日本時間11/14(日)に行われたボクシング興行は、「ビッグマッチ」といかないまでも非常に興味深い興行でした。
なかでも、日本でもおなじみキコ・マルティネス(スペイン)が下馬評圧倒的不利の中、キッド・ガラハッド(イギリス)をノックアウトで破り、2階級制覇した一戦は非常に話題でしたね。
先日マイキー・ガルシア(アメリカ)を相手にアップセットをやってのけた、サンドール・マーティン(スペイン)とともにスペインのボクシング界は大躍進、これを機にスペインの人たちにもボクシングが大いに広まれば嬉しいですね。
↓観戦記
さて、お待たせました。いや、お待たせしすぎてしまったかもしれませんし、別に待っていないかもしれません。
今更感はありますが(数日前に既に書いて準備してあったので)、今回のブログでは同日に行われたアメリカ・アリゾナ州のPBC興行、カネロの相手として大注目のデビッド・べナビデスと、ホセ・ウステカギの代役として抜擢されたカイロン・デービスの一戦の観戦記です。
↓プレビュー記事
11/13(日本時間11/14)アメリカ・アリゾナ
Showtimeの放送ではまずはカネロvsプラントがフルラウンドで流れます。このカネロvsプラントはPPVファイトだったので、見ていない人もいるかもしれませんね。1週間待てば、サブスクの範囲内で見れるにもかかわらず、約80$のPPVを80万件も売ったといえばやっぱりすごい。
さて、セミファイナルではデビッド・ベナビデスの兄、ホセ・ベナビデスが登場。テレンス・クロフォード相手に初黒星を喫し、そこから3年を経ての再起戦に臨みました。
対戦相手のフランシスコ・エマニュエル・トーレス(アメリカ)は、17勝(5KO)3敗とパワーを感じさせない戦績ながら、試合は初回から打撃戦。トーレスはストレート系のパンチでべナビデスを困らせます。
このトーレスはミドル級の選手のようです。今回はスーパーウェルター級戦。ウェルターから(もっと言うとスーパーライト級から)上げてきたべナビデスは小さく、トーレスはでかい。
べナビデスはスウェーしてもそのストレートを躱しきれず、体を後ろ側に倒した上体でブロッキング。これは弟もよく使いますが、あまり良いディフェンスには見えませんね。
時折べナビデスがオーバーハンドを当て、これは見栄えが良い。しかしトーレスはコツコツとストレートを積み重ねて、退きません。一進一退の攻防で、ドローも有りかと思った試合は、本当にドロー。
トーレスの勝利は充分ありえましたが、べナビデスの勝利には厳しい、という位の感じのドローです。オフィシャルは95-95がふたり、96-94のひとりがトーレスで、マジョリティドロー。
負けなかったトーレスはインタビューでは何だか誇らしげ。ファンも盛り上がっています。
対してべナビデスは冴えませんね。初のスーパーウェルター級戦、3年のブランク、諸々があってキレとパンチへの反応がちょっとイマイチ。比較はクロフォードとのフェイスオフですが、ちょっと序盤のスウェーバックは楽をしようとしているようにも思いました。
ともあれ、べナビデスは復帰戦を飾れず。残念。
デビッド・べナビデス(アメリカ)24勝(21KO)無敗
vs
カイロン・デービス(アメリカ)16勝(6KO)2敗1分
ホセ・ウステカギ戦ならば、もっともっと注目度が高かったでしょう。ウステカギは薬物陽性反応により欠場、代役としてカイロン・デービスを相手にします。
べナビデスの対戦相手としては物足りないであろうデービスは、そうはいっても先日カネロの前座で印象的な勝利を上げたアンソニー・ディレルと引き分けたボクサー。ディレルはカネロ戦を望んでいる、とのことですね。
ただ、そのディレルはべナビデスに9RKO負けを喫している訳ですが。
結局のところ、べナビデスが圧倒的な力を見せての圧勝が期待されます。
まずはカイロン・デービスから入場ですが、不敵な笑みを湛えて非常に自信満々。なかなか不気味です。
さて、ゴング。
リズムよくステップワークのデービス。軽量級のようなステップワークを見せます。
べナビデスはスタスタと歩いて近寄り、単発の強いパンチを放っていきます。動き回るデービスに対してなかなか連打を打ち込む事はできませんが、単発ながらやはりリーチのあるこのべナビデスのパンチは届きます。
デービスはべナビデスの右に左フックを狙っています。
2R、デービスはべナビデスの動きをよく見て、バックステップを多用。上へのジャブをフェイントに、ボディジャブを狙います。べナビデスは追いながら、右構えとも左構えともつかない状態から単発パンチ。
べナビデスがプレスをかけて、デービスはよくサークリングして的を絞らせません。デービスはよく頑張っているイメージですが、ロープやコーナーに詰まってしまうとべナビデスがパンチをまとめてきます。
3R、べナビデス、手足バラバラなのになぜ強いパンチが打てるのか不思議なボクサーです。こういうボクサーはメキシコの重量級に多いような気がします。
しかしべナビデスのハードパンチに臆さず、打たれた後もしっかりと打ち返すデービス。距離をとっても予想外に伸びてくるべナビデスのパンチに被弾はありますが、こちらは本当にしっかりとした足取りでアメリカンなボクシング。いつの間にか、デービスを応援している自分に気づきます。
4R、ガードを上げてノシノシと歩いてくるべナビデスに対して、下がりながらシャープなジャブを打つデービス。中盤、べナビデスは左回りに逃げようとしたデービスを右フックで止めた後、連打をお見舞い。
その後もデービスのガードを吹っ飛ばす等、力の差を見せてこのラウンドを終了。終わりは近そうですが、デービスの眼はまだ死んでいません。
5R、目に見えてプレスを強めたべナビデス、飛び込んでの左フック、思い切り伸ばす右ストレートと強いパンチを打ち込んでいきます。
べナビデスはパンチも多彩、序盤からヒットし続けている左ボディ、このラウンドはガードの間隙を縫うような右アッパー。パワージャブでもデービスの顔を跳ね上げ、よく伸びる右ストレート。
デービスは何度も何度も顔を跳ね上げられながらも諦めず、効いていないというアピールからカウンターを狙います。
このラウンドのインターバル、デービスはかなりキツそう。
6R、序盤からデービスがコンビネーション。何か喋っているように見えますが、べナビデスもコンビネーションで攻め込みます。それをブロッキングしたデービスは、お返しとばかりに速いコンビネーション。交互にパンチを交換する大激戦!
やっぱりデービスはなにか喋りながら戦っている用に見えますが、やはりパワーはべナビデス。
ボディも顔面もしこたま打たれ続けるデービスですが、耐えに耐え、反撃。これはすごいハート、そしてタフネス!べナビデスにもやや打ち疲れが見えるほどです。
7R、開始早々にべナビデスは左ボディをヒット、これが効いたデービス。その後もべナビデスは攻めこみ、それでも打ち返す様は、初めて見たボクサーながらも感動的。
しかし、上も下も効かされ、勝ち目がほとんどない今の状態を見かねて、デービス陣営は棄権の意思表示。タオルが投入されました。
デビッド・べナビデス、7RTKO勝利!
カイロン・デービス、思った以上に頑張ってくれましたが、やはりべナビデスの方が実力は数段上。これは致し方ない結果ですね。良いボクサーではありましたが。
この敗北は恥じる事はないですし、べナビデスのアタックを何度もしのいだこと、ダウンを最後まで拒否したことは誇っていい事だと思います。
さて、デビッド・べナビデス、このボクサーはお世辞にもきれいなボクシングとは言えないまでも、やはり強い。
しかし、度重なる計量失格ということもあり、信頼はできないボクサーです。
勝利者インタビューでちゃっかり2本のWBCベルトを肩に掲げていますが、その経緯を知っていれば超微妙。。。
とはいえ、やはりvsカネロとなると厳しいでしょうね。べナビデスのパンチで、カネロが後退する、もしくは効いてフラフラになる、ということはあまりイメージできないことです。
と、どうやらカネロの次戦はクルーザー級に上げて、イルンガ・マカブ(コンゴ)に挑戦とのこと。ちょっと斜め上から来た発表すぎて、反応すらできません。
イルンガ・マカブはドン・キングのプロモートするボクサーではなかったでしょうか?
クルーザー級というあまり目立つ事のない階級のWBC王者であり、現在の戦績は28勝(25KO)2敗。2敗はデビュー戦での敗北と、トニー・べリューに敗れたもののようですね。
カネロはこれで勝てば5階級制覇。
これはヘビー級が見えてきますね。
その前に、WBCブリッジャー級のタイトルも獲って、ヘビー級もその時に最も与し易い王者に挑戦すれば、夢の7階級制覇です。(世間が認めるかどうかは知りません。)
もうここまで来たらカネロにはヘビー級まで行ってもらいたい。
話がそれましたが、べナビデスの話。
デビッド・べナビデスは、結局スーパーミドル級で戦っていくのだと思いますが、今後しっかりと体をつくれるという条件で、カネロが蹂躙してしまったボクサーたち、プラント、サンダース、スミス?(カラム・スミスはライトヘビーに転級したかもしれません)の他、ミドル級から上がってくるであろうボクサーたちとの対戦が期待されますね。
プラントやサンダースは巧いですが、べナビデスはまた違った味のあるボクサーで、非常にアグレッシブなのでこの対戦は非常に楽しみ。
特にプラントの技巧に、べナビデスのパワーがどのように通用するのか、これはおもしろそう。
ということで、今後体重超過をしない前提で、デビッド・べナビデスのことも楽しみにしたいと思います。
↓数日後に行われた井上vsチューの観戦記。Bサイドの奮闘が目立ちます。