ライト級、といえば怪物たちの巣窟。
ほんの少し前はタンク・デービス、テオフィモ・ロペス、ライアン・ガルシア、デビン・ヘイニーといった若手のホープたちがネクストチャンピオンとして名を連ね、それぞれがタイトルを獲得して以降、次のステップへと進んでしまっても、まだまだタレント揃いなのがこの階級。
このライト級においては、日本人世界王者を見れるのはまだもう少し先の気がします。
ガッツ石松、畑山隆則、小堀佑介。この3人のみが世界ライト級を射止めた日本人ボクサーたちですが、改めて、その偉業は本当に奇跡に近いものだったと感じます。
特にガッツ石松については、間違いなく日本人ライト級におけるThe Best Everだということで認識の相違はないでしょう。
さて、ということで今回のブログは、怪物たちの饗宴、世界ライト級の現在地について。
↓過去ブログで世界ライト級に挑戦した日本人ボクサーたちをピックアップしています。
WBA王者:ジャーボンタ・デービス(アメリカ)
29勝(27KO)無敗、とんでもない戦績と華のあるボクシング。ややディフェンシブに戦ったり、試合中によそ見をしたりと注意力散漫なところを見せつつも、なんだかんだ相手をフィニッシュしてしまうパンチャーは、パンチングパワーもさることながらアングル、そしてひらめきに優れたボクサーです。
リング外でもかなりのお騒がせ、とにかくたくさんの犯罪を犯し、結局刑務所に入れられて出所はした状態だと思うのですが、次戦の話はなかなか聞こえてきません。
アブドゥル・ワヒドという名前に改名して、せっかくなら改心もしてほしいデービスは、試合をすれば大金を稼げる状態なのになかなか相手が見つかりませんね。
タンクと戦えば金になるので、タンクを欲しているボクサーは多いのですが、これまではPBC縛りもあってなかなかマッチアップには苦労してきた感もあります。
それでも、前戦ではプロモーションの垣根を超えたライアン・ガルシア戦を実現、PPV購入数が120万以上という近年稀に見るメガマッチとなりました。このことは、おそらくAmazonがShowtimeを引き継いでPBCファイトを放映することとなった一つの後押しにもつながっているのではないかと思っています。
今、タンクが対戦相手を選べば、おそらく誰でもYesという、おそらくカネロや井上尚弥といったボクサー同様、この階級で「最も戦いたい」と思われているボクサーではないでしょうか。
次戦が待たれるジャーボンタ・デービス、心配なのは集中してトレーニングができているかどうか、というところですね。
WBC王者:シャクール・スティーブンソン(アメリカ)
さて、報酬面から誰もがジャーボンタ・デービスと戦いたいわけですが、逆に誰も戦いたがらないのがシャクール・スティーブンソンさん。
スキルフルでディフェンシブ、ヘイニーとはまた異なった塩試合製造機であるシャクールは、ここ最近パワーがついてきたのでは?と思った時期もありましたが、大問題なのは前戦、エドウィン・デ・ロス・サントス(ドミニカ共和国)戦。
ハードパンチャーを相手にして慎重になるのはわかりますが、慎重なままの36分間はこの試合を楽しみにして観戦したファンをがっかりさせる内容でしたね。
とにかくこのシャクールにパンチをヒットさせるのは至難の業であることは明白であり、類まれな当て勘を持つタンクや、決して大振りすることなく軽打をコツコツと当てるタイプのロマチェンコですらも困難でしょう。
シャクールと戦っても、報酬面でも評価面でも得をしないことがわかるから、誰も彼と戦おうとしません。シャクールがどんなに対戦要求をしたとしても、他の相手に行ってしまうのは心情的によくわかる話でもあります。
ラブコールを送るもフラれ続けたシャクールは引退を表明、これも誰も信じてなくてニュースとしての扱いは小さいし、続報もない状態。唯一望みがあるのは、彼がまだタイトルを持っているということですから、コツコツ防衛を積み重ねていくしかないような気がします。
IBF王座とWBO王座は決定戦へ
IBF王座は既報の通り、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)vsジョージ・カンボソスJr(オーストラリア)で王座決定戦。日程は5/12、カンボソスの地元オーストラリアでの開催です。
ロマチェンコは完全アウェーとはいえども、カンボソスと比べて大きく実績に勝る分、ここでの敗北はあまり考えることができません。もしここでカンボソスが勝つならば、さすがにロマチェンコはもう引退した方が身のためです。
カンボソスにも地元の意地はあるでしょうし、結局勝負はやってみなければわからないというところもありますが、ロマチェンコにとっては千載一遇の王座返り咲きのチャンス。例えばタンクやシャクールといった相手よりも、何倍も可能性があるわけです。ここはロマチェンコに踏ん張って欲しいところ。
さて、WBO王座がどうなっているか、というと、つい先日、エマニュエル・ナバレッテ(メキシコ)vsデニス・ベリンチク(ウクライナ)の間での王座決定戦が正式発表。
日程は5/18(日本時間5/19)、この日に4人のタイトルホルダーが出揃うことになりますね。
https://www.boxingscene.com/navarrete-berinchyk-set-18th--182245
しかしナバレッテ、前戦はロブソン・コンセイサン(ブラジル)とドロー。スーパーフェザー級で、名目上は王者となっていないコンセイサンを相手に、薄氷の勝利を得てのドロー防衛です。
正直、このナバレッテが階級を上げて強くなる、というイメージは全く持てず、相性もあるかとは思いますが4階級目はかなりの茨の道。階級アップはせめて元の階級でしっかりと実績を残してから進んでもらいたいというのがファン心理ですが、ナバレッテはスーパーフェザー級でも結局オスカル・バルデス(メキシコ)くらいしか実績がなく(他の試合は大苦戦なので)、たとえここでタイトルを取れたとしても他の王者たちとの戦いは難しいのではと感じます。
ということで頑張れ、ベリンチク。
列を作るコンテンダーたち
デビン・ヘイニーがUndisputedチャンプとして君臨していた頃から比べると、はるかに活況を呈してきています。
王者が1人よりも、複数いた方がチャンスが生まれる、という良い例ですね。
例えばマキシ・ヒューズを完膚なきまでに叩き壊したウィリアム・セペダ(メキシコ)は王座奪取の最右翼であり、現在WBAとIBFの挑戦権を保持しています。
そのほかには一度はシャクールと対戦の決まったフランク・マーティン(アメリカ)、レイモンド・ムラタヤ(アメリカ)、そしてアンヘル・フィエロ(メキシコ)といったボクサーたちは非常に楽しみなボクサーですし、すでに東京五輪銀メダリストのキーショーン・デービス(アメリカ)も3団体でランキング上位、そのキーショーンに勝ったアンディ・クルス(キューバ)もたった2戦で4団体のランキング下位に顔を覗かせています。
そのほかの期待のプロスペクトでも、先日リングに上がったフロイド・スコフィールド(アメリカ)、アブドゥラ・メイソン(アメリカ)、そしてあのフェルナンド・バルガスの3男、エミリアーノ・バルガス(アメリカ)も頭角を表してきています。
ちなみにここに挙げた次期世界王者候補、プロスペクトたちの中で、ネクストシャクールになり得るボクサーはキーショーンくらいのもの。(キーショーンですらそうなる可能性がなくはない、程度)
なのでこれからのライト級は、強打者たちが面と向かって渡り合う、非常にエキサイティングな戦いが繰り広げられようとしているのです。
こんなにも楽しみなことはありません。
世界ランキングに入っている日本人ボクサーは、仲里周磨、保田克也、鈴木雅弘のみ。この3人は日本・アジアのタイトルホルダーですが、現在のところライト級の世界の壁はやはり厚く、そして見上げてもどれくらい高いのか見えないほど、高い。
4/25に始まる大橋ジムのアジア最強トーナメントにはこれらのタイトルホルダーは出場しませんが、トーナメント優勝の最右翼、今永虎雅をはじめとしたニュースターの誕生にも期待したいものです。
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