2/13(日本時間2/14)はイギリス、アメリカでたくさんの注目興行が行われました。
その中で、今回はDAZNで放映されたマッチルーム興行、前IBF世界フェザー級王者、ジョシュ・ウォーリントン(イギリス)vsマウリシオ・ララ(メキシコ)との間で行われたノンタイトル12回戦、そしてセミファイナルで行われたプロスペクト、ゼルファ・バレット(イギリス)と、古豪キコ・マルティネス(スペイン)の闘いの観戦記です。
↓プレビュー記事
プレビュー記事の時点では、BoxRecを参考にしていたので、メインがレイ・ウッドvsリース・マウルドと表記していますが、この試合はセミセミ。レイ・ウッドが9RTKO勝利でBBBofCのフェザー級タイトルを獲得。
セミファイナル スーパーフェザー級12回戦
ゼルファ・バレット(イギリス)24勝(15KO)1敗
vs
キコ・マルティネス(スペイン)41勝(29KO)9敗2分
マルティネスが長谷川穂積(真正)を7RTKOで降したのが2014年の話。フェザー級でも低身長だったマルティネス、スーパーフェザーではかなり小さい。加えてもうすぐ35歳、役割としてはアンダードッグ。
対してゼルファ・バレットは長身でスピードもあり、雰囲気のあるボクサーですね。
初回、マルティネスは突進、バレットは鋭いジャブを飛ばし、ボディを入れます。
2Rもマルティネスは突進。バレットはややそれを持て余している印象。マルティネス、飛び込みざまのフックは迫力十分で鋭く、バレットの逃げ道を塞ぐような足運びも巧いです。さすが歴戦の雄。終盤はガードごしのフックで、バレットがバランスを崩すシーンもあり、ここはマルティネスのラウンド。
3R、バレットは速く、運動量も多いですが無駄な動きも多い。しかしマルティネスは最短距離で攻め、大きく回るバレットに対して歩いてプレス。バレットは動きながら打つ分、パンチが軽く、マルティネスの突進を止められません。
4R、マルティネスはディフェンスも良いですね。バレットの速いジャブはモーションを盗まれ、マルティネスのヘッドムーブによりほとんどが芯を外しています。ガードも固いマルティネスは近づいてはパワーパンチをガードの上からも構わず叩き込みます。
5R、足を使っているというよりも逃げている印象のバレット。序盤にマルティネスは左フックをヒット、よりプレスを強めます。
バレットは手足の速さはあるものの、カウンターを取れないので攻め込むマルティネスとしては怖さがありません。アウトボックスしつつの攻防分離は、ファイターにとって全く怖くない。
攻めれば下がるだけのボクサータイプであれば、もう一段階踏み込めば良いだけだからです。
6Rも展開は変わらず。バレットはどこかで山場をつくらなければなりません。マルティネスも同じペースで攻めているのでどこかで少し変えなければ、バレットももう慣れが出てきてしまっています。マルティネスにとっては、バレットは怖さがないので、このままでいいのかもしれませんが。
7R、バレットは下がりながらもなかなか手数は出ますね。そしてまだまだスピードも衰えていません。ただ、マルティネスはディフェンスもよく、その多くは空を切ります。対してマルティネスはやや単発ながら、ほぼ全てをフルスイング、体のどこかには当てている印象。
8R、バレットは足がよく動き、マルティネスは頭がよく動く。なかなかに面白い試合。両者ともに決めてには欠くものの、このラウンドもマルティネスの飛び込みざまの左フックはヒット。バレットが打ち際、ガードが下がったところにタイミングよく滑り込むこのフックは、試合を通して有効のように思います。
9R、開始早々マルティネスがチャージ。このむちゃくちゃな突っ込みは怖さがあります。しかしここはバレットもマルティネスの打ち終わりに巧くパンチを当て、序盤を巧く闘います。
更に中盤、終盤にはパンチをまとめたバレットのラウンド。
10R、ここにきてバレットが距離を掴んだのか、マルティネスの突進力が弱まったのか。ここまでのラウンドのように「逃げる」フットワークではなく、「攻める」ためのサークリングに変わったように見えるバレット。距離を支配し始めたバレットですが、やや遅きに失しているかもしれません。
11R、バレットがマルティネスの打ち終わりを狙うようになってから、やや怖さが出てきたのかもしれません。マルティネスは警戒しつつも踏み込むため、その踏み込みは浅くなり、打ってもその後が続きません。そして相変わらず、バレットは速い。ここに来て反応も鈍くなってきたマルティネスにバレットのジャブ、フックがヒット。
ラストラウンドもこの流れは変わらず、マルティネスはやはりやや単調。飛び込みのフックさえ気をつけていれば良いかもしれませんが、バレットにマルティネスをノックアウトするパンチはなさそうなのも事実。
いつの間にやらリング中央での攻防が多くなった両者、そこでゴング。
終わった瞬間、勝利を確信して両手を高く掲げたキコ・マルティネスでしたが、判定は非情の3-0でなんとバレットを支持。
118-111✗2、116-113というとんでも判定が飛び出ました。
確かにバレットは後半追い上げたように見えましたが、どう贔屓目につけても118-111は無理です。恐ろしい地元判定で星を落としてしまったマルティネス、不憫でなりません。。。
これがアウェーのイギリス判定。。。
メインイベント フェザー級ノンタイトル12回戦
ジョシュ・ウォーリントン(イギリス)30勝(7KO)無敗
vs
マウリシオ・ララ(メキシコ)21勝(14KO)2敗1NC
前IBF世界フェザー級王者、ジョシュ・ウォーリントン。イギリスでは非常に人気の高いファイターであり、フェザー級最強の呼び声も高い元王者です。
マウリシオ・ララはれっきとした世界ランカーながら、強豪との対戦はなく、デビュー戦で黒星を喫しているのと、2018年に1R50秒でKOされたのが2つめの黒星。
ここは圧勝で勝ち切り、他団体の王者とリング・マガジンのベルトを争いたいウォーリントン。
初回から早速ウォーリントンが旺盛な手数で攻め入ります。対してララも負けじと打ち返します。ララ、スピードは感じませんがメキシカンらしく一発一発を強く打つタイプのボクサーですね。パワーはありそうです。
手数、コンビネーションはウォーリントンですが、ララは一発一発が本当に重そう。ウォーリントンが何発かコンビネーションを打っても、ララの一発でバランスを崩されます。
これは予想以上に苦戦しそうな予感。
2R、ウォーリントンもややララを警戒してか、サークリングしつつの応戦となっています。やはりララはパワーがあり、ウォーリントンはガードを吹っ飛ばされる場面も。このラウンド終盤は、ウォーリントンの連打が火を吹きます。しかし、ララはタフでもあります。
3R、やはり今日のウォーリントンは少し慎重。いつもはパンチが当たれば波状攻撃的に攻めていくウォーリントンですが、今日は後続打が少ないようにも感じます。
このラウンド中盤から打撃戦は激しさを増していき、ララが左アッパーを当てるとウォーリントンも左アッパーをお返し。距離は非常に噛み合いますね。
4R、ララは攻める時に上体が前に出てしまい、そこにパンチを被弾してしまいそうなので、攻め込んでくるウォーリントンを待った方が良いかもしれません。
しかし、ララは恐れる事なくガンガンと攻め、相打ちの左フックでウォーリントンを効かせます!かなり効いてしまったウォーリントン!攻め込むララ、ここでまさかのダウンを奪います!
残り時間は20秒、なりふり構わず攻めるララ、かろうじて打ち返すウォーリントン、もういつ試合が止まってもおかしく有りません!
ここはなんとかゴングに救われたウォーリントンですが、これはまさかの展開。。。
5R、ストップをめがけて攻め込むララですが、この距離での打ち合いは得意なウォーリントン。しかしダメージはまだ回復していないようです。
ガードを第一優先とするウォーリントンですが、ダッキングしては下半身日からが入らずよろけ、クリンチに逃げます。ガードの上からでも効きそうなララのパンチを受け続け、一瞬のスキをついて左フックをカウンター。今度はララの動きが一瞬止まります。
ともにダメージをかかえたタフファイト。このラウンド後半、ウォーリントンはやや復活し、手数で攻め込んでいきます。終盤には逆ワンツーをヒット、まさかのここからの逆転があるのか。がんばれウォーリントン!
6R、ララが攻め、ウォーリントンはサークリングしつつカウンターを狙う展開。ララのパンチをガードするウォーリントンはよろめき、時折ヒットするウォーリントンの左フックでぐらつくララ。これは、死闘。
7R、ウォーリントンはサークリングしつつも、足元には不安をかかえる足取り。ララは相変わらず驚異的なアグレッシブさですが、顎が上がってしまうのでカウンターももらいます。それでも前進するこの強いハートは、やはりアップセットを目指すメキシカンのハート。
このラウンドの終盤にはウォーリントンも前に出て攻め込み、ともに披露とダメージをかかえつつも試合を投げない好ファイトです。
8R、サークリングしながら丁寧にジャブをつくウォーリントンと、さながら獣のように左右のフック系のパンチを振り回すララ。どちらも倒れそうで倒れません。
9R、開始50秒ほどのところで見事なワンツーを当てたララ!ここでぐらついたウォーリントンに、ララは左フックをクリーンヒット!そして追撃したララ、最後は左フックでフィニッシュ!
倒れたウォーリントンをレフェリーはノーカウントで救い出し、マウリシオ・ララが9RTKO勝利を挙げました。
これは非常にびっくりした、まさかのアップセットが起こりました。誰がこのような結果を予想したでしょうか。。。
4Rのダウンは、その場で止められてもおかしくないほど痛烈なものでしたが、そこから持ち直したように見えたウォーリントン。あのダウン以降は互角まで戻したと言っても良かったと思います。フルラウンドいけば、どちらが勝ってもおかしくない内容でもあったと思います。
恐るべきは、マウリシオ・ララのパワー。
決してきれいなボクシングではありませんが、試合を諦めない強いハート、素晴らしいパワーを持ったボクサーでした。
ウォーリントン、非常に残念でしたね。。。
ノンタイトル戦ということで、気持ちが緩んでいた感じもします。
これにめげずに再起し、またタイトルを取り戻してほしいものですね。
この死闘ともいえる大激闘は、(かなり気の早い話ではありますが)アップセット・オブ・ザ・イヤーにノミネートされるかもしれません。
それほど衝撃的なこの一戦。DAZNでまだしばらく見れますので、皆様も。