フェニックスバトル。
この名前を冠した国内興行が山のようにあるのは、現代のPFPキング、井上尚弥を擁する大橋プロモーションの隆盛ぶりを感じるものですね。
大橋ジムの素晴らしいところは、自ジムの利益だけを考えず、他にたくさんのボクサーたちにもチャンスを与え続けていること、そして韓国での興行といった色々なところに助け舟を出しているところですね。
今回、グリーンツダ主催のCRASH BOXINGとのコラボ興行ですが、王者である下町俊貴(グリーンツダ)は昨年6月のフェニックスバトルで王座を初戴冠し、初防衛戦ではフェニックスバトル常連の石井渡士也(RE:BOOT)と戦いドローながらも防衛を果たしています。
そのままの流れなのか、下町の地元関西での興行にも関わらず、「フェニックスバトル」の名前を入れることでLeminoでの配信を可能にしています。
Leminoのボクシングがどれほど見られているのかはわかりませんが、ホールのフェニックスバトルをはじめとして注目試合がバカスカ入っているので、ボクシングファンからの注目度はかなり高いでしょう。
さらに無料で見れる、その上アーカイブもすぐ残る、控えめに言ってこんなにもコスパの良い媒体は他にはない。
さて、ということでLemino様に感謝をしつつ、今回のブログは下町俊貴vsデカナルド闘凛生をメインに据えた、Lemino配信興行の観戦記。
4/13(土)エディオンアリーナ
OPBF東洋太平洋ライトフライ級タイトルマッチ
ミエル・ファハルド(フィリピン)11勝(10KO)1敗2分
vs
タノンサック・シムシー(タイ)32勝(30KO)1敗
前戦でOPBF東洋太平洋ライトフライ級王座決定戦を戦い、戴冠したミエル・ファハルド。このボクサーと王座決定戦を戦ったのはジョン・ポール・ガブニラス(フィリピン)、昨年末に坂間叶夢と戦ったボクサーなのですね。
挑戦者はタノンサック・シムシー、グリーンツダの契約選手で、これまでも幾度か日本のリングに立ってもいますし、一度は2020年に当時のWBA同級王者、京口紘人への挑戦が決まったボクサーです。
この京口挑戦は試合前日に京口紘人がPCR検査で陽性反応で中止になっています。
その後、日本で防衛戦をやるならタノンサックを挑戦させる、という話でしたが結果叶わず、タノンサックは別角度から王座挑戦を模索。
その道程において、元WBC同級王者の矢吹正道(LUSH緑)に初黒星を喫していますが、前戦ではタフネスを持つ浅海勝太(ハラダ)を2RKOで降しています。
ライトフライ級にあるまじきKO率を誇る両者、KO決着必至の試合です。
ミエル・ファハルドのコール、ベルトを掲げるも思いっきり上下逆!これはたまにありますが、確認してから掲げましょうね。
2000年代生まれ同士、高KO率のライトフライの戦いがスタート!
初回、ファハルドが大きく振っていきます。さすがフィリピン人ハードパンチャーといういでたち。タノンサックはステップワークから細かいジャブ、良いステップワークを持っており、まずはファハルドの強打を警戒か。
タノンサックは距離、上体の動きをよく使い、ファハルドのパンチをよく外しています。
後半に入るとタノンサックも強いワンツー、これはガードの上ですが押されて下がるファハルド。
2R、タノンサックのステップインジャブが良い。突き刺すようなジャブを使ってファハルドの接近を許さず、非常に距離感が良くて上手いですね。
ファハルドは前ラウンドより若干落ち着き、ちょっとパンチが当たる距離まで行けません。
ファハルドがフィリピン人らしく強引に攻めても、タノンサックはステップワークがよく、距離ではずせています。
3R、序盤、タノンサックが右クロスをヒット、その後も中間距離ではタノンサックのジャブが非常に効果的。タノンサックはジャブでファハルドをストップし、ファハルドがジャブで攻め込んでくれば右クロスカウンター。
このクロスがいくつかヒットしていますが、ファハルドはファハルドでタノンサックの右に対して右カウンターを狙っているようです。これは怖い。
息を飲むような展開、これは会場が静まってしまうのもわかりますね。
4R、タノンサックが非常にリズムに乗っているように見えます。良いリズムから右カウンター、ジャブのタイミングも良い。
中盤、ファハルドの右がヒットしますが、これはタノンサックのバックステップの最中だったがためにおそらくダメージはないでしょう。
タノンサックはリングをうまく使い、非常に冷静に戦っているのに対し、ファハルドはやや強引さが目につき、ちょっと焦りも見えるか。
途中採点は、39-37×1、40-36×2でタノンサック・シムシー。
5R、大きなパンチのファハルド、ちょっとこの展開は良くないですね。攻撃にはやらないタノンサックはファハルドが出てくればしっかりとディフェンス、バックステップでしっかりと距離をとります。
それでもプレッシャーで押されまくっているわけでもないタノンサック、攻める時は自分から攻め、互いにヒット数は少ない中でもタノンサックの攻撃の方が効果的に見えます。
6R、タノンサックがワンツーを繰り出すとファハルドのガードの上。ただ、これでファハルドはバックステップを踏まされてしまうので、かなり印象的には悪い。
逆にファハルドが攻めた時にはタノンサックは自らバックステップ、ファハルドの攻撃を無効化しています。
かなり空振りが多いファハルド、これは後半、かなりキツくなっていますね。
7R、このラウンドもタノンサックがうまくファハルドをコントロール。もはやファハルドの攻撃はほとんど当たらず、12Rの折り返しのラウンドながらも全く触れずです。
タノンサックは思いっきりアウトボックスしているわけではありませんし、攻めるべきところは攻めているので、これはお見事。
8R、左手を下げたハファルド。この構えを変えたことについてはあまり効果はないように見えますが、このラウンド中盤以降はファハルドは非常に強引に攻める場面が多い。
その攻撃をよく見ているタノンサック、相変わらずファハルドの攻撃を空振りさせ、随所でジャブ、右クロスをヒットしています。
途中採点は78-74×1、80-72×2でタノンサック。
9R、もう行くしかないファハルド。
タノンサックは自信もあって冷静で、ファハルドが攻めてきたところにカウンターを打って離れます。
1分、タノンサックの右カウンターがヒット、それでもファハルドは怯まず、フルスイング。ただこの状態でタノンサックに当てるのは困難で、タノンサックはファイトプランを継続しています。
10R、ファハルドがグイグイとプレスをかけていき、タノンサックがサイドへと回りつつエスケープ。前半にファハルドのジャブに右カウンターを合わせたタノンサック、長いラウンドを戦うのは初めてにも関わらず、素晴らしい集中力です。
後半、勢いよく飛び込んだファハルドの左フックがヒット!そこから大きなパンチを打っていくファハルド、それにタノンサックも応戦!タノンサックの右も当たりますが、ファハルドはびくともせず、鋭い踏み込みから左フック!これでタノンサックがダウン!!!
ファハルドはここを一気呵成に攻め立てます!タノンサックも応戦!!
これは危険ですが、ファハルドも疲れたかタノンサックが押し返す!!素晴らしいハートの強さ!
11R、強い踏み込みからの強振、ファハルド。タノンサックは大きくサークリング、ファハルドはこのラウンドに来ても衰えない強打を持ち、タノンサックも前ラウンドのダメージを感じさせない動き!
なんと素晴らしいハイレベルな攻防、それに両者のプライド、豊富な練習量が見て取れます。
しかしポジショニングが絶妙なタノンサックはファハルドは攻めきれず。
ラストラウンド、次々とポジショニングを変え、アクションの非常に多いタノンサック・シムシーに対し、ミエル・ファハルドは届きません。この辺りの引き出し、というと序盤のKOが多かっただけに少ないのかもしれません。
対してタノンサックは最後まで見事なボクシングを展開、最後の最後までファハルドは迫力のあるパンチを繰り出すも、当たらず。
ラウンド終了のゴングが鳴ると、ファハルドはグリーンツダ陣営と会場のお客さんに早々に挨拶。好パフォーマンスを見せたタノンサックも深々と観客に頭を下げています。素晴らしいボクサー二人、判定はもちろん3-0でタノンサック・シムシー、世界ランカーに恥じない素晴らしい戦いを見せてくれました。
見事な戴冠劇となったタノンサック。4団体統一を目指す寺地拳四朗挑戦はまだ先になるでしょうから、次は世界と言わずしっかりと日本人の挑戦者を退けてほしい。
日本スーパーバンタム級タイトルマッチ
下町俊貴(グリーンツダ)17勝(11KO)1敗3分
vs
デカナルド闘凛生(六島)7勝(4KO)1敗2分
さて、メインイベント。もうセミファイナル見て満足というレベルですが、今回のメインイベントは下町俊貴vsデカナルド闘凛生の日本タイトルマッチです。
あえて言えば、ここは下町の圧倒的優位、というのは間違いがないでしょう。
長身サウスポー、引き出しもある下町。デカナルドは戦ってきた相手も含めて実績不足は否めません。しかし、日本タイトルマッチという大舞台、無策で挑むわけはないでしょうから、どのような作戦を持って挑むのかは大変に興味深い。
さて、初回のゴング。
まずは下町の鋭いジャブ。中間距離からややプレスをかけるのはデカナルド。下町が強いワンツー。
おそらく初回はまだ様子見でしょうが、デカナルドの動きも良い。
2R、少しずつアクションが増える両者。デカナルドのジャブも当たっています。中盤、デカナルドは右を打ちながら右足を前に出す変則的な踏み込みからの左フック、これは当たりませんでしたが変則的な良いタイミング。
後半、下町がワンツーをヒット。
3R、デカナルドは細かな前後ステップがよく、非常にジャブのキレが良い。中盤、下町が左右のボディ、守ってはブロッキングでデカナルドの攻撃を防いでいます。
これは難しいラウンドが続きますね。
4R、下町がジャブから入り、左のボディストレート。から今度は左を顔面へ返し、ちょっとギアを上げた感じか。
デカナルドは応戦、すると距離を作る下町。デカナルドはちょっとジャブが出なくなっているか、ガードを固めて前進し、インサイドに入ろうとしています。ただ、ちょっと近づけないか。ここでは霜町の左ボディのタイミングがよく、これをデカナルドは警戒しているのかもしれません。
5R、一気に流れを引き寄せたのか、前ラウンドで自信を持ったか、下町がジャブから長い左ストレートでデカナルドを押し返します。
少しリラックスした状態からジャブから右フック、デカナルドの攻めに対しても少ないサイドステップで躱しています。
そして軽めに見えたコンビネーション、からの右アッパーでデカナルドがダウン!!立ち上がったデカナルドですが、ちょっとふらついています!
ここでキメにいく下町、力一杯打ち返すデカナルドですがまたも右アッパーでしょうか、2度目のダウン!!!
ここは決めにいく下町、左ストレートがカウンターで入るとデカナルドの膝がガクッとおち、そこでレフェリーが動いてストップ!!デカナルドも倒れながらパンチを出すという闘志を見せるも、ここで試合は終了!!
下町俊貴、素晴らしいボクシングでした。
序盤、デカナルドの健闘も光った内容で、特にジャブが良かったように見えましたが、それに間も無く対応しましたね。余裕を見せてからは一気にフィニッシュ、特に初回にダウンを奪った右アッパーは力感のない素晴らしいコンビネーションでした。
スローで見ると鬼やばい。
その後の詰めも見事そのもの、そして勝利者インタビューでもその純朴な雰囲気がまた素晴らしい。
デカナルド闘凛生、こちらも素晴らしいボクシングでした。特にその気合い、闘志は素晴らしかった。再起にも期待したい。
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