ガヌーにとっても悪いものではない、どころか大きく歓迎するものでしょう。
MMAの最高峰であるUFCはファイトマネーがボクシングほど高くはありません。
ガヌーのUFCで稼いだファイトマネーの最高額は60万ドルほど(約8400万円)ほどであり、中量級以上の世界王者にすら及びません。
フューリー戦のガヌーのファイトマネーは1000万ポンド(約18億円)とのことで、UFC最高額の20倍以上(!!)と、これまでを考えると破格。しかも初戦でフューリーにノックダウンを与えるというパフォーマンスを見せた今、2戦目はこのファイトマネーの大幅アップも見込めます。(ちなみにフューリーのファイトマネーは5,000万ポンド)
しかも、このガヌーに対して食指を伸ばしているのはジョシュア陣営だけでなく、デオンテイ・ワイルダーも交渉しているとのことなので、ファイトマネーはまだまだ釣り上げられていく可能性があり、ガヌーはそれを選べる地位を確立しています。
ジョシュア戦を選ぶのか、ワイルダー戦を選ぶのか。
ものすごく贅沢な悩みですね。
消え入りそうなライバル対決
かつて全勝を誇ったアンソニー・ジョシュアvsデオンテイ・ワイルダーという戦いは、全世界の衆目を集めるものでした。
しかしジョシュアはアンディ・ルイスjrに初黒星を喫し、ワイルダーもフューリーに敗北。
これにより立ち消えになったこの「イギリスの大人気ボクサーvsアメリカのプライド」は、ジョシュアがウシクに2連敗したこと、ワイルダーがフューリーとのトリロジーで2敗1分となったこと、両者がタイトルホルダーでなくなったことで「史上最高のサバイバルマッチ」として実現する可能性を持った戦いでした。
このタイミングでの戦いも盛り上がるだろう、そう思われた戦いは、フランシス・ガヌーの登場で実現可能性が非常に大きく下がり、ほぼ消え入りそうな状態になっています。
前述の通り、ジョシュアとワイルダーはフランシス・ガヌーをめぐってリングの外で争う格好になってしまっているからです。
The rumble in the Jungle II
今回、エディ・ハーンがジョシュアvsガヌーを求めている、という記事のインパクトは、このクラシックな、それでいてボクシング史上最も有名なマッチアップのフレーズを用いたことです。そうでなければ、目にもとめませんでした。
それほどこの言葉のインパクトは大きく、立場、状況、時代は違えど、奇しくも来年2024年は、このThe rumble in the Jungleから50周年という節目を迎えるのです。
ナイジェリアにルーツを持つジョシュア、カメルーンのガヌー。
いずれにしろ、この節目の年、アフリカでの興行というのはボクシング界にとっても意味を持つものであり、きっとアフリカをルーツとするボクサー同士の戦いは行われるのでしょう。
それがジジョシュアvsガヌーなのか、それともワイルダーvsガヌーなのか、はたまたひっくり返ってジョシュアvsワイルダーなのか、それはわかりません。
それでも、もしかするとその筆頭はジョシュアvsガヌーなのかもしれない、と思う今日この頃。非常に馬鹿げた戦いではあるのかもしれませんが、ここでガヌーがもし勝つようなことがあれば、日本では「The rumble in the Jungle Ⅱ」ではなく「キンシャサの奇跡Ⅱ」とでも呼ばれるのかもしれません。これは史上最高のエンターテイメント・ファイトとなり得る可能性を秘めています。
場所は以前ザイールと呼ばれたコンゴ共和国のキンシャサであることが望ましいですが、そうでなくともがっかりはしません。
いずれにしろ2024年は節目の年であり、半年前を偲び、素晴らしい戦いを望むのみです。
個人的にはやっぱりそこでジョシュアvsワイルダーを見たいと思いますが。
【宣伝】
ストック品(在庫があるもので即納できるもの)のセールやってます!
スポーツの秋、新しいグローブ買いませんか?⇩