1月ももう中旬です。
今週末の注目ファイトは、カナダで行われる大注目ファイト。
「カナダボクシングの祭典」というようなタイトルもあったように、カナダでダブル世界戦が開催されるのは比較的稀なのかもしれません。
Yahoo!天気で調べると、ケベックの気温は1/14に最高気温-1℃、最低気温-8℃と寒いですが、これは記録的な暖かさのようで、翌15日は最高気温が-11℃、最低気温が-25℃となっており、これって人間が生きれる気温なのかどうか疑わしい。
さて、そんな極寒のカナダを熱くするようなファイトが繰り広げられるのでしょうか。
ベテルビエフには是非勝ってもらって、ビボルとの4団体統一戦に繋げて欲しいものです。
ということで今回のブログは、WOWOWでも放送されたトップランク興行の観戦記。
↓プレビュー記事
1/13(日本時間1/14)カナダ・ケベック
WBO世界バンタム級タイトルマッチ
ジェイソン・マロニー(オーストラリア)26勝(19KO)2敗
vs
サウル・サンチェス(アメリカ)20勝(12KO)2敗
総合力が高い、という言葉が非常に似合うジェイソン・マロニー。突出した武器はないものの、ハイガードスタイルからオーセンティックなボクシングでインサイドでもアウトサイドでも戦えるボクサーです。
対するサウル・サンチェスは非常に攻撃的な、小気味良いボクシングをするタイプ。
ここはサンチェスが追いかけてマロニーがアウトボックス、という展開となりそうですが、果たしてこのカナダという地でマロニーがポイントをピックアップできていくか、はキーとなりそう。アップセットの可能性を秘めたマッチアップと言えそうです。
初回、頭を振ってインサイドに入ろうとするサンチェス、マロニーはジャブで先制。リング中央に陣取るサンチェス、やはりサンチェスの方がパワーはありそうですね。
互いに動きはよく、後半にマロニーが速いコンビネーション、サンチェスも回転力のある連打を繰り出していきます。これは好試合の予感。
2R、前半にマロニーがワンツーをヒット。その後もワンツーフック。中間距離から踏み込むマロニー、この辺りのタイミング的なものは経験に由来するか、この距離ではやはりマロニーが上です。
サンチェスは強い前進を見せますが、そこにマロニーは体を寄せて上手くエスケープ。マロニーは上下に打ち分けるジャブ、流れるようなコンビネーションで優勢。
かと思えばサンチェスも右のアッパーをヒット、ポイントは全体的にラウンドを支配したマロニーでしょうが、やはりサンチェスも期待させます。
3R、パンチが当たったと自信を持つサンチェスはグイグイと前進。ここを勝負所と見たのか、マロニーも応戦。近い距離での打撃戦。やはりパワーはサンチェス、マロニーはちょっと押されているようなイメージです。
マロニーはこのラウンド右目付近をカットか。この距離では例えヒット数が同数であったとしても、見栄え的には明らかにサンチェス。
4R、接近戦での分の悪さを悟ったマロニーはヒットアンドラン。打って離れて、で良いのですが、ちょっとロープを背負うのは気になるところ。
マロニーは一発当てて離れる、というのではなくコンビネーションで攻めて離れる、というスタイルで、これは勇気を必要とする戦法。しかしこのマロニー流のヒットアンドランは奏功、コンビネーションの後にも肩を使ってサンチェスを押し込み、コンビネーション。サンチェスは徐々に手が出なくなりこのラウンドは明らかにマロニーの優勢!!
これは何というシーソーゲームでしょうか!ここまでのラウンドで振り出しに戻った感があります。
5R、前ラウンドと同じく距離をとりつつ自ら攻め込み、しっかりとアピールするマロニー。押し込んでいく場面も作り、試合前半ではサンチェスのフィジカルに吹っ飛ばされていたマロニーですが、力の入れる角度やタイミングを変えたのか、4R、5Rは明らかに押し勝っています。
6R、変わらずマロニーのジャブは良く、コンビネーションでの攻撃も良い。サンチェスの攻撃は未だ力強く、マロニーの出血も非常に気になるところ。
互いが良いところを出し合うようなラウンド、近い距離ではマロニーにとって大きな危険が伴いますが、打撃戦の中でもマロニーの攻撃で終わる場面が多く、ややマロニーが優位か、というところ。
7R、後半戦に入りマロニーのジャブが冴えてのスタート。少し距離が離れるとマロニーのジャブが飛んできて、それを不用意にサンチェスはもらってしまっています。
マロニーが基本的に先に攻めて後で終わる、という展開ながらも、後半、サンチェスのアッパーがヒット、サンチェスのパワーでマロニーの顔面が幾度か上がったところでラウンドが終了。ラウンド全体としてはマロニー優位ながらも、サンチェスもまだまだ期待ができそう。
8R、サンチェスは前ラウンド後半からの勢いをころさずワンツーからの左でマロニーの顔面を跳ね上げます!マロニーはもしかして徐々にダメージを溜めてきているのでは?と感じるような足どり、しかし中盤に今度はマロニーがボディをヒットすると今度はサンチェスが失速!
ラウンド後半はマロニーが接近戦を選択、ここで弱気にならないのがマロニーの良いところ。
9R、サンチェスは勝負所と感じたか、強い右クロスから力強い攻め。アッパーカットも上手く交え、これをマロニーにヒット!
しかしマロニーも心も体も非常にタフ、ともすればノックアウトパンチになりそうなアッパーを浴びつつも逆に前進、後半に差し掛かる頃にはサンチェスをロープに押し込んでいきます!
10R、このラウンドはマロニーがプレス。これは足が止まったのか、止めたのか。
マロニーが下がるとサンチェスが出てくるので、マロニーとしては前に出た方が楽なのかもしれません。接近戦でも技術を駆使して打ち負けることはない、と踏んだのか。
かなりきつい展開ではありますが、マロニーの手数を取りたいところ。
11R、チャンピオンシップラウンドになっても手数の落ちないマロニー。パワーの落ちないサンチェス。このラウンドはサンチェスの攻撃が素晴らしく、先手こそマロニーですがサンチェスのパワーパンチが入っているように見えます。
マロニーが体で押し込んでいくものの、サンチェスは下がりながらもパワーパンチをヒット、さらにアッパーカットは非常に効果的か。
ラストラウンド、下手をするとこのラストラウンドが勝負かもしれません。
マロニーは接近戦を選択、サンチェスももちろん受けて立ちます。マロニーの手数は変わらず、というかもう止まらない。サンチェスはすでに前半ほどのパワーこそありませんが、終盤にはまるでサンドバッグラッシュのような連打を見せます。
これは本当に素晴らしい死闘であり、ポイント的にも非常に難しい。序盤、パワーに劣るマロニー危うし、と思ったところから見事なヒットアンドラン、このままサンチェスが離されてしまうかというところで盛り返すというシーソーゲーム。
トータルパンチスタッツはマロニー297/824、サンチェス362/897とサンチェスのヒットが上回っています。これはちょっと意外。マロニーの方が手数もヒットも多かったようなイメージです。
果たして判定は、114-114、116-112×2、STILL!!!
2-0の判定でジェイソン・マロニーの初防衛です!!!
マロニーは薄氷の勝利、割れたラウンドも多かったのではないでしょうか。そんな中でやはりポイントを確実にピックアップしたのはマロニーのほうが多かったような印象ですね。
ともかく、ジェイソン・マロニーおめでとう!さて次は、誰なのか!?
クリスチャン・ムビリ(フランス)vsロハン・マードック(オーストラリア)
セミファイナルにはクリスチャン・ムビリ(フランス)が登場。とにかくグイグイと攻め、頭をつけて力強いパンチを打ち込んでいきます。序盤からムビリがとにかく力強いパンチをフルスイング、マードックはとにかく打ち返すのがやっと。
このマードックも非常にパワーがありそうですが、ムビリは体全体を叩きつけるようなイメージで、どうしてもパワー差が顕著。
ムビリはカナダで大人気なのか、非常に大きな歓声です。カナダで3連戦目なんですね。
このラウンドは6R終了後にマードック側がノー・マス。
このパワフルな戦い方は人気が出ますね、クリスチャン・ムビリ。カメルーン生まれのフランス国籍、トップランク表記では「カナダ」となっていますので現在はカナダが主戦場なのでしょうか。
ニックネームは「solide」、フランス語で固いとか丈夫とかいう意味だそうです。まさにそんな戦い方のムビリ、今後に期待です。
WBC・IBF・WBO世界ライトヘビー級タイトルマッチ
アルツール・ベテルビエフ(カナダ)19勝(19KO)無敗
vs
カラム・スミス(イギリス)29勝(21KO)1敗
さて、いよいよメインイベント。対抗王者であるドミトリー・ビボルはカネロ戦後、メキメキと評価を上げており、思うところはあるでしょう。
ここに勝ってそのビボルをも喰って欲しいですね。
対してカラム・スミスはテクニシャンであり、恐ろしいカウンターを持つパンチャー。
個人的にはベテルビエフ絶対優位の中、このスミスすらも倒してしまえるか、という焦点です。
初回、やっぱりスミスはでかい。しかしいきなりベテルビエフは強い攻め、開始数十秒でスミスをロープに詰めます。
この開始チャージが落ち着いた後もベテルビエフはプレス、スミスはサークリングしながらも長いジャブ、リードのフック。そして長いワンツー。互いに様子見か。
ベテルビエフのグローブのデザインが熊の爪みたいで、熊にしか見えません。
2R、スミスが良いジャブ。これを上下に打ち分けるスミス、これは良い戦法です。
ベテルビエフはジャブが届かないからなのか、右から入るパターンが多いですね。ジャブ、ダブルジャブから入るパターンの時はスミスを下がらせるため、というイメージ。
後半、ベテルビエフの右に素晴らしいタイミングでスミスのカウンター!これは空転ながらも、かなり危ないタイミング。
3R、ベテルビエフがプレス。ジャブの差し合い、というところから少し距離が空くとすぐに距離をつめるベテルビエフ。
このベテルビエフのジャブがスミスに刺さる場面も多く、近い距離では軽めのフックもスミスにヒット。このベテルビエフの軽打も貰ってしまうとかなりダメージを溜めそうです。
後半、ロープに詰まったスミスをベテルビエフはリードで小突き、アッパー。
インターバル中にスミスの顔がアップで映りますが、すでに顔面のダメージはかなりのもの。まだ強くは貰っていないはずですが、これがベテルビエフの軽打の破壊力ですね。
4R、早々にベテルビエフがダブルジャブからボディアッパー。スミスは右カウンターを狙っており、これが当たれば分かりません。
1分過ぎベテルビエフがスミスをロープに詰めて軽い連打!この連打からなかなか逃れられないスミスはかなりの数を貰っているように見えます。
後半に入ったところでスミスは右アッパーをヒットしてベテルビエフの顔を跳ね上げますが、あくまでもポーアーフェイスのベテルビエフ、これは打ってるほうが不安になります。
5R、すでに大勢は決したかに見えますが、あとはスミスが頼るべきは右カウンターか。
いつからかベテルビエフのジャブの多くがヒットするようになっており、逆にスミスのジャブはなかなか良いところにはヒットしません。
テクニシャンでありパンチャーであるカラム・スミス、ここまでミスブローが多いのは珍しい。逆にベテルビエフはもうジャブだけで倒してしまいそうな勢いです。
6R、ベテルビエフはジャブを当ててから右を返すというシンプルなボクシングを徹底。しかしスミスは中盤、自ら攻める場面を増やし、ベテルビエフを下がらせる展開です。
ただ、これはベテルビエフ側から見ると攻めさせている、とも見える展開であり、後半に入ると今度はベテルビエフは強いプレスから右。ハンマーで殴りつけるような外側から回す右、アッパー。やはりラウンドを支配しているのはベテルビエフです。
しかしスミスも頑張りますね。
7R、ラウンド開始早々にジャブで攻め入るベテルビエフ。プレスをかけてスミスをロープ際まで追い込み、やりたいような攻撃を展開します。
そして中盤には攻めるのをやめ、スミスを前に出します。
ここでスミスがジャブを打って前に出たところで右クロス!これでぐらりときたスミス、そこにベテルビエフは間髪を入れずに攻め込みます!これでスミスはダウン!!!
立ち上がったスミスを逃さないベテルビエフ、ここはしっかりと打ち込み、この左右はそのほとんど全てがスミスにヒット、スミスが2度目のダウン!!!!
ここでスミスのセコンドがリングに入り、棄権の意思表示!
アルツール・ベテルビエフ、7RTKO勝利!!
なんなんでしょうか、このパフォーマンス。決してものすごく強く、フルスイングをしているわけではないですが、非常にコンパクトな振りでこのノックアウトというのは現役最高パンチャーと言って良いでしょう。
すでに敗北を喫しているデオンテイ・ワイルダーをとうに超え、とにかく当たれば良いみたいなパンチャーでないということもまた稀有であり、「自らのパンチをどのような当てるかというのを詰将棋のように考える熊」それがベテルビエフ。
さて、次はドミトリー・ビボルでしょう。
ビボルはカネロを倒して、その後も含めて鰻登りの評価を上げています。
このビボルこそが現代最高の判定タイプのボクサーとも言え、例えばヘイニーやシャクールのようなタイプとは違った技術を見せてくれています。
そのビボルと、現代最高のパンチャーであるアルツール・ベテルビエフ、究極のホコタテ対決とも言えるのではないでしょうか。
個人的には、フューリーvsウシクよりも興味深い。
2024年、その激突に期待です。これはオイルマネーの力を借りてサウジで実現もしそう。
いずれにしろ、機は熟したと言えそうです。
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