週末の海外ボクシング。
誰が、どのようなドラマを引っさげて、誰と戦うか、というのがボクシングの醍醐味の一つと言っても良いでしょう。
しかし、今週末のボクシングにはそれは薄いと言わざるを得ません。
週末もたくさんのタイトルマッチはありますが、失礼ながら、試合自体に興味を唆られるものはほぼありません。
強いて言えば、カレブ・プラントが圧勝してくれる(であろう)一戦を見て、カネロ戦に思いを馳せる事くらいでしょうか。
そんな中でも一応、週末の試合をピックアップしてプレビュー記事を書いてみました。
ああ、こんな試合もあるんだなと、自分の頭の中を整理してみた感じです。
※【1/28追記】チャーvsブライアン、シュメノフvsマーフィーは両試合とも中止となったようです。
1/29(日本時間1/30)アメリカ
WBA世界ヘビー級タイトルマッチ
マヌエル・チャー(ドイツ)35戦31勝(17KO)4敗
vs
トレバー・ブライアン(アメリカ)20戦全勝(14KO)無敗
マヌエル・チャー。なんという懐かしい響き。
チャーは2005年にデビュー、2017年11月に王座決定戦でWBA世界ヘビー級タイトルを獲得したボクサー。既に3年を超える在位期間。しかし、防衛戦は一度も行っていません。
普通は剥奪されるものだと思いますが、そこは天下のWBAさん。杜撰です。
いつの間にやらもう36歳、この年齢でこの3年以上のブランクは大丈夫なんでしょうか。
対戦相手のブライアンも、2018年8月の試合を最後にリングに上がっていないボクサー。ここ3試合(といっていいのかどうかわかりませんが)はTKO勝利を収めています。
しかし、対戦相手は非常にお粗末であり、2017年に挙げた2勝の内訳は、2勝24敗のボクサーや、2勝20敗のボクサーにそれぞれ3RTKO勝利を収めているようです。(2018年の1勝はクルーザー級で世界挑戦経験のあるBJフローレス。)
という事で、胡散臭さ満載のこのヘビー級タイトルマッチ。そのプロモーターは、あのドン・キング。素晴らしいコンボ。
セミファイナルもすごいです。
WBA世界クルーザー級タイトルマッチ
ベイブト・シュメノフ(カザフスタン)20戦18勝(12KO)2敗
vs
ラファエル・マーフィー(アメリカ)15戦14勝(11KO)1敗
シュメノフも2018年8月以来の試合。この試合がWBAクルーザー級王座決定戦だったので、今回が初防衛戦。その前の試合も2016年5月であり、その後眼疾で引退もしています。
そして相手のマーフィーは、好戦績ですがもう35歳とプロスペクトとは呼べません。
こちらは2019年8月が最新試合、コロナがあったからこそ今は許容範囲でしょう。
興行的な理由、そして今はコロナという理由があるので、ある程度のブランクは仕方がなく、柔軟に対応してしかるべきとは思いますが、この2戦は結構ひどい。
という事で、全くアクティブではない王者たちの競演。チャーやシュメノフにあまり興味は湧かないので、王座交代劇があったらYoutubeで検索してみたいと思います。
そもそも本当にやるのか?
と思っていたら日本時間1/28になってキャンセルとの報が。。。やっぱり。(1/28追記)
そして、どちらかというとこっちの方が興味がある試合。
1/29(日本時間1/30)メキシコ
スティーブン・バトラー(カナダ)vsホセ・デ・ヘスス・マシアス(メキシコ)
2019年12月、日本で良いところなく村田に倒されてしまったバトラー。そこから本来であれば2020年3月に再起予定が、コロナショックにより中止に。
相手を変更し、いくつかの地域タイトルがかけられる一戦に出場します。今回の相手は、27勝10敗3分と強豪とは呼びにくいボクサーですが、バトラーが今後勝利を積み重ね、強豪に勝利していけば村田の株も上がるのでがんばってもらいたい。
この試合がメインで、セミファイナルはプロスペクトが登場。
サドリディン・アクメドフ(カザフスタン)vsステファン・ダニョ(オランダ)
11戦全勝(10KO)というハードパンチャー、アクメドフ。若干22歳(1/31に23歳)、注目のホープです。現在カナダを主戦場としているアクメドフは、ユース世界選手権の他、国際大会でも優勝経験のある元トップアマです。
対戦相手の質はまだまだではありますが、衝撃的なKOを連発するこのボクサーは大注目のスーパーウェルター。
ディフェンシブでフットワークの良いダニョをどのように捕まえるのか、見ものです。
1/30(日本時間1/31)アメリカ
IBF世界スーパーミドル級タイトルマッチ
カレブ・プラント(アメリカ)20戦全勝(12KO)無敗
vs
カレブ・トゥルアックス(アメリカ)37戦31勝(19KO)4敗2分
アマチュアキャリアを経て、2014年にプロデビューしたプラントは、2018年にホセ・ウステカギ(ベネズエラ)からダウンを奪っての判定勝利を納め、IBF世界スーパーミドル級王座を獲得しました。
その前戦では世界挑戦経験のあるロゲリオ・メディナ(メキシコ)との世界ランカー対決を制しており、ウステカギ戦、防衛戦ではライトヘビー級の世界ランカー、マイク・リー(アメリカ)を3Rで降したことで評価が確定しました。
前戦はドイツのヴィンセント・フェイゲンブッツをこれまた一方的な試合展開で10RTKO。
後ろ足荷重で、ややディフェンシブな構えですが、スピーディなジャブを飛ばし、ジャブが当たる距離になれば素早いコンビネーションで攻め立てます。
後傾ながら、前足のポジショニングは絶妙に取り、いつでも攻められる準備をしているように見えますね。
カラム・スミスがカネロに惨敗してしまったので、カネロ打倒の最右翼と言って良いボクサー。
対してカレブ・トゥルアックスは2007年にプロデビュー。世界初挑戦は2015年、ダニエル・ジェイコブス(アメリカ)戦でした。ここは12RTKOで敗北しますが、2017年にIBF王者、ジェームズ・デゲール(イギリス)に挑戦し、判定勝利を得て見事初戴冠。
下馬評では不利の中、番狂わせでの勝利でした。
しかし、デゲールとの再戦(初防衛戦)で敗れ、タイトルを手放してしまいます。
そこから2勝1NCで迎える今回のプラント戦。
ボクシングスキル、スピード、そしておそらくパワーですらも、おそらくプラントが上回っているでしょう。トゥルアックスが勝利を手にするには、くっついての泥試合に持っていくしかなさそうな今回の一戦。
ただ、それをさせてくれないのがアマ経験豊富なプラントというボクサー。
トゥルアックスがまさかの勝利を手に入れてしまうと、もうカネロを止められるボクサーはいなくなってしまいます。
今回は、カレブ・プラントに打倒カネロの夢を託すためにも、一切の隙を見せず、圧勝してもらいたいところです。
↓カネロvsカラム・スミスの観戦記。
スミスは、前評判は高かったものの、ジョン・ライダー戦でもそうだったように簡単にインをとられ、まさかの惨敗。
途中、カネロのフックで腕を壊され、ジャブが打てなくなってしまったことも敗因ですが、役者が違った感がありました。とにかくカネロは強い。
認めざるを得ないカネロの強さですが、どうしてもメキシカンビーフの黒い影がつきまとい、クリーンなイメージがありません。
打倒、カネロ。
この夢をプラントに勝手に乗せ、今後のスーパーミドル級を楽しんでいきたいと思います。