テオフィモ・ロペスvsジャーメイン・オルティス。
日本では話題になっている、とはいえないこの注目興行は、トップランクの平日興行で行われます。
なぜこの試合が平日なのか、ということに関しては、1年間を通して最も注目されるというNFLの頂上決戦、スーパーボウルの日程がこの週末にあるからだそうです。
カンザスシティ・チーフスvsサンフランシスコ・49ers、アメリカンフットボールという「アメリカ」という名を冠したこの競技の注目度は、それぞれのプロモーターがいがみ合っているボクシングとは一線を画すほどの人気。
現地時間で2/8にロペスvsオルティス、そして2/11にスーパーボウル。同じくラスベガスで行われるため、もしかすると遠方から来て何泊かして、両方を現地で見る人もいるのかもしれませんね。
さて、私はというと平日興行ということで当然リアルタイムでの視聴は叶わず、さらに同日は仕事が終わったのも23:00過ぎだったので力つき、自然と情報遮断をした状態での視聴。
ということで今回のブログは、2/8(日本時間2/9)に行われたトップランク興行の観戦記。
↓プレビュー記事
2/8(日本時間2/9)アメリカ・ラスベガス
キーショーン・デービス(アメリカ)9勝(6KO)無敗
vs
ホセ・ペドラサ(プエルトリコ)29勝(14KO)5敗1分
「ビジネスマン」キーショーン・デービスがステップアップファイトに臨みます。対戦相手は元王者の「スナイパー」ホセ・ペドラサ、ここ数戦でおそらく少々の衰えは見せつつも、世界トップレベルの強豪であることにはかわりありません。
キーショーンの戦歴はわずか9戦。軽量級であればまだしも、このキャリアでここまであがってくるのは本当にすごいこと。
24歳のプロスペクトは、このペドラサを降し、タイトルの準備万端となるか。
ペドラサはここ最近はスーパーライト級で戦っていたので、今回(ライト級)はいつもより更に細く見えますね。キーショーンは「アポロ・クリード」のTシャツを着ています。追悼の意味でしょう。
さて初回、軽やかなステップ、鋭いジャブの差し合いでスタート。キーショーンのボディジャブがファーストヒットでしょうか。ペドラサも惜しげもなく右を使っていき、かなりアグレッシブに攻め入っていきます。
キーショーンも足を使うでなくこれを迎え撃ち、さすがというレベルのやや近めの距離での攻防。おっとこれは全然塩試合にならないパターンです。
後半、サウスポーにスイッチしたペドラサが強く攻め入ります。キーショーンは下がりながらのカウンターでの対応。
2R、ペドラサはベテランながらも素晴らしい運動量、常に先手で攻め入ります。これはキーショーンの反応、中間距離での対応をさせないという意味なのでしょうが、しっかりと距離を詰めてのボクシングを展開しようとしています。
キーショーンは距離をキープするためにステップを使い、ペドラサの入り際に入れるジャブも良い。
3R、ペドラサは変わらずグイグイとプレス。このサウスポースタンスのプレスに対し、キーショーンはリードを伸ばして遮ると、右のボディストレート。
そしてこの距離にペドラサを釘付けにするようなコンビネーション、前ラウンドまでと違いこの距離をキープしての連打!
ブロッキングのペドラサに対し、そのブロックの間隙をつくような左右をヒットしたキーショーン、ペドラサを下がらせ、バランスを崩し、これはとてつもない。
ペドラサも打ち返しはするものの、パワー差、耐久力の差がありそうです。
4R、ペドラサがさらにプレスを強めます。ここはしっかりと足を使うキーショーン、近い距離でもボディムーブでペドラサを空転。そして入り際のジャブ、ふとした時の高速コンビネーション、いやこれは上手い。強い。
5R。ここまでのESPNの非公式採点はフルマークでキーショーン。
変わらずプレスしての接近戦を仕掛けるペドラサ、このしつこいアタックはまだプロキャリアの薄いキーショーンには嫌なものだと思います。
しかしよくボクシングを理解しているキーショーン、時に足を使い、時に逆に距離を詰め、カウンター、コンビネーションで攻め入る場面を作るなどして柔軟な対応。
6R、ここまでのトータルパンチスタッツはキーショーンが123/268、ペドラサが45/225と圧倒的。まだ半分ですが、キーショーンが圧倒しており、このままではペドラサはジリ貧です。奇跡の一発を入れられそうなイメージもありません。
前半、キーショーンがペドラサのガード越しに右を力強く当てると、ペドラサは後退。ダメージも溜まっているやもしれません。
ここで一気呵成に攻め立てるキーショーン!ブロッキング-ペドラサのブロッキングはとてもハイレベルなもの-でエスケープを試みるペドラサですが、それでもなお、そのガードの隙間にパンチを投げるキーショーン!!
ガードを割って入ったキーションの右でペドラサが大きく後退、コーナーまで下がったところでレフェリーが割って入り、試合はストップ!!!
キーショーン・デービス、6RTKO勝利!!!
これは素晴らしいパフォーマンスを見せた、キーショーン・デービス!!元2階級制覇王者、ホセ・ペドラサを文字通り「全く」と言って良いほど寄せ付けない完勝、ここまでのキーショーンのベストパフォーマンスと呼べるのではないでしょうか。
この大事な大事なステップアップファイト、タイトルへのテストマッチを最高の形でクリアしたキーショーン・デービス。24歳という若さで、近づいて良し離れて良しの完璧なボクシング、今後のライト級戦線の台風の目になるかもしれません。
さて、敗れたペドラサは非常に残念ではありますが、これはもう、グローブを吊るす頃合いかもしれません。。。
WBO世界スーパーライト級タイトルマッチ
テオフィモ・ロペス(アメリカ)19勝(13KO)1敗
vs
ジャーメイン・オルティス(アメリカ)17勝(8KO)1敗1分
「テイク・オーバー」テオフィモ・ロペスが迎えるのは、ロマチェンコに善戦した難敵ジャーメイン・オルティス。
今回の興行のテーマは遊園地とかサーカスとかっぽいですが、ジェットコースターにテオフィモが乗ったアニメーションが流れ、彼の上がったり下がったりするキャリアを紹介しています。Win Over ロマチェンコで天に向かってレールを上がり、カンボソス戦ではレールすらなくの急降下、なかなかシャレの効いたアニメーションです。
こういう興行のテーマとかは今回Aサイドのテオフィモ・ロペスの要望なのでしょうか。普通に生歌入場したオルティスと違い、ロペスはマジシャンがパフォーマンスしてからの入場、自身のコスチュームもマジシャンのようなド派手入場。
否が応にもロペスのパフォーマンスへの期待も高まるわけですが、彼はなかなかムラッ気があるボクサーなので、若干の不安を伴います。
さて初回、ロペスが鋭いジャブを放ってプレス。オルティスは距離をしっかり取ります。スカイブルーのグローブ(ロペスはグラント、オルティスはヴェヌム)が若干被ってますね。
二人ともロマチェンコと比べて非常に大きく感じましたが、今回はもちろん大きな体格差はなし。元来カウンターパンチャーであるロペス、ゴリゴリのアウトボクサーであるオルティス、とりあえずお見合いの展開にはならなくてよかった。
2R、プレスをかけるロペス。足を使って大きく周りつつ、時折コンビネーションで攻め込むオルティス。
終盤、変則的に攻め込んだロペスの右で会場が沸きますが、これがヒットしているのかどうなのかはよくわかりません。これは採点が難しい試合になりそうです。
3R、オルティスの距離感は見事。ただ、効果的な攻撃に結びつくかというとそうではありません。ロペスの踏み込みは微妙に浅く、追い方も上手とは言えません。ただ、常にアグレッシブな姿勢を貫いているのはロペス。
4R、ロペスの方が明らかにパワーがあり、見栄えの良いパンチも放つ。ただ、オルティスに届かないことも多く、空転させられているようにも見えます。
とはいえ、オルティスが大きくヒット数で上回るか、というとそうではなく、ダメージングブローはゼロに近いと思います。
5R、とにかくリングを大きく使うオルティス。ESPNのここまでの非公式採点は、なんと37-39でオルティスがリード。どちらもダメージを与えていない、時にロペスは強いパンチをガード越しでも当てているように見えるので、ロペスがリードかと思っていましたが。
ただただ足を使ってかわすだけのオルティス、単調にプレスをかけるだけのロペス、これは。。。どっちも悪いかも。
6R、トータルパンチスタッツが出ます。ロペスが21/121、オルティスが26/175、ロペスは追いかけるばかりで手が出ず、オルティスは軽打で手を出しているもののダメージを与えられるようなパワーパンチのヒットはゼロに等しいでしょう。
さて、そろそろ会場にもブーイングが聞こえてきました。
7R、こういう状態なら、どっちにポイントが流れるのか。ダメージはおそらく双方になく、ロペスが空転させられているとも見えるし、オルティスが動かされているとも見えます。
このラウンド、ロペスが攻め込んだところでバッティングが起こり、オルティスが出血しています。このカットがあったからなのか、このラウンドはオルティスも打ち込みに行っているし、ロペスも単発ながらも右のオーバーハンドを捩じ込むなどしており、試合が大きく動きそうなイメージもあります。
互いにここまでのベストラウンドですね。
負傷判定となれば非常に微妙な幕切れとなりますが、ここは両者(良い試合となるように)踏ん張って欲しいところ。
8R、しかしここでまた逆戻り、オルティスが大きく足を使い、狙いを定めきれないロペスもほぼプレスをかけるだけ。
ロペスは攻め方に工夫が必要で、一発で当てようと突っ込んでしまうから当たりません。2発目、3発目を当てるつもりで小さく細かくステップインしていけば、途中でサイドに切り返すことも可能であり、そうすればオルティスを捕まえられるはず。
もしくは2段、3段構えで攻撃を繰り返していくことも有効で、今は一回踏み込んで逃げられて終わり、を繰り返しています。
オルティスはとにかくサイドに回るときの足の位置が完全に逃げの位置であり、それをもう少しロペスの近く、前の方に出せればそこから攻撃に結びつきそうなものです。コンビネーションは決して悪くないので、あとは攻撃対ミグの問題だと思います。
9R、とまあ、そんなに単純なものではないと思いますが、ともに新たなことをいろいろ試している、というにはやや目に見える情報が乏しい。
ESPNの非公式採点が出ますが、ここでも75-77でオルティス優位。
もしこれが一般的な感覚だったとするならば、ロペス危うし。
10R、トータルパンチスタッツは、ロペス47/241、オルティス50/300。これだけ見るとちょっとロペスが盛り返したイメージ。そして私はちと眠い。
両者ともにここにきてもスタミナも十分で動きもキレており、この状態で勝利ができればダメージもないし良いかもしれませんが、その確信はどこにもないはずです。
11R、開始早々、私の思いが通じたか、ロペスが2段攻撃。ジャブからボディストレート、からの右ストレートというコンビネーションで、これはオルティスにヒット。ロペスはこんな感じで良いと思うのですが、このような攻撃はその後あまりでず。あまり意識せずにやったことなのでしょう。
チャンピオンシップラウンドに入ってもエキサイトしないこの戦いは、もはやジャッジの好みというフィルターをかけられた運ゲー。個人的には終始攻めの姿勢を貫いているロペスの勝利を期待したいところですが、ESPN的にはオルティスのボクシングが評価されていそうなので怖いところ。
ラストラウンドも同様。このオルティスのアウトボックスは勝利を確信したそれですね。いったい判定はどうなるのか。
おそらくフラストレーションが溜まったのはロペスであり、やりたいボクシングができたのはオルティス。ただ、オルティスのあのボクシングでチャンピオンと言われるとかなり違和感がある、というイメージですね。
一言で言えば眠くなるほどつまらない試合だった、ということに尽きるわけですが、もしオルティスが王者になるならばとにかくマティアスにぶっ倒して欲しいと思うところ。
さて、判定は117-111、115-113×2でテオフィモ・ロペス!
勝利コールの瞬間、涙を流したロペス。かなり苦しい防衛戦だったということは言うまでもありません。
ともあれ、3-0の判定勝利、良いパフォーマンスとは言えないまでも難敵を相手に世界タイトル戦戦に生き残りました。
やっぱりロペスはアウトボクサーとの相性は悪い。ロペスは自分から相手を煽って、相手が出てくるところに合わせるカウンターパンチャー。強いプレスを持つものの、そのプレッシャーの掛け方は上手いとは言えず、カットオフザリングのテクニックもさほどなく、細かく追い詰める技術もありません。
反面、ワンパンチで倒せるパワーととんでもないカウンター、そしてディフェンスに集中すれば素晴らしいディフェンステクニックを持ってもいます。
テオフィモ・ロペス、器用そうに見えて不器用なこのボクサーは、その評価を高めるにはちょっと相手を選ばなければいけないかもしれませんね。相手によっては、非常に高いパフォーマンスを発揮できる可能性は大いにあります。
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