とにかく2/24の衝撃が未だ収まりません。(とか言いつつ、この記事を書いているのは2/27だったりします)
やっぱりこの日は「バンタム」の日であり、田中恒成(畑中)の4階級制覇という日本ボクシング界のビッグニュースも掠れてしまうほどでした。
さてさて、楽しみなバンタム級は、以前にもこのブログでお伝えしたとおり、5月に次の山場を迎えることになります。
ということで今回のブログは、今後も楽しみがすぎるバンタム級の世界王者たちの動向について。
WBA王者・井上拓真
2/24、これまでとは一味違ったパフォーマンスを見せた、井上拓真。長く長く期待されてきたモンスターの弟にとって、このジェルウィン・アンカハス(フィリピン)戦は本人が言うように「過去最強」の相手でした。
その過去最強の対戦相手に対して、文句なしの9RTKO勝利。
覚醒、という言葉よりも、本来の力を発揮し始めた、ということの方がきっとイメージに近いでしょう。
個人的にはこの興行の一番のサプライズはこの試合で、見る目がない私的には拓真がいつも通りパンチをもらわず、アウトボックスを徹底すれば勝利できるし、もし倒そうと力んでしまえば敗北もあり得る、と思っていました。
ところが拓真は、まずプレスをかけることでアンカハスにプレッシャーを与え、相手が出てきたところにカウンター。いつもはリングを非常に大きく使い、ロープに詰まる時間が長いように感じますが、今回は非常に少なかったし、うまくサイドに回り込んでのエスケープをしていました。
これは意識の問題で、相手の攻撃に対して「躱す」ことを選択すると躱しっぱなしになってしまうから、「打つ」を最優先事項として持ってきた結果なのでしょう。
結果的に非常に良いバランスで、打つ時は打ち、守る時は守る、素晴らしいバランスのボクシングが誕生しました。これこそが、井上拓真のボクシングといって良いのではないでしょうか。
この攻防のバランスにより、きっとKOは増えていくのでしょうが、懸念点もなくはありません。
素晴らしいKO勝利を飾ったあとは、ボクシングが崩れる可能性があります。こういうことは、今まで幾度もみてきました。陣営がしっかりとしている分、そこは大丈夫なのだとは思いますが、何せ次の相手は指名挑戦者、石田匠(井岡)。
5/6、井上vs石田
日本ではまだ正式発表はないものの、海外からのリーク、そして大橋会長の発言等によりすでにほぼ確約されている井上尚弥vsルイス・ネリ。
そのアンダーカードでこちらの試合が組まれる、ということです。
石田匠は2023年6月、ビクトル・サンティリャン(ドミニカ共和国)に勝利してWBAの挑戦権を獲得、すでにその頃拓真は王者だったので、井上拓真対策に1年近くの歳月をかけていることになります。
さらにこれまでの経歴を考えると、この戦いはラストチャンスとも言えます。おそらく全てを賭けて、この試合に臨むでしょう。
長身から繰り出されるジャブ、ストレートは、身長、リーチに劣る拓真にとって厄介極まりないもの。塩試合でも勝てば良い、と考えるならば「パンチが当たらない」拓真優位だと思うのですが、「山場を作りたい」「倒したい」と考える拓真だと、どうなのか。
ともあれ、井上拓真からすれば、このアンカハス戦のKO勝利がフロックでなかった、ということを示さなければいけない一戦。ここはまた倒して勝ちたいと思ってしまうところでしょう。
そしてこの短い準備期間は、井上拓真にとってどういう効果をもたらすのか。
いずれにせよ、もうあと2ヶ月後には決着がつくわけです。
WBA王座のその後
この5月の戦いの後はどうか。9月に予定される井上尚弥の2024年2戦目に、拓真もまた登場するのでしょうか。
そうなると、今度の相手はモンスタートーナメントの優勝者、堤聖也(角海老宝石)が有力です。これはもしかすると石田が勝利したとしても、大橋プロモーションがオプションを握っていれば石田vs堤の線もあるのかもしれません。
井上vs堤はどちらを応援すれば良いのか非常に悩ましい問題で、「堤」と言い切りたいところですがそうもいかない気持ち。
アツいマッチアップが多いのは素晴らしいことですが、バンタム級はどっちを応援すれば良いかわからない試合だらけになりそうですね。
WBC王者・中谷潤人
海外(というかアメリカ)での評価は、この中谷潤人に集まっています。
杉浦大介さんが紹介?インタビュー?したトム・グレイ氏の記事は、まさにアメリカのボクシングファンの声そのものでしょう。
アレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)をとんでもない形でノックアウトした中谷の完璧なボクシングは、きっとPFPランク入り、もしくはその一歩手前まで来ているはずです。
中谷はかねてよりPFP入りを目標に掲げていましたが、やはりその先には近い階級にいるPFPキング、井上尚弥を目指しているということなのでしょう。
カシメロやらネリやらの「モンスター狩り」は全く現実味を帯びることはありませんが、この中谷潤人に限って言えば現実味があります。
特にこのサンティアゴとの一戦はその戦いをグッと引き寄せるようなパフォーマンスであり、圧勝、完璧でした。
今現時点で、の話をすれば井上尚弥優位は揺るがないわけですが、あと5年の歳月が残されています。そのうちに中谷がどこまで良いパフォーマンスを披露し続けられるか、というのが、この二人が戦うことがどれほどのビッグマッチになるのか、に起因してきます。
もし井上尚弥が来年いっぱいくらいまでスーパーバンタムに留まるようなら、その階級での戦いが叶う可能性はあります。その間に中谷がバンタム級を統一して、スーパーバンタム級に上がるようなら、スーパーバンタム級4団体統一王者の井上にバンタム級4団体統一王者中谷が挑戦する、という構図が生まれるのかもしれません。
おそらくこれが最短の道。とはいえ、これが最高の道かというとまた違う気もします。
WBCの指名挑戦者
さて、WBCの指名挑戦者は、ヴィンセント・アストロラビオ(フィリピン)です。
2022年2月、彗星の如く現れたこのアストロラビオは、ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)を撃破することでその名を大きく上げました。
そしてその年の12月にはニコライ・ポタポフ(ロシア)を6RTKOで撃破、ジェイソン・マロニー(オーストラリア)とのWBO世界バンタム級王座決定戦で敗北を喫しています。
非常にパワフルなファイターで、19勝中14KOのハードパンチャー。パンチをもらうことを恐れず同時打ちできるハートを持っており、非常に怖さのあるボクサーです。
マロニーとの戦いは非常に接戦であり、その3ヶ月後にはWBCの挑戦者決定戦に出場、ナワポーン・カイカンハ(タイ)を11RTKOで降して挑戦権を獲得しています。注目すべきは、これがタイでの試合だった、ということです。
タイでこのレベルのタイ人ボクサーを破る、というのは、おそらく相当な実力差がなければ難しいことだと思います。
強敵、ヴィンセント・アストロラビオを迎え、中谷がどんなボクシングを展開してくれるのか。痩身ながらもタフネスを有していそうな中谷、このハードパンチャー相手にタフネスがより試される戦いとなるかもしれません。ならないかもしれませんけど。
この戦いはおそらくまた日本、アマプラ興行で行われるのでしょうから、最短で6月頃(もしかしたら拳四朗を差し置いてメインを張る?)でしょうね。
IBF王者・エマニュエル・ロドリゲスはMay the 4th,Be with you.
ファイトマネーがあんまりもらえなかった、ということを理由に引退騒動を巻き起こしたエマニュエル・ロドリゲス。その後そんなに話題となっていないことは寂しいあまりですが、IBFの指名挑戦者、西田凌佑(六島)との一戦では思った通りのファイトマネーを獲得できるようで、一安心。
ロドリゲスの強さはボクシングファンにはよく知られたところであり、もし西田が勝つならアップセットと言われることでしょう。
ロドリゲスはカウンターを得意としており、深く踏み込むタイプよりも、西田のようないわゆる判定型の方が(挑戦者側から見て)相性は良いように思うので、期待のできる戦いだと思います。
逆に相性が悪そうなのは、栗原や比嘉といったタイプであり、このタイプは西田とも相性が悪そうです。
ともあれ、中谷出現前はロドリゲスこそがバンタム級最強と謳われており、井上尚弥戦では井上のジャブに初見でカウンターを取ろうとしたことは記憶に新しい、稀有なボクサー。
それでも西田にはホームアドバンテージ、そしてファイトスタイル、西田が勝利に徹すればアップセットは起こりうる戦いなのではないか、とも思います。
この日のロドリゲスの出来にも大きく左右されるかもしれませんが、3人目のバンタム級日本王者の誕生を待ちましょう。
そしてWBO王者ジェイソン・マロニー
ヴィンセント・アストロラビオに勝利して悲願のWBO世界バンタム級王座を獲得、今年1月の防衛戦では難敵サウル・サンチェス(アメリカ)に判定勝利で初防衛。
王座戦も、初防衛戦も2-0という辛勝だったのですが、リングマガジンの評価は高く、現在バンタム級ではロドリゲスを抑えて1位。(サンティアゴvs中谷は反映されていないので、3位にサンティアゴ)
実に生真面目なオーセンティックなボクシングは、穴が少なく、やはり崩しにくいことが最大の特徴であり、インもアウトも両方こなせる引き出しの多いボクサー。
これまでにとてつもないパフォーマンスを見せてきたか、というとちょっと違い、それでもなんだかんだ勝ち切る様はやはり応援したくなるボクサーですね。
井上尚弥に敗戦後、当時プロスペクトだったジョシュア・グリア(アメリカ)に敵地アメリカで判定勝利、アストン・パリクテ(フィリピン)、ナワポーン・カイカンハ(タイ)をホームに招いて連覇、タイトル戦もアメリカ。
敵地で戦うことを厭わないマロニーの次戦は、BoxRec上はオーストラリアでの防衛戦となっており、日付けはもちろん5/12、ロマチェンコvsカンボソスのアンダーカードです。
ただし、このマロニーですら確信していたアンダーカード登場ですが、1週間ほど前の記事でマロニーは「まだいくつかの選択肢がある」と答えています。ロマチェンコvsカンボソスのアンダーカード以外でマロニーの食指を動かすとするならば、5/6の井上尚弥vsルイス・ネリのアンダーカード、つまりは日本でしょう。
果たしてマロニーの登場はあるのか、3月上旬に正式発表されるという東京ドーム興行、その発表を楽しみに待ちましょう。
ちなみに1位はレイマート・ガバリョ。もしオーストラリアでやるならガバリョの可能性はありますが、それにしたって厳しい防衛ロードを歩みますね、マロニー。
あまり特徴と呼べる特徴がない、とも言えるこのマロニーの強さは、田口良一に似たものだと思っています。つまりは「どんなに強かろうが、井上尚弥ほどの相手ではない」というメンタル。アファーメション、とも呼ぶべき自己暗示。マロニー、日本に来て欲しいですね。
↓マロニーは「いくつかの選択肢がある」とのこと
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