GW後半のビッグウィークエンド、その始まりは衝撃的でした。
その一番のニュースは、エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)の陥落であり、日本中で「ビッグアップセット」と騒がれているわけですが、これが海外オッズに目をやるとアップセットというほどの差はありませんでした。日本のファンよりも、海外ファンの方が見る目がフラットだったのかもしれません。
↓観戦記
ともあれ、これで日本にバンタム級王座が3つ、という異常事態、5/6に武居がマロニーに勝てば4つのベルトを日本人が独占することになります。これはすごいことですが、世界の強豪を見れないというのは少し物寂しさを感じますね。
さてGW、隆盛を極める日本ボクシング界の狭間で、アメリカ・ラスベガスでもPPVファイト。本当はこちらの方が注目、という興行ながらも、日本ではちょっと箸休め的な興行に成り下がっているのもやや寂しさを覚えます。
などという私も、やはりロドリゲスvs西田を含めて国内の世界タイトル戦の方が興味深いのもまた事実。それでもやはりカネロの興行は興味深く、やはりWOWOWが中継してくれることは非常にありがたいことですね。
ということで今回のブログは、カネロvsムンギアをメインに据えたPBC興行、そのオープニングファイトと2試合目の観戦記。
↓プレビュー記事
5/4(日本時間5/5)アメリカ・ラスベガス
WBA世界ウェルター級タイトルマッチ
エイマンタス・スタニオニス(リトアニア)14勝(9KO)無敗
vs
ガブリエル・マエストレ(ベネズエラ)6勝(5KO)無敗1分
まずはオープニングファイト。リトアニアの壊し屋vsベネズエラのツータイムオリンピアンです。
初回、当然プレスをかけるのはスタニオニス。サークリングしつつコンビネーションとカウンターで迎え撃つマエストレ。まずこの立ち上がりにサプライズはありません。
マエストレはコンビネーションが豊かで非常に手数が多い。スタニオニスは近づいてからガツンと一発、これは力強い。まだファーストラウンド、なので様子見段階だと思うのですが、初回からかなりハイペースにも見えます。
2R、結構もうバチバチの打ち合いのような展開。マエストレは思った以上に下がらず、これは下がると危険ということなのかもしれません。
スタニオニスは一向に乱れることなく強いプレス、マエストレはベネズエランボクサーらしく柔らかさを活かし、良いジャブと良いコンビネーションを駆使して戦っているものの、やはり押されている印象は拭えず。
3R、この傾向はこのラウンドに来るとより明確になっていきます。ショートの右のアングル、上下のコンビネーション、そして明らかに硬質なジャブ。グイグイと迫ってくるスタニオニスに対し、マエストレはちょっとパワーレスに見え、さらにガードのルーズさも相まってちょっと勝ち筋を見出せません。
マエストレの旺盛な手数もスタニオニスの前進を止めうるものではありません。
4R、頭が当たるくらいの距離で戦うも、両者ともに技術があり、クリンチは無し。スタニオニスは大きく右を回す(それでもコンパクト)とそれがヒット、そこからのウィービングのケアも素晴らしい。
マエストレは苦しいか、ちょっとクリンチに逃げる場面も出てきます。
5R、スタニオニスは歩いてマエストレを追い、コンパクトな強打。マエストレはこの強打を時に受けつつも自分のボクシング自体は崩さず。このラウンドはスタニオニスが下がる場面もあり、マエストレが良いラウンド。
6R、マエストレは前ラウンドで良いイメージを持てたと思うので、勝負のラウンドか。序盤から多彩のジャブから攻め入るマエストレ、素晴らしい攻撃を見せます。
しかしここでスタニオニスが倍返しの反撃、ここはスタニオニスもスタミナを使っての猛攻!体ごと押していくスタニオニスですが、少し間があくとすぐさまジャブを出し、オーバーハンド気味の右をヒット、ここも優勢で折り返します。
7R、インサイドでの戦い、これは明らかにスタニオニスの土俵です。マエストレはこのプレスを跳ね返そうというところなのでしょうが、結局はこのプレスを持て余しているということでしょう。
この距離でもマエストレは上手いですが、ちょっとこの距離では勝てません。
8R、ここも同じく打撃戦。マエストレに次善の策はあるのか。ここも立派に打ち合うものの、ちょっと出口が見えないか。
ただ、マエストレもまともにもらうことは少なく、またハートも強く、明らかに倒されそうな感じにはなりません。
9R、それでもマエストレがこのままでは勝てないのもまた事実。非常にアクションの多い試合ではあるものの、同じようなラウンドが続く。マエストレはラウンド終了後手を挙げているので、もしかしてこの戦い方でポイントを取れている、という認識なのでしょうか。
10R、マエストレは手数も多く、パンチも当たってないではないのですが、結局のところもらい方が悪い。スタニオニスのパンチを逃すように上体を倒しますが、もらっているようにも見えてしまいますし、バランスも崩してしまっています。
対してスタニオニスはガードでガッチリと受け止め、ノーダメージではないものの体がブレることはほぼありません。しっかりと前に出ていることもアピールとしては大きい。
11R、ここにきてさらにアクションが多い両者。中盤にスタニオニスが数発の右でマエストレを下がらせ、後半には右アッパーから左フック。会心の当たりとは言えないまでも、しっかりとポイントはピックアップしているでしょう。
ラストラウンド、激しい打ち合いでスタート!ただ、マエストレはこの攻勢を続けることはできず、やはり下がります。ラストラウンドも同じパターンが繰り返されたまま終了、マエストレはもう少し何かあっても良かったような気がします。
判定は117-111、118-110、119-109でエイマンタス・スタニオニス。
試合終了直後のマエストレの行動を見ると、マエストレ陣営はこれでポイントを取れていたという認識だったのでしょうか。これは大きな読み違いで、もし勝っている計算だったならば作戦を変えなかったことも頷けます。サラス何やってんの。。。
WBC世界フェザー級暫定タイトルマッチ
ブランドン・フィゲロア(アメリカ)24勝(18KO)1敗1分
vs
ジェシー・マグダレノ(アメリカ)29勝(18KO)2敗
この試合はなんとマグダレノがウェイトオーバーとのこと。もはやこの挑戦者の計量オーバーもさほど話題にもなりません。
まずは初回、右に左に忙しなくスイッチするフィゲロア、まずは中間距離で様子見です。マグダレノもタイトルを捨ててまで調整を優先しただけあって調子も良さそう。
後半、マグダレノの素早い踏み込みからの右フックがヒット、しかしその後バッティングでしょうか、マグダレノの左瞼付近から出血。
2R、フィゲロアがそろそろプレスをかけ始めるか。ここでマグダレノはフィゲロアが出てきたところにカウンター、抱きつき、自ら攻めてはすぐに離れる、しっかりと対策をしてきた感じが出ています。
基本的には後半巻き返しタイプのフィゲロア、前半ポイントを取られるのは仕方ないにしても、もしカットで早々のストップとなってしまった場合には分が悪い。
3R、相変わらず動きの良いマグダレノ。乱打戦に巻き込みたいフィゲロアですが、ちょっとマグダレノを捕まえきれません。
マグダレノはクリンチのタイミングも良く、フィゲロアの後続打を防いでいます。
4R、いよいよフィゲロアが本領を発揮し出します。レフェリーがマグダレノに対してホールディングの注意、その後フィゲロアがマグダレノをロープに押し込む場面が出てきます。
フィゲロアが良い左ボディをヒット、これで若干動きが止まったように見えたマグダレノですが、その後フィゲロアのローブローによりダウン。
結構な休憩時間の後再開、すぐにゴングです。
5R、フィゲロアのプレスが奏功してきたか、マグダレノはロープからロープへのトラベル。近い距離でのクリンチ、というのがもはやマグダレノにとっての「良いディフェンス」になっている状況、ここは捕まえてほしい。
6R、フィゲロアのプレスでマグダレノがロープに詰まる。ロープ際から強打を狙うマグダレノ、こちらも体が柔らかくて良いですが、ここはフィゲロアの土俵。
フィゲロアペースにハマりつつあるマグダレノ、後半にはボディを効かされています。
7R、ロープ際、くっ付いてのボクシング。マグダレノはやはりフィゲロアのペースに巻き込まれており、ここでも上体の柔らかさを活かしてディフェンスと反撃を試みますが、こうなってしまってはあとはマグダレノのハートがブレイクするのを待つばかりか。
8R、ここも早々にロープ際。レフェリーが分けることもありますが、すぐにフィゲロアが距離を遠慮なく詰め、またもフィゲロアの距離。
押し込んでいくフィゲロア、時折パワーパンチを返すマグダレノですが、フィゲロアのタフネスはそれを完全に凌駕しています。
9R、このままではいけないマグダレノ、押し返してリング中央で戦おうとします。サイドへの動きも良くなり、このラウンドは少々様子が違うか?
ただこれは中盤くらいまでしか持たず、やはりそこから押し込まれていきます。
マグダレノのパワーダウンを悟ったのか、心なしかフィゲロアのパンチに力がこもり始めます。そして最終盤、フィゲロアの左ボディがラウンド終了と同時に突き刺さり、マグダレノは悶絶してダウン!!!
そしてこのままカウントアウト、ブランドン・フィゲロア、9R KO勝利!!
スローで見ると、ガードが空いたところに滑り込ませるような左ボディ。あの狭いスタンスで強力なパンチを打てる、これは才能なのでしょうね。
負けたマグダレノがコーナーに登ってアピールをしているというのは、ちょっと思うところがあるのかもしれません。もしかすると、グローブを吊るす決意とか。
マグダレノは今回非常に状態が良かったとは思いますが、何にせよウェイトオーバーという事実は変わりません。ここのところの試合で勝てないということも含めて、そろそろ潮時なのかもしれませんね。
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