サウジアラビア興行、Knockout Chaos。
夜中の12時にメインカードが開始、とのことでしたがそこから視聴する気力はなく。
本当のボクシングファンはライオンズゲートから2時間ほどの休憩の後、DAZNに移行してこの長時間興行を視聴したのでしょうか。
私は情報遮断の上普通に夜寝て朝起きて、トレーニングしてから午後から視聴。
ということで今回のブログは、Knockout Chaosの観戦記。
3/8(日本時間3/9)サウジアラビア
WBA世界スーパーウェルター級王座決定戦
イズライル・マドリモフ(ウズベキスタン)9勝(6KO)無敗1分
vs
マゴメド・クルバノフ(ロシア)25勝(13KO)無敗
結局やることになったマドリモフvsクルバノフ。上記のポスターにも載ってないのに。。。
ジャーメル・チャーロのWBA休養王座認定を受けての王座決定戦で、無敗対決です。ウズベクvsロシアというやや憚られるマッチアップ、これがサウジアラビアで対戦というのはなんだか不思議な感じですね。
初回からマドリモフがプレス。ウズベクボクサーにお馴染みの「て」(企業らしい)のマークがトランクスに入っていますね。
どうでも良いですが両者ともにグラントの赤いグローブですね。
後半、マドリモフの右がクルバノフにヒット。
2R、プレスをかけて、短髪気味のパワージャブで踏み込むマドリモフ。クルバノフは速いジャブ、左フックと右ストレートで突き放す。マドリモフは反応が良く、クルバノフはミスブローも多い。
3Rはクルバノフがコンビネーションを使い始めます。相変わらずマドリモフがやや優勢だと思いますが、このコンビネーションにクルバノフは光明を見つけたいところ。
4R、マドリモフのパワージャブ、飛び込みの左フック。クルバノフも強い右がよく出るようになっていますが、マドリモフのガードは固く、びくともしません。
マドリモフはボディジャブから右のオーバーハンドがよく、まるでメキシカンの戦い方ですね。
5R、中盤にマドリモフは右をヒット。これはこの試合、何度もヒットしている「1」のタイミングでワンツーを打つ、いわゆる速いワンツー。これで少しぐらりときたクルバノフ、この試合初めてダメージを感じさせるムーブです。
マドリモフはここからプレスを強めながらじりじりと追い詰め、クルバノフをしっかりロープまで押し込んでいって右オーバーハンド!!
狙い澄ました一撃、ここから怒涛のラッシュでレフェリーがストップ!!
イズライル・マドリモフ、5RTKO勝利で王座初戴冠!!!
中量級らしく、スピードとパワー・テクニックのバランスの取れた戦いでした。マドリモフ、良いですね。パンチの種類はさほど多くはないと思いますが、アングルは素晴らしい。そして終わった後のバク宙、あの反応の良さも納得です。
WBC世界フェザー級タイトルマッチ
レイ・バルガス(メキシコ)36勝(22KO)1敗
vs
ニック・ボール(イギリス)19勝(11KO)無敗
さて、私的メインイベント。身長157cm、ビートルズを産んだリバプール出身の挑戦者、ニック・ボール。ロイヤルストーム、アイザック・ドグボエをドグボエ以上の「ストーム」で降して初の世界タイトル戦の舞台に立ちます。
頑張れ、ニックボール!
初回、身長差はエグい。ですがその分、体の厚みは全然違いますね。
ボールとしてはすぐさま捕まえるというのは難しいかもしれませんが、やることは明白です。
初回からもちろんガンガンいくボール、今日のバルガスは右にも力が入っているイメージで、調子は良さそうです。
2R、バルガスは長いジャブ。これはかわして入りたいボール。
ボールは非常に勢いよく攻め入るが故、ちょっと距離が詰まりすぎてしまうこともしばしば。まあ、これは仕方ありませんね。距離の調整にはもう少し時間が必要そうです。
3R、揉み合いが多い中、ボールがバルガスを投げ飛ばし。なかなか見事な下手投げ。
ボールは非常に勢いがあって、バルガスはこの勢いを殺せていません。前に出させると厄介なボールに対して、バルガスはコンビネーションで前に出ることを選択、これは良い判断でしょう。
4R、ボールはバルガスと同時打ちのタイミングでインサイド入ろうと試みているようですね。頭から行ったりというやや強引な踏み込みのため、ちょっとレフェリーには嫌われてしまうかもしれません。
距離が開けばバルガスが元気になる、というイメージ。
5R、バルガスのパンチも力強いですが、ニック・ボールの「肉のカーテン」はびくともしませんね。バルガスがアングルを変えて攻める必要がありそうです。
対してボールの攻撃はというとちょっと近づけばバルガスがクリンチに来ることも多く、揉み合いとなって効果的なパンチは少ない。
ここまでの非公式採点は、フルラウンドバルガス。まあ、前半は仕方ありません。ボールはここからです。
6R、中間距離でのお見合いから接近してからの揉み合い、という展開は、サウジアラビアの王族たちは楽しめるものなのでしょうか。ボールはもう少し何か欲しいところですね。
7R、プレスを強めたボール、勢いよく踏み込んでバッティング。この踏み込みが弱くなってしまえば、この身長差を覆せないのである種仕方のないことか。
中盤、ボールの右オーバーハンドがヒット!!これでバルガスはぐらつきます!
千載一遇のチャンスのボール、逃げるバルガスを追っていきます!!
その後も左フックをヒットしてバルガスを効かせたボール、ここでバルガスは打ち返すことでエスケープ!この辺りは流石のキャリアです。
終盤、ボールはバルガスをロープにつめて連打!さあ、これは盛り上がってきました!
8R、大チャンスのボール、大ピンチのバルガス!
バルガスはここで逃げ腰にならず、ストレートで突き放そうとしています。
それを圧で潰し、いくつかのパンチをヒット。このラウンドは勝負ととらえて、もう少し手数が欲しいところ。
バルガスは攻められるとコロコロと転びます。元々のフィジカルとかバランスとかに加えて、まだダメージもありそうです。
このラウンド終盤、ボールはクリンチ状態からバルガスのバランスを崩し、左フック!元々バランスの崩れていたバルガスは倒れ、これがダウン判定!微妙ではありますが、綺麗に左フックは入っていました。まあ、でもスローで見る限りこれはスリップで良かったかも。
9R、引き続きチャンスタイムのボール!バルガスは遠くからのジャブ、ストレート、プッシング気味の左。これになかなか入れないボールですが、インサイドに入ればこっちのもんです。
ここでも激しい攻撃を見せたボールですが、前半取られている分、もう残りのラウンドは一つも落とせない状況です。
10R、早々にボールのパワフルな攻撃でバルガスがバランスを崩します。ガードの上からのパンチでもやはりすごいパワーのボール。
かと思えば、バルガスの右ボディでボールもバランスを崩す場面。これはダメージよりも押された感じか。
とにかく距離を取ろうとするバルガスですが、足を使うと追われます。ここはパンチを出してボールを止めるべきところですね。
11R、とにかく危険な距離を避けたいバルガスは足を使って大きくエスケープ。ただ、このボールというボクサーは相手が足を使えば使うほど勢いが止まらないボクサーだと思います。
強いプレスから追いかけながら手を出していくニック・ボール、もう一つ二つダウンが欲しいところ。
と思った後半、バルガスがサイドに逃げようとしたところでボールの右がヒット!今度はクリーンなノックダウン!(と思いましたが、足も引っかかっていたみたい。)
立ち上がったバルガスを攻め立てたところでラウンドが終了、ラストラウンド、倒し切って欲しい。
ラストラウンド、逃げるバルガス、ですが前ラウンドよりも手が出ています。このラウンド、バルガスは確実に取らなければ勝てないような気もしますが。
このラウンドに来ても鋭いオーバーハンドを振り回すボール、もはやジャンプしながら打ってるくらいのイメージ。バルガスも動きながらですが手だけは出る状態なので、あまり不用意にはいけない中で、終盤に左フックをヒットしたボール!このラウンドもおそらくボールで、こうなると前半バルガス、後半ボールという感じ。
DAZNの非公式採点もまさにそんな感じで、ダウンポイントを加味すると114-112でボールとなっています。
そして判定は、114-112でバルガス、116-110でボール、113-113でドロー!
ドローはありえたのかもしれませんが、この内容でバルガス、というのはなかなか、なかなか。。。
ジャッジ席から見るとまた違うのかもしれませんが、思いっきり別れましたね。。。
WBO世界ヘビー級暫定タイトルマッチ
チャン・ツィーレイ(中国)26勝(21KO)1敗1分
vs
ジョセフ・パーカー(ニュージーランド)34勝(23KO)3敗
パーカー陣営にタイソン・フューリー。これってもしパーカーが勝って、フューリーがウシクに勝てば統一戦って行われるのでしょうか。
さてさて、ともあれこの対決は、ヘビー級としてはマイナー地域であるアジア・オセアニアの「歴代最強決定戦」でもあります。
かかる王座は暫定王座ですが、これまでの歴史を見てもこの対決はアジア・オセアニアのヘビー級にとって最高峰の戦い。
ここはチャンに買ってもらったほうがヘビー級は面白い、なのでチャンを応援です。
初回、サウスポー・チャンがプレス。互いにかなり慎重な立ち上がり、中盤にはチャンが左ストレートを発射すると、パーカーも右ストレート。
パーカーは左をうまく使い、内側に入って鋭いボディジャブ、外側から左フック。チャンはちょっとリードの使い方がイマイチで、とにかく左を狙っていそう。
2R、パーカーの右がキレていて良い。この右をストレートで打ったりオーバーハンドで打ったり。ただ、サイズの利はチャンにあり、パワー差はありそうです。
3R、スピードはパーカー、コンビネーションで攻め込みます。チャンは体で押し込んでいき左、これをもっと使ったほうが良いかもしれません。
パーカーは元々運動量の多い選手なので、この流れではパーカーを疲れさせることができないような気がします。
しかし後半に入るところでチャンが突然の左をヒット!パーカーはあっけなく尻餅!ダウンです!!
チャンスと見て攻めるチャン、パーカーはちょっとロープに詰まり気味!
パーカーはもっと動かないといけませんね。
4R、このラウンドになるとなぜかチャンのジャブが強いヒットを生み始めます。かなりまずい状況のパーカーですが、ここでもやはり動きは抑えめで、どちらかというとボディストレートを中心にしっかりと迎えうつスタンス。
この距離は、いつチャンの「ビッグバン」が炸裂してもおかしくない距離です。
しかし、このいつになく攻撃的なパーカーは、後半、右のオーバーハンドをヒット。このオーバーハンドとボディストレートを使い分けますが、ボディはローブロー気味で注意が与えられています。
5R、パーカーはよくジャブが出ています。これによりちょっと攻めづらいチャン。というか、チャンは左を狙いすぎかもしれません。なかなか手が出ません。
6Rもプレスをかけるのはチャン、下がりながらも手はしっかりと出るパーカー。
7R、全体的にパーカーのジャブがよく出ており、ワンツーもシャープ。チャンは時折出すhぢあり以外はさほどアクションが少なく、打てるタイミングでもパーカーのクリンチに阻まれています。
8R、開始早々にパーカーのワンツーがクリーンヒット!これによりチャンの動きが落ちることはありませんが、警戒はしなければいけません。
チャンは相変わらずプレスをかけていきますが、なかなか手は出ず、軽い左ストレートは出すもののダメージを与えるようなパンチは打てていません。
とか思っていたらこの軽い左ストレートから軽めの右フックをフォローするとパーカーは膝をつくダウン、ダウン後に左をもう一発当ててしまっています。
思いっきり打たなくても倒すことができるパワーを持っているようです。。。こうなるともはやパーカーはかなりダメージを溜めている可能性もありますね。
逆にパーカーはしっかりとウェイトを乗せた右のオーバーハンドを繰り出します。こっちの方が力感はかなりありますが、チャンには効いていないのかもしれません。
9R、パーカーはよく上体を動かし、パンチのシャープネスも衰えていません。チャンはあくまでのっそりとプレス、中盤ラウンドに比べるとジャブも出始めています。
ハーフタイム頃にはアングルを変えた左のオーバーハンドを繰り出すなどしてプレスを強めますが、後半にはパーカーが力強い右を繰り出して反撃。チャンはちょっとスタミナ面が課題か、やや動きは緩慢になっているように見えます。
10R、パンチングパワー、フィジカルに差がありながらも、ジョセフ・パーカーは勇敢です。自ら強く攻め入り、チャンが出てくればしっかりとリターン。
チャンは口を開けて息をしているようで、疲労感が滲み出ています。手数もあまり出していないし、強振しているわけでもないとは思うのですが。
このラウンドはパーカー優勢、疲れたチャンは下がる場面も。
DAZNの非公開採点では、このラウンドまででイーブン。パーカー、2つダウン取られているのに。。。チャン・ツィーレイはここまで極端な前半型のボクサーだったか。
11R、このラウンドもパーカーのシャープなワンツーが映えます。チャンはパーカーのジャブのたびにブロッキングを強いられ、手を出すタイミングがありません。
チャンとしてはここは被弾覚悟で行くべきところ、当たれば倒せるというチートを持ちながらも、手を出さなければ当てることもできません。
ラストラウンドに来てもパーカーのパンチはシャープ。パワーパンチスタッツが出ますが、チャンが40/139、パーカーが74/160。チャンがパワーパンチを139も放っている、というのが驚きですが、ヒット数は倍近く違います。
いかなければいけないのはチャンの方ですが、プレスをかけて攻撃的に攻めているのはパーカーの方。パーカーの速いジャブをとにかくブロッキングでしか対応できないのがチャンの良くないところで、さらにスタミナも尽きているとなると挽回は難しい。
そしてこのままラウンドが終了、よほどのことがない限りはパーカーの勝利でしょう。
果たして判定は、113-113、114-112、115-111、2-0でジョセフ・パーカー。
面白い、とは言えない試合でしたが、パーカーは巧みでしたね。
ボクシングに3段論法は通用しない、というのは定説ですが、まさにその通り。こうなるとこの暫定王座に対し、もしかするとジョー・ジョイス(イギリス)が挑むという未来もあり得るのかもしれません。
アンソニー・ジョシュア(イギリス)27勝(24KO)3敗
vs
フランシス・ガヌー(カメルーン)0勝1敗
さて、メインイベント。この試合はいわゆる「イロモノ」だと思っているのですが、もしガヌーがジョシュアに勝つようなことがあれば一気にトップファイターです。
ガヌーの試合を見るのは初めてですが、さてどんなボクサーなのか。
前戦でフューリー大苦戦というのは、ただのフューリーの油断だったのか、を確かめる戦いです。
注目ファイトのゴング。
初回、まずはジャブの差し合い。ガヌーの動きは良いですね。少し硬さも見受けられますが、素人感があるとか、明らかに違和感があるとか、そういうレベルにないことが見て取れます。
ただ、ちょっとジョシュアのジャブやフェイントには過剰反応、これがただの硬さなのか、慣れの問題なのかは疑わしいところですね。
これでビッグパンチャー、ということなので、打たれて強くないジョシュアはかなり気をつけなければいけませんね。
ガヌーのジャブに合わせるジョシュアのボディジャブが良い。
ガヌーはこれを嫌がったかサウスポーにスイッチ、その途端にジョシュアがワンツー、長く、美しい右ストレートがヒットするとガヌーはダウン!
立ち上がって30秒と少し、ジョシュアは強引にはいきません。
立ち上がった後はガヌーはオーソドックスに戻していますね。
2R、ガヌーは相変わらずジョシュアのフェイントやジャブに大きすぎる反応を示しており、このことはジョシュアが試合を優位に進め、精神的優位に立つ要因になります。さらにこれは隙を生むことにもなりますね。
もはや底は見えたか。
ガヌーが踏み込んだところでジョシュアが右フックをヒット、ガヌーは2度目のダウン。立ち上がったガヌーに対し、右のオーバーハンドを決めるとガヌーは3度目のダウン、これでレフェリーは試合をストップ。
アンソニー・ジョシュア、3RTKO勝利。
これでジョシュアの評価が上がるか、というとそうではないでしょう。
ガヌーはやはりボクシング競技への慣れという部分においてまだまだこれから、というところであり、フューリーが負けそうになったのは単にそのリズムに噛み合わなかっただけ、と見るのが妥当なのかもしれません。
ともあれ、ボクシングファンとしては一安心。
ジョシュアはこれでフューリー戦にまた一歩前進、ガヌーがハードパンチャーであること、そして注目対決であったことは確実でしょうから、精神面でも成長の一助となったかもしれませんね。
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