先週末、12/26(土)はA-SIGN興行が行われ、多くのボクシングファンが昼間からPCやタブレット、そしてTVの前に釘付けだったことかと思います。
私は仕事だったので、情報遮断に徹し、仕事を終えて家に帰ってからゆっくりと見ました。
素晴らしい興行でしたね。
そして、その日の夕方に行われた刈谷での興行。こちらはBoxing Raisesさんで後日配信とのことだったので、おそらく翌日朝にはアップしてくれるだろうとの目算から、そのまま情報遮断。無事に12/27(日)に見れました。
という事で本日のブログでは、12/26に行われた矢吹vs大内の日本ライトフライ級タイトルマッチの他、海外で行われた元WBA世界スーパーミドル級暫定王者、デビッド・モレルの試合の観戦記を書いていきたいと思います。
12/26(土)GREEN Dream
スーパーバンタム級6回戦
テルのび太(緑)9戦5勝(2KO)3敗1分
vs
ヤノ・ジョン(駿河男児)11戦5勝(2KO)6敗
ともに5勝同士であり、勝ったほうがA級に上がるという一戦。日本王者、矢吹とのスパーリングで腕を磨いたテルか、駿河男児ジム選手の今年全勝がその双肩にかかるヤノか。
初回は中間距離でのパンチの後半を経て、テルが距離を詰めて接近戦へ。近い距離ではテルのフックやアッパーの方が手数、技術ともに上ですね。
ヤノは幾度となくロープにつまり、あまり見栄えが良くありません。
2R、このラウンドはヤノが中間距離をキープ、中間距離では手数も出ます。テルは少々入りづらそうですが、接近戦では身体の強さを活かしてヤノを攻め立てます。
3R、ヤノはステップしてジャブを突きます。非常にこのジャブは良いですね。
テルはヤノの手が止まればすぐさまフックなりアッパーなりで踏み込んでくるので、ヤノとしてはジャブは止めたくない。テルは逆に接近戦に持ち込めれば明白に打ち勝てるので、そこへ持っていきたい。
中間距離ではヤノ、近距離ではテルという構図ですが、やや接近戦での攻防が目立ち、会場の雰囲気も相まってテルの方が見栄えで勝ります。
4R、序盤にはボディへのジャブを打つと、若干身体が流れたようにみえたヤノですが、このラウンド中盤には接近戦でも手数が出ます。
5R、右の相打ちで効かせたテル、そのままラッシュに入ります。ヤノをロープに釘付けにして連打、ヤノはスタミナなのかダメージなのか、ちょと苦しそうです。
その後もやや強引に攻めるテルに対し、ヤノも応戦。
6R、ラストラウンドは接近戦でのスタート。ヤノは打ち返し、距離を取ろうとしますがテルは鋭い踏み込みですぐに距離を潰します。フック、アッパーでダメージを与えたテルは、終盤、ヤノに右ストレートを突き刺してダウンを奪います。
立ち上がったヤノでしたが、レフェリーはここで試合をストップ。
テルのび太の6RTKO勝利。KOタイムは6R3:01、ギリギリでしたね。
ヤノ・ジョンもよくがんばりましたが、テルのび太のプレスは強かったですね。ともに手数が多く、好ファイトでした!これでテルのび太はA級昇格、ボクシングモバイルの目標には「まずは日本ランカー!」と書いてあります。一番最初の目標までは、後もう少し。来年も楽しみなボクサーですね。
メインイベント 日本ライトフライ級タイトルマッチ
矢吹正道(緑)14戦11勝(11KO)3敗
vs
大内淳雅(姫路木下)34戦22勝(8KO)9敗3分
どこか昭和の香りを感じさせる出で立ちの王者、矢吹。勝ち星のすべてがノックアウトという、カウンターを得意とするハードパンチャーですが、一発効かせた後の詰めは猛獣を思い起こさせるほどのものです。詰めの鋭いライトフライといえば、左右の違いはあれど、具志堅用高を思い起こさせますね。
矢吹がベテラン・大内をどのように料理するのかに注目の一戦。
初回、大内は軽やかなステップで矢吹の周りをサークリング。矢吹はどっしりと構え、タイミングを伺います。矢吹は遠い距離からよく伸びるジャブ、大内はボディへのジャブで距離を図ります。矢吹の間合いが遠すぎて、入るのに難儀している雰囲気の大内。
距離の遠い相手に対して、ボディへのジャブは非常に有効で、顔面へのジャブよりも届きやすいという利点があります。まずは大内の戦法は間違っていないように思います。
2R、矢吹はしっかりと肩を入れて、まっすぐに伸びるジャブを使うので非常に遠くまで伸びますね。素晴らしいジャブ。そして自然なリズムからモーションなく飛んでくるので、相手としてはたまらない。大内は完全に攻めあぐねています。
ただ、体勢を低くして強引に間合いを詰めた大内に、矢吹の右オーバーハンドが襲う場面もあり、やはり矢吹に対して間合いを詰めるのも怖い状態です。
3R、意を決して大内は1、2Rよりも間合いを詰めてスタート。被弾覚悟でいかなければ勝ちは拾えません。しかしその後は矢吹のジャブに近寄れません。矢吹のジャブが大内のガードを割って入ったように見えることもあり、クリーンヒットは少ないながらも見栄えは圧倒的に矢吹。
4R、矢吹のジャブが冴え渡ります。入り際、離れ際、そしてそのジャブを警戒する大内をあざ笑うかのような左フックや右ストレート。完全にペースは矢吹、大内は流れを変えなければいけません。
5R、これまでの試合でも随所で見せてはいましたが、矢吹は距離感が抜群に良いですね。打ってきてはその分引き、自身が攻める時もバランスを崩しません。相手のカウンターにあわせてはスリッピングアウェー、集中力の高さ、反射神経の良さも伺えます。
6R、矢吹はプレスをかけ、フェイントを織り交ぜ、大内に打たせてからカウンターをとりたいのだと思いますが、大内は警戒心が強くなかなか打って出て来ません。矢吹は自分から攻めた時はすぐに相手のパンチを警戒し、ステップを踏みます。こちらも警戒心が強く、両者手数は少なめ、クリーンヒットはもっと少ないという状態のラウンドが続きます。
7Rも同様な展開ですが、その中でもやはり矢吹のよく伸びるジャブは有効で、ほとんど手を出せない大内に対して、ジャブだけでポイントをピックアップしていけるでしょう。
8R、大内がややプレスを強めたか、被弾覚悟で矢吹に追いすがります。しかし大内のアタックをステップでかわした矢吹、自身のワンツーは大内に届きます。そしてすぐさまのバックステップで、矢吹の打ち終わりにパンチを振るう大内は空振り。
9R、先程よりもしっかりと迎い打つ雰囲気の矢吹。大内は入ろうとした瞬間に矢吹のパンチを被弾、なかなか攻められません。タイミングも完全に盗まれています。
ラストラウンド、後がない大内はガードを固めて強引なチャージを見せます。しかし矢吹はそこをよく見て、冷静にかわし、パンチを当てていきます。
大内は空振りも多いですが、これ位、最初から手数を出して圧をかけられていれば良かったですね。矢吹はノーガードでステップを踏み、終了のゴングを聞きました。
矢吹正道、ほぼフルマークの3-0判定勝利。
日本王座の初防衛に成功した矢吹は、はじめての「判定勝利」を得ました。10R闘い抜いた事は収穫とも呼べるのだとは思います。自分のペースで、無理なく過ごした10Rは、まさに横綱相撲と呼べるものでした。
当日の別会場で行われた、伊藤雅雪vs三代大訓でも、三代のジャブが素晴らしかったですが、この矢吹のジャブも本当に素晴らしかったと思います。
矢吹が大内相手にいわゆる「塩漬け」状態にできたのは、矢吹のハードパンチに警戒する状態の大内と、矢吹の距離感を掌握する術がおり混ざった状態だったからだと思います。三代に対して伊藤は懐まで攻めることができていましたが、矢吹に対して大内は近寄る事ができず、その分クリンチもほとんどありませんでした。完全に矢吹の完勝。
ただ、地力の異なる相手だと思われた大内、いちファンとしてはできれば倒して勝利してほしかったですね。
さて、激動のライトフライ級。
矢吹はWBCランキングで上位につけており、トランクスにもWBCのロゴをあしらう等WBC王者、寺地拳四朗(BMB)を明らかに意識しております。
ともに距離感に優れ、ジャブを得意とするパンチャー同士の対戦は、きっと距離も噛み合うでしょうし、世界戦の挑戦者となればより攻撃的な矢吹が見られることかと思います。スリリングな中間距離のボクシングが見れそうです。
この非常に楽しみな一戦には、まだまだ障害が多い。
寺地拳四朗は、自身の不祥事により、挑戦者に内定していた久田哲也(ハラダ)を待たせている状態とも言えます。寺地のサスペンドが明け、心身ともに整った所で久田とやるのであれば、矢吹は早くてその次、来年中に実現できるかどうか、という所でしょうか。
WBC王座にこだわりを見せるのであれば、次戦に世界戦、というのはちょっと厳しそう。。。
非常におもしろいボクサーなので、次戦が誰になろうとも楽しみですね!
↓拳四朗が不祥事を起こす前の記事です。
12/26(日本時間12/27)アメリカ
ノンタイトル10回戦
デビッド・モレル(キューバ)3戦全勝(2KO)
vs
マイク・ガブロンスキ(アメリカ)30戦26勝(16KO)3敗1分
本来であれば、WBA世界スーパーミドル級タイトルマッチとして挙行される予定だったこの一戦は、元暫定王者、モレルの体重超過によりノンタイトル戦に。
勿論モレルの王座は剥奪なのですが、「ガブロンスキが勝利した場合は、王者に」という注釈がつかないのはなぜなんでしょうか?なんだかよくわかりません。
ともあれ、たった3戦で重量級の世界王者に辿りついたモレル、体重超過とは非常に残念な話です。彼にとって、世界タイトルというのは軽いものなのでしょうか。キューバというプロ基盤のない社会主義国からアメリカに出てきて折角つかんだビッグマッチへの切符となりうる王座のように思いますが。
初回、ガードを固めて低く入ろうとするガブロンスキ。荒っぽく攻めるガブロンスキに対し、モレルは的確に左ストレート、右フック、右アッパーをヒットしていきます。
接近戦でもコンビネーションというよりは、力強いパンチを立て続けに、切れ目なく続けていくモレル。残り時間が少なくなった所で左ストレートから右フック、そして最後に左ストレートを突き刺してダウンを奪います。
2R、頭を下げて向かってくるガブロンスキですが、モレルは中間距離でストレートやアッパーで釘付けにします。完全に余裕のモレル、力の差は歴然です。
モレルのパンチはガードの間隙を縫って入ってくる非常に的確なパンチ。それでいて、左ストレートはガブロンスキがしっかり固めたガードの上を打っても、ガブロンスキをふっとばす程の威力があります。
3R、下がりながらのカウンターを狙っている節のあるモレル。1分過ぎ、ガブロンスキの打ち終わりにチャージ。右アッパーで顎を跳ね上げます。
ガブロンスキは最初の元気はどこへやら、すっかり手数が減ってしまい、ガードを固めて時折ワンツーを放つ事しかできません。そしてガードを固めていても、モレルのパンチはそのガードの隙間から入ってきてしまいます。特に右アッパーは秀逸。
最後はその右アッパーで顎を跳ね上げられたガブロンスキを見て、レフェリーがストップ。
デビッド・モレルの3RTKO勝利。
ウェイトをしっかり作れていればミスマッチだったとしても評価に値した一戦ではあったと思います。ガブロンスキも一応世界ランクを持っているからです。モレルはまだまだキャリア構築の時期であり、実力的には格下相手にキャリアを積む事を否定する事はありません。
しかし、今回は2ポンドオーバー、それも王者であるにも関わらず、です。
非常に残念ではありますが、ガブロンスキは王座戦でもないのに受ける意味はあったのでしょうか。興行に穴を開けられないがために、断ることもできなかったのでしょうか。
色々と思う事はありますが、最近多いウェイトの問題、いかなる理由があろうともウェイトオーバーは試合をさせない、もしくはライセンス停止期間を設けるというよりも罰金やその他の罰則といったペナルティを強化したほうがいいと思います。
体重を落とさなかった者勝ち、という風潮はウェイト制を敷いている以上、避けてもらいたいものです。
体重超過、薬物違反、このスポーツの根幹に関わる事項については、罰則強化を切に願います。