まさか週に2度、ミニマム級の記事を書くことになるとは思いませんでした。
ミニマム級という階級は105lbs以下、その名の通り男子プロボクシングの中で最もウェイトが低い階級であり、世界的な注目度も低いと言わざるを得ない階級。
豪快なノックアウトこそ少ないものの、非常にテキパキとしたアクションの多い階級ではあり、そのボクシングは見ていて小気味良いものです。
しかし、このミニマム級にビッグニュース。
WBAが、ノックアウト・CPフレッシュマートvsハサンボーイ・ドゥスマトフの指名戦をオーダーした、というニュース。
これはもしかするとその先に「史上初」の戦いが待っているかもしれない、そんな一戦です。
「王者」ノックアウト・CPフレッシュマート
2012年にプロデビュー、わずか9戦目でWBA世界ミニマム級暫定王座を手に入れたノックアウトは、当然の如くムエタイ出身なのでしょう。
2014年10月に獲得したこのタイトルを、もう10年近く防衛していることになり、ここまでで15度の長期王座防衛。小野心、大平剛、田中教仁といった日本のボクサーもそのリストに加わっています。
ここまでの長期政権を築いているボクサーながらも、タイから出ることはなかったため、実はあんまり試合を見たことがない。タイの試合はYoutubeで放映されることが多いですが、イマイチ時間もあいませんしね。
ちなみにノックアウトはタイ国の軍人らしく、基本的にタイから出られないらしい。
ともあれ、15度もの王座防衛記録を持つノックアウトは、やはり評価は高く、リングマガジンランキングでも1位。
それでも、今回のチャレンジャー、ハサンボーイ・ドゥスマトフは超がつくほど危険なボクサーです。
「挑戦者」ハサンボーイ・ドゥスマトフ
この名前を聞いたことのあるボクシングファンは多いはず。
最近は昔に比べてアマチュアボクシングも盛り上がっている(気がする)のですが、このドゥスマトフは2016年のリオ五輪、ゴールドメダリスト。
しかも、「元トップアマ」ではなく「現トップアマ」であり、先日行われたアジア大会で坪井智也と戦い、判定勝利を納めています。
このアジア大会でドゥスマトフは優勝、今夏行われるパリ五輪への切符を手に入れています。
2016年のリオ五輪は、プロボクサーの五輪出場が可能となった年。
アッサン・エンダムといった元王者たちがオリンピックに挑むも、プロの水に馴染んだボクサーたちは元トップアマ、元世界王者といえどもアマチュアボクシングのスピーディな展開についていけず、次々と敗退。
ドゥスマトフは2019年にプロ転向、年に1〜2試合程度ではあるもののプロキャリアを重ね、たった6戦でトップコンテンダーとなり、指名戦の機会を得ています。
戦績は6勝(5KO)無敗というもので、一つの判定勝ちが前戦、シファマンドラ・バレニ(南アフリカ)戦です。
この試合は10回戦で行われており、そこまでの5戦でフルラウンド戦った経験のなかったドゥスマトフにとっては非常に良い経験となった可能性もあります。
ちなみにアジア大会で優勝したのが10月、そしてこのプロ6戦目が11月、はっきり言って異常なキャリアです。
しかも、この戦いが初めてのミニマム級での戦いであり、それ以前はフライ〜ライトフライでの戦いでした。その分、世界ランキングもフライ級で入っていた時期もあったり、ライトフライ級で入っていた時期もあったりしたのですが、現在はIBF以外の3団体においてミニマム級でランクイン。
金メダル→世界王者→金メダル?
ノックアウト・CP・フレッシュマートというボクサーは、今現在のミニマム級で最も評価を得ているボクサーです。
重岡兄弟よりも、オスカー・コラーゾよりも、こと防衛回数において大きく上回るノックアウトは、実績的には抜きん出た評価を受けている、と言えるでしょう。
ではこの試合がダスマトフにとって大きく不利と出るか、というとそうは思えず、ドゥスマトフが世界初戴冠を果たす可能性も大いにあるのだと思います。
そうなると、もう快挙中の快挙中、という記録の可能性が目の前までくることになります。
プロの現役世界王者が、パリ五輪でメダルを獲る、という可能性です。
このノックアウトvsドゥスマトフの試合は期限が30日の入札。つまりは3月頭くらいにはそれが終わり、順当にいけば流石に6月くらいまでにはこの試合が行われるはずです。
もしノックアウト側が入札に勝利し、なんだかんだと日程を伸ばして7月とか8月、オリンピック開催期間にこの試合を持ってくる、というイジワルをすることはなくもないかもしれませんが、それはドゥスマトフに「どちらかを選べ」と言っているようなもので、反感を買いそうな気もします。
ともあれ、もし6月くらいにノックアウトvsドゥスマトフが行われ、ドゥスマトフが世界王者となったならば、そのベルトを持ってパリ五輪に臨むことになるのです。しかも、ただのオリンピック参加ではなく、フライ級(ドゥスマトフはアマチュアではフライ級で戦っています)というアジア地域が強豪と言われる階級で、アジアを制しての出場です。
もちろんこれを阻止してくれるのは坪井、というところですが、ドゥスマトフが順当に勝ち上がれば(準決勝まで坪井と当たらなければ)結構な高確率で何色かのメダルを手にすることは可能ではないでしょうか。
これがたとえ何色のメダルであっても、偉業中の偉業。
これはちょっと、見てみたい。
パリ五輪の話をすると、おそらく坪井vsドゥスマトフが実現したならば、今度は坪井が勝つ、と思っています。言いたくはありませんが、あの中国で行われたアジア大会において、坪井にとって不利な判定が出ていたのではないか、と思うところはあります。あれは坪井が勝っていた試合だった、と。
ともあれ、この「現役世界王者がオリンピック出場」は話題になるし、それも「優勝候補の一角」だとするならばこんなに素晴らしいことはありません。さらに、それを日本人が倒したとなると、きっともっと日本におけるアマチュアボクシングの評価も上がるでしょう。
ということで、ドゥスマトフには是非とも頑張ってもらいたい。
黒いベルトを持って、パリに来てもらうために。
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