多くの媒体が、PFPキングに推すスーパースター、サウル・アルバレス。通称カネロ。
ここ最近のカネロは本当に神がかっており、直近の試合ではスーパーミドル級最強とも謳われたカラム・スミス(イギリス)を圧倒、スミスの腕を破壊して判定勝利。
その前の試合では、ライトヘビー級で王者セルゲイ・コバレフ(ロシア)をノックアウト、その前にはミドル級でダニエル・ジェイコブス(アメリカ)を判定で降しています。
世界のトップオブトップながら、非常にアクティブに動き、大金を稼ぎ出しているカネロ。
今回、そのカネロの相手は指名挑戦者ながらミスマッチとも噂されるアブニ・イルディリム(トルコ)。
充実のカネロに対し、イルディリムがどこまでがんばれたのかに注目です。
↓プレビュー記事
尚、セミファイナルにセットされていたWBC世界フライ級タイトルマッチ、フリオ・セサール・マルティネス(メキシコ)vsマクウィリアムス・アローヨ(プエルトリコ)は、マルティネスの拳の怪我により一旦延期との報。
その後、アローヨはアブラハム・ロドリゲス(メキシコ)と同暫定王座戦を争う事となったようです。
しかし、このアブラハム・ロドリゲス、ミニマム級のランカー。最近はライトフライ級で戦っているようですね。Boxrecを見ると、2018年にアンヘル・アコスタ(プエルトリコ)の持つWBO世界ライトフライ級王座に挑戦し、2RTKOで敗れています。しかも、このニュースが出たのは日本時間で27日、前日。よく受けましたね。。。
WBC世界フライ級暫定王座決定戦
マクウィリアムス・アローヨ(プエルトリコ)24戦20勝(15KO)4敗
vs
アブラハム・ロドリゲス(メキシコ)29戦27勝(13KO)2敗
急遽対戦相手が変更となったアローヨ。急遽リングに上がることになったロドリゲス。マルティネスvsアローヨは実はメイン以上に楽しみだったのですが。。。仕方有りません。ここはアローヨの快勝を願うばかり。
リングコール。やっぱり体の仕上がりは段違いでアローヨ。
初回、プレスをかけるアローヨに対して、ロドリゲスは下がりながら対処します。ロドリゲスはアローヨの踏み込んだ際、結構ワイルドに体ごと振るので、バッティングの危険性が高い。左フックは速く、なかなかいいですね。ただ、頭の位置は危険。
2Rに入るとプレスを強めるアローヨ。このロドリゲスに対しては左フックを警戒していれば足りるかもしれませんね。
ロドリゲスは下がって回って、突然鋭い踏み込みをしたりするので距離が掴みづらい。更にすぐさまクリンチに移る場面もあり、攻める側としてもなかなかパンチをまとめづらいかもしれません。
3R、ロドリゲスの足を止める目的か、アローヨは目に見えてボディを叩き始めます。
4R、ロドリゲスは逃げているようにしか見えなくなってきました。時折鋭い左フックを振るいますが、とにかくクリンチに逃げます。アローヨはその速い左フックに対してまっすぐのジャブを飛ばし、強い右を叩き込みます。
相手を見定めつつ、的確なパンチを浴びせたアローヨは右ボディから左フックをフォローし、ダウンを奪います。
立ち上がったロドリゲスに対して、ジリジリとコーナーに詰めたところで強いパンチを連打。
5R、リングを大きくサークリングするロドリゲス。サバイバルモードに突入。時折、頭を低くして懐に入り、攻めますがやはりその武器は左フックしかありません。
その左フックにあわせ、アローヨは右のカウンター。下がったロドリゲスに冷静に攻め入ったところで、ロドリゲス陣営が棄権を申し出て、この試合はストップ。
マクウィリアムス・アローヨの5RTKO勝利。WBC世界フライ級暫定タイトルを獲得。
アローヨは暫定ながら、タイトル初獲得。ともすれば、世界王座と無縁でそのキャリアを終えそうにも思えましたが、転がり込んできたこのチャンスをしっかりとものにしました。
そして、急遽リングに上がったロドリゲスは、少し役不足ではありましたね。
ミニマム級のランカー、最近ではライトフライ級を主戦場にしているとはいえ、今回の試合はフライ級、しかもタイトルマッチ。左フックにはスピードとパワーを感じますが、それが封じ込まれれば打つ手なしの印象でした。
ライトフライ級、フライ級は日本人ボクサーとも絡む可能性も大いにありますが、まずはアローヨおめでとうございます。
そして次戦は今度こそマルティネス戦でしょうが、良い試合を見せてもらいたいです。
WBAスーパー・WBC世界スーパーミドル級タイトルマッチ
サウル・アルバレス(メキシコ)57戦54勝(36KO)1敗2分
vs
アブニ・イルディリム(トルコ)23戦21勝(12KO)2敗
戦前から、ミスマッチ感満載ではありますが、何が起こるかわからないのがボクシング。ただ、アップセットが起こる場合は、多くは格上のボクサーの調整不足、その次に、格下ボクサーが思った以上の実力を秘めているか、だと思います。
ただ、カネロは練習やその試合ぶりを見ても勤勉で、コンディショニングの失敗の可能性は低い。そしてイルディリムも想像以上の強さを秘めているとは言い難いボクサーです。
以上のことから、この試合に関してはアップセットが起こる可能性は非常に低い。
あとはイルディリムが、どこまでカネロに対して耐えられるか、というのが焦点です。
初回、まずは様子見から落ち着いたスタート。ともにガードを高く掲げた状態からジャブを飛ばし、相手の出方を伺います。
ジャブから左ボディというカネロのサンデーパンチ。これがイルディリムのガードの上にヒットしますが、映像で見ていてもパンチの炸裂音が随分と違う印象です。
2R、イルディリムは先程よりもジャブを出し、果敢に攻めます。しかし、出ていこうとしたところにカネロのアッパー、フックがヒット、果てはボディを叩かれ、しかもイルディリムのジャブは当たりません。
カネロのフックに押され、すでによろめく場面も出てきてしまったイルディリム。早くもピンチか。
カネロはフックからアッパーの返しが流石。フックでガードを横にずらして真ん中を抜くアッパー、軽いアッパーでガードをあげさせておいてボディ。まるでサンドバッグトレーニングのように打ち分けます。
逆にイルディリムはいくぞいくぞとフェイントをかけつつも、ジャブ以外のパンチがほとんど出ません。
3R、カネロは強弱をつけた多彩なパンチを打ちつつ、近い距離での攻防。そこから、きれいなワンツーを決めてダウンを演出します。
ここまでフック、アッパーと来ておいてワンツーですか。。。
立ち上がったイルディリム、ガード一辺倒となり打ち返す事もできません。
カネロはその後も落ち着いてワンツーをヒット、頭をつけてアッパーを打ち合うもカネロの方がパワーにあふれ、的確性で勝る。
ほとんど手を出せず、ガードでしのぎ、距離をつくるイルディリム、もう時間の問題です。
インターバル中のイルディリム陣営の様子が写りますが、セコンドは非常にエキサイトしているもののイルディリムの目はうつろ。
そして4Rは開始されず、イルディリムは棄権、カネロの3R終了TKO勝利となりました。
サウル・アルバレスの3RTKO勝利。
PFPキングの名は伊達ではありませんね。圧倒的な強さ、圧倒的な巧さを見せつけたカネロ・アルバレス。イルディリムは結局何もできないまま、(それは大方の予想でもありましたが)良いところなく敗れてしまいました。
そしてカネロはカネロで、素晴らしいディフェンステクニックやボクシングIQ、そういったものを披露することなくただのパンチングパワーとアッパーを巧打するテクニックのみで、この指名挑戦者を退けて見せました。
本気を出さずとも圧勝できた、ということです。
こうなると次のカネロの相手は誰か、という話にはなりますが、次戦は5/8(日本時間5/9)、WBO世界スーパーミドル級王者、ビリー・ジョー・サンダース(イギリス)との統一戦が発表されました。
かねてからこの噂はありましたが、本日勝利したことで正式決定ということでしょう。
カネロにとってはこの指名試合も調整試合やスパーリングのようなもの、次戦のサンダース戦こそ本気で取り組まねばならないでしょう。
とはいえ、この充実のカネロ・アルバレスに、サンダースが勝てるとも思えません。サンダースはフルラウンドにわたって、カネロに「倒させない」ようにするのがやっとのようにも思いますが、果たして。。。