井上尚弥がまたも偉業を成し遂げました。
以前から「日本ボクシング史上最高傑作」と謳われていたボクサーは、「空前」であるだけでなく「絶後」でもありそうなところに足を踏み入れ、今後、このような評価を得るボクサーは少なくとも日本からは出てこないのではないか、というところまで来てしまっています。
各媒体によるファイター・オブ・ザ・イヤー(以下FOTY)の発表はまだまだ途中段階ではありますが、この度、リングマガジンのFOTYに井上尚弥が選出。
これは95年にもわたる同誌の中で、日本人としては初の快挙であり、アジア人としてもマニー・パッキャオ以来とのこと。
私たちや世界各国のボクシングファンよりも、より「公正であり公平」に努めようとしているように見えるリングマガジンのパネリストたちの目から見て、「2023年のFOTYは井上尚弥」というのはちょっと驚きの一つでもあります。
この井上尚弥がFOTYと決まった経緯、その議論についてはまだ明らかにはなっていませんが、おおよその検討は最新のリングマガジンランキングの議論によって分かりそうです。
ということで今回はビッグニュースである井上尚弥のリングマガジンFOTYの受賞と、その前のPFPランキングの議論について。
井上尚弥、リングマガジンFOTYを初受賞
ファイター・オブ・ザ・イヤーというのは年間MVPのことで、これは各媒体が発表しています。すでに発表されている中で言えば、WBN(World Boxing News)やESPNなどがすでに井上をこのFOTYに選んでいました。
しかし、リングマガジンのFOTYというのは、やはり他の媒体とは一線を画すもの、でもあります。
海外の情報がほとんど流れてこなかった20年前とか30年前とかから、この「リングマガジン」の存在だけは知っていました。これはジョー小泉氏の影響によるところが大きいというのがおそらく本当のところなのでしょうが、結局このリングマガジンという媒体こそが世界で最も権威のある媒体だということを刷り込まれてきた、という経緯もあります。
リングマガジン(の雑誌)自体はGBPに買収されたり廃刊になったりと色々あるわけですが、結局その権威というものは落ちてはおらず、それはたとえばPFPランキングにも現れてもいますね。
「パネリスト」と呼ばれる有識者たちが議論をして決めるPFPリスト、そしてFOTY。
妙なバイアスが絡んでいないと感じることのできるランキングというのは非常に信用できるな、というのがいちファンの意見であり、当然個々人として言いたいことは出てくるわけではありますが、やはり一つの標準値と思っています。私自身も各階級においてのランキングを参考にすることは非常に多いです。
2023年、おそらく多くの識者、ファンたちがFOTYにはテレンス・クロフォードか井上尚弥を挙げ、そして可能性としては高くは無いもののデビン・ヘイニーも良い仕事をしていた、という認識ではなかったでしょうか。
ボクシングの中心地はいつまで経ってもアメリカであるが故に、もしかするとアジア人である井上尚弥にこの賞を与える、という心情に至らない人たちもいたかもしれないし、逆にポリコレ思考を意識しすぎた故に井上尚弥にこの賞を与える、と言った人もいたのかもしれません。
いずれにしろ、95年の歴史の中で、アジア人ボクサーとしては2人目、もちろん日本人としては初の快挙。パッキャオは2006年、2008年、2009年と受賞しており、井上尚弥としてもここから2度3度の受賞も可能のような気がしますね。
ちなみにこれを受けて、おそらく日本ボクシング界のMVPも引き続き井上尚弥になるのでしょう。この日本ボクシングMVPはもはや不動であり、同じ時代を生きるボクサーたちには縁のない賞となってしまうのはやや寂しい気もしますが、致し方ありませんね。
12/30発表のPFPの議論
毎週土曜日に発表される、リングマガジンランキング。
各階級とともにPFPランキングもパネリストたちによって議論がなされ、毎週のように更新される、ということになっているようです。これはすごいことですね。みなさん忙しいのに。
さらにはこの議論自体も非常にオープンなものであり、各認定団体もこれぐらいやれば良いのにと思ってしまいます。各認定団体のランキングはよくわからないところも多く、さらには更新されない月もあります。不思議なものです。
ともあれ、このリングマガジンが2023年最後のランキング発表としていた12/30の議論。
つまりは井上尚弥vsマーロン・タパレスが済んだ週末であり、井上尚弥が史上2人目の「2階級4団体制覇」を圧倒的な力で成し遂げた後の議論、だったにも関わらず、PFPリストで井上を1位にするという議論はほとんど行われなかった、とのことです。
やはりそれほど、クロフォードがスペンスにあのような勝ち方で勝利した、というインパクトは大きかったようです。
このことに異論を唱えたパネリスト(言ってしまえば杉浦さん)もいたようですが、最終的には「今のところ」PFPキングはクロフォード、ということに落ち着いています。
ただ、クロフォードは今後もまたインアクティブに陥る可能性があり、これは私も思うところではありますが、そうなると話が変わってくるわけです。
もし井上尚弥が順当に、本人の希望通りに2024年3試合をこなし、そこで圧倒的な力を見せつければ、もしかしたら2024年に1試合もしないクロフォードを出し抜いてPFPキングに躍り出ることは十分に考えられます。
クロフォードのレイオフ期間は今のところ半年に満たない状況であり、これであれば通常のボクサーと何の変わりもありません。それが1年になるとどうか。1年半になるとどうか、というところなのでしょう。
このようにアクティブか、インアクティブか、というのは非常に重要な要素となっているようで、そのことこそがやはりリングマガジンのFOTYには大きく関わっているように思います。
PFPランキングの結果から、対戦相手の質として「スペンス>フルトン+タパレス」であるにも関わらず、FOTYの結果から「1年でスペンス戦のみ<1年で統一王者2人を連破」という逆転現象が起こっている、ということになりますね。なのでやはりリングマガジンとしてはアクティブである、ということがランキングを決める際にも、FOTYを決める際にも重要なファクターとなっているという可能性があるのだと思います。
PFP議論で興味深いこと
ナオヤ・イヌエの話から少し逸れるのですが、上記の議論の中で「クロフォードと井上は甲乙つけ難く、二人とも1位でいいんじゃないか」という議論もあったようです。すぐさま却下されているようですけれども。
興味深いこと、というのは、このことを提案したエイブラハム・ゴンサレス氏が新たにPFP10位にデビッド・ベナビデスを入れてはどうか、という提案した流れのところ。
そこでトム・グレイ氏はそれ(PFPキングが2人という状態)に絶対反対としつつ、もしそうなるのであれば10位は寺地拳四朗かシャクール・スティーブンソンだ、と語っています。
ベナビデスも2023年に素晴らしいレジュメを築き、シャクールは3階級目を獲得。デビッド・ベナビデス、シャクール・スティーブンソンといった将来を期待されるメジャーなボクサーと同列に語られるのは、日本の誇り、寺地拳四朗です。
勝ち続ければランキングに入れる、といった簡単なものではありませんが、拳四朗のPFPランク入りはもう間近に迫っており、非常に高い評価を受けていることがわかりますね。もしPFPランカーの誰かがコケれば、この「誰が入るのか」という議論はより熱を帯びてくることになりそうです。
そんな拳四朗こそ非常にアクティブに活動しており、再起後は4戦して4勝4KO、しかもそのうちの3人は王者、元王者。これは確かにとてつもないキャリアです。
2024年、この絶対王者の防衛戦がメインに据えられたAmazonプライムビデオ、LIVE BOXING興行が行われます。PFP入り間近とも言える日本の誇り、拳四朗の戦いは、現地、もしくはアマプラで見守りましょう。
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