ワシル・ロマチェンコ、王座返り咲き。
今回、ジョージ・カンボソスJrは当然のことながらも気合が十分で、かつてないほどの仕上がりを見せていたと思うのですが、それを圧倒しての復活というのは、それこそ「王の帰還」と呼ぶに相応しい出来事だったと思います。
このロマチェンコ復活は多くのボクシングファンにとって喜ばしいところであり、まだあのボクシングが見続けられるというのは本当に楽しみなことです。
ということでIBF王者が決まり、動きのあった世界ライト級の現在を見てみましょう。
WBO世界ライト級王座
デビン・ヘイニーがスーパーライト級に転級したのち、王者不在の団体は残りこのWBO王座のみです。
このWBO王座は5/18(日本時間5/19)にエマニュエル・ナバレッテ(メキシコ)vsデニス・ベリンチク(ウクライナ)の間で決定戦が行われます。
スーパーフェザー級でも限界に見えるナバレッテは、このライト級でどのような戦いを見せるのか。ベリンチクは過去に荒川仁人とも対戦経験のあるボクサーで、K2プロモーションの所属、2015年にプロデビューからそのほとんどをウクライナで戦っているボクサーです。ちなみにロマチェンコ、ウシクと同い年。
だからなのか、非常にチャンスが巡ってくるのは遅かったという印象。
ここ2戦でイヴァン・メンディ(フランス)、アンソニー・イギット(スウェーデン)らを国外に出て退けています(ただしこれはおそらく戦争の影響)が、今戦がU.Sデビュー。
なのでデニス・ベリンチクなるボクサーに対してはおそらく知らない人が多いので、オッズはナバレッテの優位が予想されますね。
WBA世界ライト級王者
もうずいぶん長くこのタイトルを保持している王者は、ジャーボンタ・デービス。いつからだったか、と思い調べてみれば2019年12月からであり、もう在位としては5年近くになります。
途中で妙な試合(スーパーフェザー級とライト級のタイトルが同時にかけられる)とかを挟みつつ、スーパーライト級にも浮気をし(こっちは獲得→返上のためルール的に問題ない)、防衛戦をせずにキャッチウェイトでの対戦をすることで大きく防衛戦の期間は空くも特にサスペンドは無し、という状況のため、実質この王座の防衛回数というのは4回です。
それでもやはり毎回のように鮮烈なノックアウトパフォーマンスを見せてくれるこの小さなパンチャーの試合は楽しみだし、PPVが売れるのも十分にわかること。
これまではWBAの第二王座という微妙な地位に甘え、独自路線を貫いてきたタンク・デービス。ヘイニー返上によりWBAライト級の唯一の王者となったことで、今後は王座統一戦等にも出てくるのでしょうか。
まずは6月、強打者フランク・マーティン(アメリカ)との一戦を控えており、これは気の抜けないパンチャー対決となりそうですね。
WBC世界ライト級王者
WBO世界フェザー級王者となったのは2019年、ただこの王座は獲得後、防衛戦を行わずに返上。
その後体を作ってスーパーフェザー級に進出、ここではジャメル・ヘリング(アメリカ)を倒し、オスカル・バルデス(メキシコ)をシャットアウトして統一王者に輝く、という実績を残します。
しかしその後、ロブソン・コンセイサン(ブラジル)を迎えての防衛戦ではウェイトオーバー、試合には勝利するも王座は剥奪。
ライト級に上がっては吉野修一郎(三迫)との挑戦者決定戦を制し、エドウィン・デ・ロス・サントス(ドミニカ共和国)との退屈な王座決定戦を経て3階級制覇。
「強い相手(というよりも有名な相手か?)と戦いたい」との気持ちは非常に強く、デビン・ヘイニーに対戦要求は相手にされず、エマニュエル・ナバレッテのライト級チャレンジの際にも俺と戦えとアピールするも無視され、いじけて引退宣言までする始末。(これは多分うやむやになっています。)
ともあれ、決まった試合はアルテム・ハルチュニャン(ドイツ)、ハルチュニャンにはシャクールは荷が重いでしょう。
シャクールは相手がパワーがあると見るや完全にディフェンシブに試合を支配しますし、相手にパワーがないとわかると自ら攻める。つまらない試合になる可能性が高いため、誰もやりたがらないのが現状です。
IBF世界ライト級王者
ですが、シャクールの対戦相手選びに非常に困っているトップランクからすれば、この「強者を求める」ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が王座に返り咲いたことは大きなことでしょう。
これで7月にシャクールがハルチュニャンを退けたところで、ロマチェンコ戦が具体化するという計算になります。
ロマチェンコはもう回り道をして良い年齢ではないので、このシャクール戦を打診すれば受けるのでしょう。
ただ、シャクールとしては報酬云々として受けないという可能性は否めません。
シャクールが求めるビッグマッチ(金を稼げる試合)と、ロマチェンコが求めるビッグマッチ(最強を求める試合)というのはまた別に思えるからです。
ともあれ、ロマチェンコの帰還はこのライト級を非常に面白いものに変えます。
ロマチェンコが本気で4団体統一を求めるならば、きっと試合は組みやすいはず。
そして他にも多くの注目コンテンダーがいるこのライト級、今後もより注目が増しそうです。
↑そういえば今回、グローブやトランクスはロマチェンコカラー(ウクライナ国旗カラー)ではなかったですね。
コンテンダー!
世界タイトルを未だ獲得していないボクサーでも、世が世ならすでに王者になっていてもおかしくないというボクサーたちは多い。
果たしてこの面々がいる中で、日本のライト級が世界まで届く位置に来れるのか、というのは甚だ疑問ではありますが、どうか日本のライト級もこの一角を担えるように台頭してきて欲しいものです。
ウィリアム・セペダ(メキシコ)30勝(26KO)無敗
フランク・マーティン(アメリカ)17勝(12KO)無敗
レイモンド・ムラタヤ(アメリカ)20勝(16KO)無敗
キーショーン・デービス(アメリカ)10勝(7KO)無敗
マーク・チェンバレン(イギリス)15勝(11KO)無敗
エドウィン・デ・ロス・サントス(ドミニカ共和国)16勝(14KO)2敗
アルベルト・バティルガシエフ(ロシア)10勝(7KO)無敗
サム・ノークス(イギリス)14勝(13KO)無敗
ジョバンニ・カブレラ(アメリカ)22勝(7KO)1敗
ざっとあげたこれらのボクサーが、まだ20代であり、これからプライムタイムを迎えるであろう好戦績のコンテンダーたち。
個人的に注目は、ボリュームパンチャーのセペダ、ハイスキルのパンチャーであるムラタヤ、そしてシャクールもビビり散らかしたサントス。サントスはまだ24歳なので、まだまだ伸びる可能性も大きいですね。
ネクストシャクールみたいになりそうで怖いのがキーショーン、英国のライバルパンチャー、マーク・チェンバレンとサム・ノークスにも注目。チェンバレンは長身の部類のサウスポー、ストレートを主体としたパンチャーで、ノークスは思い切ったクラウチングスタイルから左右のフックを力強く繰り出すオーソドックススタンスのフッカー。この対比は非常に興味深く、この二人が世界戦を前にあい見えるのか、それともタイトルを持って統一戦で戦うのか、というのは、おそらく英国ボクシングファンにとって大きな関心ごとではないでしょうか。
ロシアのバティルガシエフはまだまだ未知数、同じくロシアのザウル・アブドゥラエフも絶好調ですね。(30歳なのでこのリストからは除いています)
ちなみにジョバンニ・カブレラはイサック・クルスに善戦したボクサーですね。
ということでプロスペクトたちも大いに育つ世界のライト級。
今後どのような戦いが繰り広げられるのか、非常に楽しみです。
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