1/29、我らがWOWOWの放送予定は、当初スーパーウェルター級4団体統一王者、ジャーメル・チャーロ(アメリカ)が無敗のプロスペクト、ティム・チュー(オーストラリア)を迎えるという4団体統一タイトルマッチでした。
しかしチャーロが負傷によりこの日の試合はキャンセル、延期日程が設けられなかったということもあってチューは3月にWBO世界スーパーウェルター級暫定王座決定戦のリングに上がる事になるようです。相手はトニー・ハリソン(アメリカ)、ハリソンは一度はチャーロに勝っているボクサーなので、これは素晴らしい試金石となりそうです。
ということでこの中継がなくなったWOWOWは、イギリスへ飛び、ベテルビエフvsヤーデを中継することに。
これは本当にありがたいことですね。
このライトヘビー級3団体統一タイトルマッチは、メインイベントのアルツール・ベテルビエフvsアンソニー・ヤーデは勿論のこと、セミファイナルのアルテム・ダラキアンvsデビッド・ヒメネスも超がつくほどの注目ファイト。
ということで今回のブログは、ベテルビエフvsヤーデをメインに据えた、クィーンズベリー・プロモーション興行のプレビュー記事です。
1/28(日本時間1/29)イギリス・ロンドン
WBC・IBF・WBO世界ライトヘビー級タイトルマッチ
アルツール・ベテルビエフ(カナダ)18勝(18KO)無敗
vs
アンソニー・ヤーデ(イギリス)23勝(22KO)2敗
2013年のプロデビュー以来、パーフェクトレコードを更新し続けているアルツール・ベテルビエフ。
プロキャリアのスタートとともにカナダへ渡り、現在はカナダ国籍を取得しています。ボクシング大国、とは言えないカナダ人であるから、ホームタウンでの試合は少なめではありますが、カナダのリングに立てば非常に大きな声援に包まれるベテルビエフは、生まれた国が違えば非常に人気のボクサーになったはずです。
豊富なアマキャリアを経て、2017年11月、エンリコ・コーリング(ドイツ)を最終回でノックアウトしてIBF王座を初戴冠。
その後はカラム・ジョンソン(イギリス)を4R、ラディボエ・カラジッチ(アメリカ)を5Rでストップして圧倒的な強さを誇示すると、当時のWBC王者、オレクサンドル・グヴォジク(ウクライナ)とのスーパー・パンチャー王座統一戦。
この試合はほんっとうに素晴らしい試合で、見ていない人は是非見てほしい。
ここまでで、ベテルビエフと互角に戦えたのはグヴォジクくらいのものですね。
素晴らしいジャブを持つ技巧派ながらも、ハードパンチも持っているグヴォジクを、スーパーフィジカルとウルトラハードパンチですりつぶすように倒しきったベテルビエフ。実際ポイントは9Rまで2-1のスプリットでグヴォジクが優位だった、とのことですが、10Rにあのグヴォジクを倒しきったベテルビエフはさすがでした。
この2団体統一王座を、アダム・デインズ(ドイツ)、マーカス・ブラウン(アメリカ)を相手に防衛したベテルビエフは、当時のWBO王者、ジョー・スミスJr(アメリカ)との3団体王座統一戦に臨みます。
ここでアメリカの人気王者、スミスJrを全くと言って良いほど寄せ付けない2RKO勝利。タフネスが売りのジョー・スミスJrを序盤のノックアウトは完全に人外のパンチャーです。
↓ベテルビエフvsジョー・スミスJr!!
ただ、年齢(38歳)のこともあってベテルビエフはやや落ちてきているのでは。。。と思うこともあります。ブラウン戦では思いの外ジャブをもらっていたし、バッティングだってもしかすると反応が遅れている結果なのかもしれません。
スミス戦でのパフォーマンスは圧巻中の圧巻ではあったものの、それはおそらくスミスが前に出てきた影響によるもので、ベテルビエフにとっては真正面からパンチを受け止めてくれるスミスは、非常にやりやすかったのではないか、と思います。
さて、今回の防衛戦の相手は、アンソニー・ヤーデ。
非常に反応がよく、センスを感じさせるボクサーで、23勝中22KOという素晴らしいパンチャーです。
ベテルビエフのパンチはガードの上からハンマーで殴りつけるような豪打ですが、このヤーデのパンチはガードの間隙を縫ってヒットさせるボクサーの拳。アングルにも非常に優れ、この辺りにボクサーとしてのセンスを感じます。
基本的にはプレスをかけて戦うファイタータイプではありますが、カウンターを狙って待ちに徹することもあり、あまりにも手が出ないときもあります。2つ目の黒星であるリンドン・アーサー(イギリス)との第1戦はそんな感じで、試合がつまらない上に黒星を喫するという非常にもったいない戦いでした。
ちなみに初黒星は2019年に喫したセルゲイ・コバレフ(ロシア)戦で、コバレフを効かせ、チャンスを作るも仕留めきれず、KO負けを喫しています。ちなみにこの試合ではスタミナ切れなのか、ペースが落ちたところにコバレフの反撃を食らってしまったわけですが、そのことがアーサーとの第一戦には影響をしているのかもしれません。(アーサーとの第一戦はスプリットの判定負け)
このアーサーとはリマッチをして4RKOで勝利、この2戦目はグイグイとプレスを賭けて倒しきりましたね。
このベテルビエフvsヤーデは、どのような展開になるのか。
もしヤーデが真正面からいくとすれば、決着は早そうなものですが、さすがにヤーデもそうはしないでしょう。
比較的少な目のアクションで、序盤は抑え、中盤から後半にかけて勝負を賭けてくるのではないでしょうか。ヤーデ本人はベテルビエフをノックアウトする、と息巻いていますし、ヤーデのパワーを持ってすればそれも可能かもしれません。ただ、その分リスクは非常に大きい。
おそらく、今のベテルビエフにはジャブは当たるので、ヤーデとしてはまずは序盤にジャブから攻め、ポイントをとっていきたいところ。そして、ポイントを取られたことにたいしてベテルビエフが焦るようなことがあれば、カウンター、コンビネーションを打って離れる、というヒット・アンド・アウェイで戦い、後半に打撃戦、というのがヤーデの理想のように思います。
ただ、ベテルビエフはただのパンチャーではなく、下がりながらでも戦えるボクサー。
この辺りがベテルビエフ攻略を難しくしている一端ではありますが、ともかく真正面から行ってはいけない、ということだけはどんな素人にも明らかです。
さて、この試合で最も不穏なのは、「オレクサンドル・ウシクがアンソニー・ヤーデにアドバイスをした」という事です。
ウシクはアマ時代、1度ならずベテルビエフを退けています。
果たしてここで、ウシクのアドバイスが活きてくるのか。これは非常に興味深いですね。
かなりヤーデ目線でプレビュー記事を書いてしまいましたが、私はベテルビエフ応援です。
そんなふうに色々と考え、策を練ってくるであろうヤーデを、やはりフィジカル&パワーのボクシングで潰してもらいたい。個人的には、今年か来年、ベテルビエフvsビボルが見たいのです。
WBA世界フライ級タイトルマッチ
アルテム・ダラキアン(ウクライナ)21勝(15KO)無敗
vs
デビッド・ヒメネス(コスタリカ)12勝(9KO)無敗
さて、注目のセミファイナル。
このセミファイナルが何故注目なのか、というと、やはりフライ級という日本に馴染みの深い階級であることと、前日本フライ級王者のユーリ阿久井政悟(倉敷守安)がこの試合の勝者に挑戦する可能性はゼロではないからです。
アルテム・ダラキアンはアゼルバイジャン生まれのウクライナ人で、そのボクシングは無手勝流に近い。距離感は抜群、遠心力を使ったパンチも非常に強いボクサーで、縦横無尽に相手の周りを飛び、クリンチワークも上手い。
ただ、1年に1度のリング登場というのが続いており、今回に至っては1年2ヶ月ぶりのリング登場。
年齢も年齢なので、軽量級ということを考えると、そろそろ衰えを見せてもおかしくはないでしょう。
そしてコスタリカのデビッド・ヒメネス、こちらも良いボクサーです。
非常に機動力に優れ、ハートも強く、巧さもあるボクサー。
前戦ではアメリカの若手プロスペクト、リカルド・サンドバルを僅差の判定で降しています。ちなみにこのヒメネスvsサンドバルは、WBOのエリミネーションバウトとアナウンスされていましたが、結局挑戦するのはWBA。
ヒメネスは好ボクサーではあるものの、当然、ダラキアンが優位というのは動かないはず。
それでも尚、現在のダラキアンに不鮮明な部分が残ることも事実。
ワシル・ロマチェンコ、オレクサンドル・ウシクと同年代で、同じくウクライナ代表として戦っていたダラキアン。まだまだ見せていない部分も多そうで、間違いのない強さを持っているボクサーです。
ダラキアンが、その期待どおりにヒメネスを料理するのか、それともヒメネスがアップセットを起こすのか。
いずれにしろ、このWBAランキングは王者がダラキアン、1位にヒメネス、そして2位にユーリ阿久井がランクされています。
この試合がドローか、物議を醸す判定ではない限り、ユーリ阿久井は1位に繰り上がるのではないでしょうか。ということは。。。?
ともあれ、この試合の行方に注目です。
放送・配信
この興行は、イギリスではBTsports、アメリカではESPNが生中継。
そして日本では、前述の通りWOWOWオンデマンドで生配信です。
WOWOWの放送予定は1/29(日)AM4:00〜、メインが何時頃なのかはわかりませんが、早起きしなければいけませんね。
私はこの日、AM6:00頃から予定があるので、4:00のセミスタートだったらギリギリ間に合うのでありがたい。。。
ということで、WOWOWはこちらから↓
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