スーパーライト級は、今最も楽しみな階級の一つです。いや、最も楽しみな階級と言い切って良いかもしれません。
今週末、二つのタイトルファイトを行うこの階級は、強豪、それも非常に個性的な王者たちがひしめき合い、さらに無敗のコンテンダーたちに囲まれる大激戦区。
王者たちの実力は拮抗していると思われるし、それぞれがそれぞれのスタイルを貫く中でのジャンケン的な相性がその勝敗をわけそうな予感すらあります。
ということで今回のブログは、そんなスーパーライト級についてです。
6/15(日本時間6/16)その1
この日、アメリカのラスベガスでは北米Amazon Primeが放送するPBCファイトでWBC世界スーパーライト級暫定王座決定戦が行われます。
この戦いはゲイリー・アントワン・ラッセルvsアルベルト・プエジョという大変興味深い二人の間で争われるタイトルマッチ。
ビクトル・ポストル、ランセス・バルテレミーらの王者を破って駆け上がってきたアントワン、兄のゲイリー・ラッセルJrをセコンドに迎え、父であるラッセルSr(2022年に他界)に勝利を捧げんとしています。
この戦いは「暫定王座決定戦」と銘打たれているものの、本当のところは「挑戦者決定戦」であることは言うまでもありません。
WBCの正規王者は特に不活動な訳ではく、階級最強の1番手であるデビン・ヘイニー、この最強王者への挑戦チケット。ヘイニーvsアントワンが、もっというとアントワンがヘイニーを破壊してしまうところを見たい。
6/15(日本時間6/16)その2
そして同日、プエルト・リコの地で凱旋防衛に臨むのは絶対強者、サブリエル・マティアス。不可解なブロッキングのみのディフェンス、からの意味不明な強打を持ってIBF王座を獲得したサブリエル・マティアスは、戦い方こそ違えどスーパーライト級(で、かつ、プライムタイムの)デオンテイ・ワイルダーです。
しかも相手はリアム・パロ、基本に忠実なオージーは、技術、パワー、スピード、コンビネーションが高い次元で揃っているボクサーファイターです。そのキャリアのほとんどをオーストラリアで戦っていますが、数千前からアメリカで戦い、モンタナ・ラブを6Rで撃破する等の活躍を見せてのプエルトリコ討ち入り、オーストラリア人らしいロードウォリアーぶりは非常に気持ちが良いものです。
マッチルーム初となるプエルトリコ興行として、まさにうってつけのマッチアップと言えるでしょう。(それに引き換えマッチルーム初となる日本興行とは。。。ゴニョゴニョ)
WBO王者、テオフィモ・ロペス
他の王者たちも見ていきましょう。「Take Over」という素晴らしい(格好いい)ニックネームを持つセンスの塊は、今月29日(日本時間6/30)にスティーブ・クラゲットとの防衛戦が決まっています。
まあ、試合発表があった時も「誰?」というようなボクサーだったわけですが、その戦績は38勝(26KO)7敗2分というもので、もう50戦近くも経験している35歳のカナダ人ボクサー。
まだ映像を見ていないので何とも言えませんが、そのキャリアをぱっと見すると名のあるボクサーとの対戦経験はほぼなく、だからこそこのWBO王座挑戦というのは彼にとって人生に一度あるかないかのウルトラ大チャンスです。その分、気合も入るでしょう。
さて問題は、テオフィモ・ロペスがものすごく安定性に欠ける、というところです。
とにかく格下と定めたボクサーへの慢心がひどく、タイトルファイトとなれば相手も強豪となるのでまだ見ていられますが、この無名のボクサー相手にロペスがどれくらい集中力をキープできるのか。
流石に負けはしないと思いますが、素晴らしいパフォーマンスはあまり期待できないような気がするし、もしここでロペスが良いパフォーマンスを見せたならば、王者としての自覚、その風格、そしてこの後に控えるであろうビッグマッチに向けて一皮剥けたと思っても良いかもしれません。
ホンジュラスをルーツにもつロペスはラテンのノリが酷すぎて、今現在のことしか見ていないように思います。こういう意味ではカシメロあたりと似たようなものを感じており、良いパフォーマンスを見せれば次のビッグマッチに繋がる、というのを理解していなさそう。
ともあれ、ロペスは心配ながらも負けることはないでしょうから、ここをクリアしての統一戦、つまりはロペスが強敵と認める相手との戦いを期待しましょう。
WBA王者、イサック・クルス
この階級で最もエキサイティングで、アクションの多い王者といえばイサック・クルス。163cmと井上尚弥よりも低い身長で、ライト級からスーパーライト級にあげての初戦でタイトル獲得というのは流石にビビるレベルではあるものの、前戦でロランド・ロメロを痛烈にノックアウト、見事世界タイトル初戴冠を果たしています。
前戦の前日軽量でも138.75lbs、おそらく本人としてはライト級でもいけるでしょう。
ただ、ここまで小柄&全弾フルスイングというファイトスタイルを持ってすれば、この低身長すらも武器になりえます。
次戦は8/3(日本時間8/4)、ホセ・バレンズエラとの初防衛戦が決まっています。
バレンズエラはクルスよりも15cmも高い(が、高身長というわけではない)ですが、前戦までライト級で戦っていたボクサー。13勝(9KO)2敗という戦績ではありますが、そのうち1敗はクリス・コルバート戦での敗戦、これは判定が物議を醸してのダイレクトリマッチが行われ、このリマッチでコルバートを6RKOで降してリベンジを果たしています。
もう一つの敗戦はエドウィン・デ・ロス・サントス戦で、これはもはや事故レベルの3RKO負け、アグレッシブなバレンズエラだからこそ、倒されても仕方のないものであり、かつ倒し倒されの試合であり、当たったもん勝ちの戦いでもありました。タラレバを言えば、みたいなところもあります。
このバレンズエラは強敵、クルスはここで王者の証明をしなければなりません。
とはいえ、タフネスを兼ね備えるクルスがインサイドに入り、得意な距離でバレンズエラを押し切るという場面は容易に想像することができます。イサック・クルスの快勝に期待しましょう。
WBC王者、デビン・ヘイニー
おそらく多くのボクシングファンはヘイニーのことは好きではない、とは思います。
ボクシングスキル、というよりもボクシングの戦い方に秀でた王者は、だからこそ崩しにくく、崩されないから強く攻める必要がなく、そうなって試合が面白くない、という循環になっています。
しかし前戦でのライアン・ガルシア戦は同情に値するものであり、ドーピング&体重超過という最恐コンボを決めたガルシアとなんとかフルラウンド戦い、3度のダウンを奪われての判定負け。
これで負けにされるのも可哀想すすぎますが、どうやらこの試合はノーコンテストになる確率が高いらしい。だからと言って許されるものではありませんが。
さて、ヘイニーの次戦は指名挑戦者であるサンドール・マーティン戦。
マーティンも非常に良いボクサーではありますが、ヘイニーと絡んで試合が面白くなるわけがない、というボクサーです。
おそらく大いに退屈な12Rを経験することになるとは思うのですが、果たしてこのマーティンが初タイトルにかける意気込みを見せ、ヘイニーに強引に攻めていけばもしかしたら面白くなるかもしれません。
ヘイニーに対して心配なのは、やはりガルシア戦でのダメージではないでしょうか。
一度のKO負けでボクサーのパフォーマンスががくんと落ちてしまうことはよくあるし、KO負けの次の試合というのは慎重にならざるをえないところ。そこに来てマーティン戦、指名戦というのはいかなヘイニーでもきついかもしれません。
もしかすると元々打たれ弱いヘイニーは、さらに打たれ弱くなっている可能性がありますし、フラフラの状態のまま続けざるをえなかったあのライアン・ガルシア戦というのはある意味KO負けよりタチが悪く、回復しないダメージを被っている可能性すらあります。
普段はあまり応援したいボクサーではありませんが、ここはヘイニーに勝利してもらい、是非アントワン戦が見たい。
期待のプロスペクトは?
リチャードソン・ヒッチンズ、アーノルド・バルボサJr、そしてダルトン・スミス。この辺りのボクサーは今年か来年、早々にタイトルに絡んでくる可能性のあるボクサーたちです。
ヒッチンズやバルボサというのはアフロ・アメリカンそのもののスピードとタイミングのボクシング、非常によくまとまっており、見た感じやはり非常に強いボクサーたち。
個人的な注目はダルトン・スミスで、前戦でホセ・セペダを痛烈にノックアウトした姿は今も忘れられません。
アダム・アジム、エルネスト・メルカド、タイガー・ジョンソン、これらのボクサーもあと2-3年もすればタイトル射程圏内に入ってくるのかもしれません。
プロスペクトだらけ、無敗だらけ、その中でもこの階級で一線を張ってきたボクサーたちもまだまだ力を残しており、ホセ・カルロス・ラミレス、レジス・プログレイス、ジョシュ・テイラーに代わってジャック・カテロール。このボクサーたちを越えなければ、プロスペクトたちにはまだチャンスがないのかもしれません。
こう考えると、タイトルファイトだけでなく、その前段階でのステップアップファイトも非常に楽しみなスーパーライト級。今後誰が誰とどこで当たろうとも、非常に楽しみな階級ですね。
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