週末、土曜日からは山奥でのキャンプ。ネット環境は非常に悪く、4Gでも電波が一本しかないような状況だったので、必然的にネット社会から隔離。
お昼ごろに帰宅するも連盟の会議があり、ようやく視聴できたのは夕方からでした。
大注目のフェザー級戦線、結果的には期待どおりの結果であり、更にともに非常に見応えのある戦いでもありました。
ということで今回は、イギリスで行われた世界フェザー級戦、その観戦記です。
↓まずはロペスvsコンランから!
5/27(日本時間5/28)イギリス・北アイルランド
IBF世界フェザー級タイトルマッチ
ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)27勝(15KO)2敗
vs
マイケル・コンラン(アイルランド)18勝(9KO)1敗
王者、ルイス・アルベルト・ロペス。敵地イギリスはリーズでの世界初戴冠、そして初防衛戦はイギリスの北アイルランド。これは厳しいチャンピオンロードです。
しかも北アイルランドでの今戦で迎えるのは、(ほぼ)地元のスーパースター、マイケル・コンランです。
この戦いの勝者は、指名挑戦者として阿部麗也(KG大和)を迎える事になっており、日本のボクシングファンにとっても非常に注目の一戦です。
「リーズ・ウォリアー」ジョシュ・ウォーリントンにファイトして競り勝ったロペスか、元五輪銅メダリスト、スーパースター・コンランか。
注目の一戦、ゴング。
初回、先に仕掛けたのはコンラン。サウスポースタンスからリズムを取ってボディジャブです。
ロペスはそのリターンで早速大きなパンチを振り回し、早々にコンランを脅かします。
とにかくブロッキングしてリターンのフックを狙うロペス、コンランは先に仕掛けて体勢を崩そうかというところで、ともにパンチが当たる距離でのボクシングです。
中盤、ロペスも非常に回転力が出てきますね。コンランはジャブを突いてスタンスを広くとり、距離をキープ、からの左ボディストレート。ここをかまわずのしのしと歩いて近寄る感じのロペス、後ろ手の迫力ある右フック!
ともかく強いパンチを当てる事にしか興味がなさそうなルイス・アルベルト・ロペス。とんでもなく大きなスイング、どんな体制からでも力強く振ってくるのは非常に迫力がありますね。
2R、こうなると勿論コンランはストレートを主体、そしてサイドに回ります。ボディワークも見事なものですが、ちょっとロペスの距離にいすぎのようなイメージ。
ロペスの攻撃は粗さこそありますが、コンランがダックしたところに飛んでくるアッパーは怖いですね。
中盤はコンランが接近、この距離でやるのか?
パンチングパワー、ガードの固さを考えると一歩引いた距離で戦った方が良いと思われるコンランですが、近い距離でも上体を使ってパンチをかわし、本当に巧く戦っています。
このラウンドは中盤、終盤にロペスをロープ際に詰める展開を作り、優勢をアピールしています。
3R、コンランがうまくジャブを使い、ロペスの攻め時を潰します。と思ったら今度はロペスが強引に攻めてコンランを後退させますね。ロペスの強気のボクシングは不器用ですが、ともかく日本や欧州のボクサーではこうは育たない、という自由奔放なものを感じます。
コンランは中盤、良いコンビネーションを見せますが、その後ロペスも凶悪なアッパーカットをヒット。
その後もコンランが右フックをヒットすると、堰を切ったようにロペスがダイナミックな反撃に転じ、コンランはダメージを負ってロープへ後退、クリンチに逃げる場面も。
このルイス・アルベルト・ロペスというボクサーは、肉を切らせて骨を断つ、そんなボクシングですね。
4R、ガードを固めて前進のロペス。ただ、打ち始めるとガードなんて忘れているくらいのぶん回します。自分が当たる距離まで手を出さず、ブロッキングに頼るロペスですが、このガードが非常に固く、また攻め時は体全体を使って拳をぶつけてくるので非常にパワフル。これは怖い。
思いのままにパンチを振るっているように見えるロペスですが、とにかくパンチのセレクトは良い。後半に差し掛かろうかというところでロペスは左フックをヒット、その後も右ボディアッパーをヒットしています。
イギリスからの映像をアメリカの放送局を通してみているためか、今日の映像はよく止まります。
このラウンドののこり40秒からは止まって見れず。(ESPNのCMが流れる始末。)
そして再開はインターバル中でした。
5R、少しダメージが溜まっているようにも見える表情のコンラン、対してロペスはポーカーフェイス。
このラウンドもジリジリとプレスをかけて、打たれても関係なく強いパンチを打ち返します。
迎えた中盤、ロペスの左をダックしてかわそうとしたコンラン、ここでロペスは右アッパーカットをヒット!コンランはダウン、陣営からタオルが投入され、試合はストップ!!
ルイス・アルベルト・ロペス、5RTKO勝利!!
ロペスの強さと冷静さが遺憾なく発揮された試合でしたね。
ロペスはとにかく攻防が完全に分離しており、ガードを固めて前進、一気に間合いを詰めて強いパンチを放っていくスタイル。
阿部との相性は良いように見えますが、圧倒的なのはこのフィジカルパワーでしょう。
これに圧し潰されさえしなければ、阿部麗也にも充分にチャンスはあろうかと思いますが、こればかりは向かい合ってみないとわかりません。
キコ・マルティネスにも押される場面が目立った阿部は、このロペスを12Rにわたりさばききれるか。とりわけこのコンランを倒したアッパー、外側から大きく弧を描いて飛んでくるフックは非常に危険で、ステップなんて全く気にしないあの踏み込みも非常に危険です。
思いっきり足を使ってアウトボックスするタイプなら、ロペスがついてこれない可能性もあると思いますが、阿部もどちらかというと大きく回るタイプではなく、細かなステップを刻むタイプなので、このロペスの一気に距離を詰める攻撃への対策は必須でしょう。
倒れたコンランはしばらく立てず、これは陣営がナイスストップだったと思います。
ということでイギリス・ベルファストでの一戦は、王者が強さを示したような戦いでした。
↓続いてはマウリシオ・ララvsリー・ウッドのダイレクトリマッチ。
5/27(日本時間5/28)イギリス・マンチェスター
マウリシオ・ララ(メキシコ)26勝(19KO)2敗1分
vs
リー・ウッド(イギリス)26勝(16KO)3敗
前戦、ウッドペースで試合が進んでいたものの、ララが大逆転のノックアウト勝利。ボクシングの技術、そして戦略面でウッドにアドバンテージがあることは明白ですが、ララには試合をひっくり返せるパワーがあります。
なので非常に楽しみ。。。でした。
が、なんと試合の数日前、英国ボクシング委員会の横槍が。
試合4日前の体重計測で、ララが3.8lbsの超過、これが英国ボクシング委員会「急激な体重減少を禁止する規定」というものにひっかかり、試合までに1.3lbs以上体重を落としてはいけないというオーダーがなされたそうです。
カシメロのサウナ事件と同様のものですね。これはララ陣営は知っていたのでしょうか。
ともあれ、ララはウェイトオーバーが確定される中での計量を終え、当然王座は剥奪。変則タイトルマッチとして行われる事になりました。これはマウリシオ・ララのモチベーションとして心配ですね。あと、英国での試合で水抜き減量はNGということがわかりましたね。
ともあれ、ゴング。
初回、まずウッドが上下ヘジャブをちらして前進。ララは迎え撃つ雰囲気。やっぱりちょっとララはいつもと違うように見えます。ディフェンシブにさえも見える戦いです。
中盤頃にはようやく踏み込んで自分から攻めようというシーンを見せ始めますが、その踏み込みはさほど鋭いとは言えません。
2R、ガードで耐えて、一気に踏み込む。ようやくララがララらしさを見せ始めます。こうなると前回と展開は同様になるか、ウッドは距離を測るジャブを突きながらフェイントをかけ、ララが攻め込んでくるとカウンターか速いバックステップで対処。
ウッドのボディジャブが良いタイミングで、前回ほどパワー差を感じない気がします。
後半、ウッドのコンビネーション、ジャブからアッパーがヒット!そして最後の左フックでこづくとララがダウン!
これはダメージはさほどではなさそうですが、序盤にこのビハインドは痛いララ、立ち上がった後はワイルドに攻めていきます。
3R、焦りがあるか、頭から突っ込むララ。当然バッティングが起き、ウッドの顔は跳ね上がりますが、集中力を切らさないのはウッド。
ララがプレスをかけ始めるとウッドがサイドに動き、ステップが間に合わないとなるとクリンチ、そして少し距離が開けばストレートを着弾させます。リー・ウッドはやはり非常に総合力の高いボクサーで、その戦いは非常にクレバー。
ララも鋭い踏み込みが出てきて、ウッドを脅かすものの、これはそれぞれ単発に終わっています。しかしこの単発パンチで前回はやられてしまっているので、気を抜けるものではありません。
4R、ここは距離が空いたスタートで、ウッドがジリジリとプレスしてララが下がる展開。ララは省エネなのか、ちょっとリターン狙いの戦法でしょうか。
5R、このラウンドも立ち上がりは静か。本来攻めていかなければいけないのはララの方ですが、ウッドに攻めても暖簾に腕押し状態だと思ったのか、先手を取る事はできません。
かわりにウッドが攻めた後のリターンは鋭く、そのステップインは非常に大きなものですね。
相変わらず一発で試合をひっくり返せそうなパンチを放つララですが、このボクシングで、しかも敵地で、ポイントを取る事は困難でしょう。
6R、ウッドは絶好調。前戦も調子は良さそうでしたが、今回はララの動きを見きっているイメージで、見事なヒット&アウェイのボクシング。ただ、これはララが攻めてこないからやりやすいと感じているような気もしますね。
7R、ウッドがしっかりと距離をキープしたボクシング。ララは強引に攻めなければウッドに近づく事すら困難な状況が続きます。
ウッドはあくまでも基本に忠実で、ジャブで距離を測ってフェイントをかけ、距離が遠いとボディヘジャブを伸ばし、相手が出てきたところにカウンター、ステップワーク、クリンチ。
本当に特別なことをしていませんが、ある種の理想の戦い方ですね。このラウンド終了後、ウッドは小さくガッツポーズ。思い通りの戦いができているのでしょう。
8R、このラウンドも展開はほぼ変わりません。が、どちらかというとウッドもジャブ以外のパンチを出していないため停滞と言えるラウンド。ウッドはプレスをかけつつ上手く休んでいるという印象です。そこでもララに攻め込ませるようなことはしません。
9R、ウッドは丁寧なジャブとカウンター。ララも前ラウンドよりもプレスを強め、鋭い踏み込みを見せますが、攻めが愚直すぎてウッドのカウンターがヒットするという悪循環。
ただ、こういう展開からもありえない体勢からパンチを放ち、試合をひっくり返す事ができるのがこういうタイプのメキシカンです。
10R、前半にウッドの下がってすぐの右カウンターがヒット。一瞬ララの足が揃ったように見えましたが、これがあるからララは一気に行けない状況です。
ウッドはしっかりと動き、カウンターを狙い、それが成功しようとも失敗しようともポジションを変える、至極まっとうなボクシングです。
この超がつくほどの正統派のボクシングに抗う術をもたないララは走り抜けるように強引な踏み込みを見せていますが、それでもララには届かず。
11R、ここまで来ると、ララとしてはあとはゴールテープを切るだけ。ララはどこかでまた奇跡の一発を当てなければいけません。
ただ、ここでも冴えるのがウッドのリードブロー。トータルのパンチスタッツは、ララが67/273、ウッドが126/360と倍近い差があります。
終盤、ララが強いチャージもウッドのステップワークにより無効化。
ラストラウンド、攻めるしかないララはなりふり構わない突進。それでもウッドも退かず、しっかりと迎え撃ち、中間距離で出すジャブ、右ストレートは「逃げ」のためのものではありません。
後半、ララが踏み込んだところでカウンターをヒットしたウッド、その後もララの攻撃を無効化し、集中力をキープした素晴らしいボクシングを展開した12Rを終えました。
終了ゴングのあと、勝利を確信したウッドはトップロープに。完勝ですね。
判定は、116-111、118-109×2でリー・ウッド。
ウェイトオーバー、さらには完封されたマウリシオ・ララは判定の発表時、レフェリーの隣にすらおらず、自陣のコーナーで採点を聞きました。
もし英国ボクシング委員会の規定をララ本人が知らなかったとするならば、同情の余地がありますね。それにより、大きくモチベーションを損なってしまった可能性もあります。
とはいえ、リー・ウッドの見事なオーセンティック・ボクシングにケチをつけられるものではありません。エキサイティングではなかったですが、ララにも最後まで怖さがあり、気の抜けない戦いだったと思います。
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