ヘビーウェイト・ダブルヘッダー!
アメリカ期待の「ビッグベイビー」ジャレッド・アンダーソン登場のトップランク興行は、エフェ・アジャグバとの共演です。
デオンテイ・ワイルダーの現状を考えると、アメリカ国内ではすでにワイルダー以上の期待をされていると言っても良いアンダーソン。
今回は元WBA世界クルーザー級王者、リヤド・メルヒーとの対戦です。
co-main(セミファイナル)にはエフェ・アジャグバvsグイド・ヴィアネッロのヘビー級10回戦、そしてメインカードのオープニングバウト(セミセミ)にロブソン・コンセイサンvsホセ・グアダド。
あんまり日本では注目度は高くないものの、個人的に楽しみにしていたマッチルーム興行でジョーダン・ジルが負けてしまったのでこっちの観戦記。
4/13(日本時間4/14)アメリカ
ロブソン・コンセイサン(ブラジル)17勝(8KO)2敗1分
vs
ホセ・グアダド(メキシコ)15勝(5KO)1敗1分
スリータイム・タイトルチャレンジャーのコンセイサン。世界王者と同等以上の力を持ちながらも、不思議とタイトルに届かない、今どき珍しい無冠の帝王と呼べるボクサーですね。
対してグアダドはメキシコ国外で戦うのが初めてというボクサーで、もしここで勝てれば大きな足掛かりとなります。
初回から非常にアグレッシブなコンセイサン、ガードを固めてグアダドのパンチを受け止めて、力強いパンチをリターン。アップセットを狙ってくるメキシカンを相手にこの戦い方は危険を伴うものですが、コンセイサンも35歳、印象的なノックアウト勝利をあげて早々にタイトル挑戦に繋げたいのでしょう。
コンセイサンの大きな左フックはよくヒットしており、長く鋭いジャブから右ボディもよく届いています。
2R、引き続き非常に長いジャブからストレート、外側から大きく回す左フックでまるで勝負を急くように次々とパンチを放っていくコンセイサン。
グアダドは押されまくる中で強振、どちらのボクサーも力強くパンチを放っています。
3R、旺盛な手数はコンセイサン。近づいて距離が詰まり、ブレイクの後もすぐさまワンツーを放っていくのはコンセイサンの方です。グアダドは格上を相手にもっと攻め込みたいところですが、コンセイサンへの反撃のタイミングを掴めずにいる、というイメージです。
後半、コンセイサンの右オーバーハンドがヒット。このままの展開では、果たしてグアダドがどれくらいタフか、によって終わるラウンドが違ってくる感じ。コンセイサンもパンチャーの類ではないだけに、圧倒しながらも倒しきれない可能性もあります。
4R、コンセイサンは単発で攻め込むことはなく、必ずコンビネーションで攻めます。この辺りはさすが元五輪王者、ボクシングの競技をよく理解しています。
このコンセイサンの攻撃が波状攻撃であるが故に、グアダドは反撃の糸口を掴めず、コンセイサンの2-3発に対してようやく1発を返すのが関の山。ただその一発もちょっと遅れており、コンセイサンに届きません。
5R、グアダドがペースを上げてグイグイとせめてこれまで以上のフルスイング!これは良い判断ですね。
近い距離でグアダドの右フックがコンセイサンにヒット、しかしコンセイサンは動じず、逆にプレス。
コンセイサンのジャブは相変わらず的確で、互いに同じタイミングで攻め込んだ際に吹っ飛ばされるのはグアダドの方、フィジカル面でもコンセイサンが優位に立ち、グアダドは突破口なし。
しっかりと顎を引き、攻めるときはしっかりと攻めて、相手が来ればスッと引くコンセイサン、後半にはグアダドの入り際に見事なアッパーカウンターから顔面への右フックをヒット、どんどんグアダドができることを減らしていくイメージ。
6R、とにかく近づ期待グアダドですが、それを見越したようにコンセイサンはカウンター。その後はプレスをかけていきなりの右をヒットするなどやりたい放題。
7R、グアダドが意を決して勝負に出ますが、ここでもコンセイサンは応戦して的確にパンチをヒット、近い距離でもブロッキング状態で押していくなどグアダドにボクシングをさせません。
そして後半に入ろうかというところ、グアダドが右を打った瞬間でしょうか、コンセイサンが左ボディカウンター!!これで悶絶して倒れたグアダド!試合は決まったかに見えましたが、アステカのゲレロ(戦士)の血を引くグアダドは立ち上がり、続行!
しかしここを逃すゴールドメダリストではなく、執拗にボディを攻めて2度目のダウンを奪うと、ここでレフェリーがストップ!
ロブソン・コンセイサン、7RTKO勝利!!
ものすごい左ボディカウンターでした、コンセイサン。これはナチュラルに出たものでしたかね。ワンツーで攻め込んだグアダドでしたが、右を出す前にコンセイサンの左ボディがレバーに突き刺さっています。本当にもう、よく立ったと讃えられるレベルのカウンターです。
コンセイサンはこれで再起、次に世界戦が決まったときはラストチャンスとなり得るでしょうから、気合いも入るでしょうね。
エフェ・アジャグバ(ナイジェリア)19勝(14KO)1敗
vs
グイド・ヴィアネッロ(イタリア)12勝(10KO)1敗1分
スパーリング経験もある両者、とのこと。アジャグバの元スパーリングパートナーがヴィアネッロ、という表記ですね。
スパーリング経験があるというのは互いの実力をある程度わかっており、長所も短所も把握はできている、という状況。このスパーリング経験というのが試合においてどう出るのか。
初回、いきなりジャブワンツーを放っていくのはヴィアネッロ。アジャグバはブロッキングでのスタート、アグレッシブネスはヴィアネッロにあります。
しかし1分を過ぎる頃にはアジャグバも長いジャブで攻め入る場面を作り、今度はヴィアネッロがサークル。
そこからは主にプレスをかけるのはアジャグバ、となるものの、後半にはヴィアネッロが右ショートをヒット。
2R、アジャグバがプレスをかけるもさほど手は出ず、ヴィアネッロはアジャグバの攻撃に対してうまく対応しています。
あくまでも格上感を出すアジャグバですが、ヴィアネッロのパンチは比較的よく当たっています。
と思った終盤、ヴィアネッロの右でアジャグバがぐらり!ここをチャンスと一気にいくヴィアネッロ、ちょっと距離が合わずにタックルみたいになってしまいます!ここを丁寧に攻められていればダウンの一つも取れたと思いますが、タックルしてしまったがために単なるブレイクで時間を使ってしまい、ゴング!!
3R、大チャンスのヴィアネッロ、左右のフックを振り回して前進!アジャグバは冷静を装い、どっしりと構えますがちょっと足取りはおかしいかも。
ちょっと下半身に力が入りきらなそうなアジャグバですが、逆にプレスをかけることでこのピンチをやり過ごします。
しかし中盤、またもヴィアネッロの右がアジャグバにヒット、アジャグバも右をお返しして譲らず。終盤にも数発の鋭いジャブをヒットしたアジャグバ、徐々に回復してきたか。ヴィアネッロもオーバーペースだと思うので、この試合が後半にもつれ込むようならまだわかりません。
4R、ここまでのトータルパンチスタッツは、アジャグバ13/63、ヴィアネッロ39/87。
前ラウンドと比べ動きのキレが戻ったアジャグバ、プレスからヴィアネッロのジャブをヘッドスリップでかわして左アッパーカウンター!
しかし相変わらずヴィアネッロの右は喰らうことも。これは一進一退、面白いヘビー級ファイトです。
このラウンドは左アッパーだけでなく右アッパーも良いアジャグバ、試合は中間距離での打撃戦の様相です。
5R、ステップワークが軽く、カウンターも良いヴィアネッロ。しかし前ラウンドからやや劣勢、アジャグバはエンジンがかかったのかグイグイ出てきて手数も増しています。
押し込まれたヴィアねっろが出てくる時にはアッパーカウンターを用意しているアジャグバ、ヴィアネッロは長めの右ストレートと外から回す左フック!互いにヒットを量産しています!
6R、ヴィアネッロがサイドにステップしての攻撃。このボクサーは非常に運動量が多いですね。アジャグバはプレスをかけながらも待ち構えてアッパー、しかし打たれてもヴィアネッロの回転力は止まりません。
互いにかなり疲弊し、ミスブローも増えていきます。
7R、開始早々攻め込むのはヴィアネッロ。力強い右を叩き込み、さらにこのボクサーは回転力も良い。その間隙をぬってアジャグバはうまくアッパーをヒット、これは結構当たっていますが、ヴィアネッロのタフネスは侮れません。
8R、もっと落ちるかと思っていたヴィアネッロですが、私の予想に反してこのラウンドに来てもまだアクション量は落ちません。
ここまでのパンチスタッツはアジャグバ129/400、ヴィアネッロ121/427とほぼ互角。
途中、アジャグバはサウスポーにスイッチして右ジャブ。後半に差し掛かったところでこのスタンスからのアッパーカウンターを決めます。これは倒れてしまうようなタイミングですが、ヴィアネッロは見えていたから耐えられるのか?見えている、というのはなかなかあり得ないことだと思いますが、ともかくこのアッパーはもらうもの、として捉えているのでしょうか。
9R、サウスポースタンスのアジャグバの長い左がヒット。近づいても前手のアッパーをうまく当てたアジャグバ、それでもびくともしないヴィアネッロ。なんという顎を持っているのでしょうか。
とてつもないタフネスを示しているグイド・ヴィアネッロ、さらに運動量も衰え知らず。
ヘビー級なのに飛び跳ねるようなステップを踏み、サイドステップからの攻撃。このラウンド終盤も勢いのある攻撃を見せています。
ラストラウンド!ポイントはもはや全くわかりません。
体ごと突っ込んでいくヴィアネッロ、うまくパンチをコネクトするのはアジャグバの方ですが、こういう類のパンチだとヴィアネッロにダメージを与えられてはいないのかもしれません。
中盤、ヴィアネッロはプッシュ気味のジャブで押し込んで右を強打。その後もエネルギッシュに攻め込むヴィアネッロ、アッパーで迎えうつアジャグバ!
ヴィアネッロの馬力に押されたアジャグバはヴィアネッロの頭を抱え込んでクリンチ、かなり疲弊しているように見えます。
そしてラストラウンド終了のゴング、お互い検討を称え合います。
判定は、96-94ヴィアネッロ、96-94アジャグバ、そしてもう一人も96-94でアジャグバ!
2-1のスプリット判定で、勝者はエフェ・アジャグバ!
全くの互角、と言っても差し支えがないほどですが、感覚的にも数値的にもヒットを多く奪ったのはアジャグバでした。しかし、ヴィアネッロのタフネスがそれを難しくした、とも言えますね。
ヴィアネッロは非常に惜しかった、どちらが勝っていてもおかしくはない試合だったと思います。
ジャレッド・アンダーソン(アメリカ)16勝(15KO)無敗
vs
リヤド・メルヒー(ベルギー)32勝(26KO)2敗
大人気のジャレッド・アンダーソン。リングの外でやらかしても、試合はそのままとは恵まれています。(ちなみに私はそれで良いと思っています)逮捕されない程度に抑えてもらいたいものです。
さて、コートジボワール生まれの元WBA世界クルーザー級王者、リヤド・メルヒー。ヘビー級転級後はさほど良いパフォーマンスを見せている、とは言い難いのは事実ですが、元世界王者という肩書きの対戦相手はアンダーソンのキャリアに必要なものですね。
果たしてメルヒーはアンダーソンの踏み台となるのか。
アンダーソンとしては下の階級から上がってきた王者に対しては倒して勝ち切りたいところ。
初回のゴング、メルヒーは過去最大体重のようですが、サイズとしてはやはりアンダーソンがかなりでかい。
そこから鋭いジャブ、ワンツーで攻め入るアンダーソン、メルヒーは非常にディフェンシブ。とりあえずガードを固めてサークリング、アンダーソンのジャブにのみジャブを合わせるぐらいしかしていません。
2R、ジャブからワンツー、快調に攻めるアンダーソン。メルヒーはアンダーソンの動きをよく見て、左フックをカウンターして会場を唸らせます。
これでちょっと警戒せざるを得なくなったかアンダーソン、サウスポーにスイッチ。メルヒーが左フックを狙っているとわかるとこのような対応、ボクシングの幅が広いですね。
プレスをかけ続けてジャブ、ストレートのアンダーソン、全く手を出さずにとにかくサークリングとブロッキングのメルヒー、会場からは早くもブーイング。
3R、さあ、これは(見るのに)きつい展開になってきましたよ。
ジャレッド・アンダーソンはまるでミット打ちのようなボクシング。メルヒーは手を出さずにサークリング、カウンターを狙っているのでしょうがパンチを出せません。
亀のようにガードを固めて回るだけのメルヒー、アンダーソンが強引に攻めれば振ってはきますが、3分に出すパンチの数は片手で数えられるほど。
4R、パンチスタッツはアンダーソン36/220、メルヒー11/33。これはひどい。
果たしてこれはメルヒーの作戦なのか、もう4ラウンズもこの調子です。
5R、前ラウンドからほんの少しメルヒーのアクションが増えているようにも思いますが、結局はただただアンダーソンのパンチをもらわないように努めているのみ。
このボクシングで万が一にも一発当てて勝ってしまうようなら、ボクシングというのは超つまらない競技になってしまいます。これってレフェリーはファイトしろ、という注意は与えられないものか。アマチュアボクシングだと失格負けになるレベルではないでしょうか。
6R、反応だけはそこそこ良いメルヒー、アンダーソンが攻め込もうとすると素早いガードポジション。
アンダーソンも基本に忠実すぎるだけに、オーソドックスでもサウスポーでもちゃんとジャブから入るからなのか、メルヒーはしっかりとディフェンス。
7R、ここまでのパンチスタッツはアンダーソン69/389、メルヒー21/78。メルヒーのパンチが78発なので、ラウンド平均は13発。ある意味すごい。
何がすごいって、おそらく展開が今後変わらなそうなこの試合を真面目に見続けている私がすごいです。
中盤、アンダーソンはメルヒーをコーナーに詰めるもクリンチで逃げられ。もはや実況はナオヤ・イノウェイvsルイス・ネリの話をしていて、その後沈黙するという事態。
ちなみにメルヒーはこの試合がアメリカのリング初登場。もう今後、アメリカのリングに呼ばれることはないでしょうね。
8R、ラウンドワンからアゲイン、エバー。と実況が伝えています。果たしてディフェンシブがすぎるメルヒーに対し、アンダーソンが倒せる気もしなければ、メルヒーが何かを起こせる雰囲気も感じず。
9Rも同様の展開で、メルヒーのジャブがちょっと増えたように感じる程度。アンダーソンもそのジャブにカウンターを狙ったりとしていますが、いかんせんメルヒーの踏み込みは浅く、攻撃する気があるのかないのかわからない程度なので、カウンターも決定打にはなりません。
ラストラウンドもほぼ同様の展開から、メルヒーが若干左右を振っているか、くらいのもので、そのパンチは鋭さがあるものの勝利を手にしようというものではありません。当たればラッキーくらいのもの。
こうして苦痛にも思える10ラウンズが終了、判定を待つまでもなくアンダーソンのフルマーク判定勝利。
アンダーソンはこの試合展開に、よく集中力をキープし続けて冷静なボクシングを展開しましたね。これはある種、試練の一戦だったと思います。
さて、とっても損な時間を過ごしてしまいました。メルヒーとともに、観客も視聴者も敗者です。そしてこうして最後までこのブログを読んでくれた皆さんも同じく敗者。ごめんなさい。
コレはなかなか、カシメロvsリゴンドーやシャクールvsデ・ロス・サントス級の衝撃的な試合でしたね。
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